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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

網膜芽細胞腫の治療(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2016-05-24
    翻訳更新日 : 2017-02-17

 このPDQがん情報要約では、網膜芽細胞腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

 PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

網膜芽細胞腫についての一般的な情報

網膜芽細胞腫は、網膜の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

網膜とは、眼球の後側の内面を覆っている神経 組織のことです。網膜は光を感知することができ、その情報は画像として視神経を経て脳に伝えられます。

眼の解剖図:2つの図に眼の外側および内側の構造を示す。上の図には、眼瞼、瞳孔、強膜、虹彩などの眼の外側の構造が示されており、下の図には、角膜、水晶体、毛様体、網膜、脈絡膜、視神経、硝子体液などの眼の内側の構造が示されている。



眼の解剖図:強膜、角膜、虹彩、毛様体、脈絡膜、網膜、硝子体液、視神経などの眼の内側および外側の構造が示されています。硝子体液は眼球の中央部を満たしているゲル状の液体です。



網膜芽細胞腫はあらゆる年齢層に発生する場合がありますが、通常は5歳未満のお子さんにみられ、最も多いのは2歳未満です。このがんは片眼のみに発生すること(片側性)もあれば、両眼に発生すること(両側性)もあります。網膜芽細胞腫は眼球付近の組織や体内の他の部位に拡がることはめったにありません。

網膜芽細胞腫には、遺伝性で発生するものも、非遺伝性で発生するものもあります。

以下のいずれかに当てはまるお子さんの網膜芽細胞腫は、遺伝性と考えられます:


  • 網膜芽細胞腫の家族歴がある。

  • RB1 遺伝子に特定の突然変異(変化)が認められる。RB1遺伝子の突然変異は親から子に受け継がれたものか、受胎前に卵子や精子に発生した、または受胎直後に生じた可能性がある。

  • 片方の眼に腫瘍が複数ある、または両眼に腫瘍がある。

  • 片方の眼に腫瘍があり、患者さんが1歳未満である。

お子さんが遺伝性網膜芽細胞腫と診断され、治療を受けた後でも、数年間は新たな腫瘍が発生することがあります。通常は、新たな腫瘍が発生していないか調べる定期的な眼の検査を2~4ヵ月おきに実施し、少なくとも28ヵ月間は続けます。

非遺伝性網膜芽細胞腫は、遺伝性以外の網膜芽細胞腫です。ほとんどの網膜芽細胞腫は非遺伝性です。

遺伝性か非遺伝性かにかかわらず、網膜芽細胞腫の治療には、遺伝カウンセリングが含まれます。

両親は、遺伝カウンセリング遺伝性疾患について訓練を受けた専門家との話し合い)を受診し、お子さんの兄弟姉妹について遺伝子検査が必要かどうかや網膜芽細胞腫のリスクに関して話し合うべきです。

遺伝性網膜芽細胞腫のお子さんは、三側性網膜芽細胞腫やその他のがんのリスクが高くなります。

遺伝性網膜芽細胞腫のお子さんは、脳の松果体腫瘍のリスクが高い状態です。網膜芽細胞腫と脳腫瘍が同時に発生した場合は、三側性網膜芽細胞腫と呼ばれます。この脳腫瘍は通常、生後20~36ヵ月で診断されます。遺伝性網膜芽細胞腫と考えられるお子さん、または片眼に網膜芽細胞腫があり、この病気の家族歴もあるお子さんでは、MRI(磁気共鳴画像法)による定期的なスクリーニングを6ヵ月ごとに5年間にわたり実施することが考えられます。CTスキャン(コンピュータ断層撮影)は、お子さんを電離放射線に曝すことになるため、通常のスクリーニングでは使用すべきではありません。

遺伝性網膜芽細胞腫では、肺がん膀胱がん、または黒色腫などの別の種類のがんを後年に発症するリスクも高まります。そのため、定期的なフォローアップ検査が重要です。

網膜芽細胞腫の徴候や症状には、「白色瞳孔」、眼の痛み、眼の充血などがあります。

これらに加え、別の徴候症状が網膜芽細胞腫により引き起こされることがありますが、その他の病態によって生じることもあります。お子さんに以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:


  • 瞳孔をライトで照らしたときに赤色ではなく白色に見える。この現象は通常の写真の中でも認められることがあります。

  • 眼の痛みや充血。

  • 眼球が通常より大きい。

  • 眼の色付きの部分と瞳孔が濁っている。

  • 左右の眼がそれぞれ別の方向を向いているように見える(斜視)。

網膜芽細胞腫の発見と診断には、網膜を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:


  • 身体診察と病歴 聴取:しこりなどの通常みられない疾患の徴候に注意しながら、総体的に身体を調べる診察法。患者さんの健康習慣、過去の病歴、治療歴なども調べます。網膜芽細胞腫の家族歴についての問診も行われます。

  • 瞳孔拡張検査水晶体と瞳孔の奥にある網膜を観察しやすくするために点眼薬によって瞳孔を拡張させてから行う眼の検査法。ライトを用いて眼球の内部(網膜や視神経など)を調べます。小児の年齢にもよりますが、この検査は麻酔下で行われる場合もあります。

     瞳孔を拡張させて行う眼の検査には、以下のように、いくつかの種類があります:


    • 眼底検査 :小さな拡大鏡とライトを用いて、眼球後方の内側で網膜と視神経を調べる検査法。

    • 細隙灯生体顕微鏡検査 :強いビームと顕微鏡を使用して、網膜や視神経など眼の各部を調べる眼内の検査法。

    • 蛍光眼底血管造影 :眼球内部の血管とそこでの流の状態を観察する検査法。まずフルオレセインというオレンジ色の蛍光造影剤を腕の血管内に注射します。その後、造影剤が眼球の血管を流れている間に、特殊なカメラで網膜と脈絡膜の写真を撮影し、血管に閉塞や漏出が起きていないかを調べます。


  • 眼の超音波検査:高エネルギーの音波(超音波)を眼球内部の組織に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法。まず点眼薬によって眼に麻酔を施し、音波を送受信できる小型のプローブを優しく眼球の表面上にあてがいます。生じたエコーから眼球内部の映像が描出され、角膜から網膜までの距離が測定されます。このソノグラムと呼ばれる画像は超音波モニター上に表示されます。この画像は後で見られるように印刷することもできます。

  • MRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて、眼球などの体内領域の精細な連続画像を作成する検査法。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。

  • CTスキャン(CATスキャン):眼球などの体内の領域を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法。この画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに造影剤を飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影法(CT)やコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれます。

    頭頸部のコンピュータ断層撮影(CTスキャン):図のように小児は台の上に横たわり、この台がCTスキャナ内を水平に移動するうちに頭頸部のX線写真が撮影される。
    
    


    頭頸部のコンピュータ断層撮影(CTスキャン)。小児の患者さんは台の上に横たわり、この台がCTスキャナ内を水平に移動するうちに頭頸部のX線写真が撮影されます。




  • 骨スキャン :骨の内部に活発に分裂している細胞(がん細胞など)が存在していないかを調べる検査法。まずごく少量の放射性物質を静脈内に注入し、血液に乗せて全身に巡らせます。この放射性物質には骨に集まっていく性質があるため、これを特殊な装置(スキャナ)を用いて検出するとともに、全身の像も撮影します。 がんがある骨は正常な骨細胞よりも放射性物質を多く取り込むため、このような領域は画像内で明るく表示されます。

    骨スキャン:スキャナの下を水平に動く台の上に横たわる患児とスキャナを操作している技師、スキャン中に生成された画像を映し出しているコンピュータのモニターが示されている。
    
    


    骨スキャン。少量の放射性物質を小児の静脈に注入し、血流に乗せて全身に巡らせます。この放射性物質は骨に集まります。小児の乗った台がスキャナの下を水平に移動する間にこの放射性物質が次々と検出され、コンピュータのスクリーン上にその画像が表示されます。




網膜芽細胞腫は通常、生検を行わずに診断されます。

網膜芽細胞腫が片方の眼にある場合に、もう一方の眼にも腫瘍ができることがあります。網膜芽細胞腫が遺伝性のものかどうかが不明な場合は、腫瘍のない側の眼も検査します。

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後回復の見込み)と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:


  • がんが認められるのは片眼のみか、両眼ともか。

  • 腫瘍の大きさと個数。

  • 腫瘍が眼球周辺に拡がっているか、脳に達しているか、または体の他の部位に転移しているかどうか。

  • 三側性網膜芽細胞腫の診断時に症状がみられるかどうか。

  • 患者さんの年齢。

  • 片眼または両眼の視力温存の可能性。

  • 二次がんが発生していないかどうか。

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網膜芽細胞腫の病期

網膜芽細胞腫の診断がついた後には、がん細胞の眼球内での拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。

がんの眼球内での拡がりや他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。

病期分類の過程では以下のような検査法や手技が用いられます:


  • 瞳孔 拡張検査水晶体と瞳孔の奥にある網膜を観察しやすくするために、点眼薬によって瞳孔を拡張させてから行う眼の検査法。ライトを用いて眼球の内部(網膜や視神経など)を調べます。小児の年齢にもよりますが、この検査は麻酔下で行われる場合もあります。

  • 超音波検査:高エネルギーの音波(超音波)を内部の組織臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。この画像は後で見られるように印刷することもできます。

  • CTスキャン(CATスキャン):体内の領域を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法。この画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに造影剤を飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影法(CT)やコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれます。

    頭頸部のコンピュータ断層撮影(CTスキャン):図のように小児は台の上に横たわり、この台がCTスキャナ内を水平に移動するうちに頭頸部のX線写真が撮影される。
    
    


    頭頸部のコンピュータ断層撮影(CTスキャン)。小児の患者さんは台の上に横たわり、この台がCTスキャナ内を水平に移動するうちに頭頸部のX線写真が撮影されます。




  • MRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて、体内領域の精細な連続画像を作成する検査法。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。

  • 骨スキャン :骨の内部に活発に分裂している細胞(がん細胞など)が存在していないかを調べる検査法。まずごく少量の放射性物質を静脈内に注入し、血液に乗せて全身に巡らせます。この放射性物質には骨に集まっていく性質があるため、これを特殊な装置(スキャナ)を用いて検出するとともに、全身の像も撮影します。 がんがある骨は正常な骨細胞よりも放射性物質を多く取り込むため、このような領域は画像内で明るく表示されます。

  • 骨髄穿刺および骨髄生検 骨髄や小さな骨片を、腰骨または胸骨に中空の針を挿入して採取します。病理医は、採取した骨髄を顕微鏡で観察し、がんの徴候がないかどうか調べます。骨髄穿刺および骨髄生検は、がんが眼球の外へ拡がっていると考えられる場合に実施されます。

  • 腰椎穿刺 脊柱内から脳脊髄液(CSF)を採取する際に用いられる手技。脊椎内の2本の骨の間から脊柱内に針を刺し、脊髄周囲を流れるCSFに到達させ、CSFを採取します。CSFのサンプルは顕微鏡で観察し、脳や脊髄に転移したがんの徴候を調べます。この手技はLPまたは脊椎穿刺とも呼ばれます。

網膜芽細胞腫国際病期分類システム(IRSS)が網膜芽細胞腫の病期分類に使用されることがあります。

網膜芽細胞腫では、病期分類システムがいくつか存在します。IRSS病期は、手術腫瘍を切除した後に残存しているがんの量、およびがんが拡がっていないかどうかを基にしています。

0期

腫瘍は眼球にのみ存在します。眼球は摘出されておらず、腫瘍に対して手術を用いない治療が行われました。

I期

腫瘍は眼球にのみ存在します。眼球が摘出されており、がん細胞は残存していません。

II期

腫瘍は眼球にのみ存在します。眼球が摘出されており、がん細胞が顕微鏡でのみ認められる程度に残存しています。

III期

IIIは、さらにIIIa期とIIIb期に分類されます:


  • IIIa期では、がんが眼球から眼窩周辺の組織に拡がっています。

  • IIIb期では、がんが眼球から耳または頸部の近くにあるリンパ節に拡がっています。

IV期

IVは、さらにIVa期とIVb期に分類されます:


  • IVa期では、がんが血液中に侵入していますが、脳や脊髄には達していません。1つ以上の腫瘍が、骨や肝臓など、体内の他の部位に転移している場合もあります。

  • IVb期では、がんが脳や脊髄に達しています。体内の他の部位に転移している場合もあります。

網膜芽細胞腫の治療は、眼球内(腫瘍が眼球内に限定される)か、眼球外(腫瘍が眼球の外に拡がっている)かで異なります。
眼球内網膜芽細胞腫

眼球内 網膜芽細胞腫では、がんが片側または両側の眼球内に認められ、それが網膜のみに存在している場合も、脈絡膜毛様体、あるいは視神経の一部など、他の眼球部分に存在している場合もあります。眼球外の周辺組織にも、体の他の部位にもがんは拡がっていません。

眼球外網膜芽細胞腫(転移性)

眼球外 網膜芽細胞腫では、がんが眼球の外まで拡がっています。眼球周辺の組織に認められる場合(眼窩内網膜芽細胞腫)や、中枢神経系(脳と脊髄)に拡がっていたり、肝臓や骨、骨髄リンパ節などの他の部位に拡がっていたりする場合があります。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:


  • 組織。がんは発生した場所から隣接する領域に拡がります。

  • リンパ系。がんは発生した場所からリンパ系に侵入して拡がります。がんはリンパ管を介して体内の他の部位へ移動します。

  • 血液。がんは発生した場所から血液に侵入して拡がります。がんは血管を介して体内の他の部位へ移動します。

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。


  • リンパ系。がんがリンパ系に侵入し、リンパ管を通って体内の他の部位へ移動して、そこで腫瘍転移性腫瘍)を形成します。

  • 血液。がんが血液中に侵入し、血管を通って体内の他の部位へ移動して、そこで腫瘍(転移性腫瘍)を形成します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類の腫瘍です。例えば、網膜芽細胞腫が骨に転移した場合、骨にできたがん細胞は、実際は網膜芽細胞腫の細胞です。この疾患は転移性網膜芽細胞腫であり、骨がんではありません。

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進行性または再発網膜芽細胞腫

進行性 網膜芽細胞腫は、治療に反応しない網膜芽細胞腫です。反対に、がんは増殖したり、拡がったり、悪化したりします。

再発網膜芽細胞腫とは、治療後に再発した(再び現れた)がんのことをいいます。再発は、眼球内や眼球周辺の組織に起こることもあれば、体の他の部位に起こることもあります。

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治療選択肢の概要

網膜芽細胞腫の患者さんには様々な治療法が存在します。

網膜芽細胞腫の患者さんは、様々な治療を受けることができます。そのなかには標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。

小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

網膜芽細胞腫の小児の治療では、小児がんの治療に精通した医療提供者で構成されるチームによって治療計画が作成されるべきです。

治療の目標は、お子さんの命を救うこと、視力を維持し眼を守ること、および重篤な副作用を防ぐことです。この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が統括します。小児腫瘍医は、小児の眼のがんの治療に精通し、特定の医療分野を専門とした他の医療提供者と協力しながら治療に取り組んでいきます。網膜芽細胞腫の治療に豊富な経験をもつ小児 眼科医(子供を対象とした眼科の医師)の他に、以下のような専門家が治療に参加することもあります:


がんの治療のなかには、治療が終わってから何ヵ月または何年もたって副作用が現れるものがあります。

がん治療による副作用のうち、治療中またはその後に始まり、何ヵ月または何年も続くものは、晩期障害と呼ばれます。網膜芽細胞腫治療の晩期障害には以下のようなものがあります:


  • はっきり見えにくい、聞こえにくい、または眼球摘出後であれば眼球周囲の骨の形やサイズの変化といった身体的障害。

  • 気分、感情、思考、学習、記憶における変化。

  • 二次がん(新たに発生した別の種類のがん)で、肺がん膀胱がん骨肉腫軟部肉腫、または黒色腫など。

以下のリスク因子は他のがんの発生リスクを高める可能性があります:


  • 遺伝性の網膜芽細胞腫を患っている。

  • 過去の放射線療法による治療(特に1歳以前)。

  • 以前に二次がんの病歴があること。

がんの治療によってお子さんに生じうる影響について担当医とよく相談することが重要です。そのため、晩期障害の診断や治療に精通した医療専門家による定期的な経過観察が重要です。詳しい情報については、PDQ小児がん治療の晩期障害に関する要約をご覧ください。

標準治療としては、以下の6種類が用いられています:
手術(眼球摘出術)。

眼球摘出術は、眼球全体と視神経の一部を摘出する手術です。摘出後の眼球を顕微鏡を用いて観察して、他の部位へのがんの拡がりを疑わせるような徴候がないかを調べます。眼球摘出術は、視力温存の可能性がほとんどないかゼロであり、さらに腫瘍が大きいか、治療に反応しないか、治療後に再発した場合に実施されます。このような患者さんは義眼を使用してもらいます。

2年以上にわたって綿密な経過観察を行い、手術した眼の周辺に再発の徴候がないか調べるとともに、もう一方の眼も検査する必要があります。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法には2種類のものがあります:


  • 外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。特定の方法で放射線療法を実施すると、周辺の健康な組織の損傷を防ぐことができます。こうした放射線療法には以下の種類があります:
    • 強度変調放射線療法(IMRT):IMRTは三次元(3D)放射線療法の一種で、コンピュータを駆使して腫瘍の大きさと形状を示す映像を作成し、それを利用するもの。照射幅の小さな放射線ビームが様々な角度から様々な強度で腫瘍に照射されます。

    • 定位放射線治療:放射線療法中に頭部が動かないよう、頭蓋骨に硬いフレームを取り付けます。装置から腫瘍に直接放射線が照射されます。放射線の総線量は、少線量ごとに数日間に分けて照射されます。この手法は、定位体外照射療法や定位放射線治療とも呼ばれます。

    • 陽子線治療:陽子線治療は高エネルギー外照射療法の一種です。放射線療法用の装置を用いて、陽子(正の電荷を帯びた目に見えない微小粒子)の流れをがん細胞に当てて殺傷します。この種の療法により、正常な周辺組織の損傷が抑えられます。


  • 内照射療法は、放射性物質を針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの中に封入し、それをがん組織の内部または周辺に直接留置する方法です。特定の方法で放射線療法を実施すると、健康な組織の損傷を防ぐことができます。こうした内照射療法には以下の種類があります:
    • プラーク放射線療法:プラークと呼ばれる円盤の片面に放射性シードを取り付け、それを眼球壁の腫瘍付近の外表面上に直接設置する方法。シードの取り付けられた面が眼球側に向けられ、ここから腫瘍に向けて放射線が照射されます。このプラークは放射線から付近の組織を保護する役割も果たしています。

      眼に対するプラーク放射線療法;図は眼の断面図を示している。拡大図は放射性シードが付いたプラークを示す;シードをがんに向けてプラークを眼の外側に取り付けている。他に、強膜、脈絡膜、網膜、視神経も示している。
      
      


      眼に対するプラーク放射線療法。眼の腫瘍の治療に用いられる放射線療法の一種です。プラークと呼ばれる薄い金属片(通常は金)の片面に放射性シードが取り付けられています。このプラークを眼球壁の外面に縫い付けます。シードから照射される放射線によって、がんを死滅させます。通常の治療ではプラークを数日間そのままにしておいた後、除去します。





放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期、さらに他の治療に対するがんの反応に応じて異なります。網膜芽細胞腫の治療には外照射療法と内照射療法が用いられます。

凍結療法

凍結療法は、装置を用いて異常組織を凍結し破壊する治療法です。この治療法は凍結手術とも呼ばれます。

温熱療法

温熱療法は、熱を利用してがん細胞を破壊する治療法です。温熱療法では、レーザービームを用いて、拡張させた瞳孔を通して照射したり、眼球の外側に照射したりする場合があります。小さい腫瘍では温熱療法を単独で使用する場合もあれば、大きな腫瘍では化学療法と併用する場合もあります。このような治療法は、レーザー療法とも呼ばれます。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法の実施方法は、がんの病期と体内の位置によって異なります。

化学療法には、以下のように、様々な種類があります:


  • 全身化学療法:化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します。全身化学療法は、腫瘍を縮小させ(ケモリダクション)、眼球を摘出する手術を避けるために実施されます。ケモリダクションの後に実施するその他の治療法としては、放射線療法、凍結療法、レーザー治療、または局所化学療法などが考えられます。初回治療後に残存するがん細胞を殺傷する目的で、あるいは眼の外に生じた網膜芽細胞腫の患者さんに対して、全身化学療法を実施することもあります。初回治療後にがんが再発するリスクを低減させるために実施する治療は、補助療法と呼ばれます。

  • 局所化学療法:脳脊髄液内(髄腔内化学療法)や臓器内(眼球など)、または体に薬剤を直接注入して行われる化学療法では、その領域のがん細胞に薬が集中的に作用します。網膜芽細胞腫の治療では、いくつかの種類の局所化学療法が使用されます。
    • 眼動脈注入化学療法:眼動脈注入化学療法では、抗がん剤を眼に直接投与します。眼につながっている動脈の中にカテーテルを挿入し、そのカテーテルを介して抗がん剤を投与します。薬剤を投与した後、動脈の中に小さなバルーンを挿入して動脈を遮断し、抗がん剤の大半が腫瘍の近くにとどまるようにすることがあります。この種の化学療法は、腫瘍が片眼のみにある場合の初回治療として、または腫瘍が他の種類の治療に反応を示さない場合に実施されることがあります。眼動脈注入化学療法は、網膜芽細胞腫の専門治療センターで実施されます。

    • テノン嚢下化学療法:テノン嚢下化学療法とは、眼球背部の筋肉と神経を包んでいるのすぐ内側に薬物を注入する治療法です。この場合、通常は眼球を摘出する手術を避けるために、全身化学療法と局所療法(放射線療法、凍結療法、または温熱療法など)を併用します。

    • 硝子体内化学療法:硝子体内化学療法では、眼内の硝子体液に直接抗がん剤を注入します。硝子体液に転移し、治療に反応しないか治療後に再発したがんの治療に用いられます。


詳しい情報については、網膜芽細胞腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。

幹細胞救援を伴う大量化学療法

幹細胞救援を伴う大量化学療法は、高用量の化学療法を実現する手段で、このようながん治療によって破壊された造細胞を外部から補充します。まず患者さん自身から採取した血液や骨髄から幹細胞(成熟前の血液細胞)を取り出して、それを凍結保存しておきます。そして化学療法の終了後に、保存していた幹細胞を解凍して、これを点滴によって患者さんの体内に戻します。こうして再注入された幹細胞が血液細胞に成長することにより、血液の機能が回復していきます。

詳しい情報については、網膜芽細胞腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のウェブサイトから入手することができます。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。詳しくは、治療選択肢のセクションにある現在進行中の治療臨床試験へのリンクを参照してください。そこで検索された情報はNCIの臨床試験一覧のものです。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査のなかには、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、お子さんの状態の変化やがんの再発の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

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網膜芽細胞腫の治療選択肢

片側性または両側性網膜芽細胞腫の治療

眼球を温存できると予想される場合には以下のような治療法があります:


腫瘍が大きく、眼球を温存できないと予想される場合には以下のような治療法があります:


  • 手術眼球摘出術)。手術後にがんが体内の別の場所に拡がるリスクを減らすために、全身化学療法を実施することがあります。

網膜芽細胞腫が両眼にみられる場合、腫瘍の大きさおよび眼球を温存できるかどうかによって、各眼に対する治療が異なることがあります。通常、全身化学療法の用量は、より多くのがんが生じている眼を基準として決定します。

NCI支援のがん臨床試験リストから、眼球内網膜芽細胞腫の患者さんを現在受け入れている臨床試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験の場所、治療のタイプ、薬剤の名前など、他の検索要素を用いて絞り込み検索を行うと、より具体的な結果が得られます。お子さんに適した臨床試験については、担当の医師にご相談ください。米国国立がん研究所(NCI)のウェブサイトから臨床試験についての一般的な情報をご覧いただけます。

眼球外網膜芽細胞腫の治療

眼球の周辺に拡がった眼球外 網膜芽細胞腫の治療法には以下のようなものがあります:


脳にまで拡がった眼球外網膜芽細胞腫の治療法には以下のようなものがあります:


化学療法、放射線療法、幹細胞救援を伴う大量化学療法のいずれかによる治療が、眼球外網膜芽細胞腫の患者さんの生存率を改善するかどうかは不明です。

三側性網膜芽細胞腫の治療法には以下のようなものがあります:


  • 全身化学療法後に、幹細胞救援を伴う大量化学療法。

  • 全身化学療法後に、手術と放射線療法。

体の他の部位にまで拡がった網膜芽細胞腫の治療法には以下のようなものがあります:


  • 化学療法後に、幹細胞救援を伴う大量化学療法。

NCI支援のがん臨床試験リストから、眼球外網膜芽細胞腫の患者さんを現在受け入れている臨床試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験の場所、治療のタイプ、薬剤の名前など、他の検索要素を用いて絞り込み検索を行うと、より具体的な結果が得られます。お子さんに適した臨床試験については、担当の医師にご相談ください。米国国立がん研究所(NCI)のウェブサイトから臨床試験についての一般的な情報をご覧いただけます。

進行性または再発網膜芽細胞腫の治療

進行性または再発 眼球内 網膜芽細胞腫の治療法には以下のようなものがあります:


進行性または再発眼球外網膜芽細胞腫の治療法には以下のようなものがあります:


NCI支援のがん臨床試験リストから、再発網膜芽細胞腫の患者さんを現在受け入れている臨床試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験の場所、治療のタイプ、薬剤の名前など、他の検索要素を用いて絞り込み検索を行うと、より具体的な結果が得られます。お子さんに適した臨床試験については、担当の医師にご相談ください。米国国立がん研究所(NCI)のウェブサイトから臨床試験についての一般的な情報をご覧いただけます。

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本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、網膜芽細胞腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board. PDQ Retinoblastoma Treatment. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: http://www.cancer.gov/types/retinoblastoma/patient/retinoblastoma-treatment-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389197]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

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