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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

化学療法と頭頸部放射線療法の口腔合併症(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2016-01-22
    翻訳更新日 : 2017-02-17

PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Board

 このPDQがん情報要約では、化学療法と頭頸部放射線療法の口腔合併症の原因と治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

 PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

放射線療法の口腔合併症 口腔乾燥症 骨壊死

口腔合併症についての一般的な情報

がんの患者さん、特に頭頸部がんの患者さんでは、口腔合併症の発生が多くみられます。

合併症とは、病気に罹患している間や処置または治療の間、あるいはそれらが終わった後に発生する新たな医学的問題で、回復に悪影響を及ぼします。この合併症は、病気または治療による副作用として現れる場合や、別の原因によって生じる場合があります。口腔合併症は口に影響を及ぼします。

がんの患者さんは、次のようないくつかの理由で、口腔合併症の高いリスクを有しています。


  • 化学療法放射線療法により、新しい細胞の増殖が遅くなったり停止したりします。

      これらは、がん細胞のような増殖の速い細胞の増殖を遅らせる、あるいは阻止するがん治療法です。しかし、口腔粘膜の正常細胞も増殖の速い細胞であるため、抗がん治療によって増殖が妨げられます。すると、口腔組織が新しい細胞を作って自己修復する働きが鈍化してしまいます。


  • 放射線療法は、口腔組織、唾液腺、骨などに直接的な損傷を与え、それらを破壊する場合があります。

  • 化学療法や放射線療法は、口腔内に存在する細菌の正常なバランスを崩します。

      口内には多種多様な細菌が存在しています。そのうちの一部は有益で、一部は有害です。化学療法と放射線療法によって、口腔粘膜や唾液を分泌する唾液腺に変化が生じることがあります。その結果、場合によっては、細菌の健康的なバランスが崩れてしまいます。このような変化によって、口内炎、口腔感染症、虫歯などが引き起こされることがあります。


本要約は、化学療法と放射線療法によって生じた口腔合併症について書かれたものです。

口腔合併症の予防と管理は、患者さんががん治療を継続し、生活の質を良好に保つために有用です。

口腔合併症のために治療の用量や線量を減らしたり、治療を中止したりすることが必要な場合もあります。がん治療の開始前に予防的なケアを実施する、または症状が現れたらすぐに問題を治療するといった方法で、口腔合併症を軽症に留めることが可能です。合併症が少なければ、がん治療はより効果的になり、患者さんの生活の質も向上すると考えられます。

頭頸部に対する治療を受けた患者さんは、医師と専門家から成るチームが策定したケアを受けるべきです。

口腔合併症を管理するために、腫瘍医は患者さんのかかりつけの歯科医師と緊密に協力して医療を行うことになりますが、特別な訓練を受けた他の医療専門家に患者さんを紹介する場合もあります。このような場合に考えられるのは、以下のような専門家です:


口腔ケアと歯科治療の目的は、次のようにがん治療前、治療中、治療後で異なります:


  • がん治療の実施前の目標は、その時点で存在している口腔の問題を治療してがん治療に対する準備を整えることです。

  • がん治療中の目標は、口腔合併症を予防し、発生した問題を管理することです。

  • がん治療後の目標は、歯と歯ぐきを健康に保ち、がんとがん治療の長期的な副作用を管理することです。

がん治療によって生じる口腔合併症のうち、よく見られるものは以下の通りです:


  • 粘膜炎(口腔内の粘膜に起きる炎症)。

  • 感染症。

  • 唾液腺の問題。

  • 味覚の変化。

  • 痛み。

これらの合併症は脱水栄養失調など他の問題につながることがあります。

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口腔合併症とその原因

がん治療は、口腔と喉の問題を引き起こすことがあります。
化学療法の合併症

化学療法により生じる口腔 合併症には、以下のものがあります:


放射線療法の合併症

頭頸部への放射線療法により生じる口腔合併症には、以下のものがあります:


  • 口腔内粘膜の線維化線維性 組織の増殖)。

  • 虫歯と歯周病。

  • 放射線照射領域の組織崩壊。

  • 放射線照射領域の骨破壊。

  • 放射線照射領域の筋肉線維化。

合併症は放射線療法でも化学療法でも起こることがあります。

よくみられる口腔合併症の中には、放射線療法でも化学療法でも起こりうるものがあります。具体的には以下のものがあります:


  • 口腔内の粘膜に起こる炎症。

  • 口腔内の感染や、それが血流に乗って全身に拡がり生じる問題。細菌が体中の細胞に到達し、影響が及ぶ可能性があります。

  • 味覚の変化。

  • ドライマウス。

  • 痛み。

  • 小児における歯の発育状況の変化。

  • 食事ができなくなることによる栄養失調(健康に必要な栄養素が不足している状態)。

  • ものが飲めなくなることによる脱水(健康に必要な水分が不足している状態)。

  • 虫歯と歯周病。

口腔合併症は治療自体から(直接的に)生じることもあれば、治療の副作用から(間接的に)生じることもあります。

放射線療法は、口腔組織、唾液腺、骨に直接的な損傷を与える場合があります。治療部位には瘢痕や萎縮が生じることがあります。 全身照射では、唾液腺に永久的な損傷が生じることがあります。これにより、味覚に変化が生じたり、ドライマウスになったりすることがあります。

治癒の遅れや感染症は、がん治療に伴う間接的な合併症といえます。化学療法と放射線療法のいずれも細胞の分裂を止めることがあり、それにより口腔内の治癒が遅れる場合があります。化学療法は白血球の数を減らし、免疫系(感染や疾患に抵抗する働きのある臓器や細胞)の機能を低下させることがあります。そのため、感染症に罹患しやすくなります。

合併症は急性(短期間)の場合と慢性(長期間)の場合があります。

急性合併症とは、がん治療の最中に発生し、その後消失するものをいいます。化学療法による合併症は、急性で治療終了後には完治するのが通常です。

慢性の合併症は、治療終了後、数ヵ月~数年間持続するか、そのくらいの期間が経過してから発生する障害です。放射線療法では、急性の合併症が発生する場合があるほか、組織が永続的な損傷を受けて生涯にわたる口腔合併症が生じるリスクもあります。頭頸部に対する放射線療法終了後に、以下のような慢性の合併症が持続することがあります:


  • ドライマウス。

  • 虫歯。

  • 感染症。

  • 味覚の変化。

  • 組織や骨の喪失による口腔と顎の問題。

  • 皮膚と筋肉における良性腫瘍の増殖による口腔と顎の問題。

口腔手術または他の歯科処置によって、頭頸部への放射線療法を受けた患者さんに問題が発生することがあります。担当の歯科医師に、あなたの病歴と以前に受けたがん治療について確実に伝えるようにしてください。

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化学療法や放射線療法の開始に先立つ口腔合併症の予防と治療

がん治療が開始される前に口腔の問題を発見し治療しておくと、口腔合併症の予防につながり、発生した場合も症状を軽くすることができます。

虫歯の穴、歯の破損、被せ物や詰め物のゆるみ、歯周病などの問題は、がん治療の間に悪化したり問題を引き起こしたりすることがあります。口腔内には細菌が生息していますが、免疫系の働きが低下しているときや白血球数が減少している場合には、それらの細菌が感染症を引き起こすことがあります。がん治療の開始前に歯の問題を治療しておくと、口腔 合併症の発生頻度が減少し、発生しても軽症で済むと考えられます。

口腔合併症の予防法には、健康的な食事、適切な口腔ケア、歯科検診などがあります。

口腔合併症の予防策には以下のものがあります:


  • バランスのとれた食事を摂る。 健康的な食事は、がん治療のストレスに耐えるための体力を養う、必要なエネルギーを維持する、感染症から身を護る、組織の再生を促す、などの点で有益です。

  • 口内と歯を清潔に保つ。虫歯、口内炎、感染症などの予防に有効です。

  • 徹底した口腔検診を受ける。

     患者さんのかかりつけの歯科医が、がん治療チームに参加することが望まれます。がん治療の口腔合併症に対する治療経験を持つ歯科医を選択することも重要です。がん治療開始の1ヵ月前までに口腔衛生の検査を受けておけば、歯科処置が必要になっても、その処置で生じた損傷は1ヵ月の間に治癒します。歯科医は感染症や虫歯のリスクのある歯を治療します。こうすることで、がん治療中に歯科治療を実施せずにすみます。予防的ケアは、頭頸部への放射線療法でよくみられる合併症であるドライマウスの軽減にも有用です。

     予防のための口腔衛生検査では以下のような点について調べていきます:


    • 口内炎または口腔感染症。

    • 虫歯。

    • 歯肉疾患。

    • 義歯(入れ歯)の不適合。

    • 下顎の運動の異常。

    • 唾液腺の異常。


大量化学療法や幹細胞移植、放射線療法を受ける患者さんでは、治療開始前に適切な口腔ケアの計画を立てておくべきです。

口腔ケアを計画する目的は、がん治療の最中に合併症の原因となりうる口腔疾患を発見して治療しておくことと、治療中と回復期を通じて口腔ケアを継続することです。移植の段階ごとに様々な口腔合併症が発生します。そのような副作用の重症化を予防または緩和するために、前もって対策を講じておくべきでしょう。

放射線療法中の口腔ケアは以下の因子に左右されます:


  • 個々の患者さんのニーズ。

  • 放射線線量

  • 治療を受けた部位。

  • 放射線治療の実施期間。

  • 発生する合併症の種類。

頭頸部がんの患者さんは、禁煙することが重要です。

タバコの喫煙を継続すると、回復が遅れることがあります。さらに頭頸部がんの再発リスクや、二次がんの発生リスクが高くなることもあります。(詳しい情報については、PDQがん医療における喫煙に関する要約をご覧ください。)

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化学療法や放射線療法の実施中と実施後に生じる口腔合併症の管理

日常の口腔ケア
歯の衛生状態を良好に保つことは、合併症の予防や減少に役立ちます。

がん治療の間にも、口腔衛生を密接に監視し続けることが重要です。こうした監視は、できるだけ早く合併症を予防、発見、治療するために有用です。がん治療の実施中と実施後に口腔、歯、歯ぐきを清潔に保つことで、虫歯、口内炎、感染症などの合併症を減らすことができます。

がん患者さんが行う毎日の口腔ケアには、口腔内を清潔に保つことのほか、口腔粘膜の組織を刺激しないようにすることも含まれます。

化学療法放射線療法を受けている間に行う毎日の口腔ケアには、以下のようなものがあります:

歯磨き
  • 1日に2回ないし3回、それぞれ2分ないし3分ずつ、毛がやわらかい歯ブラシで歯と歯ぐきを磨く。歯と歯ぐきの境目を磨き、頻繁にうがいをするよう注意する。

  • 必要であれば、15~30秒ごとに歯ブラシをお湯ですすぎ、毛をやわらかくする。

  • やわらかい毛の歯ブラシが使用できない場合に限り、発泡歯ブラシを使用する。歯磨きを1日に2回ないし3回行い、抗菌性のうがい薬を使用する。頻繁にうがいをする。

  • 使用後は歯ブラシを空気乾燥させる。

  • やさしい味のフッ素入り歯磨き粉を使う。特にミント風味など、香料によっては口腔内が刺激されることがある。

  • 歯磨き粉で口の中がヒリヒリするなどの場合は、小さじ1/4杯の塩を1カップ(約240cc)の水に溶かした食塩水で代用する。

すすぎ
  • 口腔内のヒリヒリする痛みを軽減するには、2時間おきに口をすすぐ。小さじ1/4杯の塩と小さじ1/4杯の重曹を1クォート(約0.95L)の水に溶かす。

  • 歯周病がある場合には、1日に2回から4回、抗菌作用のある洗浄液ですすぐ。その場合は1~2分間かけてすすぐ。

  • ドライマウスがある場合には、食後の歯の清掃としては口をすすぐだけでは不十分な場合もある。場合により歯磨きと歯間掃除が必要となる。

歯間掃除
    1日1回、デンタルフロスを用いて歯の間をきれいにする。
唇のケア
    ラノリンを含むクリームなど、唇ケア製品を使用して乾燥とひび割れを予防する。
義歯のケア
  • 義肢は毎日磨き、洗浄する。やわらかい毛の歯ブラシか、義歯洗浄用の歯ブラシを使用する。

  • かかりつけの歯科医が推奨する義歯クリーナーで洗浄する。

  • 装着していないときは、義歯を乾燥させないように保管する。水に漬けておくか、かかりつけの歯科医が推奨する漬け置き洗浄剤に浸しておく。義歯の変形を招くため、湯は使用しないこと。

大量化学療法中や幹細胞移植中の特別な口腔ケアについては、本要約の大量化学療法と幹細胞移植による口腔合併症の管理のセクションをご覧ください。

口腔粘膜炎
粘膜炎とは口腔内の粘膜に起きる炎症のことです。

「口腔粘膜炎」と「口内炎」という用語は、しばしば同じような意味で用いられていますが、それぞれ別の状態を指す用語です。


  • 口腔粘膜炎は口腔内の粘膜に起きる炎症です。口腔内全体にわたって、赤い熱傷の様なただれ、もしくは潰瘍のようなただれとして現れてくるのが通常です。

  • 口内炎は口腔内の粘膜と他の組織に起きる炎症です。歯ぐきや舌、口蓋、口腔底、唇および頬の内側に起こります。

粘膜炎は放射線療法でも化学療法でも起こることがあります。


  • 化学療法に伴う粘膜炎は、感染が起きなければ、通常2~4週間で自然に治癒します。

  • 放射線療法に伴う粘膜炎は、治療期間の長さによって異なりますが、通常は6~8週間続きます。

  • 大量化学療法や幹細胞移植を実施するための化学放射線療法を受ける患者さんでは、粘膜炎は治療開始後7~10日間で発生し、治療終了後の約2週間にわたって持続します。

フルオロウラシルの投与を受ける患者さんは、投与5分前から30分間、氷を口に含んでおくと、粘膜炎の予防に効果があります。大量化学療法と幹細胞移植を受けている患者さんでは、粘膜炎を予防するため、または長期化を防ぐために薬剤が投与される場合があります。

粘膜炎は以下の問題を引き起こすことがあります:


  • 痛み。

  • 感染症。

  • 出血(化学療法中の患者さんの場合)。放射線療法を受けている患者さんには、通常、出血は起こりません。

  • 呼吸と摂食の障害。

化学療法や放射線療法の実施中における粘膜炎のケアでは、口腔内を清潔に保ち、痛みの緩和を行います。

粘膜炎に対しては、放射線療法が原因の場合でも化学療法が原因の場合でも、同じような治療法が用いられます。治療法は、白血球数と粘膜炎の重症度に応じて異なります。以下では、化学療法、幹細胞移植、放射線療法の実施中に生じた粘膜炎の治療法について説明します:

口腔洗浄


  • 4時間毎、ならびに就寝時に歯と口腔の洗浄を行う。粘膜炎が悪化している場合は、洗浄回数を増やす。

  • やわらかい毛の歯ブラシを使う。

  • 歯ブラシを頻繁に交換する。

  • 可溶性の潤滑ゼリーを使用して、口腔内の湿り気を保つ。

  • 刺激の少ない洗浄液か真水を使う。頻繁に口をすすぐようにすれば、口腔内の食べかすや細菌が除去され、炎症箇所の硬化が予防され、さらに歯ぐきと口腔粘膜の炎症箇所に水分が供給されて炎症が和らぎます。

  • 口内炎が硬くなってしまった場合には、以下のような洗浄水の利用が可能:
    • 3%過酸化水素水と同量の水または塩水の混合液。食塩水を作るには、小さじ1/4杯の塩を1カップ(約240cc)の水に溶かす。

    この洗浄水は粘膜炎の治癒を妨げてしまうため、2日以上は使わないようにしてください。

粘膜炎痛の緩和


  • 痛みに対しては外用薬の使用を試してみる。歯ぐきや口腔粘膜に薬剤を塗る前に、口の中をすすいでおきます。細かい食べかすなどを除去するために、食塩水に浸したガーゼで口腔内と歯を軽く拭いておきます。

  • 外用薬が効かない場合は、鎮痛剤で痛みを緩和できることがある。ただし、化学療法を受けている患者さんでは出血のリスクが高まるため、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID、アスピリン型の鎮痛剤)は使用してはなりません。

  • 放射線療法の実施中に亜鉛の栄養補助食品を服用することで、皮膚炎(皮膚の炎症)に加えて粘膜炎による痛みの治療にも有用となることがある。

  • アルコールを含まないポビドンヨード口腔洗浄剤が放射線療法によって生じる口腔粘膜炎の遅滞または減少に有効となる可能性がある。

痛みのコントロールに関する詳しい情報については、本要約の痛みのセクションをご覧ください。

痛み
がん患者さんの口腔内の痛みには、多くの原因が考えられます。

がん患者さんの痛みには、次のような原因が考えられます:


  • がん自体。

  • がん治療の副作用

  • がんとは無関係の別の病態

口腔内の痛みの原因は多岐にわたることがあるため、慎重に診断することが重要です。以下の結果が考慮されます:


がん患者さんの口腔内の痛みが、がん自体により生じる場合があります。

次のように、がんは様々な形で痛みを引き起こすことがあります:


  • 腫瘍が増殖して周辺領域を圧迫し、神経が影響を受けて炎症が生じます。

  • 白血病リンパ腫は、体全体に拡がっており、口腔内の感覚に影響を与える場合があります。多発性骨髄腫は、歯に影響を与えることがあります。

  • 脳腫瘍は、頭痛を引き起こす場合があります。

  • がんが体の別の場所から頭頸部に拡がって、口腔に痛みが生じる場合があります。

  • がんの種類によっては、がんの近くではなく、体の別の場所に痛みを感じる場合があります。このような痛みは関連痛と呼ばれます。鼻、咽頭に生じるがんは、口や顎に関連痛を引き起こすことがあります。

口腔の痛みは、治療の副作用として現れる場合があります。

口腔粘膜炎は、放射線療法や化学療法で最も多くみられる副作用です。口腔粘膜炎が治癒した後でも粘膜の痛みがしばらく続くことがよくあります。

手術で骨、神経、組織が損傷を受け、痛みが生じる場合があります。ビスフォスフォネート(骨痛の治療に用いられる薬物)は、骨を破壊することもあります。この副作用は、抜歯などの歯科処置の後に最もよく発生します。(詳しい情報については、本要約の化学療法や放射線療法とは無関係の口腔合併症のセクションをご覧ください。)

移植を受けた患者さんには、移植片対宿主病(GVHD)のリスクが生じます。この疾患は粘膜の炎症と関節痛を引き起こすことがあります。(詳しい情報については、本要約の大量化学療法と幹細胞移植による口腔合併症の管理のセクションをご覧ください。)

特定の抗がん剤は口腔の痛みの原因になります。

痛みの原因が抗がん剤の場合は、その使用を中止することで痛みも治まるのが通常です。がんの治療中に口腔内に生じる痛みの原因は多岐にわたることから、慎重に診断することが重要です。この場合には、病歴聴取、身体診察、歯科検診、歯のX線撮影などが行われます。

患者さんによっては、化学療法が終了した数週間~数ヵ月後に、歯の過敏症状が現れます。その場合はフッ素治療の実施やフッ素入り歯磨き粉の使用によって、その不快感を和らげることができます。

歯ぎしりが原因で、歯や顎の筋肉に痛みが生じることがあります。

歯ぎしりや歯を食いしばるくせがある患者さんでは、歯や顎の筋肉に痛みが生じることがありますが、この原因は主にストレスや不眠です。治療法には、筋肉弛緩薬や不安の治療薬の使用、理学療法(温湿熱療法、マッサージ療法、ストレッチ)、就寝中のマウスガード装着などがあります。

痛みのコントロールは、患者さんの生活の質の改善に役立ちます。

口や顔の痛みは、食事や会話の他に、頭、首、口、喉などを使う多くの動作に影響する可能性があります。頭頸部がんの患者さんは、ほとんどが痛みを訴えます。医師は評価法を用いて痛みを表すよう、患者さんに依頼する場合があります。例えば、0~10の段階で、10が最も強い痛みを表す尺度が用いられます。痛みの感覚の程度は、様々な物事に影響を及ぼします。患者さんが痛みについて担当医と相談することが大切です。

管理できない痛みは、患者さんの生活全体に悪影響を及ぼします。痛みは不安や抑うつを招き、痛みのために仕事ができなくなる、あるいは友人や家族との生活を楽しめなくなる患者さんもいます。また、痛みががんからの回復を遅らせたり、新たな身体的問題を引き起こしたりすることもあります。がんの痛みの管理は、患者さんが日常を楽しみ、よりよい生活の質を享受するために有益です。

口腔粘膜炎の痛みに対しては、一般的に局所治療が行われます。口腔粘膜炎の痛みの緩和に関する情報については、本要約の口腔粘膜炎のセクションをご覧ください。

他の鎮痛剤が使用されることもあります。時には、鎮痛剤が1種類では足りない場合があります。患者さんによっては、筋肉弛緩薬、不安やうつ病の薬、あるいはてんかん発作の予防薬などが有用です。重度の痛みに対しては、オピオイド処方されることもあります。

以下のような非薬物治療が有効な場合もあります:


感染症
口腔粘膜が損傷を受けたり免疫系の機能が弱まったりすると、感染症が発生しやすくなります。

口腔粘膜炎が起きると、口腔粘膜が破壊されるために細菌やウイルス血液中に入り込みやすくなります。また、化学療法によって免疫系の機能が弱まると、口腔内の善玉菌すら感染症の原因になります。病院や他の場所に存在する細菌も感染を引き起こします。

さらに白血球数が減少すると、感染しやすくなり、より重症化します。そのため、慢性的に白血球数が少ない患者さんでは、重篤な感染症を起こすリスクが高くなります。 また、頭頸部に対する放射線療法を受けている患者さんではドライマウスの発生がよくみられますが、これも口腔内の感染症リスクを高める要因です。

化学療法や放射線療法の開始に先立って口腔ケアを実施すれば、口腔、歯、歯肉に起こる感染症のリスクを低減することができます。

感染症は細菌や真菌、ウイルスにより生じると考えられます。

細菌感染症

大量化学療法を受けている歯周病の患者さんに対する細菌感染症の治療法には以下のようなものがあります:


  • 過酸化水素を含有する薬用の口腔洗浄液の使用。

  • 歯磨きと歯間掃除。

  • 義歯の装着をできるだけ控える。

真菌感染症

通常、口の中には、口腔内に生息可能な真菌が何の問題も引き起こすことなく存在しています。しかし、この口腔内の真菌が増えすぎると、問題が発生して治療が必要になることがあります。

化学療法の実施中で白血球数が低くなった患者さんには、抗生物質ステロイド薬がしばしば使用されます。これらの薬を使用すると、口腔内の細菌バランスが変化するため、真菌の異常増殖が起きやすくなってしまいます。真菌感染症は、放射線療法を受けている患者さんでもよくみられます。 がん治療を受けている患者さんには、真菌感染症の予防のために薬剤が投与されることがあります。

カンジダ症は、真菌感染症の一種で、特に患者さんが化学療法と放射線療法の両方を受けているときによく発生します。灼熱痛と味覚変化などの症状がみられます。口腔粘膜にのみ発生している真菌感染症に対する治療では、口腔洗浄液や、抗真菌薬を含有するトローチなどが用いられます。義歯や歯科器具の洗浄と口腔内のすすぎには、必ず抗真菌作用のある洗浄液を使用してください。洗浄液やトローチで真菌感染症が良くならない場合は、薬剤が用いられることもあります。薬剤は真菌感染症の予防にも使用されます。

ウイルス感染症

化学療法を受けていて、特に幹細胞移植により免疫系の機能が低下している患者さんでは、ウイルス性感染のリスクが高くなります。ヘルペスウイルス感染症やその他の潜伏性ウイルス(体内に存在してはいるが、活動性もなければ症状も引き起こしていないウイルス)が再び現れる場合があります。こうした感染症の早期発見と早期治療が重要です。治療に先立つ抗ウイルス薬の投与により、ウイルス感染のリスクを下げることができます。

出血
抗がん剤が原因で血液が凝固しにくくなり、出血が生じる場合があります。

大量化学療法と幹細胞移植を実施すると、血液中の血小板数が通常より少なくなることがあります。これにより、体の血液凝固過程に問題が発生する場合があります。出血は軽度(小さな赤い斑点が口唇、軟口蓋、口腔底に出現する)の場合もあれば重度の場合もあり、特に歯と歯ぐきの境界部分や口腔内の潰瘍部分から発生します。歯周病にかかっている場合、その箇所で原因もなく出血が起こったり、食事や歯磨き、歯間掃除などの刺激によって出血が起こったりします。血小板数が非常に少ないと、歯ぐきから血液が染み出てくることがあります。

ほとんどの患者さんは、血球数が少なくても安全に歯磨きと歯間掃除を実施できます。

定期的な口腔ケアを継続すると、出血を悪化させうる感染症の予防になります。歯科医師や医師は、血小板数が低下している患者さんに、出血を抑える方法や口腔内を安全に洗浄する方法を説明することができます。

化学療法の実施中に起きた出血の治療法には以下のようなものがあります:


  • 血流量を低下させて、血栓の形成を助ける薬物投与。

  • 外用医薬品などを用いて出血部を覆い密封する。

  • 食塩水と3%過酸化水素水の混合液によるすすぎ。(過酸化水素水の量に対して2~3倍の食塩水を混合)。この用途に使用する食塩水を作るには、小さじ1/4杯の塩を1カップ(約240cc)の水に溶かします。口腔内の創傷の洗浄に有用です。うがいは、血液の凝固を妨げないように慎重に行います。

ドライマウス
ドライマウス(口腔乾燥)は、唾液腺から十分な唾液が分泌されない場合に発生します。

唾液唾液腺で作られます。唾液は味わったり、飲み込んだり、声を出したりするのに必要です。また、歯と歯ぐきの汚れを落とし、口内のが強くなりすぎるのを防ぐことで、感染や虫歯の予防に役立っています。

放射線療法では唾液腺が損傷を受けることがあり、そうなると唾液の分泌量が不足してきます。幹細胞移植に用いられる一部の化学療法は、唾液腺にも損傷を与えることがあります。

十分な唾液が分泌されていないと、口腔は乾燥し不快な状態になります。こうした状態はドライマウス(口腔乾燥症)と呼ばれます。虫歯や歯周病、感染症のリスクが高くなり、生活の質が損なわれます。

ドライマウスの症状には以下のものがあります:


  • 糸を引くような粘稠な唾液。

  • 喉の渇き。

  • 味覚、飲み込み方、しゃべり方の変化。

  • ヒリヒリする痛みや焼けつくような感覚(特に舌)。

  • 唇や口角の切り傷やひび割れ。

  • 舌表面に生じる変化。

  • 義歯の装着困難。

唾液腺は通常、化学療法の終了後に正常に戻ります。

幹細胞移植を実施するための化学療法により生じるドライマウスは、多くの場合に一時的です。唾液腺は多くの場合、化学療法終了後、2~3ヵ月で回復します。

放射線療法では、治療終了後も唾液腺が完全に回復しない場合があります。

一般的に唾液腺が分泌する唾液の量は、頭頸部への放射線療法が開始された後、1週間以内に減少し始めます。治療が継続している間、減少し続けます。乾燥の重症度は、放射線照射量と照射を受けた唾液腺の数に左右されます。

放射線療法後、最初の1年間で唾液腺はある程度まで回復します。しかし、通常は完全には回復せず、特に唾液腺が直接照射を受けた場合は回復が不十分です。一方で直接の照射を受けなかった唾液腺が、損傷を受けた唾液腺の分泌量低下を補うために、以前より多くの唾液を分泌し始める場合もあります。

口腔衛生に注意することで、ドライマウスが原因で起こる口内炎や歯周病、虫歯などを予防することができます。

ドライマウスのケアには以下のようなものがあります:


  • 1日4回以上、口腔と歯の洗浄を行う。

  • 1日1回、歯間掃除を行う。

  • フッ素入りの歯磨き粉を使用する。

  • 1日1回、就寝時に歯磨き後にフッ素入りジェルを塗布する。

  • 1日4~6回、食塩と重曹の混合液(小さじ1/2杯の食塩と小さじ1/2杯の重曹を1カップ[約240cc]の温水に溶かしたもの)で口の中をすすぐ。

  • 砂糖を多く含む食べ物や飲み物を控える。

  • 頻繁に少量の水を口に含み、口腔内の乾燥を和らげる。

歯科医師が実施する治療法には以下のものがあります:


  • 歯のミネラル分を補う薬剤を用いたすすぎ。

  • 口腔内の感染に対処するための洗浄液の使用。

  • 代用唾液の使用や唾液腺による唾液の分泌を促す医薬品の使用。

  • 虫歯予防のためのフッ素治療。

鍼療法もドライマウスの緩和に有用な場合があります。

虫歯

ドライマウスや口腔内細菌のバランスの乱れが起きると、虫歯のリスクが高まります。口腔衛生に注意し、定期的に歯科医によるケアを受けることが、虫歯予防につながります。詳しい情報については、本要約の日常の口腔ケアのセクションをご覧ください。

味覚の変化
化学療法や放射線療法の実施中には、味覚の変化(味覚障害)がよく起こります。

味覚の変化(味覚障害)は、化学療法や頭頸部に対する放射線療法の副作用としてよくみられる症状です。味覚の変化は、味蕾の損傷やドライマウス、感染症、歯科的問題などが原因となって発生します。味を全く感じなくなる場合もあれば、がん治療の開始前とは味の感じ方が変わってしまう場合もあります。放射線療法では、甘味、酸味、苦味、塩味に対する味覚の変化が起こってきます。 化学療法薬は不快な味がする場合もあります。

化学療法を受けた患者さんの大部分と放射線療法を受けた患者さんの一部では、治療終了から数ヵ月が経過すれば、味覚は正常な状態まで回復します。しかし、放射線療法では、多くの患者さんに永続的な味覚障害が生じます。それでもなかには、放射線療法の終了から6~8週間後またはそれ以降に、味蕾が正常な状態まで回復する患者さんもいます。患者さんによっては、硫酸亜鉛の栄養補助食品が味覚の回復に役立つ場合があります。

疲労

大量化学療法や放射線療法を受けているがん患者さんは、頻繁に疲労(活力の欠如)を感じます。がん自体とがん治療のいずれもが、疲労の原因になります。なかには睡眠障害を抱える患者さんもいます。そうした患者さんは、疲労のあまり日常の口腔ケアができなくなり、口腔内の潰瘍や感染症、痛みなどのリスクがさらに高まってしまうことがあります。(詳しい情報については、疲労に関するPDQ要約をご覧ください。)

栄養失調
食欲の喪失が原因で栄養失調に陥ってしまうことがあります。

頭頸部がんの治療を受けている患者さんでは、栄養失調のリスクが高くなります。がん自体や、診断前の不十分な食事のほか、手術、放射線療法、化学療法の合併症から、栄養不足になることがあります。吐き気嘔吐、嚥下障害、口内炎、ドライマウスなどは、患者さんの食欲不振を招きます。食事によって不快感や痛みが生じてくる場合には、生活の質と栄養面の状態がともに低下してしまいます。がんの患者さんが必要な栄養量を確保できるようにするには、以下のような方策が有用です:


  • 食べ物を口に入れてから飲み込むまでの時間が短くなるように、食べ物を細かく刻んだり、挽いたり、混ぜ合わせたりする。

  • 間食を摂ってカロリー栄養分を補う。

  • 高カロリーで高蛋白のものを食べる。

  • 栄養補助食品でビタミン、ミネラル、カロリーを補給する。

治療中や治療後に、栄養カウンセラーに面会することも有用です。

栄養支援の方法には流動食と経管栄養があります。

放射線療法単独での治療を受けている頭頸部がんの患者さんの多くは、軟らかいものであれば食べることができます。しかし、治療が進むにつれて、患者さんの大半が、必要な栄養を含有した高カロリー高蛋白の流動食を取り入れるか、そちらに完全に切り替えることになります。患者さんによっては、または小腸に挿入した管から流動食を流し込む必要があります。化学療法と頭頸部に対する放射線療法を同時に受けている患者さんでは、ほぼ例外なく、3~4週間のうちに経管栄養が必要になります。体重減少が起こる前の治療開始の時点から経管栄養を開始すると有益な結果がもたらされることが、複数の研究で示されています。

通常の経口食の再開は、治療が終了し、照射部位が治癒してからです。言語療法と嚥下治療を行う療法士がチームに参加していると、患者さんは通常の食事を再開しやすくなります。経管栄養は、口からの栄養摂取量が増えるにつれて徐々に量を減らしていき、経口食での栄養摂取が十分な量に達した時点で終了とします。大多数の患者さんが固形食を再開できますが、味覚の変化やドライマウス、嚥下障害などの合併症は、多くの患者さんに残ります。

口と顎のこわばり

頭頸部がんの治療は、顎や口、頸部、舌を動かす機能に悪影響を及ぼすことがあります。その場合には嚥下障害が生じるかもしれません。こわばりには、以下の原因が考えられます:


  • 口腔手術。

  • 放射線療法の晩期障害。放射線療法の終了後に、皮膚、粘膜、筋肉、顎の関節で線維性組織(線維化)が過剰に増殖することがあります。

  • がんとその治療によるストレス。

顎のこわばりは、以下のような重大な健康問題につながることがあります:


  • 普通に食事ができないことによる栄養失調や体重減少。

  • 栄養不足による治癒や回復の遅れ。

  • 歯や歯ぐきを清潔に保つことができないこと、さらに歯の治療を受けることができないことによる歯科疾患。

  • 顎の筋肉を使用しないことによる脆弱化。

  • 会話や食事に問題があることから、他人との社会的な接触を避けることによる情緒障害。

放射線療法により顎のこわばりが生じるリスクは、照射線量が増えるにつれて増加し、放射線療法を繰り返すごとに高まります。一般的にこわばりが最初に発生するのは、放射線治療が終了する前後の時期です。時間が経つにつれて悪化する場合や変わらずに持続する場合のほか、自然に多少の改善がみられることもあります。病状が悪化したり、永続化したりしないように、治療をできるだけ早く開始するべきです。治療法には以下のようなものがあります:


  • 口に装着する医療器具。

  • 鎮痛治療。

  • 筋弛緩薬。

  • 顎の運動。

  • うつ病の治療薬。

嚥下障害
飲み込むときの痛みや飲み込めない状態(嚥下障害)は、がん患者さんでは治療中や治療の前後によくみられます。

頭頸部がんの患者さんでは、嚥下障害の発生が多くみられます。口腔粘膜炎、ドライマウス、皮膚の放射線損傷、感染症、移植片宿主病(GVHD)など、がん治療の副作用は、全て嚥下障害の一因となる可能性があります。

嚥下障害は他の合併症のリスクを高めます。

飲み込めないことから、次のような別の合併症が発生することがあり、患者さんの生活の質をさらに低下させる可能性があります:


  • 肺炎とその他の呼吸障害:嚥下障害がある患者さんは、食べたり飲んだりする際に誤嚥(肺に食物や液体を吸い込むこと)を起こすことがあります。誤嚥は、肺炎や呼吸不全など、重大な病状を引き起こすことがあります。

  • 栄養不良:正常に飲み込めないことから、食事を満足に摂ることが困難になります。栄養失調は、体が健康に必要な栄養を全く摂れない場合に起きます。傷の治癒が遅れ、感染に対して体が対抗できなくなります。

  • 経管栄養の必要性:口から十分な食事ができない患者さんでは、管を通して食べさせる場合があります。医療チームや登録栄養士は、嚥下障害がある患者さんに対して経管栄養の有益性と危険性を説明することができます。

  • 鎮痛薬の副作用:痛みを伴う嚥下の治療に使用されるオピオイドは、ドライマウスや便秘を引き起こす場合があります。

  • 情緒障害:満足に飲食や会話ができないことから、うつ病を発症したり、他人を避けたいという欲求が生じたりする場合があります。

放射線療法が嚥下に影響を及ぼすかどうかは、いくつかの要因によって決まります。

次の因子が、放射線療法後に嚥下障害を起こすリスクに影響すると考えられます:


  • 放射線療法の総線量と治療計画。多くの場合、照射時間が短くて線量が高いほど、副作用が大きくなります。

  • 放射線の照射方法。照射方法によっては、健全な組織への損傷が少なく抑えられます。

  • 化学療法を同時に行うかどうか。同時に行うと副作用のリスクが高まります。

  • 患者さんの遺伝性体質。

  • 患者さんが食事を口から摂っているか、経管栄養のみか。

  • 患者さんが喫煙するかどうか。

  • 患者さんが問題にどの程度よく対処しているか。

嚥下障害は、治療後に消失することがあります。

一部の副作用は、治療が終了してから3ヵ月までに消失し、患者さんは再び正常に飲み込むことができるようになります。しかし、治療によっては永続的な障害や晩期障害が生じる可能性があります。晩期障害は、治療終了後に起こり、長期にわたって継続する健康問題です。以下の病態は、永続的な嚥下障害や晩期障害の原因となる可能性があります:


  • 血管の損傷。

  • 治療箇所における組織の萎縮。

  • リンパ浮腫(体の一部にリンパ液が貯留した状態)。

  • 顎のこわばりを引き起こしうる頭頸部の線維性組織の過剰増殖。

  • 慢性のドライマウス。

  • 感染症。

嚥下障害は専門家チームにより管理されます。

腫瘍医は、頭頸部がんとがん治療による口腔合併症のケアを専門とする他の医療専門家と協力して治療を行います。以下のような専門家と連携します:


  • 言語療法士:言語療法士は、患者さんがどの程度うまく飲み込めているかを評価して嚥下治療を行い、この障害について患者さんにわかりやすく説明します。

  • 栄養士:栄養士は、嚥下障害がある患者さんが健康に必要な栄養を安全に摂取する計画の作成に関与することができます。

  • 歯科専門医:飲み込みが楽になるよう、喪失した歯や口腔内の損傷部分を人工器具と交換します。

  • 心理士:嚥下や食事が満足にできないことに慣れようと苦しい時期を過ごしている患者さんには、心理的なカウンセリングが役立つことがあります。

組織や骨の喪失

放射線療法では、骨の中の細かい血管が壊れることがあります。これにより骨組織が壊死して、骨折や感染につながることがあります。放射線は口腔内の組織にも損傷を与えます。潰瘍が発生して大きくなると、痛みが生じたり感覚が失われたりするほか、感染が起こる場合もあります。

予防的なケアによって、組織や骨の損失を少なくすることが可能です。

組織や骨の喪失を予防したり治療したりする方法には、以下のようなものがあります:


  • バランスのとれた食事を摂る。

  • 取り外し可能な義歯や器具をできる限り短時間だけ装着する。

  • 禁煙する。

  • 禁酒する。

  • 外用の抗生物質を使用する。

  • 処方に従って鎮痛剤を使用する。

  • 口腔と顎の壊死した骨を取り除く手術、もしくは口腔と顎の骨を再建する手術を行う。

  • 高圧酸素療法(創傷を治癒させるために、圧力をかけた酸素を使用する治療法)。

口内炎、ドライマウス、味覚の変化のケアに関する詳しい情報については、PDQ要約のがん医療における栄養をご覧ください。

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大量化学療法と幹細胞移植による口腔合併症の管理

移植を受けた患者さんでは、移植片対宿主病のリスクが高くなります。

移植片対宿主病(GVHD)は、患者さんの組織ドナー骨髄または幹細胞に反応して生じる疾患です。 腔に起きるGVHDの症状には以下のものがあります:


  • 移植の2~3週間後に生じた、赤みを帯び潰瘍が生じている口内炎。

  • ドライマウス。

  • 香辛料、アルコール、香味料(歯磨き粉に含まれるミントなど)などで引き起こされる痛み。

  • 嚥下障害。

  • 皮膚または口腔粘膜のつっぱり感。

  • 味覚の変化。

これらの症状は体重減少や栄養失調につながる可能性があるため、治療を受けることが大切です。口腔のGVHDの治療法には以下のようなものがあります:


大量化学療法や幹細胞移植の実施中には、口腔器具に特別なケアを施す必要があります。

以下では、大量化学療法や幹細胞移植を受けている間に、義歯や歯列矯正装置などの口腔器具のケアを実施し、そうした器具を使用するための指針を示します:


  • 大量化学療法の開始前にブラケット、ワイヤー、保定装置を外しておく。

  • 移植後の最初の3~4週間は、義歯の装着を食事のときだけにする。

  • 義歯は1日に2回磨き、よく洗浄する。

  • 義歯を装着していない間は抗菌性の液剤に浸しておく。

  • 義歯を浸すコップは毎日洗浄し、液剤も毎日取り替える。

  • 口をすすぐ際には義歯や器具を外しておく。

  • 通常の口腔ケアを1日3~4回、義歯やその他の器具を口から外して行う。

  • 口内炎がある場合は、治癒するまで取り外し可能な口腔器具の使用を控える。

化学療法や幹細胞移植の間、歯と歯ぐきのケアを行うことが重要です。

高用量化学療法や幹細胞移植の間に行う口腔ケアの最適な方法について、担当の医師や歯科医師に相談してください。入念な歯磨きや歯間清掃は、口腔組織の感染を防ぐのに有効であると考えられます。以下の方法は、口腔組織の感染を予防し、不快感を軽減するために役立ちます:


  • 1日に2~3回、毛がやわらかい歯ブラシで歯を磨く。歯と歯ぐきの境目を磨くよう注意する。

  • 15~30秒ごとに歯ブラシをお湯ですすぎ、毛をやわらかくする。

  • 歯磨きのときには3~4回、口をすすぐ。

  • アルコール入りのうがい薬は避ける。

  • 香りの強くない歯磨き粉を使う。

  • 使用後は歯ブラシを空気乾燥させる。

  • 担当の医師や歯科医師の指導に従って歯間清掃を行う。

  • 食事後に口腔内を清掃する。

  • 発泡綿棒を用いて舌や口の天井部分を清掃する。

  • 以下の飲食物を避ける:
    • スパイスや酸味の効いた食べ物。

    • 口腔内の粘膜に刺激を与えたり傷をつけたりするおそれのある、チップスなどの「硬い」食べ物。

    • 熱い食べ物や飲み物。


薬物や氷が、幹細胞移植による粘膜炎の治療と予防に用いられることがあります。

口腔が化学療法放射線療法によって損傷を受けている場合は、口内炎を予防し傷を早期に治癒させるために、薬物投与が行われる場合があります。大量化学療法中に氷を口に含んでおくことが、口内炎の予防に役立つ場合があります。

患者さんの免疫系の機能が正常レベルに回復するまで、歯科治療が延期されることもあります。

歯石除去や研磨などの定期的な歯科治療は、移植を受けた患者さんの免疫系の機能が正常レベルに回復するまで控えるべきです。大量化学療法や幹細胞移植の後では、免疫系が回復するまでに6~12ヵ月もかかることがあります。この期間は、口腔合併症のリスクが高い状態が続きます。歯科治療が必要な場合は、抗生物質が投与され、支持療法が行われます。

口腔処置に先立って行われる支持療法には、抗生物質または免疫グロブリンGの投与、ステロイド用量の調節、血小板輸血などがあります。

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二次がんにおける口腔合併症

化学療法移植放射線療法のいずれかによってがんから回復した生存者では、後になってから二次がんを発症するリスクが高くなります。そのなかでも口腔 扁平上皮がんは、移植を受けた患者さんに発生する二次口腔がんのなかで最も多くみられるものです。最も発生しやすい部位は唇と舌です。

白血病リンパ腫の治療を受けた患者さんには、二次がんがよくみられます。自身の幹細胞を用いて幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫の患者さんでは、口腔内に形質細胞腫が発生することもあります。

移植を受けた患者さんは、リンパ節が腫れていないか、または軟部組織の領域にしこりが存在しないかを確認するために、医師の診察を受けるようにしてください。これらは二次がんの徴候かもしれません。

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化学療法や放射線療法とは無関係の口腔合併症

がんや他の骨の問題に対する治療に用いられる一部の薬物は、口腔内の骨の喪失に関連しています。

一部の薬物は口腔内の骨組織を崩壊させます。これは顎骨壊死(ONJ)と呼ばれています。ONJは、感染の原因になることもあります。その症状には口腔内の痛みと炎症 病変があり、損傷を受けた骨が露出する場合もあります。

ONJを引き起こす薬物には以下のものがあります:


医療チームにとって、患者さんがこれらの薬による治療を受けているかどうかを把握することは重要です。顎骨に拡がったがんはONJに類似することがあります。ONJの原因を明らかにするために、生検が必要になることがあります。

ONJは一般的な病態ではありません。ビスフォスフォネート薬またはデノスマブの経口投与を受けている患者さんよりも、注射による投与を受けている患者さんに多くみられます。ビスフォスフォネート薬、デノスマブ、血管新生阻害薬の使用は、ONJのリスクを増大します。ONJのリスクは、血管新生阻害薬とビスフォスフォネート薬を併用した場合に大きく増大します。

以下に該当する場合も、ONJのリスクは高まります:


  • 抜歯の実施。

  • 適合していない義歯の装着。

  • 多発性骨髄腫への罹患。

転移が認められる患者さんは、ビスフォスフォネート薬またはデノスマブによる療法を開始する前に歯の問題に対する検査と治療を受けることで、ONJのリスクを低下させることができます。

通常、ONJの治療では感染に対する治療と歯科衛生の改善が行われます。

ONJの治療法には以下のようなものがあります:


  • 骨などの感染組織を除去する。レーザー手術が行われることもあります。

  • 露出した骨の鋭利な先端部を滑らかにする。

  • 感染に対処するために抗生物質を使用する。

  • 薬用の口腔洗浄剤を使用する。

  • 鎮痛薬を使用する。

ONJに対する治療を受けている間は、食後の歯磨きと歯間掃除を欠かさず、口腔内を十分に清潔に保っておくべきです。ONJが治癒するまでの間、タバコの喫煙は控えてください。(がん患者さんの禁煙が重要な理由に関する詳しい情報については、PDQのがん医療における喫煙に関する要約をご覧ください。)

ONJの原因になる薬剤の使用を中止するかどうかは、この薬剤が患者さんの全般的な健康状態に及ぼす影響に基づいて、患者さんと医師が共同で決定します。

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口腔合併症と社会的な問題

口腔 合併症に関連する社会的問題は、がんの患者さんにとって非常に対処が難しい問題となる場合があります。口腔合併症によって摂食や発話に支障が生じることで、家族との食事や外食ができなくなったり、嫌になったりする場合があります。イライラするようになったり、内にこもるようになったり、抑うつ状態に陥ったりして、人との交わりを避けるようになる患者さんもいます。うつ病の治療に用いられるには、口腔合併症を悪化させる恐れがあるために使用できないものがあります。詳しい情報については、以下のPDQの要約をご覧ください:


がん治療による口腔の問題を抱える患者さんには、情報の提供や支持療法症状に対する治療が重要です。患者さんの痛み、対処能力、治療への反応などが注意深く観察されます。医療提供者と家族による支持的なケアは、患者さんががんとその合併症に対処していく支えになります。

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小児における化学療法と放射線療法の口腔合併症

頭部に大量化学療法または放射線療法を受けた小児では、歯の成長と発達が通常とは異なる場合があります。新しい歯が生えるのが遅れることや生えてこないことがあり、歯のサイズも通常より小さくなる場合があります。頭部や顔面の発育不良がみられる場合もあります。こうした変化は一般的に頭部の両側で同じように起こりますが、必ずしも目立つ特徴になるとは限りません。

歯の成長と発育に関する副作用が生じた患者さんに対する歯列矯正治療は、現在研究段階にあります。

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本要約の変更点(01/22/2016)

PDQ がん情報要約は定期的に見直され、新しい情報が利用可能になり次第更新されます。本セクションでは、上記の日付における本要約の最新変更点を記述しています。

本要約には編集上の変更が行われました。

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本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、化学療法と頭頸部放射線療法の口腔合併症の原因と治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board. PDQ Oral Complications of Chemotherapy and Head/Neck Radiation. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: http://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/side-effects/mouth-throat/oral-complications-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389169]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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