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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

肺がんの予防(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2015-11-04
    翻訳更新日 : 2017-02-17

PDQ Screening and Prevention Editorial Board

 このPDQがん情報要約では、肺がんの予防に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

 PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

肺がん がんの予防

予防とは

がん 予防とは、がんにかかる可能性を低くするためにとる行動です。がんを予防することで、集団または人口におけるがんの新規症例の数が減少します。うまくいけば、それにより、がんによる死亡者の数を減らすことができます。

新たながんの発生を予防するため、科学者リスク因子防御因子に注目します。がん発生の可能性を高めるものは全てがんのリスク因子と呼ばれ、がん発生の可能性を低減させるものは全てがんの防御因子と呼ばれます。

がんのリスク因子には回避できるものもありますが、回避できないものも数多くあります。例えば、喫煙の習慣と特定の遺伝子をもっていることは、どちらもある種のがんのリスク因子ですが、避けることができるのは喫煙だけです。普段から運動や健康的な食事を心がけることは、いくつかの種類のがんに対する防御因子となります。リスク因子を避けて防御因子を増やすことはリスクの低減につながりますが、それでがんに罹らなくなるということではありません。

現在、以下のような様々ながんの予防法が研究されています:


  • 生活習慣や食習慣の改善。

  • がんの原因となることが分かっている因子の回避。

  • 前がん 状態の治療やがん発生の阻止を目的としたの使用。

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肺がんについての一般的な情報

肺がんは、肺の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

は、胸部に位置する円錐形をした左右一対の呼吸器官です。肺の果たしている役割の1つは、息を吸い込むときに酸素を体内に取り込むことです。また、息を吐き出すときに二酸化炭素(全身の細胞から出てくる排泄物)を体外に放出するという役割も果たしています。左右の肺はそれぞれいくつかの部分に分かれていて、それらのことを肺葉と呼びます。左側の肺は2つの肺葉で構成されています。右側の肺は左側の肺よりも若干大きく、3つの肺葉で構成されています。肺の周りは胸膜と呼ばれる薄いで覆われています。また、肺には気管支と呼ばれる管が1本ずつ入り込んでいますが、これらは気管から伸びています。肺がんはときにこの気管支も侵します。肺の内部は、肺胞と呼ばれる空気の入った微小な袋と、細気管支と呼ばれる小さな管から構成されています。

呼吸器系の解剖図:右肺の上葉、中葉、下葉;左肺の上葉と下葉;気管、気管支、リンパ節、横隔膜を示す。拡大図には細気管支、肺胞、動脈、静脈が示されている。



呼吸器系の解剖図:気管、左右の肺とそれぞれの肺葉、気道を示しています。リンパ節と横隔膜も示されています。肺に吸い込まれた酸素は、肺胞の薄い膜を通過して血液中に取り込まれます(拡大図を参照)。



肺がんは小細胞肺がん非小細胞肺がんの2種類に分けられます。

肺がんに関する詳しい情報については以下のPDQの要約をご覧ください:


がんによる死亡原因の統計では、男女ともに肺がんが第1位です。

他の種類のがんよりも多くの人が肺がんで亡くなっています。肺がんは米国において、皮膚がんに次いで2番目に多く発生しているがんです。

肺がんの新規症例と肺がんによる死亡は、黒人男性に最も多くみられます。

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肺がんの予防

リスク因子を回避することと防御因子を増やすことは、肺がんの予防につながります。

がんリスク因子を回避することは、特定のがんの予防につながります。リスク因子には、喫煙、過体重、運動不足などがあります。一方で禁煙、健康的な食事、運動などの防御因子を高めることも、がんの予防につながります。がんのリスクを低減させる方法については、担当の医師か他の医療専門家にご相談ください。

肺がんのリスク因子には以下のようなものがあります:
紙巻きタバコ、葉巻、パイプによる喫煙

肺がんリスク因子としてはタバコの喫煙が最も重大です。紙巻きタバコ葉巻パイプによる喫煙はいずれも肺がんのリスクを高めます。タバコの喫煙は、男性の肺がん10例中9例の原因であり、女性の肺がん10例中8例の原因です。

数件の研究は、低タールまたは低ニコチンの紙巻きタバコの喫煙によって肺がんのリスクは低下しないことを示しています。

また、数件の研究によると、紙巻きタバコの喫煙により肺がんになるリスクは、1日に吸うタバコの本数と喫煙年数により増加します。喫煙者の肺がんのリスクは、非喫煙者の約20倍です。

間接喫煙

間接喫煙への曝露も肺がんのリスク因子です。間接喫煙とは、火のついたタバコ製品(紙巻きタバコなど)から周囲に出ていく煙と喫煙者が吐き出す煙のことです。この間接喫煙を習慣的に吸入している人は、少量ではあるものの、喫煙者と同じ発がん性物質に曝されていることになります。間接喫煙を吸入することは不随意喫煙や受動喫煙などと呼ばれます。

家族歴

肺がんの家族歴があることは、肺がんのリスク因子です。血縁者が肺がんになったことのある人は、そうでない人に比べて、2倍肺がんになりやすいようです。喫煙習慣は家族内で伝わる傾向があり、また、家族は間接喫煙に曝されるため、肺がんのリスク増大が肺がんの家族歴によるものか、それともタバコの煙への曝露によるのかを明らかにするのは困難です。

HIV感染

後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)への感染は、肺がんのリスク上昇に関連しています。HIVの感染者の肺がんのリスクは、非感染者の2倍以上になると考えられます。しかし、HIV感染者の喫煙率は非感染者よりも高いので、肺がんの増大がHIV感染によるものか、それともタバコの煙への曝露によるのかは明らかになっていません。

環境リスク因子

  • 放射線への曝露:放射線への曝露は肺がんのリスク因子です。原子爆弾の放射線、放射線療法画像検査ラドンは放射線への曝露を引き起こす原因です:
    • 原子爆弾の放射線:原子爆弾の爆発後に放出される放射線に曝露すると、肺がんのリスクが高まります。

    • 放射線療法:胸部への放射線療法は、乳がんホジキンリンパ腫などの治療に用いられます。放射線療法ではX線ガンマ線など、肺がんのリスクを高める可能性のある放射線を使用します。照射される放射線の線量が高くなればなるほど、リスクも上昇します。放射線療法後の肺がんリスクは、非喫煙者に比べて喫煙者でさらに高くなります。

    • 画像検査:CTスキャンなどの画像検査では、患者さんに放射線を照射します。低線量スパイラルCTスキャンを受ける患者さんは、高線量CTスキャンより低い線量の放射線を浴びます。肺がんのスクリーニングでは、低線量スパイラルCTスキャンを使用して放射線の有害作用を軽減することができます。

    • ラドン:ラドンは岩石や土壌に含まれるウランの崩壊過程で放出される放射性の気体です。地中から滲出すると、大気中や給水設備に漏出します。ラドンが床や壁、基礎部分にできた割れ目から住居内に取り込まれ、時間とともにウラン濃度が増加する場合があります。

     複数の研究では、住宅や職場環境内に高濃度のラドンガスが存在していると、肺がんの新規症例数や肺がんによる死亡数が増加することがわかっています。ラドンに曝されている喫煙者の肺がんのリスクは、ラドンに曝されている非喫煙者よりも高くなります。喫煙したことがない人の場合、肺がんによる死亡の約30%はラドンへの曝露に関連しています。


  • 職場での曝露:いくつかの研究は、以下の物質への曝露が肺がんのリスクを増大させることを示しています。

     職場でこれらの物質に曝されている人は、喫煙していなくてもこれらの物質が原因で肺がんになる可能性があります。これらの物質への曝露が大きくなればなるほど、肺がんのリスクも増大します。喫煙者がこうした物質に曝されている場合、肺がんのリスクはさらに高くなります。


  • 大気汚染:いくつかの研究は、大気汚染が進んでいる地域に住んでいると、肺がんのリスクが高くなることを示しています。

重度の喫煙者におけるβカロチンの栄養補助食品

βカロチン栄養補助食品(錠剤)の摂取は、特に1日に1箱以上のタバコを吸う喫煙者において肺がんのリスクを高めます。このリスクは、喫煙者が日に1杯以上のアルコール飲料を毎日飲んでいる場合、さらに高くなります。

以下の防御因子は肺がんのリスクを低下させる可能性があります:
喫煙しないこと

最も効果的な肺がんの予防法は、喫煙しないことです。

禁煙

喫煙者はタバコを止めることで、肺がんのリスクを低下させることができます。肺がんの治療を受けたことのある喫煙者では、禁煙により新たな肺がんが発生するリスクが低下します。カウンセリングニコチン補充製品の使用、抗うつ薬 療法は、禁煙の実施に有用です。

禁煙した人が肺がんを予防できる可能性は、その人が喫煙していた年数や喫煙量、および禁煙してからの期間により異なります。喫煙をやめた後、10年間で肺がんのリスクは30~50%低下します。

禁煙に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:


職場でリスク因子に曝露しないようにすること

アスベスト、ヒ素、ニッケル、クロムといったがんの原因物質への曝露から労働者を保護する法律は、肺がん発生リスクの低下に寄与すると考えられます。また、職場での喫煙を抑制する法律は、間接喫煙による肺がんのリスクを低下させます。

ラドンに曝露しないようにすること

ラドンへの曝露量が低下すると肺がんのリスクも低下し、特に喫煙者ではその傾向が顕著です。自宅のラドン濃度が高い場合は、地階を密閉するなど、ラドン漏出の防止策を講じて濃度を下げることができます。

以下の因子が肺がんのリスクを増加させるかどうかは、明らかになっていません:
食事

複数の研究により、多量の果物や野菜を食べている人は、それらをあまり食べない人に比べて肺がんのリスクが低くなることが示されています。しかし、喫煙者は非喫煙者よりも健康な食事をとっていない傾向がみられるため、リスクの低下が健康な食事によって生じているのか、それとも喫煙しないことによるのかを明らかにするのは困難です。

運動

複数の研究により、よく体を動かしている人はそうでない人に比べ、肺がんのリスクが低下することが示されています。しかし、喫煙者の運動の程度は非喫煙者よりも多様である傾向がみられるため、運動が肺がんのリスクに影響を与えるかどうかを明らかにするのは困難です。

以下の因子は肺がんのリスクを低下させません:
非喫煙者におけるβカロチンの栄養補助食品

非喫煙者を対象とした数件の研究は、βカロチン栄養補助食品によって肺がんのリスクは低下しないことを示しています。

ビタミンEの栄養補助食品

数件の研究によると、ビタミンE補助食品の摂取は肺がんのリスクに影響しません。

がんの予防法の研究では、がん予防臨床試験が実施されます。

特定のがんの発生リスクを低下させる方法を研究するには、がん予防 臨床試験が実施されます。がん予防臨床試験には、がんにかかってはいないものの、がんのリスクが高い人々を対象として行われるものがあります。また、すでにがんにかかっていて、同種のがんのさらなる発生を予防しようとしている人々や、別の種類のがんが発生する可能性を小さくしようとしている人々を対象とした予防試験もあります。その他にも、がんのリスク因子をもっていることが判明していない健康なボランティアを対象とした試験もあります。

一部のがん予防の臨床試験の目的は、何らかの行動によってがんを予防できるかどうかを検証することです。具体的には、果実や野菜を食べる、運動をする、喫煙をやめる、特定のビタミンミネラル、栄養補助食品などを摂取する、などが挙げられます。

現在、肺がんの新たな予防法が臨床試験で検証されています。

臨床試験は米国各地で行われています。臨床試験の情報は、NCIのホームページの臨床試験のセクションでご覧いただけます。NCI助成がん臨床試験リストから、現在患者さんを受け入れている非小細胞肺がん小細胞肺がんのがん予防臨床試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。ここには禁煙についての臨床試験も含まれています。

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本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、肺がんの予防に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Screening and Prevention Editorial Board. PDQ Lung Cancer Prevention. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: http://www.cancer.gov/types/lung/patient/lung-prevention-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389497]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

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