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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

がん関連心的外傷後ストレス(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2015-07-07
    翻訳更新日 : 2017-02-17

PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Board

 このPDQがん情報要約では、がん関連心的外傷後ストレスの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

 PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

post-traumatic stress disorder

概要

がん関連心的外傷後ストレス(PTS)は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に非常によく似ていますが、そこまで重症ではありません。

患者さんは自身ががんであると告げられると、通常は様々な反応をとります。次のような反応があります:


  • 恐ろしい考えが繰り返し浮かぶ。

  • 集中できなくなったり、過剰に興奮したりする。

  • 睡眠障害を経験する。

  • 自分が自分でないように感じたり、現実感を喪失したりする。

患者さんはショックや不安、無力感、恐怖なども経験します。これらの感情は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に非常によく似た、がん関連心的外傷後ストレス(PTS)につながることがあります。PTSDは、強いストレスがかかる出来事の生存者の多くにみられる特定の症状群です。通常、こうした出来事は、自分や他人に死や大きな害が及ぶのではないかと脅かされることに関係します。軍事的な戦闘、自然災害、個人への暴力的な攻撃(強姦など)、あるいは他の生命を脅かすストレス状況を経験した人は、PTSDに苦しむことがあります。PTSとPTSDの症状はよく似ていますが、ほとんどのがん患者さんは病に対処することができ、完全なPTSDを発症するには至りません。がん関連PTSの症状は、PTSDほどに重症ではなく、そこまで長引きもしません。

がん関連PTSは治療中から治療後にかけて、いつでも起こります。

がんと闘病している患者さんには、診断時から治療中、治療後、がんの再発に備える時期に至るまで、いつ心的外傷後ストレスの症状が生じても不思議ではありません。小児がん生存者の両親が、心的外傷後ストレスを抱えることもあります。

本要約は、成人のがん関連心的外傷後ストレスとその症状や治療について書かれたものです。

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がん関連心的外傷後ストレス(PTS)のリスクに影響を及ぼす因子

特定の要因があると、患者さんに心的外傷後ストレスが生じやすくなります。

どのような人ががん関連心的外傷後ストレスのリスクが高いかは、完全には解明されていません。いくつかの研究でなされた報告によると、PTSまたはPTSDに関連する特定の身体的要因と精神的要因には、以下のものがあります:

身体的要因

心理的、精神的、社会的要因

  • 以前に経験したトラウマ。

  • 一般的なストレスのうち高度なもの。

  • 記憶や学習に影響を及ぼす遺伝的要因と生物学的要因(ホルモン 障害など)。

  • 利用できる社会的支援の量。

  • 生命や身体への脅威。

  • がんの診断以前のPTSDやその他の心理的な問題。

  • ストレスへの対処回避という方法を取っていること。

特定の防御因子があると、患者さんに心的外傷後ストレスが生じにくくなります。

以下に当てはまるがん患者さんは、心的外傷後ストレスのリスクが比較的低いと考えられます:


  • しっかりした社会的支援が得られる。

  • がんの病期について、はっきりした情報を得ている。

  • 担当の医療提供者とオープンな関係を築いている。

がん関連心的外傷後ストレスの症状は、化学療法などの治療に結び付いたにおいや音、光景がきっかけで引き起こされることがあります。

心的外傷後ストレスの症状は条件付けによって起こります。

条件付けは特定の誘因が心を乱す出来事に結び付くことで起こります。動揺を引き起こした本来の誘因(化学療法や痛みを伴う治療法など)と同時に経験した中立的な要因(におい、音、光景など)が、トラウマとなった出来事の後も不安やストレス、恐怖心などを引き起こす誘因となるのです。

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がん関連心的外傷後ストレス(PTS)のスクリーニング

がんになると、強いストレスのかかる出来事をいくつも経験します。

がんになると、一定期間のうちに、強いストレスのかかる出来事が何度も、あるいは継続的に起こることがあります。患者さんは診断時から治療中、治療後、さらにはがんの再発に備える日々に至るまで、常に心的外傷後ストレスの症状に苦しむ可能性があるので、再三のスクリーニングが必要になるでしょう。様々なスクリーニング法を用いて、患者さんにPTSまたはPTSDの症状がみられないかを調べることができます。

過去の心的外傷(トラウマ)からPTSDを発症したことのある患者さんでは、がんの治療中に何らかの誘因(例えば、MRICTスキャナの中に入るなど)によって症状が再発することがあります。このような患者さんは、がんやその治療にうまく適応できないこともあります。

がんの生存者とご家族は、長期にわたって心的外傷後ストレスの経過観察を受ける必要があります。

通常、心的外傷後ストレスの症状は、トラウマとなった出来事の発生後3ヵ月以内に現れ始めますが、ときには数ヵ月、さらには数年以上後に現れる場合もあります。そのため、がんの生存者とご家族は長期的な経過観察を受ける必要があります。

ひどく心を乱す出来事を経験し、初期症状を発症したものの、完全なPTSDには至らない人もいます。しかし、初期症状がみられた患者さんが後にPTSDを発症することは少なくありません。こうした患者さんとご家族は、再三のスクリーニングと長期にわたる経過観察を受けるべきです。詳しい情報については、がんへの適応:不安と苦悩に関するPDQの要約をご覧ください。

がんに直面している患者さんでは、多数の誘因によって、がん関連心的外傷後ストレス(PTS)が現れることがあります。

がんに直面している患者さんでは、特定の心的外傷が引き金になって、普段は意識していないがん関連心的外傷後ストレス(PTS)が現れることがあります。がんの体験には心を乱す出来事が数多く含まれるため、天災や強姦といった他のトラウマと比べ、ストレスの正確な原因を把握することがはるかに難しいのです。

がんとの闘病中に、以下のような誘因に直面します:


  • 生命を脅かす病気と診断されること。

  • 治療を受けること。

  • 検査結果を待つこと。

  • がんの再発を知ること。

誘因を把握して治療につなげることが重要です。

がん関連心的外傷後ストレス(PTS)の症状は、他のストレス関連障害の症状に非常によく似ています。

PTSの症状の多くは、うつ病不安 障害、恐怖症、パニック障害と共通しています。

心的外傷後ストレスや他の病態では、以下のような症状がみられることがあります:


  • 防御的な感情、いらだち、恐怖を感じる。

  • はっきりした思考ができなくなる。

  • 睡眠障害。

  • 他人を回避する。

  • 生きることに関心がなくなる。

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がん関連心的外傷後ストレス(PTS)の治療

PTSに対する治療は、多くの場合、PTSDに対する治療と同様です。

がん患者さんの心的外傷後ストレスだけに用いられる特別な治療法はありませんが、がん患者さんと生存者の方の苦悩を和らげるのに、PTSDに対する治療法が役立つことがあります。

心的外傷後ストレスを抱えているがん生存者は、他の心的外傷に苦しむ患者さんに用いられる治療を早めに受ける必要があります。

心的外傷後ストレスの影響は、長期的かつ深刻です。そのせいで通常の生活に支障をきたし、対人関係、学業面、職業面などに悪影響が及びます。がんに結び付いている場所や人を避けることも心的外傷後ストレスの一部であり、そのために患者さんは専門家のケアを受けようとしないことがあります。

がん生存者はがんを抱えて生きることに伴う精神的苦悩について知り、早めに心的外傷後ストレスの治療を受ける必要性を認識することが肝心です。利用できる治療法は1種類だけではありません。

心的外傷後ストレスの症状に対して、危機介入法やリラクゼーション法を利用したり、支援グループの助けを借りることができます。

危機介入は、患者さんの苦痛を軽減し、通常の活動が営めるよう回復させるための方法です。この方法では、問題の解決と対処技術の教示、それに支持的な環境の提供に重点が置かれます。

患者さんによっては、思考パターンを変えることで行動を変容させるように導いていく手法が有用です。認知行動療法(CBT)は、患者さんの以下の行動を支援します:


  • 自らの症状を理解する。

  • ストレスへの対処法と管理法(リラクゼーション法など)を学ぶ。

  • 苦悩を生んでいる思考パターンを自覚し、よりバランスのとれた有用な考え方に置き換える。

  • 心を乱す誘因に対する過敏さを抑える。

心的外傷後ストレスの症状をもつ人々を対象とした支援グループも存在します。このようなグループに参加すれば、感情的な支えを得たり、同様の体験や症状をもつ人々と出会えたり、対処や管理の技術を習得したりすることが可能です。

心的外傷後ストレスの症状が重い患者さんには、薬物が用いられることもあります。

心的外傷後ストレスの症状が重い患者さんには、薬物が用いられることもあります。例えば、以下のような薬剤です:


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現在実施中の臨床試験

NCI支援のがん臨床試験リストから、現在患者さんを受け入れている米国内の心的外傷後ストレス障害についての支持療法と緩和ケアの試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験の場所、治療のタイプ、薬剤の名前など、他の検索要素を用いて絞り込み検索を行うと、より具体的な結果が得られます。

臨床試験に関する一般情報は、NCIのウェブサイトからも入手することができます。

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本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、がん関連心的外傷後ストレスの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board. PDQ Cancer-Related Post-traumatic Stress. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: http://www.cancer.gov/about-cancer/coping/survivorship/new-normal/ptsd-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389374]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

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