ページの先頭へ

最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

進行がんにおける終末期ケアへの移行計画(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2017-03-01
    翻訳更新日 : 2017-05-16

進行がんにおける終末期ケアへの移行計画(PDQ®) PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Board

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、進行がんにおける終末期ケアの計画について包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。


本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

終末期治療/管理

概要

米国がん協会(American Cancer Society)は、2017年に600,000人以上の米国人ががんで死亡すると推定している。 [1] 終末期(EOL)を予測し、終末期に行う適切ないし望ましい治療やケアについて医療上の決定を下すことは、進行がんの患者、家族や友人、臨床腫瘍医、その他の専門職の介護提供者にとって、高度の知識を要するとともに感情的苦痛を伴う難題である。終末期ケアへの移行計画に失敗すると、次のような有害な帰結がもたらされる:


  • 心理的苦痛の増大。

  • 個人の選好に反する医学的処置。

  • 負担が大きく高価でありながら、治療効果に乏しい医療資源の使用。

  • より困難な死別体験。

腫瘍医と患者は、多くの潜在的因子のために、最期の数週間または数日間まで終末期の計画を先延ばしにしがちである。そのような因子は、個人、家族、社会の各レベルに存在する。しかしながら、挙げられる因子の多くは真の障壁ではなく、克服可能であるということを示唆する証拠が増えてきている。

本要約の目的は、進行がんの状況で医療提供者、患者、家族に人道的かつ有効な終末期ケアへの移行について情報提供するための会話について、関連する証拠をレビューすることである。


参考文献
  1. American Cancer Society: Cancer Facts and Figures 2017. Atlanta, Ga: American Cancer Society, 2017. Available online. Last accessed January 13, 2017.[PUBMED Abstract]

 | 

進行がん患者に対する終末期ケアの質

進行がんの患者、その家族や友人、ならびに臨床腫瘍医は、患者の生活の質(QOL)に深い影響を及ぼす治療上の決定にしばしば直面する。臨床腫瘍医には、疾患に対する治療を継続する場合と患者の症状とQOLに焦点を置いたケアを行う場合に考えられる影響を(患者および家族とともに)検討する義務がある。

本セクションでは、臨床腫瘍医と進行がん患者が、積極的治療を継続する場合の害と緩和ケアまたはホスピスケアで見込まれる利益について理解し、その上で選択を行って、終末期(EOL)のQOLを改善するケア計画を策定するために必要な情報を要約する。本セクションの内容は以下の通りである:


  • 生活の質を考慮した終末期ケア(quality EOL care)の概念についてレビューする。

  • 一般的に引用されるquality EOL careの指標を要約して評価する。

  • 望ましい死(good death)の概念について探索的に検討する。

さらに、終末期が近づいている進行がん患者に臨床腫瘍医がより良い選択肢を提示できるようにするため、終末期における心肺蘇生(CPR)と集中治療室(ICU)への入室に関連した転帰についての情報を提示する。

終末期ケアの質

進行がん患者に対する終末期ケアの質を測定する上で重要となる質問には以下のものがある: [1]


  • 証拠に基づくガイドラインで、質の評価に関して情報を提示しているものはどれか。

  • 終末期の期間はどのように定義されているか。

  • 対象とする質に関する指標は、正確で、利用しやすく、望ましい結果との関連性は妥当であるか。

  • 高い質を構成する要素は何か。

  • 最も重要な点として、患者の視点が優先されているか。

患者の視点

がんに限らず、生命を脅かす疾患の患者を対象とした調査や面接は、生活の質を高く維持する終末期ケア(high-quality EOL care)の構成要素が何かを理解する上で役立つ可能性がある。ある研究グループは、患者が重要視する終末期ケアの領域について、次の5つを提唱している: [2]


  • 疼痛と症状に対して十分な管理を受けること。

  • 不適切な延命処置を避けること。

  • コントロールの感覚が得られること。

  • 負担が軽減されること。

  • 愛する人々との関係を強めること。

腫瘍科を外来受診する進行がん患者のコホートを用いて2011年に実施されたQOLに関するプロスペクティブ研究により、進行がん患者の視点でQOLの改善に寄与する因子について新たな知見が得られた。 [3] このコホートの全生存期間中央値10ヵ月であったため、この結果は死に瀕した患者の状況を反映していない可能性がある。それでも、年齢、良好なパフォーマンスステータス、生存期間6ヵ月以上がQOLの強い予測因子であったことが示された。新しい治療法を待っていた患者では、感情面の健康状態が悪化した。この知見は、QOLが疾患の増悪や合併症などの因子のほか、受けている治療に関する患者の目標にも関連することを示唆している。さらに他の研究者からは、家族介護者が患者のQOLについて報告するスコアは、進行がん患者の自己評価より不良になる場合が多いと報告されている。 [4]

終末期ケアの質の指標

進行がん患者に対する終末期ケアの質を測定する指標としては、さまざまなものが提唱されてきた。それらの指標に対しては、以下のような主だった批判が指摘されている:

  1. 一般的に、指標の測定を行う生前の期間が死亡時点からさかのぼって定義されている。ある介入が死亡の予防に無益かどうかを臨床医が予測することができない;そのため、指標が死亡までの期間に依存する場合は、質に関する懸念が誇張される可能性がある。
  2. 質の指標が患者の選好に対する配慮を欠いている場合がある。例えば、死が迫っていても化学療法を受けることを希望し、ホスピスへの登録は行わないことを望む患者もいる。反対に、ガイドラインに沿った治療を行えなかった事例の一部は、推奨された治療法に対する患者の拒否や医学的な禁忌を反映している可能性がある。ある研究 [5] では、Veterans Health Administration(VHA)でケアを受けた肺がん患者において、質に関する6つの指標が拒否(0~14%の時点)または医学的禁忌(1~30%の時点)を理由に遵守されなかった。
  3. 行政のデータベースは、すべての患者のデータを網羅しているわけではない。例えば、Centers for Medicare & Medicaid Servicesのデータベースには、メディケアの集団のみを対象としている。
  4. 多くの指標は質に特化した尺度として開発されたものではなく、重要な結果に対する感度が高くない場合がある。

このような批判はあるものの、指標について経時的に検討した研究や、地域間、医療制度間、専門領域間で比較した研究から、quality EOL careに関する重要な知見が得られている。

終末期ケアの質を測定する指標に関する経時的な傾向

複数の報告を検討することで、さまざまながんについて、終末期ケアの質に関する指標の経時的な傾向を理解することができる。以下に示す知見は2004年の解析で支持されており、 [6] 重要なものは裏付けとなる追加文献も提示している:


  • 死の30日前以降に新たに化学療法を開始する患者と死の14日前以降に化学療法を継続している患者の数が増加している。

  • ホスピスに紹介される患者の数は増加しているが、ホスピスでの滞在期間は相対的に短く、ホスピスへの紹介が遅すぎる場合があるという懸念が支持されている。例えば、前立腺がんで死亡した男性を対象とした2011年の研究では、ホスピスの利用が(約32%から60%に)増えていることが明らかにされたが、7日に満たない滞在の割合が増加していた。 [7]

  • ICU入室率も増加している。例えば、ある研究では、 [8] 膵がんで死亡した患者のICU入室率が、1992年から1994年までで15.5%から19.6%に、2004年から2006年までで8.1%から16.4%に増加していたことが報告された。

  • 蘇生処置不要(DNR)指示の割合は増加しているが、その時期は依然として死の直前である場合が多い:2008年の研究では、主要ながんセンターで2000年から2005年に出されたDNR指示の割合と時期が調査され、死亡時のDNRの割合は、院内での死亡の場合で83%から86%に増加し、院外の死亡の場合で28%から52%に増加していた。 [9] しかし、入院患者の死亡では、DNRへの署名から死亡までの期間の中央値が0日であったのに対し、外来患者の死亡では30日であった。この結果は、蘇生についての選好に関するコミュニケーションが先延ばしにされていることを示唆している。この遅延は、終末期に対する患者の準備に悪影響を及ぼす可能性がある。

終末期ケアの質に関する指標の地域差

終末期の医療資源の利用率に関する地域差については、その差異がまれにしか転帰の改善に関連しないことから、関心の対象となっている。初期には米国の地域差に目が向けられたが、以降の研究では、医療制度間または医療制度内の相違も重要である可能性が示された。 [10] 以下では、いくつかの顕著な差異について概要を示す。


  • メディケアの出来高払い(fee-for-service)プランに加入していた男性に比べて、VHAを介して治療を受けていた進行がんの高齢男性は、死の14日前以降に化学療法を受ける可能性が低く(4.6% vs 7.5%)、死の30日前以降にICUに入室する可能性も低く(12.5% vs 19.7%)、さらに複数回にわたって救急部門を受診する可能性も低かった(13.1% vs 14.7%)。 [11]

  • Dartmouth Institute for Health Policy & Clinical Practiceによる、メディケア加入患者に対するケアについてのデータ解析で、終末期ケアの重要な地域差が明らかにされた。 [12] 主な知見は、次の通りである:
      入院率、ICU入室率、積極的介入(CPRや人工呼吸器の使用など)の実施率に差がみられる。
      最期の14日間における化学療法の使用状況に差がみられる。
      紹介率または滞在期間として測定されるホスピス利用状況に差がみられる。

    著者らの見解では、観察された地域差は人種的または民族的な選好や疾患の程度で説明できないほど大きかった。終末期ケアの積極性に関連する因子として、ICUのベッドや画像検査機器の準備状況、個々の患者のケアを担う医師の数、治療現場それ自体など、資源の利用可能性が挙げられた。 [12]


終末期ケアの差異に関連する因子

医療専門家の利用可能性、ベッド数、医師、医療制度の特徴が最期の6ヵ月間の支出増大に関連する因子であることが十分に確立されている。2011年のある研究では、 [13] Health and Retirement Study、メディケア、Dartmouth Atlasに登録された故人のデータを使用して、地域差に寄与しうる患者レベルの因子が同定された。機能的状態の悪化、ヒスパニック系、黒人、糖尿病などの慢性疾患には、地域的な特性について調整した後でも、支出増加との関連が認められた。患者レベルの因子では、ばらつきの10%しか説明できなかった。終末期の診療パターンと1人当たりのベッド数にも支出増加との関連が認められた。事前ケア計画は支出に影響しなかった。 [13]

終末期ケアの地域差に対する説明として考えられるのは、患者の選好に関する地域差である。しかし、その証拠は一貫していない。


  • ある研究では、メディケア受給者2,515人を対象として、余命を1年未満に制限する重篤な疾患に罹患した場合の医療に対する全般的な選好について調査が行われた。 [14] それらの選好は、病院の医療圏(hospital referral region)ごとの終末期関連費用に相関があった。緩和ケアまたは延命に対する選好に地域差はみられなかった。そのため、観察された終末期関連費用のばらつきを選好の地域差で説明できるとは考えにくい。

  • 反対に、Coping with Cancer研究の結果に対する治療施設の潜在的影響を検討した副次解析では、治療施設の影響が部分的に患者の選好の相違に由来することが示された。 [15]

望ましい死(good death)

医療提供者の視点

望ましい死(good death)の概念については、見解が分かれるところであるが、臨床腫瘍医にとっては、適切な時期に人道的かつ有効な終末期ケアを行うという目標をより明確に規定するための有用な構成概念となりうる。2003年にBritish Medical Journalに掲載された臨死患者に対するケアについての記事において、その著者らは、望ましい死を推進するための証拠に基づくガイドラインは十分に存在すると記載したが、その記事に対して、「専門家教育では、愛する人の死を『望ましい死』と感じながら臨終の時と喪失後の時間を過ごすことが個人にとってどれほど重要かを十分に伝えることはできない」というコメントが掲載された。 [16] その後のレターで編集者に寄せられた主な論点をいくつか次に示す:


  • 患者と家族の精神的な健康状態は、望ましい死を実現する上で必ず考慮すべき問題である。

  • 医療提供者の信念と態度が十分な疼痛管理や症状管理を妨げるものである場合には、望ましい死の機会が失われる可能性がある。

  • 医療提供者が患者の視点に敬意を払わず、終末期ケアを強く主張したり、余命の短縮につながりうる緩和的処置を拒否したりする場合は、医療のパターナリズムにつながる危険性がある。

  • 宗教上の信仰と霊的な信念は、終末期の多くの人にとって重要である。

  • 望ましい死を迎えるには、延命以外の側面に意識を向ける必要がある。

患者の視点

患者、家族、医療提供者に関する画期的な研究では、 [17] 重症患者、その介護を行っていた遺族、医師、その他の医療提供者を対象として、終末期に起こる問題点が調査された。事前の面接とフォーカスグループにおいて参加者に望ましい死を定義するよう依頼し、そこで同定された44の属性の重要度に回答者がスコアをつけた。疼痛やその他の症状の管理、コミュニケーション、死に対する準備については、広い見解の一致がみられた。しかし、家族や社会の重荷にならないようにすることや神とともに安らかに過ごすことなど、特定の態度については、患者が重要であると評価している一方で、医師の評価はより低かった。オランダで実施された集団ベースの研究では、望ましい死の概念に対する回答者の肯定的な態度と終末期の意思決定に影響しうる選好との間に相関が認められた。 [18]

進行がん患者は終末期に備える機会を望むことがある。早期緩和ケアに関するクラスターランダム化試験に参加した患者469人の調査 [19] [20] により、良好な準備は臨床医とのコミュニケーションの質、高齢、一人暮らし、症状の少なさ、および霊的幸福に関係するスコアの高さに関連していることが報告された。興味深いことに、回答者の31%が家族の将来の対処について心配していた。こうした結果から、終末期への準備について早期に話し合う機会を患者に提供することの重要性、および医師とのコミュニケーションの質を好意的に捉えている患者は終末期に対して良好な準備ができていると感じることが強調されている。

介護者の視点

ある研究では、 [21] 進行がんで死亡した患者396人の正式な介護士または非公式の介護者を対象として、最期の1週間における患者のQOLについて質問する面接が行われた。QOLは、研究への登録時に行われた患者に対するベースライン面接で得られたさまざまな因子、ならびに対処の様式、宗教的対処、宗教性/霊性、終末期の選好に関する調査結果と相関していた。終末期におけるQOLのばらつきは、ほとんど説明されなかった。ただし、次の因子にはQOLとの間で負の相関が認められた:


  • 最期の1週間における集中治療。

  • 病院内での死。

  • 最期の1週間における経管栄養。

  • 最期の1週間における化学療法。

反対に、QOLと正の相関が認められた因子は以下の通りである:


  • 祈りまたは瞑想。

  • チャプレンの訪問。

  • 医師が尊敬に値し、疑問に答えてくれる、信頼できる人物であるという認識。

延命処置後の転帰

CPR

CPRは本来、主に心臓発作を起こした患者で循環を回復させるために考案された処置である。高齢の入院患者の場合、CPR後の転帰に有意な改善は認められていないが、これについては、生命を脅かす併存症がある患者にCPRが施行されたことが部分的な原因として考えられる。米国では、処置を拒否する旨を示したDNR指示が診療録に含まれていない限りCPRが施行されるため、終末期ケアへの移行時に有益性の限られたCPRが施されることへの対応がより困難である。以下は、進行がん患者に対するCPRの有益性が非常に限定的であることを示す証拠の要約である:


  • 院外心停止に対してCPRを受けた患者41人を対象として、カルテをレトロスペクティブにレビューした研究では、ICUに入室した患者は18人(43%)のみで、生存退院した患者はわずか9人であった(うち2人は自宅、7人は施設への退院)。 [22] 著者らは、疾患が進行していたことと予後が不良であったことがしばしば医療記録に記録されていたことを指摘している。

  • 院内CPR後の生存に関するメタアナリシスでは、生存退院した患者は全体の6.2%であった。 [23] 進行期(血液悪性腫瘍)患者とICUでCPRを受けた患者には、生存退院率が低い傾向がみられた。

  • ICUで蘇生処置を受けた患者の転帰はきわめて不良であることが示されている。 [24] [25] 406人の患者のうち、退院に至ったのは7人(2%)のみであった。他の患者は心停止からそのまま死亡したか(63%)、平均4日以内に死亡した(26%)。

ICUへの入室

CPRに加えて、人工呼吸器の使用やICUへの入室が必要になる場合もある。進行がん患者の転帰は不良である。ある研究では、進行がん患者(第I相試験に紹介された患者)212人の生存期間中央値は3.2週間であった。 [26] CPRを要した患者の生存期間中央値は1日であった。

ただし、転帰を予測する上では基礎疾患の疾患が非常に重要な変数となる可能性がある血液悪性腫瘍の患者では、固形腫瘍の患者より予後が良好である場合が多い。例えば、ある研究では、新たに血液悪性腫瘍と診断された患者の60.7%が生存退院し、1年生存率は43.3%にのぼったと報告されている。 [27] 多変量解析により、寛解状態とICUへの早期入室が望ましい危険因子であることが実証された。


参考文献
  1. Kendall M, Harris F, Boyd K, et al.: Key challenges and ways forward in researching the "good death": qualitative in-depth interview and focus group study. BMJ 334 (7592): 521, 2007.[PUBMED Abstract]

  2. Singer PA, Martin DK, Kelner M: Quality end-of-life care: patients' perspectives. JAMA 281 (2): 163-8, 1999.[PUBMED Abstract]

  3. Zimmermann C, Burman D, Swami N, et al.: Determinants of quality of life in patients with advanced cancer. Support Care Cancer 19 (5): 621-9, 2011.[PUBMED Abstract]

  4. Jones JM, McPherson CJ, Zimmermann C, et al.: Assessing agreement between terminally ill cancer patients' reports of their quality of life and family caregiver and palliative care physician proxy ratings. J Pain Symptom Manage 42 (3): 354-65, 2011.[PUBMED Abstract]

  5. Ryoo JJ, Ordin DL, Antonio AL, et al.: Patient preference and contraindications in measuring quality of care: what do administrative data miss? J Clin Oncol 31 (21): 2716-23, 2013.[PUBMED Abstract]

  6. Earle CC, Neville BA, Landrum MB, et al.: Trends in the aggressiveness of cancer care near the end of life. J Clin Oncol 22 (2): 315-21, 2004.[PUBMED Abstract]

  7. Bergman J, Saigal CS, Lorenz KA, et al.: Hospice use and high-intensity care in men dying of prostate cancer. Arch Intern Med 171 (3): 204-10, 2011.[PUBMED Abstract]

  8. Sheffield KM, Boyd CA, Benarroch-Gampel J, et al.: End-of-life care in Medicare beneficiaries dying with pancreatic cancer. Cancer 117 (21): 5003-12, 2011.[PUBMED Abstract]

  9. Levin TT, Li Y, Weiner JS, et al.: How do-not-resuscitate orders are utilized in cancer patients: timing relative to death and communication-training implications. Palliat Support Care 6 (4): 341-8, 2008.[PUBMED Abstract]

  10. Newhouse JP, Garber AM: Geographic variation in health care spending in the United States: insights from an Institute of Medicine report. JAMA 310 (12): 1227-8, 2013.[PUBMED Abstract]

  11. Keating NL, Landrum MB, Lamont EB, et al.: End-of-life care for older cancer patients in the Veterans Health Administration versus the private sector. Cancer 116 (15): 3732-9, 2010.[PUBMED Abstract]

  12. Goodman DC, Morden NE, Chang CH, et al.: Trends in Cancer Care Near the End of Life: A Dartmouth Atlas of Health Care Brief. Lebanon, NH: Dartmouth Institute for Health Policy & Clinical Practice, 2013. Available online. Last accessed February 27, 2017.[PUBMED Abstract]

  13. Kelley AS, Ettner SL, Morrison RS, et al.: Determinants of medical expenditures in the last 6 months of life. Ann Intern Med 154 (4): 235-42, 2011.[PUBMED Abstract]

  14. Barnato AE, Herndon MB, Anthony DL, et al.: Are regional variations in end-of-life care intensity explained by patient preferences?: A Study of the US Medicare Population. Med Care 45 (5): 386-93, 2007.[PUBMED Abstract]

  15. Wright AA, Mack JW, Kritek PA, et al.: Influence of patients' preferences and treatment site on cancer patients' end-of-life care. Cancer 116 (19): 4656-63, 2010.[PUBMED Abstract]

  16. Ellershaw J, Ward C: Care of the dying patient: the last hours or days of life. BMJ 326 (7379): 30-4, 2003.[PUBMED Abstract]

  17. Steinhauser KE, Christakis NA, Clipp EC, et al.: Factors considered important at the end of life by patients, family, physicians, and other care providers. JAMA 284 (19): 2476-82, 2000.[PUBMED Abstract]

  18. Rietjens JA, van der Heide A, Onwuteaka-Philipsen BD, et al.: Preferences of the Dutch general public for a good death and associations with attitudes towards end-of-life decision-making. Palliat Med 20 (7): 685-92, 2006.[PUBMED Abstract]

  19. Zimmermann C, Swami N, Krzyzanowska M, et al.: Early palliative care for patients with advanced cancer: a cluster-randomised controlled trial. Lancet 383 (9930): 1721-30, 2014.[PUBMED Abstract]

  20. Wentlandt K, Burman D, Swami N, et al.: Preparation for the end of life in patients with advanced cancer and association with communication with professional caregivers. Psychooncology 21 (8): 868-76, 2012.[PUBMED Abstract]

  21. Zhang B, Nilsson ME, Prigerson HG: Factors important to patients' quality of life at the end of life. Arch Intern Med 172 (15): 1133-42, 2012.[PUBMED Abstract]

  22. Hwang JP, Patlan J, de Achaval S, et al.: Survival in cancer patients after out-of-hospital cardiac arrest. Support Care Cancer 18 (1): 51-5, 2010.[PUBMED Abstract]

  23. Reisfield GM, Wallace SK, Munsell MF, et al.: Survival in cancer patients undergoing in-hospital cardiopulmonary resuscitation: a meta-analysis. Resuscitation 71 (2): 152-60, 2006.[PUBMED Abstract]

  24. Ewer MS, Kish SK, Martin CG, et al.: Characteristics of cardiac arrest in cancer patients as a predictor of survival after cardiopulmonary resuscitation. Cancer 92 (7): 1905-12, 2001.[PUBMED Abstract]

  25. Wallace S, Ewer MS, Price KJ, et al.: Outcome and cost implications of cardiopulmonary resuscitation in the medical intensive care unit of a comprehensive cancer center. Support Care Cancer 10 (5): 425-9, 2002.[PUBMED Abstract]

  26. Fu S, Hong DS, Naing A, et al.: Outcome analyses after the first admission to an intensive care unit in patients with advanced cancer referred to a phase I clinical trials program. J Clin Oncol 29 (26): 3547-52, 2011.[PUBMED Abstract]

  27. Azoulay E, Mokart D, Pène F, et al.: Outcomes of critically ill patients with hematologic malignancies: prospective multicenter data from France and Belgium--a groupe de recherche respiratoire en réanimation onco-hématologique study. J Clin Oncol 31 (22): 2810-8, 2013.[PUBMED Abstract]

 | 

終末期ケアの決定と転帰に影響を及ぼす因子

概要

進行がん患者に対する終末期ケアの質のセクションで要約した証拠に対する解釈の1つは、進行がん患者は、苛酷で有害となる可能性がありながら有益となる見込みの低い治療を受けることがあまりにも多く、目的をもった終末期(EOL)ケアを受ける機会を失っているというものである。進行がん患者を対象とした複数の研究により、終末期ケアの決定および転帰に影響を及ぼしうる因子が同定された。

このセクションでは、終末期ケアへの移行計画で患者との対話をより有益にするために役立つ可能性のある因子について、臨床腫瘍医に知見を提示する。ただし、引用した研究に関する留意点として、以下を挙げておく:

  1. 横断的なデザインの研究のほとんどは、因果関係について何らかの結論を下せるものではない。例えば、患者が抱く予後に関する楽観的な見通しと治療法の決定との間にみられる相関を実証する研究では、患者の楽観主義が治療法の決定の主要な理由になるということではなく、特定の治療法を選択する患者は転帰について楽観的であるという傾向が交絡する可能性がある。
  2. 進行がんの定義、登録された被験者の生存期間中央値、研究の方法論は、いずれもが研究間で大きく異なっている可能性があり、報告された相関は統制されている場合もあれば、未知の交絡因子によって歪められている場合もある。
  3. 重要である可能性のある因子の多くは、主要または副次アウトカムとして扱われた場合もあれば、多変量解析における1変数として扱われた場合もある。したがって、患者・腫瘍医間のコミュニケーションと終末期の医療上の意思決定と患者の転帰との関係は、必ずしも十分に確立されているわけではない。それでも、複数の情報源から得られた証拠は、非常に説得力のある関連性を示している。
  4. コミュニケーションと意思決定のどちらにも関連しない因子が終末期の進行がん患者による医療上の意思決定に影響を及ぼすことがある。

引用する研究

3件の非常に大規模かつ包括的な研究で得られた結果が、進行がん患者において質の高いコミュニケーション、意思決定、医療上の意思決定、患者の転帰を予測する各マーカー間の関係についての豊富な情報源になっている。ここではこれらの研究について説明し、後続のセクションに結果を記載する。


  • Study to Understand Prognoses and Preferences for Outcomes and Risks of Treatments(SUPPORT):

    この2部構成で実施された多施設共同研究(オハイオ、ノースカロライナ、マサチューセッツ、ウィスコンシン、カリフォルニア)では、患者の選好、蘇生処置不要(DNR)指示の文書化と時期、疼痛、死亡前の集中治療の期間、昏睡、人工呼吸器の使用、病院資源の使用に関して、医師の理解を深めるための介入について評価した。 [1] 第1部は、患者・医師間のコミュニケーションに存在する障壁とギャップを確認するプロスペクティブな記述的研究で、第2部は、同定された障壁を対象とした介入を検証するクラスターランダム化試験であった。第1部には4,301人の患者が登録され、第2部には4,804人が登録された。介入では、予後について信頼できる情報を提供すること、患者および家族の選好を文書化すること、技能を有する看護師に患者および家族の教育を行わせてコミュニケーションを促すことに焦点が置かれた。

    SUPPORTの第1部では、患者・医師間のコミュニケーションにみられる重要な問題点が確認された。 [2] [3] 第II部では、看護師主導の介入によって、CPRの選好に関する話し合いは増加せず、また患者・医師の間での患者のCPRに対する選好に関する合意も増加しなかったことが確認された;また、集中治療室(ICU)の入室日数の減少、人工呼吸器の使用頻度の減少、疼痛レベルの低下も達成されなかった。


  • Coping with Cancer(CwC)研究:

    このプロスペクティブな多施設共同縦断研究では、終末期のがん患者と非公式の介護者を対象として、心理社会的因子が患者ケアと介護者の死別体験に及ぼす影響が調査された。 [4] 2002年9月から2008年8月までに、患者718人とその介護者がCwCに登録された。主な適格条件は、進行がん(遠隔転移例および第一選択化学療法での難治例)の診断を受けていることと非公式の介護者がいることとされた。登録患者の全生存期間中央値は4.5ヵ月であった。

  • Cancer Care Outcomes Research and Surveillance(CanCORS)Consortium:

    この研究では、2003年から2005年にかけて、診断から数週間以内に迅速な確定診断法により同定された肺がんまたは大腸がん患者が5,000人以上登録された。 [5] [6] 患者は5つの地域(カリフォルニア州北部、カリフォルニア州ロサンゼルス郡、ノースカロライナ州、アイオワ州、アラバマ州)のいずれかに居住しているか、指定された健康維持機構またはVeterans Health Administrationの特定の病院を介してケアを受けていた。診断から4~7ヵ月後の時点で、コンピュータ支援の調査を介して患者(患者が死亡した場合や出席できない場合は代理人)に対する面接が実施された。同意した成人の医療記録も抽出された。

患者の人口統計学的特性

終末期ケアへの移行について慎重かつ入念に計画を立てる目的は、進行がんの患者が自身で表明した選好と一致したhigh-quality EOL careを受けられる可能性を高めることにある。患者のさまざまな特徴は、臨床腫瘍医と患者のやりとりや患者の意思決定または転帰に影響を及ぼす。以下のセクションでは、患者の人口統計学的特性などの因子に関する研究で得られた代表的な結果を取り上げる。

年齢

がんは高齢者の疾患である。 [7] しかし、高齢者のコホート間でもおそらく差がみられることに留意すべきである。


  • SUPPORTでは、年齢の上昇と延命治療に対する要望の減少との間に相関が認められた。高齢者は積極的治療を受ける可能性が比較的低かった。 [1]

  • 70~89歳の転移性結腸がん患者73人に対して、治療法の意思決定に関する面接が実施された。患者の半数未満(44%)は、治療に関する決定を下す際、期待される生存期間についての情報を欲していた。 [8]

  • 高齢女性では、若年女性と比べて終末期に緩和ケアを受ける割合が高かった。ある研究では、1992年から1998年にケベック地方で転移性乳がんにより死亡した女性の69.6%が急性期病院で緩和ケアを受けていたことが報告された。 [9] ほとんどの女性(75%)が緩和ケア指向モデルの指標を複数有していたが(2つの行政データベースに記録されている情報から抽出)、50歳未満の女性は、70歳以上の女性より緩和ケアを受ける可能性が低かった(オッズ比[OR]、1.85)。

  • ある研究では、生前にCwCに登録されていた患者396人のコホートにおいて、年齢と治療に対する選好と実際に受けた治療との関係が解析された。 [10] 65歳以上の患者と45~64歳の患者では、より若年の患者に比べて、延命治療を望み、実際にそうした治療を受けることが少なかった。しかし、延命治療を望んだ高齢患者には、若年患者に比べて、実際にそうした治療を受ける可能性が低かった。

性別


  • ある研究では、 [8] 転移性大腸がんの高齢男性は、女性よりも予後の情報を欲することが多かった(56% vs 29%;P < 0.05)。

  • 別の研究では、検査結果に関する臨床腫瘍医との話し合いの前後に、進行がん患者に対する面接が実施された。女性の方が、がんを治癒不能な疾患として認識し、がんの病期を正確に把握しようとすることが多かった。また女性の方が、余命に関する話し合いを行ったと報告した割合が高かった。 [11]

人種


  • CwCの副次解析では、黒人患者の方が終末期に強力な治療を受けた割合が高かったことが示された。終末期の強力な治療の頻度は表明された選好と相関しなかったほか、白人患者の場合とは異なり、終末期に関する話し合いによって強力な治療を受ける可能性が低下することはなかった。 [12] この人種による影響は、死亡時にDNR指示が存在している場合でも変わらなかった。 [13]

  • 別の研究では、白人またはアフリカ系アメリカ人の終末期患者との面接結果が解析され、患者が報告した医師との関係の質が、延命治療(LST)に対する選好および事前ケア計画(ACP)に相関するかどうかを判定した。 [14] アフリカ系アメリカ人の患者は質の低い関係を報告したが、それらの低い評価では、アフリカ系アメリカ人にみられるACPの低い評価やLSTに対する選好の高い評価を説明できなかった。

  • アフリカ系アメリカ人またはアジア系の患者は、白人患者に比べて、ホスピスに入ることが少なく、入院やICUへの入室などの積極的治療を受けることが多かった。 [15] [16]

社会経済的地位


  • メディケイドに加入している患者は、メディケア加入の患者よりもホスピスを利用する可能性が低く、急性期施設で死亡する可能性が高い。 [17] その反面、メディケイド加入者の集団では、黒人患者が終末期に関する話し合いの証拠を示す割合が高かった。 [18]

  • マネージドケアに加入しているメディケア受給者は、ホスピスを利用する割合が高く、長期間にわたって利用する割合も高かった。 [19]

予後についての患者の理解

複数の研究により、患者の予後についての理解と終末期の医療上の意思決定、医学的転帰、心理的適応のそれぞれとの相関が示されている。しかし、研究方法、患者集団、予後理解の尺度、主要アウトカムとされるエンドポイントに相違があるため、相関の妥当性について決定的な結論を下すことはできない。さらに、ほとんどの研究が横断研究であることから、報告された因果関係は推測に過ぎない。それでも、予後についての理解度の測定結果で構成される公表データを要約することによって、進行がん患者の意思決定プロセスについて理解を深められる可能性がある。


  • 患者は6ヵ月を超える生存の可能性について、過度に楽観的な推測をすることが多い。ある研究グループは、SUPPORTに登録されていた転移性大腸がんまたは肺がんの成人917人の予後に関する理解度(6ヵ月を超える生存の見込みとして測定)を解析した。 [3] 自身が6ヵ月後に生存している可能性を90%以上と推測した患者では、延命治療を選択した割合が高く、再入院、心肺蘇生の試行、人工呼吸器使用中の死亡が発生する可能性が高かった。

  • 患者が抗がん治療の目標を正しく報告できない場合も多い。ある研究グループは、進行がん患者181人で構成されるコホートのうち30.4%が、ベースライン時点で治療により治癒の可能性があると考えていたことを報告している;20%は分からないと回答した。 [20] 結婚していない被験者、非都市部に居住している被験者、6ヵ月以内に死亡した被験者、および化学療法を受けている被験者では、治療の目標が治癒であると報告する割合が高かった。12週時点の評価では、目標が治癒であると報告した患者の数は減少したが、その差は有意ではなかった。この研究の結果は、1984年 [21] から現在までに報告された他の研究の結果と一致している。

  • 患者はしばしば、進行がんの診断が終期の状態を意味することに気付いていない。しかし、末期の診断であることを自覚している患者では、生活の質(QOL)が向上し、 [22] 自身の選好に沿ったケアを受けられる可能性が高くなる。 [23]

患者の選好

患者の選好を尊重することは、質の高いがん医療と患者の自律性を守る上で欠かせない。自身の終末期に関する選好について話し合う機会があった進行がん患者は、選好に沿ったケアを受けられる可能性が高かった。 [23] しかし、臨床腫瘍医が患者の選好を聞き出したり明確にしたりすることをせず、結果的に患者の選好に沿ったケアを提供できていない場合も多い。例えば、新たに診断された進行期肺がん患者128人を対象とした2011年の研究 [24] では、以下の結果が示された:


  • 88.2%が余命に関する情報提供を望んでいた(52.7%は説明を受けたと回答)。

  • 63.5%が緩和ケアに関する情報提供を望んでいた(25%は説明を受けたと回答)。

  • 56.8%が終末期の決定に関する情報提供を望んでいた(31%は説明を受けたと回答)。

  • 情報に関する自身の選好について質問された経験を覚えている患者はいなかった。

最終観察では、臨床腫瘍医はどのようにして患者の選好を聞き出せばよいかという、根本的な問いに焦点が置かれた。直接尋ねるのが最も単純明快な手法であるように思われるが、選好に関する2つの単項目尺度を検討した研究により、患者の意思決定に関する選好は使用される尺度によって変わってくる可能性のあることが明らかになった。 [25]

選好を聞き出す最適な方法があれば、おそらく患者の希望を尊重できない事態を減らせると考えられるが、そのような方法は明らかではない。進行がん患者には終末期ケアへの移行計画で重要となりうる選好がいくつかみられ、具体的には以下のようなものがある:


  • 予後に関する情報を開示するタイミングと方法。

  • 意思決定における役割。

  • 化学療法を行わない緩和ケアではなく緩和化学療法。

  • QOLまたは余命の延長。

選好に関する話し合いは複雑である:選好は狭く解釈されることもあれば、個人の基本的な価値観を反映していることもある。高齢患者337人を対象として、終末期ケアの管理に事前指示書を使用することへの態度を調査した研究 [26] では、85%の回答者が事前指示書に自身の要望を記載することを確実に必要(55%)またはある程度必要(30%)と考えていた。しかし、ほとんど(80%)の回答者は、全般的な価値観および目標の表明か、もしくは詳細な指示と全般的な指示の両方を記載することを好んでいた。能力を喪失した患者に代わって代理人が話し合いを行うことについて、強い選好が認められた。 [26]

予後についての情報に関する選好

余命を制限する疾患を有する患者は、予後に関する情報を欲し、 [27] そうした情報は希望を損なわない形で提供できると考えており、 [28] それらの情報に関する選好について腫瘍医が質問することを望んでいる。 [29] 患者が若年であること、女性であること、余命が短いことを患者が認識していることに、情報ニーズの増大との相関が認められる。 [8]

意思決定上の役割に関する選好

意思決定における患者の役割に関する選好を評価するために、さまざまな尺度が開発されている。Control Preference Scale [30] は、患者に5つの記述から自身のアプローチを最も反映しているものを1つ選択させ、それぞれの回答を積極的(active:「最終的な選択は自分で下したい」)、協同的(collaborative:「主治医と自分がともに責任を担う」)、受動的(passive:「主治医に最終決定を委ねたい」)のいずれかにコード化する。現時点で得られている情報からは、選好には大きな多様性があるものの、その多様性が、どの程度まで疾患と患者の種類との差に起因しているのか、あるいは、どの程度まで方法論的な相違を反映しているのかは不明である。


  • 70~89歳の転移性大腸がん患者に対して面接が実施され、意思決定における自らの役割に関する意向が質問された。 [8] 52%が受動的役割に対する選好を示した。受動的役割に対する選好は、高齢患者、女性患者、パフォーマンスステータス不良の患者、および新たに転移例と診断された患者でより多くみられた。

  • 別の研究では、31~83歳の転移性乳がんの女性患者において、前記と同程度の割合の患者(47%)が緩和化学療法に関する意思決定で自身の役割が受動的であったと報告した。二次化学療法に関する意思決定に直面している女性では、積極的な関与を報告する割合がわずかに高くなった(43% vs 33%;P = 0.06)。 [31]

  • 緩和ケアクリニックを受診している進行がん患者を対象とした研究では、63%の患者が意思決定で積極的な役割を担うことを望んでいたことが示された。 [32]

緩和化学療法に対する選好

数件の研究により、腫瘍内科医を受診する前の患者では化学療法に対する選好が広くみられることが特定された。 [33] 例えば、オランダの研究者グループは、緩和化学療法または最適な支持療法が合理的な選択肢である転移性のがん患者140人による意思決定の過程を評価した。 [34] 専門医を受診する前に化学療法に対する選好を表明した患者の割合は68%であった。最終的には78%の患者が化学療法を選択した。治療に対する選好と関連が認められた患者の特徴は、若年であることのみであった。治療法の選択における最も強力な予測因子は、専門医を受診する前の選好であった。

化学療法に対する選好は、患者が十分な説明を受けていない、あるいは自身の見通しに合うように情報を拒絶または解釈しているという観察結果と部分的に関連している可能性がある。さらに、患者は臨床腫瘍医が予想するより、余命をより重視し、QOLをそれほど重視しない場合もある。 [35]

QOLまたは余命に対する選好

本要約の患者の選好に関するセクションの冒頭で述べたように、患者の選好は狭く解釈されることもあれば、広く解釈されることもある。患者の価値観を把握する上では、具体的な選好の基盤をなす選好に注目するのがよいであろう。 [36] 測定される選好だけでなく、選好の測定方法も大きく異なる。関心のある読者は、さまざまなツールについて考察している2012年のレビューを参照するとよいであろう。 [37] 以下の段落では、注目すべき観察結果の一部を提示する。


  • ある研究 [38] の多変量解析では、化学療法に対する進行がん患者の選好が、余命に対する高い評価とQOLに対する低い評価によって説明された。後者の変数はQuality-Quantity Questionnaire(QQQ)で測定されたが、この質問票では、QOLの改善を望む、余命の延長を望む、または選好なしのいずれかに患者を分類する。 [39] 専門医を受診する前の患者の選好は、QOLではなく余命の延長を望むことによって最も強力に説明された。進行がんにおける化学療法では実証可能な延命効果が得られないことから、著者らは、化学療法の目標を明確にする専門医の受診時に患者に対して正確な情報が提供されていない可能性があると推測した。

  • 別の研究では、 [40] がん(病期は問わない)の外来患者125人を対象として、治療に対する態度についての面接が行われた。また患者はQQQにも回答した。研究者らは、高齢の患者、疲労が強い患者、QOLの価値を否定的に評価する患者では、他の患者と比べて、生活の質をより重視する傾向があることを特定した。診断から6ヵ月以内の患者は、余命の長さをより重要視した。ただし、この研究では、生活の質と比較して余命の長さの重要性が順位付けされたわけではないことに注意する必要がある。QOLを確保する取り組みとACPに対する評価との間に相関が認められた。

  • 3番目の研究では、進行がん患者のみが登録され(回答者459人)、QOLまたは余命の長さの価値を相対的に評価するように依頼された。 [41] 55%はQOLと余命の長さの価値を同等に評価し、27%はQOLを、18%は余命をそれぞれ高く評価した。QOLに対する選好には、高齢であること、男性であること、教育水準が高いこととの相関が認められた。余命の延長に対する選好を示した患者は、腫瘍医とのコミュニケーションに悲観的な要素が少ないことも望んでいた。

患者にとってのケアの目標

進行がん患者に対するケアの目標に関する話し合いは、多くの人々が終末期ケアへの移行計画の重要な要素であると考えている。しかし、ケアの目標の定義には、関連する文献間で大きなばらつきがみられる。進行がん患者(および他の余命を制限する疾患の患者)のケアの目標に関連する重要な観察について考察する前に、治療の目標とケアの目標を区別するべきかどうかを検討することが重要である。


  • 一部の研究者は、疾患に向けた治療の目標を表すためにケアの目標という語句を使用している。しかし、そのような目標は治療の目標とした方が、おそらく明確となるであろう。

  • また別の見方では、ケアの目標は、寛解または治癒を目指して行われる疾患に対する治療に関連した目標とは区別される;ケアの目標には、患者と家族が疾患に向けた治療では意図した目標を達成できないことを受け入れ、「意味、快適さ、目的に対する人間の根本的なニーズ」を追求する過程で抱く関心が反映される。 [42] この視点に立つと、ケアの目標は、本要約で既に言及した望ましい死(good death)を規定する態度に類似している。

別の視点からは、複数の目標が連続的に関連しているとみることもできるが、その場合、ケアの目標に関する対話の目的は、患者が多様な選択肢を識別して目標を達成できるようにサポートすることである。体系的な文献レビューと、ケアの目標に関する緩和ケア医との相談を対象とした定性的な分析では、以下に要約するように、この視点を裏付けている:


  • ある研究では、関連する文献の分析により、余命を制限する疾患の患者に対するケア目標の分類が確立された。 [42] 著者らは、包括的な目標として、治癒;延命;機能、QOLおよび独立性の改善または維持;快適性;人生の目標の達成;ならびに家族や介護者に対する支援の6つを提唱した。

  • 別の研究では、緩和ケア医を受診した際に行われた予後に関するコミュニケーションの定性的な分析について報告されている。 [43] この報告では、緩和ケア医は特定のケア目標を除外して患者に代替的な目標を検討させることを促す戦略を用いていたと記載されている。このことは、疾患に向けた治療が妥当でなくなった場合には、より個人的な目標がしばしば治療関連の目標に取って代わることを示唆している。

現時点では、ケアの目標に関する話し合いが進行がん患者の終末期の転帰に肯定的または否定的な影響を及ぼすことを示したデータは存在しない。

患者の宗教的または霊的な信念と価値観

患者の宗教、および患者の選好と一致する霊的ケアの提供について、終末期の転帰との相関が認められている。CwCからの一連の報告 [44] [45] [46] によると、重篤な疾患または生命を脅かす疾患を有する患者の約半数は、宗教的対処の尺度であるRCOPEのPositive Religious Coping Scalesサブスケールのスコアが高く、宗教的または霊的な信念を重要視していた。RCOPEのスコアは、アフリカ系アメリカ人とヒスパニック系の患者で有意に高かった。

人口統計学的特性の差について調整した複数の解析において、積極的な宗教的対処の水準が高いことは、その水準が低い場合と比べて、最期の1週間における人工呼吸器の使用(11.3% vs 3.6%)、および精力的な延命処置の実施(13.6% vs 4.2%)と有意に関連していたことが示された。 [44] 宗教的および霊的な懸念に対する医療機関の取り組みの程度は、この関連性にかなりの影響を及ぼしうる。医療チームが霊的な要望に十分対応してくれたと報告した患者(26.3%)では、ホスピスケアを受けた割合が有意に高く、積極的なケアを受けた割合が低く、報告したQOLが良好であった。聖職者によるケア(約46%の患者が受けた)は、上記のケアの実施には影響しなかったが、死の直前のQOLに対して影響を及ぼした。 [45]

患者と腫瘍医との終末期に関する話し合い

終末期に関する話し合いの想起

終末期に関する話し合いを想起することは、進行がん患者の終末期ケアに関する意思決定と転帰に影響を及ぼす。CwCに登録された患者332人のうち123人(37%)は、「あなたは、死が迫りつつあるときに受けたいと考えているケアについて、主治医と話し合いましたか」という質問に対して肯定的に回答した。 [4] 終末期に関する話し合いの想起は、人工呼吸器の使用率、蘇生の施行率、またはICUへの入室率の低値に関連し、ホスピスへの早期紹介にも関連していた。

その後の解析では、CwCへの登録中に死亡した患者325人の治療に対する選好が報告された。 [23] 進行がん患者の72%は快適さに重点を置いた治療を望み、「選択できるとしたら、たとえ余命が長くないとしても、痛みと不快感の軽減に的を絞ったケアの計画を望みますか」という質問に肯定的な回答を返したが、28%は延命治療を望んだ。68%はベースライン時の選好に沿った終末期ケアを受けた。選好と一致したケアを受ける可能性は、患者が終末期について医師と話し合ったことを報告した場合(OR = 2.26;P < 0.0001)、または自身が末期疾患であることを認識していた場合(OR = 3.94;P = 0.0005)に高かった。

ホスピスに関する話し合いの想起

ホスピスに関する話し合いは、ホスピスへの登録率を増加させる。CanCORSの一環として、研究者らは1,572人のIV期肺がん患者(または、患者が健康上の理由で参加できないか死亡した場合は代理人)との面接を実施し、その面接以前に医療提供者とホスピスについて話し合ったことがあるかどうかを尋ねた。 [48] 最終的な研究コホートに含まれた患者1,517人のうち、807人(53%)が面接以前に医師とホスピスについて話し合っていた。ホスピスに関する話し合いは、診断から1年以内のホスピスへの登録を強力に予測した(話し合いありで70%が登録 vs 話し合いなしで26%が登録;P < 0.001)。

決定の性質

化学療法を受けることの決定

進行がん患者は、しばしば治療の過程で複数のレジメンによる化学療法を受ける。決定される進行がんの治療が第一選択治療と第二選択治療のどちらであるかが意思決定の過程に影響を及ぼす可能性がある。ある研究グループは、第一選択(n = 70)または第二選択(n = 47)の緩和化学療法を受けていた進行乳がんの女性102人を対象として、117回の半構造化面接を行った。 [31] 第一選択治療コホートに比べて、第二選択治療コホートの女性では、自身が化学療法を受ける決定を下した理由として、希望が持てることを挙げる傾向が強く(43% vs 19%;P = 0.006)、意思決定過程で積極的な役割を果たしたことを報告した割合も高かった。別のグループは、特定の治療法を支持する証拠や特定の治療法を否定する証拠が少ない場合と、がんが進行している場合には、決定に対する医師のコントロールが強くなることを明らかにした。 [49] このように治療に対する患者側の理由と腫瘍医による見通しの重要性は、決定の性質に伴って変化する。

治療を制限する決定

進行がんに起因するほとんどの死亡では、それ以前に治療を制限する決定が行われている。こうした決定の普及率、重要性、課題が検討されているが、意思決定時に患者の選好がどのように考慮されるかについては、ほとんど知見が存在しない。

ある研究グループは、医療チームに所属する研究者を利用して、治癒不能ながんの入院患者76人を対象に、延命治療となりうる処置を制限するための協議を特徴付けた。 [50] 患者の3分の2は緩和ケアを希望し、3分の1は延命治療を望んだ。緩和に対する患者の選好は、延命に対する患者の選好よりも、腫瘍医の選好に一致することが多かった(91.4% vs 46.7%;P = 0.001)。患者は、治療を制限する決定の半数にのみ関与していた。年齢、パフォーマンスステータス、決定能力は患者が関与する割合に影響しなかった;腫瘍医の選好との一致が主な予測因子であった。したがって治療を制限する決定には、共同での意思決定過程よりも、共有された知覚が反映される可能性がある。


参考文献
  1. A controlled trial to improve care for seriously ill hospitalized patients. The study to understand prognoses and preferences for outcomes and risks of treatments (SUPPORT). The SUPPORT Principal Investigators. JAMA 274 (20): 1591-8, 1995 Nov 22-29.[PUBMED Abstract]

  2. Haidet P, Hamel MB, Davis RB, et al.: Outcomes, preferences for resuscitation, and physician-patient communication among patients with metastatic colorectal cancer. SUPPORT Investigators. Study to Understand Prognoses and Preferences for Outcomes and Risks of Treatments. Am J Med 105 (3): 222-9, 1998.[PUBMED Abstract]

  3. Weeks JC, Cook EF, O'Day SJ, et al.: Relationship between cancer patients' predictions of prognosis and their treatment preferences. JAMA 279 (21): 1709-14, 1998.[PUBMED Abstract]

  4. Wright AA, Zhang B, Ray A, et al.: Associations between end-of-life discussions, patient mental health, medical care near death, and caregiver bereavement adjustment. JAMA 300 (14): 1665-73, 2008.[PUBMED Abstract]

  5. Chen AB, Cronin A, Weeks JC, et al.: Palliative radiation therapy practice in patients with metastatic non-small-cell lung cancer: a Cancer Care Outcomes Research and Surveillance Consortium (CanCORS) Study. J Clin Oncol 31 (5): 558-64, 2013.[PUBMED Abstract]

  6. Ayanian JZ, Chrischilles EA, Fletcher RH, et al.: Understanding cancer treatment and outcomes: the Cancer Care Outcomes Research and Surveillance Consortium. J Clin Oncol 22 (15): 2992-6, 2004.[PUBMED Abstract]

  7. American Cancer Society: Cancer Facts and Figures 2017. Atlanta, Ga: American Cancer Society, 2017. Available online. Last accessed January 13, 2017.[PUBMED Abstract]

  8. Elkin EB, Kim SH, Casper ES, et al.: Desire for information and involvement in treatment decisions: elderly cancer patients' preferences and their physicians' perceptions. J Clin Oncol 25 (33): 5275-80, 2007.[PUBMED Abstract]

  9. Gagnon B, Mayo NE, Hanley J, et al.: Pattern of care at the end of life: does age make a difference in what happens to women with breast cancer? J Clin Oncol 22 (17): 3458-65, 2004.[PUBMED Abstract]

  10. Parr JD, Zhang B, Nilsson ME, et al.: The influence of age on the likelihood of receiving end-of-life care consistent with patient treatment preferences. J Palliat Med 13 (6): 719-26, 2010.[PUBMED Abstract]

  11. Fletcher K, Prigerson HG, Paulk E, et al.: Gender differences in the evolution of illness understanding among patients with advanced cancer. J Support Oncol 11 (3): 126-32, 2013.[PUBMED Abstract]

  12. Loggers ET, Maciejewski PK, Paulk E, et al.: Racial differences in predictors of intensive end-of-life care in patients with advanced cancer. J Clin Oncol 27 (33): 5559-64, 2009.[PUBMED Abstract]

  13. Mack JW, Paulk ME, Viswanath K, et al.: Racial disparities in the outcomes of communication on medical care received near death. Arch Intern Med 170 (17): 1533-40, 2010.[PUBMED Abstract]

  14. Smith AK, Davis RB, Krakauer EL: Differences in the quality of the patient-physician relationship among terminally ill African-American and white patients: impact on advance care planning and treatment preferences. J Gen Intern Med 22 (11): 1579-82, 2007.[PUBMED Abstract]

  15. Smith AK, Earle CC, McCarthy EP: Racial and ethnic differences in end-of-life care in fee-for-service Medicare beneficiaries with advanced cancer. J Am Geriatr Soc 57 (1): 153-8, 2009.[PUBMED Abstract]

  16. Haas JS, Earle CC, Orav JE, et al.: Lower use of hospice by cancer patients who live in minority versus white areas. J Gen Intern Med 22 (3): 396-9, 2007.[PUBMED Abstract]

  17. Mack JW, Chen K, Boscoe FP, et al.: Underuse of hospice care by Medicaid-insured patients with stage IV lung cancer in New York and California. J Clin Oncol 31 (20): 2569-79, 2013.[PUBMED Abstract]

  18. Sharma RK, Dy SM: Documentation of information and care planning for patients with advanced cancer: associations with patient characteristics and utilization of hospital care. Am J Hosp Palliat Care 28 (8): 543-9, 2011.[PUBMED Abstract]

  19. McCarthy EP, Burns RB, Ngo-Metzger Q, et al.: Hospice use among Medicare managed care and fee-for-service patients dying with cancer. JAMA 289 (17): 2238-45, 2003.[PUBMED Abstract]

  20. Craft PS, Burns CM, Smith WT, et al.: Knowledge of treatment intent among patients with advanced cancer: a longitudinal study. Eur J Cancer Care (Engl) 14 (5): 417-25, 2005.[PUBMED Abstract]

  21. Eidinger RN, Schapira DV: Cancer patients' insight into their treatment, prognosis, and unconventional therapies. Cancer 53 (12): 2736-40, 1984.[PUBMED Abstract]

  22. Yun YH, Kwon YC, Lee MK, et al.: Experiences and attitudes of patients with terminal cancer and their family caregivers toward the disclosure of terminal illness. J Clin Oncol 28 (11): 1950-7, 2010.[PUBMED Abstract]

  23. Mack JW, Weeks JC, Wright AA, et al.: End-of-life discussions, goal attainment, and distress at the end of life: predictors and outcomes of receipt of care consistent with preferences. J Clin Oncol 28 (7): 1203-8, 2010.[PUBMED Abstract]

  24. Pardon K, Deschepper R, Vander Stichele R, et al.: Are patients' preferences for information and participation in medical decision-making being met? Interview study with lung cancer patients. Palliat Med 25 (1): 62-70, 2011.[PUBMED Abstract]

  25. Gattellari M, Ward JE: Measuring men's preferences for involvement in medical care: getting the question right. J Eval Clin Pract 11 (3): 237-46, 2005.[PUBMED Abstract]

  26. Hawkins NA, Ditto PH, Danks JH, et al.: Micromanaging death: process preferences, values, and goals in end-of-life medical decision making. Gerontologist 45 (1): 107-17, 2005.[PUBMED Abstract]

  27. Fried TR, Bradley EH, O'Leary J: Prognosis communication in serious illness: perceptions of older patients, caregivers, and clinicians. J Am Geriatr Soc 51 (10): 1398-403, 2003.[PUBMED Abstract]

  28. Hagerty RG, Butow PN, Ellis PM, et al.: Communicating with realism and hope: incurable cancer patients' views on the disclosure of prognosis. J Clin Oncol 23 (6): 1278-88, 2005.[PUBMED Abstract]

  29. Hagerty RG, Butow PN, Ellis PM, et al.: Communicating prognosis in cancer care: a systematic review of the literature. Ann Oncol 16 (7): 1005-53, 2005.[PUBMED Abstract]

  30. Degner LF, Sloan JA: Decision making during serious illness: what role do patients really want to play? J Clin Epidemiol 45 (9): 941-50, 1992.[PUBMED Abstract]

  31. Grunfeld EA, Maher EJ, Browne S, et al.: Advanced breast cancer patients' perceptions of decision making for palliative chemotherapy. J Clin Oncol 24 (7): 1090-8, 2006.[PUBMED Abstract]

  32. Bruera E, Sweeney C, Calder K, et al.: Patient preferences versus physician perceptions of treatment decisions in cancer care. J Clin Oncol 19 (11): 2883-5, 2001.[PUBMED Abstract]

  33. Kiely BE, Stockler MR, Tattersall MH: Thinking and talking about life expectancy in incurable cancer. Semin Oncol 38 (3): 380-5, 2011.[PUBMED Abstract]

  34. Koedoot CG, de Haan RJ, Stiggelbout AM, et al.: Palliative chemotherapy or best supportive care? A prospective study explaining patients' treatment preference and choice. Br J Cancer 89 (12): 2219-26, 2003.[PUBMED Abstract]

  35. Harrington SE, Smith TJ: The role of chemotherapy at the end of life: "when is enough, enough?". JAMA 299 (22): 2667-78, 2008.[PUBMED Abstract]

  36. Epstein RM, Peters E: Beyond information: exploring patients' preferences. JAMA 302 (2): 195-7, 2009.[PUBMED Abstract]

  37. Blinman P, King M, Norman R, et al.: Preferences for cancer treatments: an overview of methods and applications in oncology. Ann Oncol 23 (5): 1104-10, 2012.[PUBMED Abstract]

  38. Koedoot CG, Oort FJ, de Haan RJ, et al.: The content and amount of information given by medical oncologists when telling patients with advanced cancer what their treatment options are. palliative chemotherapy and watchful-waiting. Eur J Cancer 40 (2): 225-35, 2004.[PUBMED Abstract]

  39. Stiggelbout AM, de Haes JC, Kiebert GM, et al.: Tradeoffs between quality and quantity of life: development of the QQ Questionnaire for Cancer Patient Attitudes. Med Decis Making 16 (2): 184-92, 1996 Apr-Jun.[PUBMED Abstract]

  40. Voogt E, van der Heide A, Rietjens JA, et al.: Attitudes of patients with incurable cancer toward medical treatment in the last phase of life. J Clin Oncol 23 (9): 2012-9, 2005.[PUBMED Abstract]

  41. Meropol NJ, Egleston BL, Buzaglo JS, et al.: Cancer patient preferences for quality and length of life. Cancer 113 (12): 3459-66, 2008.[PUBMED Abstract]

  42. Kaldjian LC, Curtis AE, Shinkunas LA, et al.: Goals of care toward the end of life: a structured literature review. Am J Hosp Palliat Care 25 (6): 501-11, 2008 Dec-2009 Jan.[PUBMED Abstract]

  43. Norton SA, Metzger M, DeLuca J, et al.: Palliative care communication: linking patients' prognoses, values, and goals of care. Res Nurs Health 36 (6): 582-90, 2013.[PUBMED Abstract]

  44. Phelps AC, Maciejewski PK, Nilsson M, et al.: Religious coping and use of intensive life-prolonging care near death in patients with advanced cancer. JAMA 301 (11): 1140-7, 2009.[PUBMED Abstract]

  45. Balboni TA, Paulk ME, Balboni MJ, et al.: Provision of spiritual care to patients with advanced cancer: associations with medical care and quality of life near death. J Clin Oncol 28 (3): 445-52, 2010.[PUBMED Abstract]

  46. Maciejewski PK, Phelps AC, Kacel EL, et al.: Religious coping and behavioral disengagement: opposing influences on advance care planning and receipt of intensive care near death. Psychooncology 21 (7): 714-23, 2012.[PUBMED Abstract]

  47. Pargament KI, Smith BW, Koenig HG, et al.: Patterns of positive and negative religious coping with major life stressors. J Sci Study Relig 37 (4): 710-24, 1998.[PUBMED Abstract]

  48. Huskamp HA, Keating NL, Malin JL, et al.: Discussions with physicians about hospice among patients with metastatic lung cancer. Arch Intern Med 169 (10): 954-62, 2009.[PUBMED Abstract]

  49. Keating NL, Beth Landrum M, Arora NK, et al.: Cancer patients' roles in treatment decisions: do characteristics of the decision influence roles? J Clin Oncol 28 (28): 4364-70, 2010.[PUBMED Abstract]

  50. Winkler EC, Reiter-Theil S, Lange-Riess D, et al.: Patient involvement in decisions to limit treatment: the crucial role of agreement between physician and patient. J Clin Oncol 27 (13): 2225-30, 2009.[PUBMED Abstract]

 | 

終末期ケアへの移行計画に対する潜在的な障壁

進行がんの患者が受けるケアは、その大部分が患者の選好によって決定されるべきである。しかし、終末期ケアの決定と転帰に影響を及ぼす因子のセクションで検討した証拠によると、患者には情報に基づいて選好を形成する機会が不足しているため、患者が自身の個人的な価値観や目標に沿わない可能性のあるケアを要望することがある。

このセクションでは、進行がん患者と腫瘍医が予後、目標、選択肢、選好について話し合うことを阻害しうる障壁を特定する。 [1] 臨床腫瘍医は、こうした困難な話し合いに慎重に臨むために必要な戦略を立てる際に、この情報を利用することができる。

潜在的な障壁を以下に示す:


  • 予後に関する情報についての患者の解釈。

  • 患者と腫瘍医の見解の不一致。

  • 腫瘍医のコミュニケーション行動。

  • 終末期(EOL)の話し合いの有害な側面について腫瘍医が抱いている誤解。

  • 腫瘍医の態度と選好。

  • 化学療法に対する払い戻しと経済的な実践。

  • 疾患に向けた治療以外の選択肢についての不確実性。

予後に関する情報についての患者の解釈

過去20年間にわたって一貫している見解に、進行がん患者は通常、自身の余命について、またはがんに対する療法の治癒可能性について過度に楽観的であるというものがある。


  • ある研究グループがCancer Care Outcomes Research and Surveillance Consortiumに参加した患者1,193人に対する研究で明らかにしたところによると、進行した肺がんまたは大腸がん患者の大多数が、受けている治療が治癒を目標とするものでないことを理解していなかった。患者の69%は、自身のがんは化学療法で治癒する見込みがないとの理解を報告していない。 [2] 非白人患者、大腸がんの診断を受けた患者、医師とのコミュニケーションに満足していると報告した患者は、治療意図を不正確に理解した内容をより多く報告する傾向がみられた。

  • 同様に、放射線療法を受けている治癒不能な肺がん患者の64%は、放射線照射による治癒の可能性がないことを理解していなかった。高齢患者および非白人患者には、より多く誤解が生じる傾向がみられた;患者の代理人は正しく理解することが多かった。 [3]

予後の正確な理解を阻害しうる障壁は多数存在するが、臨床腫瘍医とのコミュニケーションが不十分であることもその1つである。しかし、患者はコミュニケーションの質とは無関係な理由によっても情報を解釈する。進行がん患者が予後に関する情報を誤解する理由については、第I相臨床試験に登録された進行がん患者の視点やICU患者の代理として意思決定を行う個人の視点から洞察を得ることができる。


  • 第I相試験で得られる利益について患者が抱く楽観的な期待は、良好な生活の質、強い宗教的信念、楽観主義、低い数量的な思考能力(治療成績に関する統計学的推定を理解する能力)、金銭的リスクの追求に関連していた。年齢、性別、教育水準、機能的状態との関連は認められなかった。 [4]

  • 第I相試験に登録された163人の患者を対象とした研究では、ほとんどの患者がホスピス(81%)または緩和ケア(84%)のことを把握していたが、それらの選択を真剣に検討していた患者は少数のみであった(ホスピス10%;緩和ケア7%)。患者の75%は、自身のがんが増殖しているという認識の影響が最も重要であったと報告した;患者の63%は、第I相の薬剤ががん細胞を殺傷するということが、登録を決める最も重要な要因であったと述べた。 [5]

  • ICU患者の家族から募集した80人の意思決定代理人を対象とした研究では、ICUの医師が提示する定量的情報とあいまいさの少ない定性的な推定について、ほとんどの代理人がかなり正確に解釈していた。しかし、予後に関する誤解との関連が考えられるいくつかの要因として、楽観主義を表明する必要性、患者の不屈の精神が予想より良好な結果につながるという認識、医師による予測の正確性に関する不信などが認められた。 [6]

患者と腫瘍医の見解の不一致

進行がん患者と腫瘍医の間で数多く会話が交わされることは、予後、目標、選好、選択肢、意思決定過程についての理解につながると考えられる。しかし、研究による証拠から示唆されるように、患者と腫瘍医がこれらの点について同じ結論に至らないことは頻繁にある。こうした見解の不一致が終末期ケアへの移行に及ぼす影響については、明らかになっていない。とはいえ、治療の目標についての不一致や誤認が、例えば終末期ケアへの移行を適切な時期に計画することに好ましい影響を及ぼすとは考えにくい。

予後についての理解

ある研究グループは、Study to Understand Prognoses and Preferences for Outcomes and Risks of Treatments(SUPPORT)に登録された転移性大腸がんまたは肺がんの成人患者917人とその担当医について、予後の推定結果を分析した。 [7] 主に次の3つの知見が得られた:


  • 患者は医師より楽観的であった。

  • 医師の見込みは、患者の見込みと比べて、観察された生存率によって補正されやすかった。

  • 腫瘍医よりも楽観的であった患者では、延命治療を希望する傾向が強かった。

患者と臨床腫瘍医で認識が一致しない状況は、急性骨髄性白血病の患者 [8] や同種幹細胞移植を検討している患者 [9] など、さまざまな患者において観察されている。(予後についての患者の理解に関する追加情報については、本要約の予後に関する情報についての患者の解釈のセクションを参照のこと。)

治療の目標

患者と腫瘍医の間では、しばしば、がん治療の目標について理解が共有されていないことがある。ある研究グループは、調査対象とした進行がん患者とその担当医のペアの25%で、実際の状況に反して、患者がケアの目標を治癒と考えていたと報告している。 [10] より若年の患者、英語を母語とする患者、書面で情報を得た患者は、化学療法の意図についての見解が腫瘍医と一致する可能性が高かった。他の研究グループの報告によると、進行期の肺がん患者の64%は、処方された放射線療法では治癒が得られないことを理解していなかった。 [3]

専門医との相談で想起される話題

ある研究では、第I相試験の話し合いで行われたコミュニケーションと意思決定について、患者と腫瘍医がそれぞれ異なる要素を想起する場合が多かったことが報告されている。 [11] 例えば、参加した17人の腫瘍医のうち13人では、予後に言及した相談の割合が50%未満であった。腫瘍医は予後について患者と話し合ったと報告することが多かったが、そうした報告を正しいと判定したのは、患者の12%と相談内容の記録をコード化した独立した研究者の20%に過ぎなかった。未知の有害事象がありうることと試験への参加が自発的なものであることについては、高い割合で見解の一致がみられた。

意思決定上の役割に対する患者の選好

臨床腫瘍医は、意思決定上の役割に関する患者の選好を正確に把握していないことが多い。少数の例証的研究で得られた結果を以下に要約する。


  • 転移性大腸がんの高齢患者を対象とした研究では、52%が受動的役割を望んでいた。しかし、腫瘍医が正確に患者の選好を把握していた例は、全体の41%のみであった。 [12]

  • 緩和ケアクリニックにおいて、緩和ケア医が意思決定に関する進行がん患者の選好を正確に特定できた例は、全体の38%のみであった。 [13]

患者のパフォーマンスステータスの評価

医師は予後の判定と治療法の決定において患者のパフォーマンスステータス(PS)を評価する。ある研究で、進行した肺がんまたは大腸がんの患者1,636人について、医師と患者によって報告されたEastern Cooperative Oncology GroupのPSを比較した。 [14] PSについて患者と医師の間で56.6%の不一致がみられ、医師の方がPSについて楽観的で(平均、0.91 vs 1.30)、見解の不一致に死亡リスク増大との関連が認められた。

心肺蘇生に関する患者の選好

SUPPORTの第1部によると、心肺蘇生(CPR)を受けたくないという患者の要望を把握していた医師は47%に過ぎなかった。 [15] その後の解析では、転移性大腸がんの患者520人が研究対象とされた。 [16] 339人の患者でCPRに関する選好についての情報が得られ、223人(63%)がCPRを望んでいることが明らかになったが、医師は30%の症例で患者の選好を正確に把握していなかった。CPRに対する選好は、2ヵ月時点で生存している可能性をより楽観的に認識していた患者の間で強かった。別の研究では、肺疾患を有する患者の集団で同様の結果が得られている。 [17] 医師は高い頻度で患者の選好を誤って把握していた(医師・患者の全ペアの25~40%)。不一致の割合は、患者が蘇生拒否を希望している場合に増加した。いずれの研究でも、患者の転帰に関する不一致の影響は報告されていない。

腫瘍医のコミュニケーション行動

このセクションでは、進行がん患者を治療する腫瘍医のコミュニケーション行動について、その問題点を同定した証拠を要約する。ここで言及する証拠は、医師・患者間のコミュニケーションが十分な情報に基づく意思決定や共同での意思決定を十分には支持するものになっていない場合が多いことを強く示唆している。この情報を活用することで、臨床腫瘍医は自身のコミュニケーションの習慣について反省し、終末期ケアへの移行計画を適切な時期に立てる上での問題点の是正を検討することが可能になる。

患者と腫瘍医のコミュニケーションに関する観察研究

9人の腫瘍医の1人と進行がん患者118人との相談をテープに録音して検討した研究が報告されている。 [18] この研究者らは、コーディングシステムを開発して、重要な情報(例えば、治療の目的、がんの治癒が望めないこと、治療のリスク、余命に関する情報、代わりの治療法選択肢)が明かされる頻度や、医師が患者に意思決定への参加を促す程度を評価した。以下ではその結果を要約し、適宜、この研究とは独立した観察結果を引用する。


  • ほとんどの腫瘍医は、進行がんにおける化学療法の目的が治癒でないことを告知したが、化学療法の代替案を説明した腫瘍医は少数のみであった。74.6%の面接で、患者はがんが治癒不能であることを告げられた。しかし、その際に余命の情報を提示された患者は57.6%のみであり、代わりの治療法に関する情報を示された患者は44.6%のみであった。

  • 腫瘍医が患者の理解を確認することはまれであった。開示された情報と意思決定過程の理解について腫瘍医が患者に質問した面接は、全体のわずか10%であった。

  • 共同での意思決定に必須の要素が頻繁に欠落していた。参加した腫瘍医は、治療が有益となるかはしばしば不確かであることを認め(72.9%)、治療を受けることに伴うトレードオフについて話し合い(60.2%)、治療についての患者の見込みを聞き出していた(69.5%)。しかし、選択肢を提示された患者は29.7%で、腫瘍医が患者の理解の評価を実施した面接は10.2%にとどまった。

腫瘍医のコミュニケーション行動には、他にも以下のような不備が認められた:


  • 腫瘍医は、不適切に楽観的な意見を述べるなど、あいまいな言葉や事実に反して安心させる言葉を発することが少なくない。ある研究グループは、腫瘍医と患者による面接の録音テープを使って、腫瘍医が現在の治療による治癒可能性について述べている場面の分析を行った。 [19] この録音テープは、予後に関する見解の一致の程度に基づいて選択され、そうした一致を予測する因子を判定するためにコード化された。腫瘍医は楽観的な意見を多く述べていたが、悲観的な意見の方が予後に関する見解の一致の程度が高くなる傾向がみられた。著者らが結論付けた最良のコミュニケーション戦略は、楽観的傾向には患者の予後理解を妨げる可能性があることを認め、予後に基づいて誠実な情報を提示するよう努力することであった。

  • 進行がんに対する化学療法で予想される延命効果について、腫瘍医が言及しないことは頻繁にある。ある研究では、解析対象とされた37件の相談のうち26件において、腫瘍医が緩和(すなわち治癒を目標としない)化学療法によって見込まれる延命効果について患者に情報を提供しなかったことが示された。 [20]

予後に関するコミュニケーションにおいて腫瘍医が自己報告する実践

予後に関するコミュニケーションに対する医師の態度が患者の予後の認識に影響するという証拠がある。Cancer Care Outcomes Research and Surveillance(CanCORS)Consortium [21] の医師の調査を解析し、転移性の肺がんまたは大腸がん患者は、最も重要な医師が悪化が認められないか待機するというよりもむしろ早期に予後についての話し合いについて報告する場合に予後を正確に認識する傾向がみられた(18.5% vs 7.6%;オッズ比、3.23;95%信頼区間、1.39-7.52;P = 0.006)ことが研究者らにより報告された。したがって、腫瘍医の態度に影響を及ぼす因子の解明は予後に関するコミュニケーションの改善に関連している。米国人の腫瘍医を対象とした予後に関するコミュニケーションについての追加の調査が2件発表されている。一方の研究では、729人の腫瘍医による回答(回答率64%)が解析された。 [22] ほとんどの医師(98%)が末期患者にも予後を告知すると回答したが、48%は予後の告知に関する患者の選好が判明している場合に限定するとした。常に余命の推定期間を知らせていた医師は半数未満(43%)であった。3/4の医師は末期患者との予後に関するコミュニケーションについて訓練を受けておらず、96%は訓練を義務化するべきと考えていた。

別の研究での報告によると、調査対象となった医師の65%は、余命4~6ヵ月の無症状の進行がん患者とは、直ちに予後に関する話し合いを行っていた。 [23] しかし、蘇生(44%)またはホスピス(26%)に対する選好や死を迎えたい場所(21%)について直ちに話し合うとした医師は比較的少なく、ほとんどの医師は症状の発現を待つか、それ以上施行できる治療がなくなるまで待機するようであった。比較的若年の医師、外科医、腫瘍医は、がん以外の専門医よりも予後について話し合うこと多かった。

終末期に関する話し合いの有害性に関する腫瘍医の誤解

腫瘍医が終末期に関する話し合いを躊躇する理由がいくつか挙げられている。しかし、数件の研究で得られた証拠によると、そうした懸念の多く(心理的に有害である、希望を打ち砕くなど)は妥当ではない。それどころか終末期についての対話は心理的に有害ではなく、心理的適応を改善する可能性があると同時に、予後についての明確な情報が必ずしも患者の希望を損なうわけでもない。


  • プロスペクティブな多施設共同縦断コホート研究では、終末期ケアに関する話し合いが心理的に有害でなかったことが報告されている。「あなたは、死が迫りつつあるときに受けたいと考えているケアについて主治医と話し合いましたか」という質問に対して肯定的に回答した進行がん患者における全般性不安障害または大うつ病性障害の発生率は、そうした話し合いを想起しなかった患者と比較して高くなかった(それぞれ、3.3% vs 1.4%および8.3% vs 5.8%)。 [24] 加えて、そうした話し合いの想起に心配の程度との関連は認められなかった。

  • 別の研究では、情報の開示と意思決定によって生じた患者の不安は一過性のものであったか、あるいは心理的適応を改善した可能性のあることが示された。腫瘍医が開示した情報の量で患者の不安の程度は予測できなかった。 [18] しかし、意思決定への参加を患者に強く勧めることは、相談直後から2週間後までの不安の増大に独立して関連していた。

    また別の研究では、6ヵ月時点で生存している可能性が低いと推定された進行がんの男性において、不安および抑うつのレベルが高かった。 [25] しかし、担当の腫瘍医と予後について十分話し合ったと報告した男性では、抑うつの程度がより低く、不安は同程度であった。したがって、予後に関する話し合いは、不安と抑うつの関係を緩和したほか、長期間の心理的調整を促進した可能性がある。


  • ある研究では、予後を明確に告知し、見捨てられることはないという安心感を与えることが、患者にとって有益であった。この研究では、乳がん患者と健康な女性を対象として、2つのレベルで行われる予後告知と再保証の様子を描写した4つのビデオ資料に対する反応が調査された。 [26] 明確さと安心感は不安定感と不安を軽減した。著者らは、これらが実験上の知見であることについて注意を促している。

腫瘍医の態度と選好

このセクションでは、腫瘍医の態度と選好がコミュニケーションや意思決定行動に影響を及ぼし、それによって患者の終末期に関する決定が変化しうることを強く示唆した情報について要約する。

ある研究によると、病院スタッフは、終末期のケアの積極性にみられる差異が、医師の信念、態度、医療実践内での社会化などの医師の特性に起因すると認識していた。 [27] その結果として、事前指示、予後、終末期の治療の制限、死期が近づいていることの承認についてのコミュニケーションは医師によって大きく異なっていた。2011年の研究では、医師は自身のために選択する治療とは異なる治療を患者に勧める可能性が示された。 [28] このセクションは、臨床腫瘍医が自身のバイアスとそれらが自身のコミュニケーション行動に及ぼす影響を最小限に抑えるための方法を振り返ることを促す内容となっている。

治癒を目標としない治療に対する腫瘍医の選好

臨床腫瘍医は、治療に関する選好についての患者の理解度に影響を及ぼす。オランダの研究者らは、症例の経過が記載された資料を用いて、腫瘍内科医の緩和(治癒を目標としない)化学療法または経過観察に対する選好について調査した。 [29] 腫瘍医の性別、年齢、雇用状態、病院の種類は、化学療法に対する選好に影響しなかった。しかし、高齢患者または選好を表明していない患者は、化学療法を受ける可能性が低かった。予測される延命効果が3ヵ月以上の場合、治療の毒性が軽度である場合、または疾患増悪の症状が特定されている場合は、化学療法に対する選好が強かった。これらの知見は、米国の腫瘍医を対象に緩和ケアではなく延命治療に対する選好について明らかにした研究の結果と一致している。 [30]

腫瘍医および共同での意思決定

複数の調査によると、腫瘍医は共同での意思決定の概念を広範囲に支持している。しかし、経験的研究により、腫瘍医のコミュニケーション行動が共同での意思決定を支持しない場合が多いことが明らかにされている。

ある研究グループは、オーストラリアのがん専門医との面接で意思決定への患者の参加について質問し、患者の参加に影響を及ぼすいくつかの因子を同定した。 [31] 疾患に関連する因子として、病期、治療法選択肢の利用可能性、患者に対するリスクなどがあった。さらに、疾患に対する社会一般の認識と、明らかに最適な選択肢が存在するか否かも重要であった。病期が進行して治療法選択肢の確実性が低くなると、がん専門医が意思決定に患者を参加させることが多くなる傾向がみられた。患者に以下の特徴がみられた場合、患者を関与させようとする医師の取り組みが減少した:


  • 強い不安。

  • 高齢。

  • 女性。

  • 地中海地方、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパの背景。

  • 職業生活の多忙。

医師は関与に対する患者の選好を認識していたが、ほとんどの患者は自身の専門的意見に従うと考えていた。さらに、患者の選好を判定できる検証済みの手法を有する医師はほとんどいなかった。

終末期ケアに対する腫瘍医の態度

終末期ケアに対する態度も、腫瘍医のコミュニケーションと意思決定行動に影響を及ぼす可能性がある。ある定性的研究の報告によると、学術施設の腫瘍医18人に最近の患者の死亡について振り返るよう依頼したところ、終末期ケアを業務の重要な一部と捉えていた腫瘍医は職業上の満足度が高かった。 [32] 他の研究者は、日本の腫瘍医を対象として、抗がん治療の中止を勧める際に腫瘍医が経験する負担の程度を評価した調査結果を報告した。 [33] 47%が高レベルの負担を報告した。負担の感覚を規定する因子の多変量解析では、以下の共変量が同定された:

  1. 患者が希望を失いつつあるという感覚。
  2. 家族が医師を非難するかもしれないという懸念。
  3. 患者が精神的なコントールを失うかもしれないという懸念。
  4. 推奨内容について話し合う時間が足りなかったという懸念。

化学療法に対する払い戻しと経済的実践

2003年以前の化学療法に対する払い戻し額は、腫瘍内科医が支払う仕入れ価格を大きく超えていた。現在では化学療法の利潤は減少したものの、依然として化学療法は腫瘍医の主要な収入源となっている。研究によると、進行がん患者に化学療法を処方する医師の決定は、払い戻し率による影響を受けないが、払い戻し率が高い場合には高価なレジメンが多く施行される傾向が認められた。 [34] その他の結果を以下に要約する:


  • 強度変調放射線療法(IMRT)のオーナーシップを取得した泌尿器科医では、IMRTのオーナーシップをもたない泌尿器科医に比べて、IMRTの利用率の上昇幅が大きかった(前者は13.1%から32.3%、後者は14.3%から15.6%)。 [35] National Comprehensive Cancer Networkのがんセンターでの利用率は、8%で変化がなかった。

  • 出来高払いの報酬体系または生産性に応じた給与体系で業務を行っている腫瘍医は、化学療法または造血因子製剤の使用増加に伴う収入の増加をより多く報告する傾向がある。 [36]

疾患に向けた治療以外の選択肢に関する不確実性

終末期ケアへの移行計画に対する最後の障壁は、患者が蘇生などの延命処置の中止を検討する際に使用される言葉のまぎらわしさであろう。臨床腫瘍医、患者、家族は、支持(supportive)や緩和(palliative)などの用語に対して、それぞれの経験や理解に基づいて異なる(多くは妥当な)意味を割り当てる。2013年の系統的レビューでは、支持療法(supportive care)、緩和ケア(palliative care)およびホスピス(hospice)の定義に関して、認識の不一致が幅広く認められた。 [37]

進行がんにおける支持療法、緩和ケア、ホスピスのセクションでは、より厳密に用語を定義するとともに、進行がん患者にとって重要となる各レベルのケアの目的を明確に伝達することについて考察する。


参考文献
  1. Quill TE, Holloway RG: Evidence, preferences, recommendations--finding the right balance in patient care. N Engl J Med 366 (18): 1653-5, 2012.[PUBMED Abstract]

  2. Weeks JC, Catalano PJ, Cronin A, et al.: Patients' expectations about effects of chemotherapy for advanced cancer. N Engl J Med 367 (17): 1616-25, 2012.[PUBMED Abstract]

  3. Chen AB, Cronin A, Weeks JC, et al.: Expectations about the effectiveness of radiation therapy among patients with incurable lung cancer. J Clin Oncol 31 (21): 2730-5, 2013.[PUBMED Abstract]

  4. Weinfurt KP, Castel LD, Li Y, et al.: The correlation between patient characteristics and expectations of benefit from Phase I clinical trials. Cancer 98 (1): 166-75, 2003.[PUBMED Abstract]

  5. Agrawal M, Grady C, Fairclough DL, et al.: Patients' decision-making process regarding participation in phase I oncology research. J Clin Oncol 24 (27): 4479-84, 2006.[PUBMED Abstract]

  6. Zier LS, Sottile PD, Hong SY, et al.: Surrogate decision makers' interpretation of prognostic information: a mixed-methods study. Ann Intern Med 156 (5): 360-6, 2012.[PUBMED Abstract]

  7. Weeks JC, Cook EF, O'Day SJ, et al.: Relationship between cancer patients' predictions of prognosis and their treatment preferences. JAMA 279 (21): 1709-14, 1998.[PUBMED Abstract]

  8. Sekeres MA, Stone RM, Zahrieh D, et al.: Decision-making and quality of life in older adults with acute myeloid leukemia or advanced myelodysplastic syndrome. Leukemia 18 (4): 809-16, 2004.[PUBMED Abstract]

  9. Lee SJ, Fairclough D, Antin JH, et al.: Discrepancies between patient and physician estimates for the success of stem cell transplantation. JAMA 285 (8): 1034-8, 2001.[PUBMED Abstract]

  10. Lennes IT, Temel JS, Hoedt C, et al.: Predictors of newly diagnosed cancer patients' understanding of the goals of their care at initiation of chemotherapy. Cancer 119 (3): 691-9, 2013.[PUBMED Abstract]

  11. Jenkins V, Solis-Trapala I, Langridge C, et al.: What oncologists believe they said and what patients believe they heard: an analysis of phase I trial discussions. J Clin Oncol 29 (1): 61-8, 2011.[PUBMED Abstract]

  12. Elkin EB, Kim SH, Casper ES, et al.: Desire for information and involvement in treatment decisions: elderly cancer patients' preferences and their physicians' perceptions. J Clin Oncol 25 (33): 5275-80, 2007.[PUBMED Abstract]

  13. Bruera E, Sweeney C, Calder K, et al.: Patient preferences versus physician perceptions of treatment decisions in cancer care. J Clin Oncol 19 (11): 2883-5, 2001.[PUBMED Abstract]

  14. Schnadig ID, Fromme EK, Loprinzi CL, et al.: Patient-physician disagreement regarding performance status is associated with worse survivorship in patients with advanced cancer. Cancer 113 (8): 2205-14, 2008.[PUBMED Abstract]

  15. A controlled trial to improve care for seriously ill hospitalized patients. The study to understand prognoses and preferences for outcomes and risks of treatments (SUPPORT). The SUPPORT Principal Investigators. JAMA 274 (20): 1591-8, 1995 Nov 22-29.[PUBMED Abstract]

  16. Haidet P, Hamel MB, Davis RB, et al.: Outcomes, preferences for resuscitation, and physician-patient communication among patients with metastatic colorectal cancer. SUPPORT Investigators. Study to Understand Prognoses and Preferences for Outcomes and Risks of Treatments. Am J Med 105 (3): 222-9, 1998.[PUBMED Abstract]

  17. Downey L, Au DH, Curtis JR, et al.: Life-sustaining treatment preferences: matches and mismatches between patients' preferences and clinicians' perceptions. J Pain Symptom Manage 46 (1): 9-19, 2013.[PUBMED Abstract]

  18. Gattellari M, Voigt KJ, Butow PN, et al.: When the treatment goal is not cure: are cancer patients equipped to make informed decisions? J Clin Oncol 20 (2): 503-13, 2002.[PUBMED Abstract]

  19. Robinson TM, Alexander SC, Hays M, et al.: Patient-oncologist communication in advanced cancer: predictors of patient perception of prognosis. Support Care Cancer 16 (9): 1049-57, 2008.[PUBMED Abstract]

  20. Audrey S, Abel J, Blazeby JM, et al.: What oncologists tell patients about survival benefits of palliative chemotherapy and implications for informed consent: qualitative study. BMJ 337: a752, 2008.[PUBMED Abstract]

  21. Liu PH, Landrum MB, Weeks JC, et al.: Physicians' propensity to discuss prognosis is associated with patients' awareness of prognosis for metastatic cancers. J Palliat Med 17 (6): 673-82, 2014.[PUBMED Abstract]

  22. Daugherty CK, Hlubocky FJ: What are terminally ill cancer patients told about their expected deaths? A study of cancer physicians' self-reports of prognosis disclosure. J Clin Oncol 26 (36): 5988-93, 2008.[PUBMED Abstract]

  23. Keating NL, Landrum MB, Rogers SO Jr, et al.: Physician factors associated with discussions about end-of-life care. Cancer 116 (4): 998-1006, 2010.[PUBMED Abstract]

  24. Wright AA, Zhang B, Ray A, et al.: Associations between end-of-life discussions, patient mental health, medical care near death, and caregiver bereavement adjustment. JAMA 300 (14): 1665-73, 2008.[PUBMED Abstract]

  25. Cripe LD, Rawl SM, Schmidt KK, et al.: Discussions of life expectancy moderate relationships between prognosis and anxiety or depression in men with advanced cancer. J Palliat Med 15 (1): 99-105, 2012.[PUBMED Abstract]

  26. van Vliet LM, van der Wall E, Plum NM, et al.: Explicit prognostic information and reassurance about nonabandonment when entering palliative breast cancer care: findings from a scripted video-vignette study. J Clin Oncol 31 (26): 3242-9, 2013.[PUBMED Abstract]

  27. Larochelle MR, Rodriguez KL, Arnold RM, et al.: Hospital staff attributions of the causes of physician variation in end-of-life treatment intensity. Palliat Med 23 (5): 460-70, 2009.[PUBMED Abstract]

  28. Ubel PA, Angott AM, Zikmund-Fisher BJ: Physicians recommend different treatments for patients than they would choose for themselves. Arch Intern Med 171 (7): 630-4, 2011.[PUBMED Abstract]

  29. Koedoot CG, De Haes JC, Heisterkamp SH, et al.: Palliative chemotherapy or watchful waiting? A vignettes study among oncologists. J Clin Oncol 20 (17): 3658-64, 2002.[PUBMED Abstract]

  30. Kozminski MA, Neumann PJ, Nadler ES, et al.: How long and how well: oncologists' attitudes toward the relative value of life-prolonging v. quality of life-enhancing treatments. Med Decis Making 31 (3): 380-5, 2011 May-Jun.[PUBMED Abstract]

  31. Shepherd HL, Butow PN, Tattersall MH: Factors which motivate cancer doctors to involve their patients in reaching treatment decisions. Patient Educ Couns 84 (2): 229-35, 2011.[PUBMED Abstract]

  32. Jackson VA, Mack J, Matsuyama R, et al.: A qualitative study of oncologists' approaches to end-of-life care. J Palliat Med 11 (6): 893-906, 2008.[PUBMED Abstract]

  33. Otani H, Morita T, Esaki T, et al.: Burden on oncologists when communicating the discontinuation of anticancer treatment. Jpn J Clin Oncol 41 (8): 999-1006, 2011.[PUBMED Abstract]

  34. Jacobson M, O'Malley AJ, Earle CC, et al.: Does reimbursement influence chemotherapy treatment for cancer patients? Health Aff (Millwood) 25 (2): 437-43, 2006 Mar-Apr.[PUBMED Abstract]

  35. Mitchell JM: Urologists' use of intensity-modulated radiation therapy for prostate cancer. N Engl J Med 369 (17): 1629-37, 2013.[PUBMED Abstract]

  36. Malin JL, Weeks JC, Potosky AL, et al.: Medical oncologists' perceptions of financial incentives in cancer care. J Clin Oncol 31 (5): 530-5, 2013.[PUBMED Abstract]

  37. Hui D, De La Cruz M, Mori M, et al.: Concepts and definitions for "supportive care," "best supportive care," "palliative care," and "hospice care" in the published literature, dictionaries, and textbooks. Support Care Cancer 21 (3): 659-85, 2013.[PUBMED Abstract]

 | 

進行がんにおける支持療法、緩和ケア、ホスピス

名称の重要性

緩和ケアに対する腫瘍医の態度

European Society of Medical Oncologyは、会員を対象として、進行がん患者への緩和ケアに対する態度および関与について調査を実施した。 [1] 88%の回答者が、終末期(EOL)ケアの調整は腫瘍内科医が担うべきという考えを支持したが、42%は自身がその課題に対応する十分な訓練を受けていないと感じていた。比較的少数の回答者は、緩和ケア専門医(35%)または入院ホスピスサービス(26%)と連携していた。緩和ケア(palliative care)という用語は、緩和ケアクリニックへの紹介において潜在的な障壁となることが複数の調査によって特定されている。 [2] 2013年の単一施設からの報告によると、緩和ケアサービスから支持療法サービス(supportive care service)に名称を変更したところ、外来患者が最初の病院登録からより早期に紹介されるようになり(中央値、9.2ヵ月 vs 13.2ヵ月;P < 0.001)、進行がんの初回診断からもより早期に紹介されるようになった(中央値、5.2ヵ月 vs 6.9ヵ月;P < 0.001)。 [3]

緩和ケアに対する一般大衆の態度

緩和ケアに対する一般大衆の態度は、サービスの説明に左右される。100人を超える消費者を対象に実施された2011年の世論調査では、75%以上の回答者に緩和ケアに関する知識の欠如が認められた。 [4] この世論調査の実施後、緩和ケアの定義が一般人向けに改められた。新しい定義では、緩和ケアは「重篤な疾患を有する人々を対象とした専門化された医療」と説明されている。ケアの焦点は、診断にかかわらず、疼痛やその他の症状を軽減することと定義されている。この定義には、患者および家族の生活の質(QOL)と専門家の集学的チームという文言が含まれるほか、緩和ケアは年齢や病期にかかわらず適用可能で、治癒を目指した治療と組み合わせて利用できるという表明も含まれている。 [4]

最適な支持療法(best supportive care)

複数サイクルの化学療法を安全に施行できるかどうかは、有害作用を最小限に抑えるためのさまざまな介入に依存する。ほとんどの腫瘍医は、制吐薬、造血因子製剤(赤血球輸血の回数を減らすか好中球減少症に伴う感染症リスクを低下させるため)、輸血、不安または抑うつを軽減する薬剤、鎮痛薬のそれぞれに伴う頻度の高い有害事象を予測し、認識し、対処できることが、腫瘍内科で必須のスキルであると考えている。この文脈における支持療法は、患者の健康関連QOLをできるだけ低下させることなく、疾患に向けた治療の利益を最大化するという目標を補助する手段である。

このセクションでは、支持療法という用語に関係する次の3点について記載する:

  1. ルーチンの腫瘍学的評価では、症状と健康関連QOLに対して十分な注意が払われない。腫瘍医は自身の技量を過大評価することがあるが、負担の大きい症状がある患者については、健康関連QOLに特に関心のある医師や症状管理の専門知識を有する医師に紹介するのが賢明である。目標は常に、最適な支持療法を行うことであり、ときには緩和ケア専門医の手が必要になることもある。
  2. 最適な支持療法(best supportive care)は、疾患に向けた治療をもはや受けなくなった患者に行われるケアを指して用いられている。たとえプロトコルで規定されていても、最適な支持療法が進行がん患者に行われる特別な緩和ケアと混同される可能性は低い。
  3. 支持療法(supportive care)という用語は、緩和ケア(palliative care)に含まれる否定的なニュアンスを避けられるため、紹介する側の臨床医と患者にとって好ましい可能性がある。

緩和ケア

緩和ケアは、重篤な疾患や生命を脅かす疾患の患者とその家族に焦点を置いたケアの集学的モデルである。緩和ケアの目標は次の通りである:


  • 肉体的、精神的、社会的、霊的に良好な状態を維持するための介入を通じて、疾患の負担を軽減し、苦痛を緩和し、QOLを維持する。

  • コミュニケーションとケアの調整を改善する。

  • ケアの内容を患者の価値観および選好と一致させる。

  • 臨終時の苦痛を最小限に抑え、closureの機会を最大限に高める。

緩和ケアは一般に、医師、看護師、ソーシャルワーカー、チャプレンなどによって提供される。一般的に緩和ケアチームは、コントロール不良の症状、ケアの目標、死の過程に関連した苦痛、家族の負担軽減に焦点を置く。

緩和ケアは、ケアの原理であるとともに、ケアを提供するために組織化され高度に構造化されたシステムでもある。緩和ケアには、伝統的な疾患モデルを越えて、以下のようなケアの目標が取り入れられる:


  • QOLの向上。

  • 機能の最適化。

  • 十分な情報に基づく積極的な意思決定。

  • Closureと人間的成長を達成する機会。

緩和ケアは、延命治療と同時に行うことも、ケアの中核とすることも可能である。(詳しい情報については、本要約の進行がんにおける患者・腫瘍医間のコミュニケーションと意思決定を改善するための戦略のセクションの緩和ケアと従来のがん診療の統合のサブセクションを参照のこと。)

緩和ケアという用語は、進行がん患者に化学療法の目的が治癒にないことを伝えるために使用される場合や、意図は明確にせずに化学療法からの離脱を知らせる目的で用いられることが多い。緩和ケアは終末期ケアと同じという以前から広く浸透している認識には、こうした用語の使用法が関係している可能性がある。しかしながら、緩和ケアは重篤な疾患や生命を脅かす疾患の患者へのケアに特化したアプローチであり、いくつかの原理に従って施行され、化学療法の処方と管理に必要となるスキルとは別の、固有ではあるが排他的ではない一連のスキルによって達成される。

ホスピス

ホスピスは、余命6ヵ月未満の患者に対して専門家による診療、疼痛管理、感情面および霊的側面のサポートを提供する、チーム志向型のアプローチである。ほとんどのホスピスケアは自宅で行われている。

ホスピスの適格基準

ホスピスに適格とされる基準は、州および連邦政府の規制によって規定されている。余命を制限する疾患があって余命が6ヵ月未満であると、免許を取得した医師が認定する必要がある。また、他の治療ではなくホスピスを選択することを表明した文書に患者が署名しなければならない。さらに、患者にはメディケアに承認されたホスピスプログラムのケアを受けることが求められる。ホスピスサービスの費用は、メディケア、メディケイド、マネージドケア、民間健康保険、その他の第三者支払人、自己負担によって賄われる。

がん患者では、以下に該当する場合にホスピスの適応となることがある:


  • 遠隔転移がある。

  • 転移のない状態から転移のある状態に進行し、かつ以下の状態にある:
      治療を受けているにもかかわらず、状態の悪化が続いている。
      積極的な治療を拒否する。
      緩和ケアとホスピスケアを望んでいる。

膵がんや脳腫瘍の患者のように予後が不良な患者では、これらの基準を満たしていなくてもホスピスに適格とされることがある。 [5]

ホスピスへの登録を妨げる患者および介護者側の要因

以下の項目は、適切な時期にホスピスに登録することを妨げる可能性のある多数の要因をまとめたものである:


  • ホスピスは最期の数日間にのみ利用するものと患者および介護者が思い込んでいる。

  • 多くの患者で延命治療に対する選好がホスピスへの登録を思いとどまらせることがある。 [6]

  • ホスピスを選択することは希望を捨てることを意味すると多くの患者が考えている。

  • 健康状態の悪化を否定することで、ホスピスを検討しようとする患者の意思が妨げられる場合がある。

  • 患者と家族がホスピスに否定的な認識をもっている場合がある。 [7]

  • 患者の人口統計学的特性がホスピスに対する認識に影響を及ぼす。

  • 新しい抗がん療法があると、たとえ実際には臨床的有益性がほとんどない場合でさえ、患者にとっては新しい選択肢と状況を楽観視する理由となる。 [8]

ホスピスへの登録を妨げる医師側の要因

以下の項目は、ホスピスへの登録を妨げる医師側の要因をまとめたものである:


  • 正確な余命の推定が困難な場合に、腫瘍医が患者にホスピスについて学ぶ機会を与えない。 [9]

  • ホスピスへの紹介は専門家としての失敗であると腫瘍医が考えることがある。 [10]

  • ホスピスへの紹介は、腫瘍医にとって好ましくないコントロールの喪失を意味することがある。 [11]

  • ホスピスへの紹介が遅れる傾向により、移行の負担が大きくなり、患者のホスピス利用期間が3日以下になっている。 [12]

  • ホスピスへの登録は死期を早めると腫瘍医が考えることがある;しかし、データはこの懸念を裏付けていない。 [13] ある研究グループは、1998年から2002年のメディケア受給者のサンプルから抽出した患者4,493人の生存状況について報告した。 [14] ホスピスを利用しなかった患者と比べて、ホスピスへの登録に有意な生存期間短縮との関連は認められなかった。むしろ、平均生存期間はホスピスに登録した肺がんおよび膵がん患者では有意に長く、ホスピスに登録した結腸がん患者でもわずかに長かった。

    韓国で実施された2011年の観察研究では、自身の状態が終末期であることを認識し、緩和ケア病棟に入院した患者の生存期間中央値は69日であった。生存期間に集中治療室への入室による影響が認められなかったことから、医学的介入ではなく、患者レベルの特性が生存期間に影響を及ぼすことが示唆された。 [15]


  • 腫瘍医は、ホスピスに紹介すると患者が見捨てられたと感じるのではないかと懸念する。

ホスピスシステムの潜在的な欠点

複数の研究から、疾患に向けた延命につながる治療を受ける意思がないというホスピスの要件によって、サービスを必要とする患者が排除されている可能性が示唆されている。がん患者300人と家族171人を対象とした研究では、治療を受けないという意思はホスピスサービスのニーズの大きさとあまり相関していなかった。 [16] むしろ、患者が認識するホスピスサービスのニーズに対する独立した予測因子は、アフリカ系アメリカ人で社会的支援が少ないこと、機能的状態が不良であること、ならびに症状による心理的負担が大きいことであった。家族に関する予測因子は、介護者の負担、自己報告による健康状態の悪化、自宅外での就労、機能的状態が悪化したがん患者の介護などであった。著者らは、延命治療を中止してホスピスに移行する基準を見直す必要があると示唆している。 [16]

ホスピスごとの独自の登録方針が、米国においてホスピスの利点が十分に活用されていないことに寄与している可能性がある。米国の591のホスピスを対象とした全国調査の結果によると、78%のホスピスにおいて、1つまたは複数の登録方針によって、費用のかさむ医療(化学療法、放射線療法、輸血、完全非経口栄養法など)を必要とする患者のケアの利用が制限されていた。そのような方針は、比較的小規模のホスピス、営利目的のホスピス、国内の非都市部にあるホスピスで多くみられる。 [17] そうした治療が治癒を目標とするものと症状緩和を目的とするもののどちらに該当するかは、明確でないことも多い。さらに、営利目的のホスピスは、余命が短く、収益性が小さい患者を入所させる可能性がより低い。 [18]

ホスピスと蘇生を始めとする延命処置

蘇生処置不要の表明はホスピスへの登録に必須ではないが、終末期に積極的な治療を控えることに、患者が報告するQOLや死別への適応が良好であることとの関連が認められる。 [19] したがって、ホスピスに関する話し合いの際に患者の選好を明らかにし、可能な範囲でケアの計画について合意を得ることが重要である。


参考文献
  1. Cherny NI, Catane R; European Society of Medical Oncology Taskforce on Palliative and Supportive Care: Attitudes of medical oncologists toward palliative care for patients with advanced and incurable cancer: report on a survery by the European Society of Medical Oncology Taskforce on Palliative and Supportive Care. Cancer 98 (11): 2502-10, 2003.[PUBMED Abstract]

  2. Fadul N, Elsayem A, Palmer JL, et al.: Supportive versus palliative care: what's in a name?: a survey of medical oncologists and midlevel providers at a comprehensive cancer center. Cancer 115 (9): 2013-21, 2009.[PUBMED Abstract]

  3. Dalal S, Palla S, Hui D, et al.: Association between a name change from palliative to supportive care and the timing of patient referrals at a comprehensive cancer center. Oncologist 16 (1): 105-11, 2011.[PUBMED Abstract]

  4. Center to Advance Palliative Care: 2011 Public Opinion Research on Palliative Care: A Report Based on Research by Public Opinion Strategies. New York, NY: The Center to Advance Palliative Care, 2011. Available online. Last accessed February 27, 2017.[PUBMED Abstract]

  5. End-Stage Indicators: Disease-Specific Guidelines. Rockville, Md: Montgomery Hospice, 2013. Available online. Last accessed February 27, 2017.[PUBMED Abstract]

  6. Casarett D, Van Ness PH, O'Leary JR, et al.: Are patient preferences for life-sustaining treatment really a barrier to hospice enrollment for older adults with serious illness? J Am Geriatr Soc 54 (3): 472-8, 2006.[PUBMED Abstract]

  7. McCarthy EP, Burns RB, Davis RB, et al.: Barriers to hospice care among older patients dying with lung and colorectal cancer. J Clin Oncol 21 (4): 728-35, 2003.[PUBMED Abstract]

  8. Mintzer DM, Zagrabbe K: On how increasing numbers of newer cancer therapies further delay referral to hospice: the increasing palliative care imperative. Am J Hosp Palliat Care 24 (2): 126-30, 2007 Apr-May.[PUBMED Abstract]

  9. Thomas JM, O'Leary JR, Fried TR: Understanding their options: determinants of hospice discussion for older persons with advanced illness. J Gen Intern Med 24 (8): 923-8, 2009.[PUBMED Abstract]

  10. McGorty EK, Bornstein BH: Barriers to physicians' decisions to discuss hospice: insights gained from the United States hospice model. J Eval Clin Pract 9 (3): 363-72, 2003.[PUBMED Abstract]

  11. Brickner L, Scannell K, Marquet S, et al.: Barriers to hospice care and referrals: survey of physicians' knowledge, attitudes, and perceptions in a health maintenance organization. J Palliat Med 7 (3): 411-8, 2004.[PUBMED Abstract]

  12. Teno JM, Gozalo PL, Bynum JP, et al.: Change in end-of-life care for Medicare beneficiaries: site of death, place of care, and health care transitions in 2000, 2005, and 2009. JAMA 309 (5): 470-7, 2013.[PUBMED Abstract]

  13. Saito AM, Landrum MB, Neville BA, et al.: Hospice care and survival among elderly patients with lung cancer. J Palliat Med 14 (8): 929-39, 2011.[PUBMED Abstract]

  14. Connor SR, Pyenson B, Fitch K, et al.: Comparing hospice and nonhospice patient survival among patients who die within a three-year window. J Pain Symptom Manage 33 (3): 238-46, 2007.[PUBMED Abstract]

  15. Yun YH, Lee MK, Kim SY, et al.: Impact of awareness of terminal illness and use of palliative care or intensive care unit on the survival of terminally ill patients with cancer: prospective cohort study. J Clin Oncol 29 (18): 2474-80, 2011.[PUBMED Abstract]

  16. Casarett DJ, Fishman JM, Lu HL, et al.: The terrible choice: re-evaluating hospice eligibility criteria for cancer. J Clin Oncol 27 (6): 953-9, 2009.[PUBMED Abstract]

  17. Aldridge Carlson MD, Barry CL, Cherlin EJ, et al.: Hospices' enrollment policies may contribute to underuse of hospice care in the United States. Health Aff (Millwood) 31 (12): 2690-8, 2012.[PUBMED Abstract]

  18. Lindrooth RC, Weisbrod BA: Do religious nonprofit and for-profit organizations respond differently to financial incentives? The hospice industry. J Health Econ 26 (2): 342-57, 2007.[PUBMED Abstract]

  19. Wright AA, Zhang B, Ray A, et al.: Associations between end-of-life discussions, patient mental health, medical care near death, and caregiver bereavement adjustment. JAMA 300 (14): 1665-73, 2008.[PUBMED Abstract]

 | 

進行がんにおける患者・腫瘍医間のコミュニケーションと意思決定を改善するための戦略

いくつかの戦略により、腫瘍医と患者のコミュニケーションと意思決定の質を向上させ、進行がん患者に対する終末期(EOL)ケアへの移行を促すことができる。(臨床腫瘍医のコミュニケーション技能の向上を目的とするワークショップに関する詳しい情報については、がん医療におけるコミュニケーションに関するPDQ要約のコミュニケーション技能の訓練のセクションを参照のこと。)

このセクションでは、以下の戦略に関する情報を要約する:

  1. 予後判定または予後に関するコミュニケーションを改善する。
  2. 事前ケア計画を促進する。
  3. 腫瘍医の受診に向けた準備資料を患者に提供する。
  4. 意思決定支援を活用する。
  5. 従来のがん診療に専門化された緩和ケアを統合する。

予後判定の改善

予後判定の精度を改善するための各種の戦略を包括的にレビューすることは、本要約の範囲を超えている。最近発表された研究で簡潔な概要が報告されている。 [1] 予後に関する情報源には、いくつかのものが存在する:


  • 生存期間の臨床的な予測。

  • 患者のパフォーマンスステータス。

  • 患者報告による健康関連QOL(進行がん患者における予後因子)。局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした研究では、カルノフスキーのパフォーマンスステータス(KPS)などの古典的な予後因子に代わり、European Organization for Research and Treatment of CancerのQuality of Life Questionnaire C30(EORTC QLQ-C30)のスコアが多変量解析に用いられた。 [2] EORTC QLQ-C30スコアが66.7以上の患者における全生存期間(OS)の中央値は27.1ヵ月で、この値よりスコアが低い患者では15.4ヵ月であった。ただし、QOLの測定指標は1つで十分である可能性もある。

    他の研究者らは、新たに肺がんと診断された患者約2,500人のコホートにおいて、単一の自己報告式のQOL項目が予後に及ぼす影響を調査して報告している。 [3] QOLの低下が臨床的に顕著であった患者では生存期間中央値が1.6年であったのに対し、低下がみられなかった患者では5.6年であった。高齢、パフォーマンスステータスの低値、進行期の疾患も有意な予測因子であった;QOLの測定値は多変量解析において独立した影響を維持した。


  • 複数の変数を使用する公式の予後判定システム。

予後に関するコミュニケーションを改善する新しい戦略

オーストラリアの研究によると、転移がん患者のほとんどが余命または予後についての情報を望んでいた;一部の患者は、想定されるワーストケースの転帰、典型的な転帰、ベストケースの転帰に関する推定の提示を容認できると考えていた。 [4] 別の研究グループは、公表されている転移例を対象とする複数のOS曲線から導出されたパーセンタイル値が、ベストケースおよびワーストケースのシナリオを推定する際の基礎として利用できることを示した。 [5] それに続く研究で、以下の知見が確立された:


  • この方法は信頼性が高く、正確である。

    転移性乳がんまたはNSCLCに対する第一選択化学療法について、OS曲線から導出された中央値の単純な倍数を用いて、正確に転帰を推定することができた。 [6] 例えば、転移性乳がん患者では、予測される生存期間に関するワーストケースのシナリオは6.3ヵ月であり、ベストケースのシナリオは55.8ヵ月であった。精度はワーストケースのシナリオの場合の方が低かった。進行期の肺がんでも、同様の結果が示されている。 [7]

  • 腫瘍医の生存期間推定値は、ベストケース、ワーストケース、典型的な転帰の推定に妥当な方法として利用できる。

    ある研究では、セルトラリンのランダム化二重盲検プラセボ対照試験に登録された進行がん患者について、各患者の期待生存期間を推定するよう依頼した腫瘍医からの回答を使用した。 [8] 腫瘍医には、推定した値を同じ患者で構成される群における期間の中央値として記録するように依頼された。腫瘍医による推定値の精度は、推定された生存期間の倍数値で事前に規定された区間内に観測された生存期間が収まっていた患者の割合として定義された。患者114人のコホートのOS中央値は11ヵ月であった。63%の患者で観察された生存期間は、腫瘍医による推定結果の半分から2倍の範囲内に含まれていた。著者らは、腫瘍医の推定は生存期間を予測するための基礎として利用できると結論しているが、多変量解析ではKPSなどの他の因子の方がより強力に転帰を予測した。

  • がん患者は、このアプローチを余命に関するコミュニケーションの方法として合理的であると判断した。

    がん患者を対象として、架空の患者に余命を説明するための2つの形式を提示した後に、調査票への回答を求めた:2つの形式とは、3つのシナリオ(典型的な転帰、ベストケースの転帰、ワーストケースの転帰)と生存期間の中央値であった。より多くの回答者が、3つのシナリオによる説明の方が分かりやすく、有用で、希望があり、安心できるという見解に同意した。 [9] 自身の余命に関する情報については、88%の回答者が3つのシナリオをすべて提示されることを望んだ。

事前ケア計画(ACP)

1990年の患者の自己決定法(Patient Self-Determination Act)により、患者には治療を受容または拒否する権利、事前指示書を作成して自身の終末期に関する選好を文書化する権利、ならびに意思決定能力を喪失した場合の代理の意思決定者を指名する権利が保証されている。しかし、多くの患者が有効なACPに参加していないことが複数の研究によって指摘されている。ACPが活用されない理由としては、以下のようないくつかのものが考えられる: [10] [11] [12]

  1. ACPに関する初期の研究では、期待された転帰の改善が実証されなかった。
  2. 医師および患者がACPについて相反する(アンビバレントな)感情を抱く。
  3. 患者の選好は時間とともに変化することがある。
  4. 入院と外来通院の移行時やケアの実施施設の間で選好に関する情報が伝達されなかった。

ACPに関する用語をいくつか提示し、ACPに対する相反する感情(アンビバレンス)について取り上げる。さらに、後に得られたACPの利益を示した証拠について検討して、ACPにより繊細なアプローチを採用することで進行がん患者に対する終末期のケアが改善されるという結論を確認する。

ACPに関する用語

ACPに関する簡潔な用語集によって、混乱を最小限に抑えられる可能性がある。


  • 事前指示書:

    患者が能力を喪失して自身の考えを話せなくなったときに効力を発揮する、法的効力をもつ正式な文書。この文書は州法で認められており、患者が能力を喪失して意思決定を下せなくなった場合には、この文書でケアの指示を出すことによって、個人の自律性を維持することができる。事前指示書の主要な要素は、リビングウィルと医療に関する持続的委任状の2つである。

  • リビングウィル(living will):

    死に瀕した状態または永続的な意識喪失状態に陥って治療に関する意思決定ができなくなった場合に患者が受けたいと望む治療内容を腫瘍医に伝えるための書面。患者はリビングウィルを使用することで、自身が希望する延命処置と希望しない処置、ならびに各選択肢の適用条件を決めておくことができる。また患者は、輸血や臓器および組織の提供、腎透析など、他の治療に関する具体的な要望を別の文書に記しておくことも可能である。

  • 医療に関する持続的委任状(durable power of attorney for health care):

    医療委任状(health care proxy)

    としても知られる。患者が意思決定能力を喪失した場合に、医療に関する意思決定を行う権限を他の人物(代理人[health care proxy、

    surrogate

    health care agent

    ])に与える法的効力をもつ文書。代理人にとって重要な点は患者の価値観と要望を熟知しておくことであり、それによって患者に代わって過不足なく意見を伝え、適切な意思決定を下すことが可能になる。理想的には、患者と代理人は医学的な危機が訪れてからではなく、疾患の経過中にこれらの問題について話し合っておくべきである。

    代理人はリビングウィルに加えて、またはそれに代えて選択できる。医療に関する持続的な委任状では、リビングウィルよりも詳細な指定が可能である。


ACPでの決定事項の文書化

患者の選好を伝達するための追加文書には、次のものがある。


  • 蘇生処置不要(do-not-resuscitate:DNR)指示:

    病院または看護施設の医療スタッフに対して、患者の心拍が停止した場合に心肺蘇生(CPR)を行わないよう伝える。

  • 院外DNR指示:

    救急医療関係者に対して、入院していない患者のCPRおよび他の蘇生方法に関する要望への注意を喚起する。院外DNR指示に対する法的要件は州ごとに異なるが、通常は患者、証人、医師が署名した文書が必要である。患者および非公式の介護者には、救急医療関係者がすぐに利用できるよう、この文書のコピーを数部作成しておくことが勧められる。

  • 挿管不要(do-not-intubate:DNI)指示:

    院内または看護施設内の医療スタッフに、患者が人工呼吸器の使用を望んでいないことを知らせる。

  • 延命治療のための医師指示書(Physician Orders for Life-Sustaining Treatment:POLST):

    患者が終末期で望んでいる治療の種類を指定することができる。印刷され、医師と患者の両者によって署名が行われたPOLST文書は、重篤な疾患の患者が自身の終末期ケアをより詳細に管理するために有用である。

  • 延命治療のための医療指示(Medical Orders for Life-Sustaining Treatment:MOLST):

    患者が自身の要望や最善の利益に即した終末期ケアを受けられるようにするためのイニシアチブ。MOLST文書により、患者は蘇生、挿管、その他の延命治療の間など、コミュニケーションがとれなくなった状況で、自身が受けたいと希望しているケアの種類を示すことができる。現行法の下では、患者の自宅および病院の両方で、救急隊員を含むあらゆる医療専門家がMOLST文書に記載された情報を遵守しなければならない。

患者と医師が経験するACPに関するアンビバレンス

有効なACPの実施を妨げる主要な要因の1つは、患者と医師が経験するアンビバレンスである。進行がん患者は、腫瘍医がACPに関する話し合いを望んでいないと感じることで、腫瘍医とのACPに関与することを躊躇する場合がある。 [11] [13] 例えば、ある研究では、転移性乳がんの女性の87%が終末期の決定について家族や友人と話し合い、75%が事前指示書に関する情報を収集し、66%が事前指示書を作成していたことが報告された。 [14] しかし、それらの女性のうち、医療提供者と終末期の決定について話し合っていたのは19%のみで、事前指示書を医療提供者と共有していたのは24%のみ、さらに事前指示書の存在を認識していた医療提供者は14%に過ぎなかった。同様に、高齢の入院患者を対象とした研究でも、多くの患者に終末期に関する選好があり(76.3%)、事前ケア計画を有していたが(47.9%)、担当医とそれらについて話し合った患者は比較的少数(30.3%)であった。 [15]

これらの結果から、患者はACPに関与するものの、自身の考えを腫瘍医と共有することに躊躇することが示唆される。それでも、腫瘍医は終末期の話題を持ち出す時期を最も的確に把握できる立場にいるため、ACPに関する話し合いを開始して、十分に配慮しながら話し合いを導いていくことが可能である。 [16]

ACPの再検討

ACPについて医師が経験するアンビバレンスの原因は不確かな証拠に基づいている。しかし、初期の懸念に反して、ACPが進行がん患者の終末期ケアを改善することを示す証拠が増えてきている。

ACPの限界に関する初期の懸念

ACPに関する初期の証拠は望ましいものではなかった。例えば、いくつかの研究によって以下のことが明らかにされた:


  • 医療記録に事前指示が示されていた終末期患者の割合は50%未満であった。 [17] [18] [19]

  • 65%を超える医師が、担当患者が事前指示書を作成していたことを把握していなかった。 [20]

  • 事前指示が文書化されていなかったり、解釈困難であったり、代理人や医師による遵守が困難であったりした事例があった。 [17] [21]

ACPの潜在的利益

1990年代から、ACPのランダム化試験でいくらかの利益が実証されている。例えば、あるランダム化研究で通常のケアと構造化されたアプローチが比較されたが、後者のアプローチでは、ソーシャルワーカーとの間で動機付けのための会話が行われ、ACPに関する説明が記載された冊子を使用して、患者の望む健康状態と価値観を把握する試みが行われた。 [22] 主要アウトカムは、以下の項目に関する医師・患者間での一致の度合いとされた:


  • 仮定された健康状態での延命治療に対する患者の選好。

  • 価値観。

  • 仮定された健康状態に関する個人的な考え。

介入は医師と患者によるACPに関する話し合いの増加につながり(64% vs 38%;P < 0.001)、介入群では3つすべてのアウトカムについて一致度が高かった。 [22] 医療上のアウトカムに対するACPの影響は研究されていない。

2010年の研究では、80歳以上の患者309人とその介護者を対象として、6ヵ月間または患者が死亡するまでモニタリングが行われた。 [23] ACPに関与した患者では、他の関係者が患者の選好を把握していることが多く、患者が選好に沿ったケアを受けられる可能性が高かったことが明らかにされた。さらに、対照群の患者の家族と比較して、介入群(ACPに関与)の死亡した患者の家族の方が、ストレス(介入群5、対照群15;P < 0.001)、不安(介入群0、対照群3;P = 0.02)、抑うつ(介入群0、対照群5;P = 0.002)の程度が有意に低かった。また、介入群の方が患者および家族の満足度が高かった。 [23]

Agency for Healthcare Research and Qualityの資金提供を受けて実施された複数の研究では、65歳以上の患者の満足度が主治医とともにACPに取り組んだ場合に高くなった。具体的には、終末期ケアに対する選好について話し合った患者では、経験する不安と恐怖がより小さく、医療に関するコントールの感覚が良好であり、医師が自身の希望をよく理解していると感じていた。代理人にも同様の効果が認められた。 [24]

2011年の報告でも、ACPが価値の高い終末期ケアに有意に貢献することが示唆されている。その研究では、ACPを実施したことの証拠と終末期ケアに関するメディケアの支出減少との間に、終末期の積極的治療に要する費用に応じた関連性が認められた。 [25] 治療内容を制限する事前指示に、メディケアの支出減少および院内死亡の可能性低下との関連性が認められたほか、支出額が大きい地域ではホスピス利用の増加とも関連していたが、支出額が小さい地域や中程度の地域でのホスピス利用とは関連が認められなかった。少なくとも、この研究から、ACPが支出額の小さい地域に対する1つの説明となりうることが示唆される。

より繊細なACPのアプローチ

支持者によると、ACPはあまりに狭く解釈されており、患者の終末期に関する選好を明示し、患者が意思決定能力を喪失した場合の代理人を指定する文書を完成させる活動として捉えられてきた。一般的に、欧米諸国のほとんどの患者は、自身の疾患、治療法選択肢、予後、将来の症状、予想される疾患経過、死の過程に関係する情報を強く求めることを表明する。若年で教育水準の高い患者はより詳細な情報を求め、高齢患者や欧米以外の文化圏の患者は情報を伏せることを好む傾向がある。こうした視点からACPの概念を見直すことにより、ACPの限界に取り組むことができる。

1つには、患者と家族または友人が必要に応じて将来の意思決定に有意義に参加するための継続的な話し合いとして、ACPを捉えることが提唱されている。 [26] 患者と代理の意思決定者を対象としたフォーカスグループ研究により、将来的な医療上の意思決定に関する話し合いにおける注目すべき4つのテーマが同定された: [27]

  1. 経験およびQOLに基づいた価値観を特定する。
  2. 慎重に代理人を選び、代理人が自身の役割を理解していることを確認する。
  3. 代理の意思決定者に与える裁量の大きさを決定する。
  4. 対立を避けるために他の関係者にも情報提供する。

腫瘍医はコミュニケーションとACPを適切に行えるように、ACPについて話し合う前に、患者が必要としている情報を特定しておくことが非常に重要である。 [28]

患者と腫瘍医のコミュニケーションを補助する介入

患者と腫瘍医のコミュニケーションを補助する各種の介入が研究されている。しかし、比較試験はほとんど実施されておらず、関心のある結果にもばらつきがあるため、現時点でそれらの介入を評価することはできない。しかし、さまざまな介入が存在することから、関心をもった臨床腫瘍医は興味のある方法を見つけることが可能である。

文書による情報

専門医を受診する患者向けに情報提供するための小冊子が無数に作成されており、それらの小冊子の一部には予後に関する情報が記載されている。複数の方法を組み合わせた研究において、腫瘍医が提示した文書に対するがん患者の見方が調査された。 [29] 患者は、矛盾する情報があると腫瘍医への信頼が損なわれる可能性があるとの懸念を示し、この懸念は書面の資料を参照する意欲に影響を及ぼしていた。

手術が予定されている肺がん患者を対象として、口頭でのみ情報を与える場合と口頭および書面で情報を提示する場合とでQOLおよび満足度を比較したランダム化研究において、もう1つの留意点が明らかされた。 [30] 情報に対する患者満足度に差はみられなかったが、口頭および書面で情報を示された患者の方が入院に対する満足度が低かった。したがって、書面による情報提示は意図に反する結果につながる可能性があり、腫瘍医は実際の診療を反映した情報のみ提示することを検討してもよい。

相談のテープ録音

相談を単純にオーディオテープに録音する方法の影響は大きく、録音が容易な場合に特に顕著であった。あらゆる病期のがんに対する初回相談を検討したランダム化試験では、105人の患者に録音テープが配布され、96人には配布されなかった。 [31] テープを配布された患者は、配布されなかった患者より満足度が高く、情報の想起も良好であった。さらに、若年患者の方が満足度が高く、高齢患者では想起の向上が認められた。他の研究でも同様の結果が報告されている。 [32]

ビデオ録画された情報

医療提供者、患者、家族の間での話し合いを促し、十分な情報に基づく意思決定を支援するためのビデオの使用は、少なくとも2件のランダム化比較試験で有効であることが実証されている。 [33] [34] どちらの研究でも、患者と家族(参加した場合)はビデオの使用を受け入れることができ、その内容に不快感を覚えなかった。第一の研究では、50人の悪性グリオーマ患者が、以下の3種類のケアについて口頭での説明を受ける群と、その口頭説明に加えてビデオを視聴する群にランダムに割り付けられた: [33]


  • 延命ケア(何があろうと余命の延長を試みる)。

  • 基本的ケア(ほとんどのケアが含まれるが、CPR、挿管、人工呼吸器の使用、集中治療室への入室は除く)。

  • 緩和ケア(症状を軽減し、不快感を最小限に抑え、一般的には入院を回避する)。

対象となった被験者の平均年齢は54歳で、44%が女性であり、50%はベースライン時にCPRを望んでおらず、76%は事前指示書を作成していた。介入後にケアの種類ごとに選好を質問したところ、口頭での説明のみを受けた対照群では26%の被験者が延命処置を望んだのに対し、ビデオによる介入を受けた群では1人も延命処置を望まなかった。ビデオ介入群では、口頭説明の対照群よりも多くの患者が緩和ケアを希望した(それぞれ91% vs 22%)。 [33]

第2の研究では、4つのがん施設から登録された進行がん患者150人が、CPRについて口頭の説明を受ける群と、同じ口頭説明に加えて、人工呼吸器を装着した患者に模擬的なCPRを行う内容の3分間のビデオを視聴する群にランダムに割り付けられた。 [34] 主要アウトカムは参加者のCPRに関する選好(希望するまたは希望しない)とされ、いずれかの方式で提示を受けた直後に測定された。第一の研究と同様に、口頭説明に加えてビデオによる介入を受けた群の方が、口頭説明のみの群よりもCPRを拒否した患者が多かった(それぞれ、79% vs 51%)。知識スコアもビデオ群の方が有意に高かった(P < 0.001)。6~8週間にわたる追跡調査により、意思追跡調査決定の結果がかなり安定していたことが示された。これらの研究結果から、腫瘍医と患者のコミュニケーションおよび教育を補助する手段としてビデオを利用できることが示唆される。

質問促進リスト

予後や終末期ケアのような扱いの難しい問題について質問することは、患者にとって困難となる場合がある。そこで質問促進リスト(question prompt list)を作成することにより、患者がそうした質問をしやすくすることができる。ある研究グループは、進行がん患者が緩和ケア医への相談の際に使用する質問促進リストを開発し、その検証を行った。 [35] 介入群にランダムに割り付けられた患者は、対照群の患者に比べて、予後および終末期の問題について質問する頻度が高かった(30% vs 10%;P = 0.001)。患者の満足度や不安に対する悪影響は認められなかった。別の研究では、進行がん患者の非公式の介護者に質問促進リストを提示するという、わずかに異なる戦略が評価され、有望なようであった。 [36]

Cancer consultation preparation package(CCPP)

ある研究グループが開発したCCPPは、次の4つの要素で構成される: [37]

  1. がんセンターの手順と配置図を記載した小冊子。
  2. 証拠に基づく意思決定の概念を紹介し、意思決定に影響を及ぼす証拠以外の因子について説明した小冊子。
  3. 患者の権利と責任について解説した小冊子。
  4. 質問促進リスト。

あるランダム化試験では、さまざまな病期のさまざまながんの患者に対する164件の初回相談においてCCPPと対照の小冊子が比較された結果、CCPPを提供された患者の方が有意に質問が多く(質問数11 vs 7;P = 0.005)、不安の増大がみられなかった。しかし、CCPP群の患者の方が対照群の患者よりも意思決定への参加の頻度や積極性が高くなったわけではなかった。 [37]

パンフレットと心理士の進行による話し合い

あるランダム化試験では、ACPに関するパンフレットを配布して心理士との話し合いで補足するという方法が通常のケアと比較された。 [38] DNR指示が提示された割合は両コホートで同等(68% vs 76%)であったが、介入群でDNR指示が提示されたのが中央値27日であったのに対し、対照群では12.5日であった(P = 0.03)。介入群の患者は院内での死亡率が低く(19% vs 50%)、不安の増大は認められなかった。追跡不能となった患者の割合が高かったため、研究結果を解釈することができず、ITT解析の結果は有意ではなかった。

意思決定支援

意思決定支援は、選択可能な治療法と起こりうる結果に関する情報の要約を偏りなく患者に提供するために設計された複雑な介入であり、患者はこれを利用することで、十分な情報に基づいて自身の選好に沿った決定を下すことが可能になる。意思決定支援は、患者と腫瘍医の関係を補完するものであり、進行がん患者のケアに関連する2つの状況で研究されてきた:すなわち、進行がんに対して化学療法を受けることを決定する状況と、終末期の準備に入ることを決定する状況である。

化学療法の実施の決定

転移性大腸がん患者を対象とした2011年の研究では、第一選択治療として全身化学療法を開始するかどうかを決定する時期にあった患者207人が、腫瘍医による標準的な診察を受ける群と標準の診察を受けた上で補足として持ち帰り用の小冊子と診察時の音声録音を使用する群のいずれかにランダムに割り付けられた。 [39] 意思決定支援群の患者では、予後、治療法選択肢、治療目標についての理解度が増大した。決定に伴う葛藤、不安の程度、患者による望ましい程度での意思決定への関与、ならびに選択された治療について、差は認められなかった。

ACPへの関与の決定

パイロット研究として実施された半ランダム化試験では、訓練を受けたケア計画の仲介者と面会した進行がん患者において、将来の選好について(腫瘍医とではなく)家族や友人とよく話し合う傾向が認められた。 [40] 進行がん患者の半数強が、訓練を受けた独立したACPのカウンセラーとの面接を受ける意思を有していた。仲介者との面接を受けた患者には、医療専門家とのコミュニケーションと将来のケアについて満足度が低くなる傾向がみられた。そのため、訓練を受けた仲介者とのACPは可能ではあるが、追加の人件費が障壁となり、患者の期待が満たされない場合もある。

蘇生処置に関する希望についての決定

蘇生処置に関する患者の選好や希望についての話し合いを促進する手法として、これまでにいくつかの方法が研究されている。そうした手法としては、以下のようなものがある:


  • 医師に話し合いの開始を促すコンピュータプログラムの利用。 [41]

  • 家族介護者が蘇生処置の選択肢について知るための情報を提供するDVDと小冊子。 [34]

  • 蘇生の過程と転帰を説明した視聴覚資料。 [42]

  • 臨床心理士との構造化された話し合い。 [38]

いくつかの研究で、DNR指示は介入群で多かったか、より早期に実施された。副次アウトカムには、患者および家族との蘇生に関する話し合いがより早期かつ高い割合で実施されること、決定上の葛藤と不安定さが小さいこと、説明がより有用であることなどであった。少なくとも2件の研究では、不安および/または抑うつ症状の増加はみられなかった。これらの意思決定支援は、成人患者での利用に限られている。

意思決定支援に対する医師の態度

カナダ人の腫瘍内科医、放射線腫瘍医、腫瘍外科医を対象とした横断研究により、患者の意思決定支援に対する医師の認識と利用の程度が明らかにされた。 [43] 半数をわずかに下回る医師(46%)が自身の実践に関連がある意思決定支援について認識していたが、それらを実践に利用していた医師の割合は24%にとどまった。ほとんどの回答者は、知識の補強、不安の軽減、患者満足度の増大など、意思決定支援に関連した臨床上の重要な成果を認識していた。利用に対する障壁として最も多く言及されたのは認識の欠如(69%)であり、次いで資源の欠如(24%)と意思決定支援に関する学習時間の不足(24%)であった。時間の不足を意思決定支援の利用に対する障壁に挙げた回答者は3%のみであった。実地診療に意思決定支援を導入する戦略が必要であることは明らかであり、利用可能な支援について腫瘍医を教育することから始めるのがよいであろう。

緩和ケアと従来のがん診療の統合

米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology)は、2012年に暫定的な臨床指針を発表し、会員に対して「(略)遠隔転移を来したがん患者と症状による負担が大きい患者には、疾患経過の早い時点で、標準の腫瘍科ケアと緩和ケアの併用を検討すべきである」と勧告した。 [44] 著者らがこの勧告の主な根拠とした2件のランダム化臨床試験は、遠隔転移を来したがん患者に対して従来のがん治療の間に施行する緩和ケアによる介入の試験であり、これらの結果は、より以前に実施されて結論に達しなかった複数のランダム化臨床試験の結果を支持するものであった。 [45] その後、従来の腫瘍治療と同時に緩和ケアによる介入または異なる時点での従来の腫瘍治療を受けた患者コホート間で転帰が比較された追加の2件のランダム化試験が報告されている。 [46] [47] 4件の研究を以下に要約する:

ENABLE II:高度専門看護師が主導する心理教育的な介入のランダム化試験

この研究者グループから、Project ENABLE(Educate, Nurture, Advise Before Life Ends)の結果が報告された。 [48] 進行がん患者322人が通常のケアを受ける群と通常のケアに加えて高度専門看護師による複合的な心理教育的介入を受ける群にランダムに割り付けられた。主要アウトカムは、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy for Palliative Careで測定するQOL、Edmonton Symptom Assessment Scaleで測定する症状の強さ、ならびにCenter for Epidemiological Studies Depression Scaleで測定する気分であった。

この介入は慢性疾患ケアモデルに基づくもので、その目標は、患者がケア計画、自己管理、自立の促進に取り組めるように後押しすることであった。介入は、週1回計4回の教育セッションと月1回のフォローアップで構成された。4つのモジュールの内容は次の通りである:

  1. 問題解決。
  2. コミュニケーションと社会的支援。
  3. 症状管理。
  4. ACP(事前ケア計画)と未完の仕事。

介入群の参加者の平均スコアは、QOLで4.6高く(P = 0.02);症状の強さで27.8低く(P = 0.06);抑うつ気分で1.8低かった(P = 0.02)。研究実施中に死亡した患者では、治療効果が低かった。OSと終末期の化学療法または積極的治療の施行状況に差は認められなかった。さらに、緩和ケアまたはホスピスへの紹介率にも群間差はみられなかった。 [48]

転移性肺がんの患者に対する緩和ケアと標準の腫瘍科ケアの同時併用を検証するランダム化試験

2つ目の研究では、新規に転移性NSCLCと診断された患者151人が、標準の腫瘍科ケアを受ける群と標準の腫瘍科ケアに加えて早期に緩和ケアを組み合わせる群にランダムに割り付けられた。緩和ケア群の患者は、診断から3週間以内に緩和ケアチームのメンバーと面会した。緩和ケア医は、一般的なガイドラインに従って以下の点に特別の注意を払うよう求められた:


  • 身体症状と心理的症状の評価。

  • ケアの目標の確立。

  • 治療に関する意思決定の支援。

  • 患者の個人的なニーズに基づくケアの調整。

この研究の主要解析と副次解析は原著論文で報告されたが、さらに、以下に要約した内容を含む後続の論文が数報発表された。 [49] [50] [51]


  • この試験の主要アウトカムはQOL(Functional Assessment of Cancer Therapy—Lungで測定)と気分(Hospital Anxiety and Depression Scaleで測定)であった。これらのアウトカムは、ベースライン時の評価に続いて、12週時点でも再度評価された。副次アウトカムは、医療記録から抽出された生存期間と終末期ケアの測定値とされた。緩和ケアを同時に受けた群の患者は、より高いQOLを報告した(98.0 vs 91.5;P = 0.01)。緩和ケア群では、抑うつ症状を呈する患者が少なかった(16% vs 38%;P = 0.05)。さらに、緩和ケアコホートの方がOS中央値が長かった(11.6ヵ月 vs 8.9ヵ月;P = 0.02)。最後に、緩和ケアコホートでは、積極的治療(死の14日前以降の化学療法、ホスピスケアの未実施、死の3日前以降の入院)を受けた患者が通常ケア群より少なかった(33% vs 54%;P = 0.05)。 [49]

  • 治療に関する選好と意思決定には患者の予後理解が非常に重要であることを踏まえて、副次解析により、予後および抗がん療法の目標に関する患者の理解度に緩和ケアが及ぼす影響が評価された。 [50] ベースライン時点で、転移性NSCLC患者の31.7%が自身のがんは治癒可能であると回答した。早期に緩和ケアを受けた患者では、標準ケアコホートの患者に比べて、12週および18週時点で治療の目標を認識していると報告する割合が高かった(例えば、12週時点で自身のがんは治癒可能であると回答した患者の割合は、標準ケアコホートで39.5%、緩和ケアコホートで22.2%であった;P = 0.08)。両群とも、ほとんどの患者が治療の目標は「すべてのがんを残らず取り除くこと」という認識を維持していた。それでも、緩和ケア群の患者の82.5%は予後に対する正確な認識を維持または獲得していたが、標準ケア群ではそうした患者の割合は59.6%であった。

    緩和ケアコホートの患者で予後を正確に理解していた患者は、予後の理解が不正確であった患者に比べて、化学療法を受けることが少なかった(9.4% vs 50%;P = 0.02)。標準ケア群の患者では、同様の効果は認められなかった;標準ケア群で化学療法を受けた患者の割合には、予後の理解度による差は認められなかった。


  • 追加の副次解析により、早期の緩和ケアが化学療法の施行またはホスピスへの登録に影響を及ぼすかどうかが検討された。 [51] その報告によると、標準ケアと緩和ケアのどちらのコホートに割り付けられるかで、レジメンの総数は変化しなかった。しかし、緩和ケアに割り付けられた患者では、死の60日前以降に化学療法を受けることが多かった(52.5% vs 70.1%;P = 0.05)。ホスピスへの登録については、紹介率に有意差は認められなかったものの、早期に緩和ケアを受けた群では通常ケア群に比べて、約2倍の患者が1週間以上のホスピスケアを受けた(60% vs 33.3%;P = 0.004)。

  • 同研究者は、観察された生存率の改善は抑うつの改善に起因していたという仮説の検証も行った。 [52] 抑うつは生存率の不良を予測し、緩和ケアコホートの患者ではより高い改善率が観察された。しかし、生存率の改善との間に有意な相関は認められなかった。

  • ある研究グループによる研究では、電子医療記録から収集された初回コンサルテーション時の要約が検討され、症状管理の頻度、疾患に関する理解度、治療に関する意思決定、患者と家族介護者の対処、ケア計画などが報告された。 [53] 初回コンサルテーションにかけられた時間の中央値は55分(範囲、20~120分)で、そのほとんどが症状に対する対応、対処、疾患の理解に費やされていた。QOLが低い患者ほど多くの時間が必要になる傾向がみられた。

  • 緩和ケアのコンサルテーションにおける主な要素と実施のタイミングを特定するため、臨床記録に対する定性的な分析が追加で実施され、緩和ケアと腫瘍科受診の内容が比較された。 [54] 緩和ケアのコンサルテーションでは、症状、心理社会的問題、そして疾患に関する理解度の明確化に焦点が置かれることが多かった。一方の腫瘍医は、がんの治療と合併症の管理をより重要視していた。ただし、この差が観察された転帰に及ぼした影響は不明である。

進行がん患者に対する早期緩和ケアのクラスターランダム化試験

この一重盲検研究では、緩和ケアと従来のがん治療、または従来のがん治療単独を受ける群に割り付けられた患者の治療成績が報告された。 [55] 緩和ケアの介入には、初診とその後毎月の緩和ケアへの通院に、必要に応じて電話での追跡および入院患者向けの緩和ケア施設への直接アクセスが含められた。主要アウトカムは3ヵ月経過時のFunctional Assessment of Chronic Illness Therapy-Spiritual Well-Being(FACIT-Sp)のスコアの変化であった。副次的アウトカムは4ヵ月経過時のFACIT-Spと3ヵ月および4ヵ月経過時のQOL、症状の負荷、治療への満足度、医学的相互作用の質について妥当性が確認されている他の測定結果であった。

3ヵ月経過時のFACIT-Spスコアの変化について統計的有意差は認められなかったが、4ヵ月経過時には差が生じた;また、3ヵ月および4ヵ月経過時の副次的アウトカムにおいて有意差が認められた。これらの結果から同時緩和ケアの有益性が確認され、緩和ケアの有益性は経時的に増加することが示唆されている。Princess Margaret Cancer CentreとCommunity Care Access Centres間のケアの調整は知見の再現を困難にしうる。 [55]

ENABLE III:同時腫瘍緩和ケアの早期 vs 遅延開始

この研究では、進行がんの診断後30~60日以内 vs 進行がんの診断から3ヵ月経過時に緩和ケア介入を受け始める群にランダムに割り付けられた患者207人の治療成績が比較された。 [47] ENABLE IIの要約で記述された週1回の電話による指導セッションには、3回のセッションでの生活のレビューが含められ、特に介護者とともに介入するようにデザインされた。QOL、症状の影響、気分、資源の利用、および改善した1年生存率は興味深い結果となった。腫瘍の早期緩和ケアは、生存率の改善に関連していた(63% vs 48%;P = 0.038)。しかしながら、患者が報告する治療成績または資源の利用について統計的有意差は認められなかった。さらに、OSのログランク検定では有意差は明らかにされず、生存曲線は1年経過時に収束することが示唆されている。

この研究ではいくつかの制約によって解釈が複雑になる可能性がある。第一に、この研究では患者360人という登録目標を満たさなかったが、それは一部にはスクリーニング後に不適格となる割合が高かったことと患者の拒否によるものであった。第二に、ITT(intention-to-treat)解析では、完了した介入の“量”がさまざまであったため、差が見逃されてしまった可能性がある。第三に、特に期待されたよりも小規模なサンプルサイズであったことを考慮すると、複数のアウトカムでは意義のある差を検出するための統計的検出力に制限があった可能性がある。したがって、結果のより正確な解釈としては、緩和ケア介入の最適な時期は依然として不明のままであるということになるであろう。

患者に対する結果とは対照的に、ENABLE IIIの介入では介護者に対する結果が改善した。 [56] 122人の介護者が、週1回の電話による指導セッション3回、毎月の追跡、および死別時の電話を、早期またはある程度期間をおいて受ける群にランダムに割り付けられた。すべての介護者について、早期の介入により3ヵ月経過時の抑うつスコアが低下した。早期に緩和ケアを受けた故人の介護者は、終末期における抑うつおよび負荷のレベルが低かった。これらの結果は、介護者に対する有益性を確立する上で注目に値する。

緩和ケアの早期統合における課題

以下では、緩和ケアと標準的な腫瘍科ケアの統合に深く関連する課題を示した後、現時点で得られているデータを要約する。


  • 専門的な緩和ケアサービスの利用可能性:

    2010年に発表された調査では、米国国立がん研究所(NCI)のがんセンターの59%とNCIに属さないがんセンターの33%のみが、緩和ケアプログラムと各プログラムに応じた幅広い水準の資源を保有していると報告した。 [57] しかし、調査対象となった経営陣の少なくとも半数が、NCIの指定に基づく差はあるものの、翌年以降のサービス拡大に関心を示していた。興味深いことに、サービスをさらに拡大する際の障壁として同定された要素は、サービスの妥当性を示す証拠についての懸念よりも、償還の少なさや施設予算の限界と深く関係していた。

    労働力不足に対して考えられる1つの解決策は、いわゆるプライマリ緩和ケアの技術において腫瘍医を訓練することである。 [58] プライマリ緩和ケアの技術には、予後、治療の目標、苦痛、またはcode status(末期医療に関する事前指示の状態)についての基本的な話し合いおよび症状の管理が含まれており、そのため、治療の目標または治療の方法に関して対立する決定を支援するため専門医への紹介を予約する。


  • 腫瘍医による専門的な緩和ケアサービスへの患者の紹介:

    カナダのがん専門医を対象とした調査によると、94%が少なくとも緩和ケアサービスの一部門を利用していたが、総合的な緩和ケアサービスを利用していた回答者は36%に過ぎなかった。 [59] さらに、80%の医師が末期患者を毎回または多くの場合紹介していると回答したが、その紹介のタイミングは、診断時、緩和化学療法の施行中、化学療法または輸血の中止後に均等に分散していた。

  • 緩和ケアに対する腫瘍医の態度。


  • 患者の受容。


  • 未解決の問題:

    上で要約された4件のランダム化試験の結果は、従来のがん治療と同時に緩和ケアサービスを受けられるようにする説得力のある理論的根拠を提供している。 [60] [61] しかしながら、従来のがん治療に緩和ケアを系統的に統合するための熱意を削ぐ可能性のある未解決の問題がある。
    1. サービスを受けるべき患者は誰か。適格基準のレビューにより、疾患の病期に加えて医師が推定した患者の生存などの特徴に基づいて患者が選択されたことが示されている。表1に示すように、多くの潜在的な適格患者が試験への参加を断った。不参加のさまざまな理由は、サービスによって得られる便益の可能性に影響しうる潜在的な交絡因子を同定するために解明する必要がある。
    2. 専門的な緩和ケアに紹介する最適な時期はいつか。
    3. 前向きな結果を得るために緩和ケアのどの要素が不可欠であるか。ENABLE介入には、数ヵ月にわたって高度専門看護師が主導する複数の教育セッションが含まれた。また、研究開始時に単一スケジュールのみの緩和ケアのコンサルテーションが実施された。このことは、他の研究者が記述している集学的緩和ケアチームの代替 [46] [50] が効果的な可能性があることを示唆している。
    4. 予測される便益の作用機序はどのようなものか。がん施設では保険払い戻しを断るのに苦心しているため、この問題は特に重要であり、そのため提供される支持療法サービスの価値を最適化するため正当な需要がある。
    5. 観察された生存の改善を説明する機序はどのようなものか。 [48] [62] [63]

  • 資金:

    外来緩和ケアクリニック20施設の調査により、最も大きな財源はサービス料金と補助金制度であることが示されたが、主要な課題として最も多く指摘されたのはスタッフの人件費であった。 [64]

表1.進行がんへの同時緩和ケアのランダム化試験における被験者の特徴

著者/参考文献 募集(人数) 選択された適格基準
ランダム化 潜在的に適格 スクリーニング受診 がんの種類 診断からの期間 腫瘍医が推定した生存期間
GI = 消化管;GU = 泌尿生殖器;hem = 血液学。
Bakitas et al., 2009 [48] 322 681 1,222 消化管がん;肺がん;泌尿生殖器がん、乳がん 8~12週間以内 ~1年
Temel et al., 2010 [49] 151     肺がん 8週間以内 規定なし
Zimmermann et al., 2014 [46] 461 892 3,293 消化管がん;肺がん;泌尿生殖器がん、乳がん;婦人科がん 規定なし 6~24ヵ月
Bakitas et al., 2015 [47] 207 545 1,468 消化管がん;肺がん;泌尿生殖器がん、乳がん;その他のがん;血液学的悪性疾患 早期:30~60日;遅延:90日超 6~24ヵ月


表2.進行がんへの同時緩和ケアのランダム化試験におけるエンドポイントおよび測定方法

エンドポイント 測定方法
CARES-MIS = Cancer Rehabilitation Evaluation System Medical Interaction Subscale;CES-D = Center for Epidemiologic Studies Depression Scale;ED = 救急科;ENABLE = Educate, Nurture, Advise Before Life Ends;ESAS = Edmonton Symptom Assessment System;FACIT-Pal = Functional Assessment of Chronic Illness Therapy - Palliative Care;FACIT-Sp = Functional Assessment of Chronic Illness Therapy - Spiritual Well-Being;FACT-L = Functional Assessment of Cancer Therapy - Lung;FAMCARE-P16 = がん治療に対する患者の満足度に関する16項目の評価;HADS = Hospital Anxiety and Depression Scale;ICU = 集中治療室;NR = アウトカムは測定されたが報告されていない;QUAL-E = 終末期のQOL; - = アウトカムが測定されていない。
  Bakitas et al., 2009(ENABLE II) [48] Temel et al., 2010 [49] Zimmermann et al., 2014 [46] Bakitas et al., 2015(ENABLE III) [47]
QOL FACIT-Pal FACT-L FACIT-Sp;QUAL-E FACIT-Pal;QUAL-E
気分 CES-D HADS
症状 ESAS QUAL-E ESAS
治療に対する満足度 FAMCARE-P16
医学的相互作用 CARES-MIS
化学療法の使用 NR NR NR NR
終末期の資源の利用 入院/ICUの日数;緊急科への来院 入院/ICUの日数;緊急科への来院;死亡14日以内の化学療法;ホスピスの利用;死亡の場所 規定なし 入院/ICUの日数;緊急科への来院;死亡14日以内の化学療法;死亡の場所
全生存期間中央値 あり あり あり


表3.腫瘍治療および緩和ケアの時期に関する研究

アウトカム 著者/参考文献
Bakitas et al., 2009(ENABLE II) Temel et al., 2010 Zimmermann et al., 2014 Bakitas et al., 2015(ENABLE III)
ENABLE = Educate, Nurture, Advise Before Life Ends;NR = アウトカムは測定されたが報告されていない;NS = アウトカムにおける有意差は検出されなかった;PC = 緩和ケアによる介入が支持される; — = アウトカムが測定されていない。
QOL PC PC 3ヵ月経過時にNS;4ヵ月経過時にPC NS
気分 PC PC 3ヵ月経過時にNS;4ヵ月経過時にPC NS
症状 NS 3ヵ月経過時にNS;4ヵ月経過時にPC NS
治療に対する満足度 3ヵ月経過時にPC;4ヵ月経過時にPC
医学的相互作用 3ヵ月経過時にNS;4ヵ月経過時にNS
終末期の資源の利用 NS NR NR NS
全生存 NS PC NR 早期



参考文献
  1. Krishnan M, Temel JS, Wright AA, et al.: Predicting life expectancy in patients with advanced incurable cancer: a review. J Support Oncol 11 (2): 68-74, 2013.[PUBMED Abstract]

  2. Movsas B, Moughan J, Sarna L, et al.: Quality of life supersedes the classic prognosticators for long-term survival in locally advanced non-small-cell lung cancer: an analysis of RTOG 9801. J Clin Oncol 27 (34): 5816-22, 2009.[PUBMED Abstract]

  3. Sloan JA, Zhao X, Novotny PJ, et al.: Relationship between deficits in overall quality of life and non-small-cell lung cancer survival. J Clin Oncol 30 (13): 1498-504, 2012.[PUBMED Abstract]

  4. Hagerty RG, Butow PN, Ellis PA, et al.: Cancer patient preferences for communication of prognosis in the metastatic setting. J Clin Oncol 22 (9): 1721-30, 2004.[PUBMED Abstract]

  5. Stockler MR, Tattersall MH, Boyer MJ, et al.: Disarming the guarded prognosis: predicting survival in newly referred patients with incurable cancer. Br J Cancer 94 (2): 208-12, 2006.[PUBMED Abstract]

  6. Kiely BE, Soon YY, Tattersall MH, et al.: How long have I got? Estimating typical, best-case, and worst-case scenarios for patients starting first-line chemotherapy for metastatic breast cancer: a systematic review of recent randomized trials. J Clin Oncol 29 (4): 456-63, 2011.[PUBMED Abstract]

  7. Kiely BE, Alam M, Blinman P, et al.: Estimating typical, best-case and worst-case life expectancy scenarios for patients starting chemotherapy for advanced non-small-cell lung cancer: a systematic review of contemporary randomized trials. Lung Cancer 77 (3): 537-44, 2012.[PUBMED Abstract]

  8. Kiely BE, Martin AJ, Tattersall MH, et al.: The median informs the message: accuracy of individualized scenarios for survival time based on oncologists' estimates. J Clin Oncol 31 (28): 3565-71, 2013.[PUBMED Abstract]

  9. Kiely BE, McCaughan G, Christodoulou S, et al.: Using scenarios to explain life expectancy in advanced cancer: attitudes of people with a cancer experience. Support Care Cancer 21 (2): 369-76, 2013.[PUBMED Abstract]

  10. Teno JM: Advance directives: time to move on. Ann Intern Med 141 (2): 159-60, 2004.[PUBMED Abstract]

  11. Barnes KA, Barlow CA, Harrington J, et al.: Advance care planning discussions in advanced cancer: analysis of dialogues between patients and care planning mediators. Palliat Support Care 9 (1): 73-9, 2011.[PUBMED Abstract]

  12. Hawkins NA, Ditto PH, Danks JH, et al.: Micromanaging death: process preferences, values, and goals in end-of-life medical decision making. Gerontologist 45 (1): 107-17, 2005.[PUBMED Abstract]

  13. Dow LA, Matsuyama RK, Ramakrishnan V, et al.: Paradoxes in advance care planning: the complex relationship of oncology patients, their physicians, and advance medical directives. J Clin Oncol 28 (2): 299-304, 2010.[PUBMED Abstract]

  14. Ozanne EM, Partridge A, Moy B, et al.: Doctor-patient communication about advance directives in metastatic breast cancer. J Palliat Med 12 (6): 547-53, 2009.[PUBMED Abstract]

  15. Heyland DK, Barwich D, Pichora D, et al.: Failure to engage hospitalized elderly patients and their families in advance care planning. JAMA Intern Med 173 (9): 778-87, 2013.[PUBMED Abstract]

  16. Emanuel LL, Danis M, Pearlman RA, et al.: Advance care planning as a process: structuring the discussions in practice. J Am Geriatr Soc 43 (4): 440-6, 1995.[PUBMED Abstract]

  17. Teno JM, Licks S, Lynn J, et al.: Do advance directives provide instructions that direct care? SUPPORT Investigators. Study to Understand Prognoses and Preferences for Outcomes and Risks of Treatment. J Am Geriatr Soc 45 (4): 508-12, 1997.[PUBMED Abstract]

  18. Teno J, Lynn J, Wenger N, et al.: Advance directives for seriously ill hospitalized patients: effectiveness with the patient self-determination act and the SUPPORT intervention. SUPPORT Investigators. Study to Understand Prognoses and Preferences for Outcomes and Risks of Treatment. J Am Geriatr Soc 45 (4): 500-7, 1997.[PUBMED Abstract]

  19. Bradley EH, Rizzo JA: Public information and private search: evaluating the Patient Self-Determination Act. J Health Polit Policy Law 24 (2): 239-73, 1999.[PUBMED Abstract]

  20. Virmani J, Schneiderman LJ, Kaplan RM: Relationship of advance directives to physician-patient communication. Arch Intern Med 154 (8): 909-13, 1994.[PUBMED Abstract]

  21. Teno JM, Lynn J, Phillips RS, et al.: Do formal advance directives affect resuscitation decisions and the use of resources for seriously ill patients? SUPPORT Investigators. Study to Understand Prognoses and Preferences for Outcomes and Risks of Treatments. J Clin Ethics 5 (1): 23-30, 1994.[PUBMED Abstract]

  22. Pearlman RA, Starks H, Cain KC, et al.: Improvements in advance care planning in the Veterans Affairs System: results of a multifaceted intervention. Arch Intern Med 165 (6): 667-74, 2005.[PUBMED Abstract]

  23. Detering KM, Hancock AD, Reade MC, et al.: The impact of advance care planning on end of life care in elderly patients: randomised controlled trial. BMJ 340: c1345, 2010.[PUBMED Abstract]

  24. Kass-Bartelmes BL, Hughes R: Advance Care Planning, Preferences for Care at the End of Life: Research in Action, Issue 12. Rockville, Md: Agency for Healthcare Research and Quality, 2003. Available online. Last accessed February 27, 2017.[PUBMED Abstract]

  25. Nicholas LH, Langa KM, Iwashyna TJ, et al.: Regional variation in the association between advance directives and end-of-life Medicare expenditures. JAMA 306 (13): 1447-53, 2011.[PUBMED Abstract]

  26. Sudore RL, Fried TR: Redefining the "planning" in advance care planning: preparing for end-of-life decision making. Ann Intern Med 153 (4): 256-61, 2010.[PUBMED Abstract]

  27. McMahan RD, Knight SJ, Fried TR, et al.: Advance care planning beyond advance directives: perspectives from patients and surrogates. J Pain Symptom Manage 46 (3): 355-65, 2013.[PUBMED Abstract]

  28. Johnston G, Abraham C: Managing awareness: negotiating and coping with a terminal prognosis. Int J Palliat Nurs 6 (10): 485-94, 2000 Nov-Dec.[PUBMED Abstract]

  29. Davey HM, Armstrong BK, Butow PN: An exploratory study of cancer patients' views on doctor-provided and independent written prognostic information. Patient Educ Couns 56 (3): 349-55, 2005.[PUBMED Abstract]

  30. Barlési F, Barrau K, Loundou A, et al.: Impact of information on quality of life and satisfaction of non-small cell lung cancer patients: a randomized study of standardized versus individualized information before thoracic surgery. J Thorac Oncol 3 (10): 1146-52, 2008.[PUBMED Abstract]

  31. Ong LM, Visser MR, Lammes FB, et al.: Effect of providing cancer patients with the audiotaped initial consultation on satisfaction, recall, and quality of life: a randomized, double-blind study. J Clin Oncol 18 (16): 3052-60, 2000.[PUBMED Abstract]

  32. Bruera E, Pituskin E, Calder K, et al.: The addition of an audiocassette recording of a consultation to written recommendations for patients with advanced cancer: A randomized, controlled trial. Cancer 86 (11): 2420-5, 1999.[PUBMED Abstract]

  33. El-Jawahri A, Podgurski LM, Eichler AF, et al.: Use of video to facilitate end-of-life discussions with patients with cancer: a randomized controlled trial. J Clin Oncol 28 (2): 305-10, 2010.[PUBMED Abstract]

  34. Volandes AE, Paasche-Orlow MK, Mitchell SL, et al.: Randomized controlled trial of a video decision support tool for cardiopulmonary resuscitation decision making in advanced cancer. J Clin Oncol 31 (3): 380-6, 2013.[PUBMED Abstract]

  35. Clayton JM, Butow PN, Tattersall MH, et al.: Randomized controlled trial of a prompt list to help advanced cancer patients and their caregivers to ask questions about prognosis and end-of-life care. J Clin Oncol 25 (6): 715-23, 2007.[PUBMED Abstract]

  36. Hebert RS, Schulz R, Copeland VC, et al.: Pilot testing of a question prompt sheet to encourage family caregivers of cancer patients and physicians to discuss end-of-life issues. Am J Hosp Palliat Care 26 (1): 24-32, 2009 Feb-Mar.[PUBMED Abstract]

  37. Butow P, Devine R, Boyer M, et al.: Cancer consultation preparation package: changing patients but not physicians is not enough. J Clin Oncol 22 (21): 4401-9, 2004.[PUBMED Abstract]

  38. Stein RA, Sharpe L, Bell ML, et al.: Randomized controlled trial of a structured intervention to facilitate end-of-life decision making in patients with advanced cancer. J Clin Oncol 31 (27): 3403-10, 2013.[PUBMED Abstract]

  39. Leighl NB, Shepherd HL, Butow PN, et al.: Supporting treatment decision making in advanced cancer: a randomized trial of a decision aid for patients with advanced colorectal cancer considering chemotherapy. J Clin Oncol 29 (15): 2077-84, 2011.[PUBMED Abstract]

  40. Jones L, Harrington J, Barlow CA, et al.: Advance care planning in advanced cancer: can it be achieved? An exploratory randomized patient preference trial of a care planning discussion. Palliat Support Care 9 (1): 3-13, 2011.[PUBMED Abstract]

  41. Temel JS, Greer JA, Gallagher ER, et al.: Electronic prompt to improve outpatient code status documentation for patients with advanced lung cancer. J Clin Oncol 31 (6): 710-5, 2013.[PUBMED Abstract]

  42. Yun YH, Lee MK, Park S, et al.: Use of a decision aid to help caregivers discuss terminal disease status with a family member with cancer: a randomized controlled trial. J Clin Oncol 29 (36): 4811-9, 2011.[PUBMED Abstract]

  43. Brace C, Schmocker S, Huang H, et al.: Physicians' awareness and attitudes toward decision aids for patients with cancer. J Clin Oncol 28 (13): 2286-92, 2010.[PUBMED Abstract]

  44. Smith TJ, Temin S, Alesi ER, et al.: American Society of Clinical Oncology provisional clinical opinion: the integration of palliative care into standard oncology care. J Clin Oncol 30 (8): 880-7, 2012.[PUBMED Abstract]

  45. Lorenz KA, Lynn J, Dy SM, et al.: Evidence for improving palliative care at the end of life: a systematic review. Ann Intern Med 148 (2): 147-59, 2008.[PUBMED Abstract]

  46. Zimmermann C, Swami N, Krzyzanowska M, et al.: Early palliative care for patients with advanced cancer: a cluster-randomised controlled trial. Lancet 383 (9930): 1721-30, 2014.[PUBMED Abstract]

  47. Bakitas MA, Tosteson TD, Li Z, et al.: Early Versus Delayed Initiation of Concurrent Palliative Oncology Care: Patient Outcomes in the ENABLE III Randomized Controlled Trial. J Clin Oncol 33 (13): 1438-45, 2015.[PUBMED Abstract]

  48. Bakitas M, Lyons KD, Hegel MT, et al.: Effects of a palliative care intervention on clinical outcomes in patients with advanced cancer: the Project ENABLE II randomized controlled trial. JAMA 302 (7): 741-9, 2009.[PUBMED Abstract]

  49. Temel JS, Greer JA, Muzikansky A, et al.: Early palliative care for patients with metastatic non-small-cell lung cancer. N Engl J Med 363 (8): 733-42, 2010.[PUBMED Abstract]

  50. Temel JS, Greer JA, Admane S, et al.: Longitudinal perceptions of prognosis and goals of therapy in patients with metastatic non-small-cell lung cancer: results of a randomized study of early palliative care. J Clin Oncol 29 (17): 2319-26, 2011.[PUBMED Abstract]

  51. Greer JA, Pirl WF, Jackson VA, et al.: Effect of early palliative care on chemotherapy use and end-of-life care in patients with metastatic non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol 30 (4): 394-400, 2012.[PUBMED Abstract]

  52. Pirl WF, Greer JA, Traeger L, et al.: Depression and survival in metastatic non-small-cell lung cancer: effects of early palliative care. J Clin Oncol 30 (12): 1310-5, 2012.[PUBMED Abstract]

  53. Jacobsen J, Jackson V, Dahlin C, et al.: Components of early outpatient palliative care consultation in patients with metastatic nonsmall cell lung cancer. J Palliat Med 14 (4): 459-64, 2011.[PUBMED Abstract]

  54. Yoong J, Park ER, Greer JA, et al.: Early palliative care in advanced lung cancer: a qualitative study. JAMA Intern Med 173 (4): 283-90, 2013.[PUBMED Abstract]

  55. Hannon B, Swami N, Pope A, et al.: The oncology palliative care clinic at the Princess Margaret Cancer Centre: an early intervention model for patients with advanced cancer. Support Care Cancer 23 (4): 1073-80, 2015.[PUBMED Abstract]

  56. Dionne-Odom JN, Azuero A, Lyons KD, et al.: Benefits of Early Versus Delayed Palliative Care to Informal Family Caregivers of Patients With Advanced Cancer: Outcomes From the ENABLE III Randomized Controlled Trial. J Clin Oncol 33 (13): 1446-52, 2015.[PUBMED Abstract]

  57. Hui D, Elsayem A, De la Cruz M, et al.: Availability and integration of palliative care at US cancer centers. JAMA 303 (11): 1054-61, 2010.[PUBMED Abstract]

  58. Quill TE, Abernethy AP: Generalist plus specialist palliative care--creating a more sustainable model. N Engl J Med 368 (13): 1173-5, 2013.[PUBMED Abstract]

  59. Wentlandt K, Krzyzanowska MK, Swami N, et al.: Referral practices of oncologists to specialized palliative care. J Clin Oncol 30 (35): 4380-6, 2012.[PUBMED Abstract]

  60. Parikh RB, Kirch RA, Smith TJ, et al.: Early specialty palliative care--translating data in oncology into practice. N Engl J Med 369 (24): 2347-51, 2013.[PUBMED Abstract]

  61. Gomes B: Palliative care: if it makes a difference, why wait? J Clin Oncol 33 (13): 1420-1, 2015.[PUBMED Abstract]

  62. Temel JS, Jackson VA, Billings JA, et al.: Phase II study: integrated palliative care in newly diagnosed advanced non-small-cell lung cancer patients. J Clin Oncol 25 (17): 2377-82, 2007.[PUBMED Abstract]

  63. Gaertner J, Wolf J, Hallek M, et al.: Standardizing integration of palliative care into comprehensive cancer therapy--a disease specific approach. Support Care Cancer 19 (7): 1037-43, 2011.[PUBMED Abstract]

  64. Smith AK, Thai JN, Bakitas MA, et al.: The diverse landscape of palliative care clinics. J Palliat Med 16 (6): 661-8, 2013.[PUBMED Abstract]

 | 

終末期ケアへの移行計画における臨床腫瘍医の役割

展望

219人の医師を対象にした1961年の調査では、88%の回答者が“患者にがんであると告知するかどうかの通常の方針”を“告知しない”と述べたことが発表された;しかしながら、この集団の34%はときに例外があり、最も多くの場合、家族には診断を開示したことを述べた。 [1] 1977年に、別の医師の集団(264人)に再度同じ調査が実施された;このときには、28%はときに例外があると報告したものの、98%の回答者が患者にがんの診断を告知することが通常の方針であると述べた。 [2]

しかしながら、患者が報告している余命の推定値や治療の目標によって示されているように、予後を効果的に伝えることは依然として難題のままである。例えば、1984年の1件の研究では、治癒不能な転移がん患者の37%が、治療によって自分のがんは治癒すると考えていた。 [3] 同様に、2012年の別の研究では、Cancer Care Outcomes Research and Surveillance(CanCORS)研究に登録した進行期肺がん患者の69%および進行大腸がん患者の81%が、化学療法で自分のがんが治癒する可能性は低いことを認識していないことが報告された。 [4] 実際、大腸がん患者のほぼ40%が、化学療法によりがんが治癒する可能性が非常に高いと回答していた。CanCORSデータセットの関連した解析で、自分の予後を正確に認識していることを報告した患者はわずか16.5%であったことが明らかにされた。 [5] 進行がん患者を対象にして、研究登録時と12週間後に自身の予後についての理解を評価した研究で同様の結果が報告されている。 [6]

予後に関するコミュニケーションの不備に対して考えられる説明は、本要約の終末期ケアへの移行計画に対する潜在的な障壁のセクションで要約している。しかしながら、こうした説明にもかかわらず、予後に関する誤った認識は、自身の価値観、目標、および選好と一致した説明を受けた上での医療に関する意思決定を下す患者の能力に支障を来す。最終的には、がんに向けられた治療が有効であると判明する可能性は非常に低いことを進行がん患者に対して説明すること、および患者に害を与える治療のリスクに継続的に的を絞って説明することをいつ、どのようにするかについて、ある程度は、それぞれの臨床腫瘍医が選択する。

本セクションの目標は、終末期ケアへの移行計画における医師の役割について臨床医が考え、患者とその最愛の人とともに移行の概念について話し合うための枠組みを臨床医に提供することである。

患者-臨床医の関係と終末期ケアへの移行計画

臨床腫瘍医は、質の高い終末期ケアを受けるために患者が自身の価値観や目標と一致した選好を表現する上で医師と患者との関係がどれほど助けになるかについて考慮することが重要である。1件の研究により、対話の目標、医師の責務、患者の価値観の役割、患者の自律性が関係にどの程度影響しているかに基づいて、医師-患者の関係について以下に示す4つのモデルが提唱された: [7]


  • 父子主義:

    同意を得る以外に患者の参加は限定的または全く無く、最適な治療についての医師の評価と判断にのみ焦点が当てられている。

  • 情報提供的:

    患者に対して疾患と治療のできる限り完全な情報を医師が提供することに焦点が当てられており、意思決定については患者に委ねられる。

  • 解釈的:

    医師は、患者が自身の価値観や選好を識別する助けとなるカウンセラーとして行動し、医学的情報を提供し、どの検査が適切でどのような治療が患者の価値観を最良に反映するかについて患者に助言する。

  • 審議的:

    医師の役割は友人または先生のような態度で、患者が健康に関する最適な目標と選択肢を決定し選択する支援をすることである。医師はどのような価値観および選択肢が最も価値があるかの示唆において積極的な役割を演じる。

著者らは注意深く筋道を立てて議論し、審議的モデルが好ましい選択であると結論付けたが、これは言い換えれば、患者の目標と選好が発展し進歩する余地があると確信にしているためである。この関係の目標は、患者がある臨床状態で達成可能な健康に関する最適な目標と選択肢を選択する手助けをすることである。医師は患者に最も説得力のある目標と選好をはっきりと述べ、患者に他の選択肢について知らせる義務がある。この意味で、医師は先生となる。 [7]

意思決定に関する患者の認識について調査した定性的研究により、臨床医-患者の審議的関係は進行期のがんにおいては特に決定的に重要であることが示唆されている。例えば、ある研究者らのグループにより、治癒の可能性のある食道がん患者36人が食道切除術を受ける決定に関して面談された。研究者らは、自律性、意思決定の共有、および情報開示に関するテーマが明らかになると予想した;しかしながら、以下のテーマが明らかになった: [8]

  1. 外科的治癒に対する文化的信念。
  2. 紹介の過程を通した信頼の高まり。
  3. 専門外科医の理想化。
  4. 医学的情報よりもむしろ専門知識に対する信頼。
  5. 治療のリスクに対する諦め。
  6. 専門家の推奨を治療への同意として受け入れること。

別の研究者グループが膵がん患者と面談し、時間の経過とともに治療の意思決定に対する態度の変化が確認された。 [9] 当初、患者は内科的治療または外科的治療に関する詳細にはほとんど関心を示さず、医師への信頼を強調していた。その後、疾患進行と治療の経験を重ねるにつれて、患者は治療の決定においてより積極的な役割を捜し求めていることを報告するようになった。すべての患者が不良な予後に関する話し合いを報告したが、治療を中止し、終末期ケアへ移行する時期を認識することの困難さが一般的なテーマであった。

診断から終末期ケアへの移行計画

移行という言葉は、ある場所から別の場所への移動を意味する。したがって、終末期ケアへの移行計画では、進行がんという疾患の経過において患者がどこにいるか、そしてなぜ移行が必要になるか、または望ましいかの理解を共有する必要がある。

終末期ケアへの移行が適切な時期は、患者のケアの目標と変化が最も一致するときである。終末期ケアへの移行をいつ行うべきかという問題に答えるとき、臨床腫瘍医は先生や信頼されている友人のような存在であろうと努力する。臨床医は、がんに向けられた治療を継続する場合の有効性に関する自身の意見を示し、患者が患者自身の価値観や物事の見方、ケアの目標、選好を理解する助けとならなければならない。このようにして、臨床医は患者が治療と終末期に向けたケアの選好を組み立てる支援をする。 [10]

移行の考えはしばしば、医療提供者の見通しから発せられる。 [11] [12] 例えば、治癒目的で補助化学療法を受けていた患者はしばしば、治癒的治療段階から緩和ケア段階へと移行する際にそのことを伝えられる。

下の図は、進行がん患者について終末期ケアへの移行計画の段階モデルを示している。 進行がんにおける終末期ケアへの移行計画の段階モデル。進行がんの経過は、がんに向けられた治療がもはや治癒的ではないと認識することから始まる。時間の経過とともに、患者、家族、臨床腫瘍医は利用可能な治療についての理解を共有し、治療の潜在的な有害性に対して有益性の可能性が低下するときを認識するように努力すべきである。LST = 延命治療;EOL = 終末期

図のパネルAは、時間の経過とともに、がんに向けられた治療のリスク-便益比が次第に悪化することを示す。この概念化も臨床腫瘍医の見通しからもたらされている。臨床腫瘍医は、リスク-便益比が低下しているという認識を共有するため、以下の2つの戦略を選択できる:


  • 有効性と便益を区別する:

    終末期に向かっている進行がん患者の医療に関する決定は、場合によっては、臨床医の見通しから判断した最良の利益に反しているように思われることがある。 [13] この相違に対する適切な説明は、患者は便益(ある転帰とその望ましさの可能性を含む)の観点から考える;これに対して、臨床医は有効性の証拠(確率によって評価される)の観点から考えるということである。 [14]

  • センチネルイベントに際して患者の予後と目標についての理解を探る:

    がんの経過には、センチネルイベントと呼ばれる、比較的はっきり区別されているポイントがあり、このとき腫瘍医は予後を明らかにし、患者の目標と選好を見極める機会を得る。 [15] センチネルイベントには、がんの状態の計画された評価(例、事前に規定されたサイクル数の化学療法実施後に繰り返される腫瘍の測定)、全般的な健康に関係した生活の質に対する化学療法の影響、がんの進行または治療による合併症の副作用(例、パフォーマンスステータスの低下)が挙げられる。

図のパネルBは、移行の概念を表している。がんの経過は、進行がんの診断から死亡まで5つの比較的はっきり区別される段階に分けられる。最初の2つの段階では、がんに向けられた戦略が優位を占めており、がんに向けられた治療の意図が治癒である段階と;治療の意図が症状緩和、疾患の制御、そしておそらく余命の改善である2つ目の段階が含まれる。終末期の段階は、患者が治療を受けていないが依然として将来の治療を期待している段階と、終末期に過度の負担や苦痛のないようにすることをケアの目標とする段階に細分される。類似した図がしばしば修正されて、がんが進行し、死を迎える可能性が高まるにつれて、緩和ケアへの関心が次第に高まる様子を示す対角線が描かれる。

図は腫瘍医の見通しから段階間の潜在的に顕著な違いを系統立てて明確に表現する腫瘍医の助けとなるように、以下の観点から進行がんの経過を表している:


  • 治療法選択肢、意図、考えられる転帰の範囲、および潜在的な転帰の可能性。

  • 治療の副作用および実際的な要件の点で各治療法選択肢の潜在的なリスクや負担などの考えられる経験。

  • 重要な活動(例、化学療法)、がんの状態の計画された評価、および各治療法選択肢や段階に関連する治療の経験。

続いて臨床腫瘍医は、思いやりのある態度で患者や家族が理解できるように情報を伝えるように努めるべきである。(詳しい情報については、本要約の進行がんにおける患者・腫瘍医間のコミュニケーションと意思決定を改善するための戦略のセクションを参照のこと。)

しかしながら、各段階を明確に表現することが、必ずしも患者に移行すべき時期を知らせることにはならない。医療提供者、進行がんと他にも末期疾患を有する患者、および家族を対象にしたフォーカスグループの研究では、死にゆく患者にとって価値のあるものとして、次の3つの別個のコミュニケーション技能が優先された:悪い知らせを繊細に告知すること、死について話すこと、患者が死について話す準備ができている時期を知ること。 [16]

結論として、がんに向けられた治療から終末期ケアへ移行する適切な時期は、主に患者の目標と選好に依存している。終末期ケアに関する会話は困難であるが、患者にとっては非常に有益であることを示す証拠がある。こうした重要な会話の開始を先延ばしするか、あいまいな、または理解しがたい言葉で伝える腫瘍医は、“死(一般に死んでいる状態になりたくないと考える患者に随伴し、きわめて重要な移行を通して先導する)が近い重篤な患者の介護において医師の中心的な職務”を全うできない。 [17]


参考文献
  1. OKEN D: What to tell cancer patients. A study of medical attitudes. JAMA 175: 1120-8, 1961.[PUBMED Abstract]

  2. Novack DH, Plumer R, Smith RL, et al.: Changes in physicians' attitudes toward telling the cancer patient. JAMA 241 (9): 897-900, 1979.[PUBMED Abstract]

  3. Eidinger RN, Schapira DV: Cancer patients' insight into their treatment, prognosis, and unconventional therapies. Cancer 53 (12): 2736-40, 1984.[PUBMED Abstract]

  4. Weeks JC, Catalano PJ, Cronin A, et al.: Patients' expectations about effects of chemotherapy for advanced cancer. N Engl J Med 367 (17): 1616-25, 2012.[PUBMED Abstract]

  5. Liu PH, Landrum MB, Weeks JC, et al.: Physicians' propensity to discuss prognosis is associated with patients' awareness of prognosis for metastatic cancers. J Palliat Med 17 (6): 673-82, 2014.[PUBMED Abstract]

  6. Craft PS, Burns CM, Smith WT, et al.: Knowledge of treatment intent among patients with advanced cancer: a longitudinal study. Eur J Cancer Care (Engl) 14 (5): 417-25, 2005.[PUBMED Abstract]

  7. Emanuel EJ, Emanuel LL: Four models of the physician-patient relationship. JAMA 267 (16): 2221-6, 1992 Apr 22-29.[PUBMED Abstract]

  8. McKneally MF, Martin DK: An entrustment model of consent for surgical treatment of life-threatening illness: perspective of patients requiring esophagectomy. J Thorac Cardiovasc Surg 120 (2): 264-9, 2000.[PUBMED Abstract]

  9. Schildmann J, Ritter P, Salloch S, et al.: 'One also needs a bit of trust in the doctor ... ': a qualitative interview study with pancreatic cancer patients about their perceptions and views on information and treatment decision-making. Ann Oncol 24 (9): 2444-9, 2013.[PUBMED Abstract]

  10. Epstein RM, Peters E: Beyond information: exploring patients' preferences. JAMA 302 (2): 195-7, 2009.[PUBMED Abstract]

  11. Agren Bolmsjö I, Nilstun T, Löfmark R: From cure to palliation: agreement, timing, and decision making within the staff. Am J Hosp Palliat Care 24 (5): 366-70, 2007 Oct-Nov.[PUBMED Abstract]

  12. Gramling R, Norton SA, Ladwig S, et al.: Direct observation of prognosis communication in palliative care: a descriptive study. J Pain Symptom Manage 45 (2): 202-12, 2013.[PUBMED Abstract]

  13. Matsuyama R, Reddy S, Smith TJ: Why do patients choose chemotherapy near the end of life? A review of the perspective of those facing death from cancer. J Clin Oncol 24 (21): 3490-6, 2006.[PUBMED Abstract]

  14. Pellegrino ED: Decisions to withdraw life-sustaining treatment: a moral algorithm. JAMA 283 (8): 1065-7, 2000.[PUBMED Abstract]

  15. Walling A, Lorenz KA, Dy SM, et al.: Evidence-based recommendations for information and care planning in cancer care. J Clin Oncol 26 (23): 3896-902, 2008.[PUBMED Abstract]

  16. Wenrich MD, Curtis JR, Shannon SE, et al.: Communicating with dying patients within the spectrum of medical care from terminal diagnosis to death. Arch Intern Med 161 (6): 868-74, 2001.[PUBMED Abstract]

  17. Finucane TE: How gravely ill becomes dying: a key to end-of-life care. JAMA 282 (17): 1670-2, 1999.[PUBMED Abstract]

 | 

本要約の変更点(03/01/2017)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

概要

本文で以下の記述が改訂された;米国がん協会(American Cancer Society)は、2017年に600,000人以上の米国人ががんで死亡すると推定している(引用、参考文献1としてAmerican Cancer Society 2017)。

終末期ケアの決定と転帰に影響を及ぼす因子

Added American Cancer Society 2016 as 参考文献7として、American Cancer Society 2017を追加。

本要約はPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

 | 

本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、進行がんにおける終末期ケアの計画について包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:


  • 会議での議論、

  • 本文の引用、または

  • 既に引用されている既存の記事との入れ替え、または既存の記事の更新。

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

進行がんにおける終末期ケアへの移行計画に対する主要な査読者は以下の通りである:


    本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

    証拠レベル

    本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

    本要約の使用許可

    PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

    本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

    PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board.PDQ Planning the Transition to End-of-Life Care in Advanced Cancer.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/advanced-cancer/planning/end-of-life-hp-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389513]

    本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。

    免責条項

    これらの要約内の情報は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。

    お問い合わせ

    Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。

     |