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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

胃がんの予防(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2016-06-17
    翻訳更新日 : 2016-08-25

PDQ Screening and Prevention Editorial Board

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、胃がんの予防について包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。


本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Screening and Prevention Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

胃がん がんの予防

概要

注:胃がんのスクリーニング胃がんの治療、および胃がんのスクリーニングと予防の研究に関する証拠レベルについては、別のPDQ要約を参照できるようにしてある。

リスクのある個人

胃がんリスクが高い集団としては、萎縮性胃炎または悪性貧血のある高齢患者、散発性胃腺腫 [1] 、家族性腺腫性ポリポーシス [2] 、または遺伝性非ポリポーシス結腸がん [3] を有する患者のほか、胃がん発生率が高い国からの移民集団がある。 [4] [5] ゴムおよび石炭産業の労働者もまた、胃がんリスクが高い。 [6]

胃がんの危険因子としては、慢性萎縮性胃炎や腸上皮化生の前駆病変の存在や、悪性貧血、胃腺腫性ポリープが挙げられる。遺伝因子としては、胃がんの家族歴、リー-フラウメニ症候群、および血液型A型がある。 [6] 環境因子としては、野菜や果物の低摂取;塩漬け食品、燻製品、または保存不良の食品の摂取;喫煙;および放射線曝露がある。 [6] [7] [8]

胃のヘリコバクターピロリ菌(Helicobacter pyloriH. pyloriとも記述される)感染が胃体部と幽門前庭部がんおよび胃リンパ腫のイニシエーションおよびプロモーションの両方に強く関連するという一貫した証拠がある。 [9] [10] [11] International Agency for Research on Cancerでは、ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)感染を非噴門胃がんおよび胃の低悪性度B細胞MALT(粘膜関連リンパ組織)リンパ腫の原因(すなわち、グループ1のヒト発がん物質)として分類している。 [12] [13]

十二指腸潰瘍の患者は、一般集団より胃がんリスクが低い。 [14]

胃がんリスクを低下させるための介入

禁煙

固い証拠によると、喫煙は胃がんのリスクの増加と関連している。 [15] [16] [17] 2004 Surgeon Generalの報告によると、喫煙は胃がんの原因として同定されており、相対リスク(RR)の平均値は前喫煙者で1.2、および現在喫煙者で1.6である。 [18] 喫煙継続者と比較して前喫煙者の胃がんリスクは、禁煙以降は時間とともに低下する。こうした観察パターンから、喫煙予防または禁煙が胃がんリスクの低下をもたらすと推論することは理にかなっている。

影響の大きさ:1件の系統的レビューおよびメタアナリシスにより、非喫煙者と比較して男性喫煙者では60%、女性喫煙者では20%胃がんが増加することが示された。


    研究デザイン:複数のケースコントロールおよびコホート研究から得られた証拠。
    内部妥当性:良好。
    一貫性:良好。
    外部妥当性:良好。

ヘリコバクターピロリ菌(H. Pylori)感染の除菌

固い証拠によると、ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)感染は胃がんリスクの増加と関連している。7件のランダム化研究(すべて胃がんリスクが高い地域で実施され、1件を除いてアジアで実施された)のメタアナリシスにより、ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)の治療によって胃がんリスクが低下しうること(1.7%から1.1%に;RR = 0.65;95%信頼区間、0.43-0.98)が示唆されている。 [19] 研究の主要アウトカムとして胃がんの発生率を評価した研究は2件のみであり、2件の異なる研究は二重盲検であった。結果を北米の集団にどの程度一般化可能であるかは不明である。

臨床試験からの初期報告では、ランダム化した被験者3,365人をITT解析で追跡した;アモキシシリンとオメプラゾールによる短期治療により、ランダム化から15年間で胃がんの発生率が39%低下し、統計的には有意ではないが胃がんによる死亡率も同様に低下したことが示された。 [20]

影響の大きさ:がんリスクは低下しうる;がん死亡率への効果は不明である。


    研究デザイン:ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)除菌のランダム化比較試験。
    内部妥当性:良好。
    一貫性:良好。
    外部妥当性:良好。

胃がんリスクを低下させるかどうかに関する証拠が不十分な介入

食事

中等度の証拠によると、塩分の過剰摂取、新鮮な野菜や果物の摂取不足は胃がんリスクの増加と関連がある。野菜、果物、およびこれ以外の植物由来の食品に含まれているビタミンCの食事からの摂取は、胃がんのリスク低下に関連している。全粒穀物、カロテノイド、ネギ属成分、および緑茶を食事に多く取り入れることも、胃がんのリスク低下に関連している。しかしながら、より多くの野菜、果物、および全粒穀物を含めるように食事を変化させることで胃がんのリスクが低下するかどうかは不明である。

影響の大きさ:小さい、判定困難。


    研究デザイン:複数のコホートまたはケースコントロール研究。
    内部妥当性:良好。
    一貫性:少数の研究。
    外部妥当性:普通(基礎的な栄養状態が集団によって大きく異なる)。

参考文献
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証拠の記述

背景

発生率および死亡率

2004年から2008年の米国における胃がんの年齢調整発生率は、10万人当たり7.7人であった。男性の発生率は女性の発生率よりも2倍高い。 [1] 胃がんの死亡率は最近数十年間に世界的に低下しており、最も顕著なのは米国である。 [2] [3] 1930年の米国の白人男性の死亡率は、10万人当たり約40人であったのに対し、2003年から2007年では10万人当たり4.6人であった。2003年から2007年の黒人男性の胃がんによる死亡率は、白人男性よりも2.3倍高かった。 [4] 近年の年間新規症例数は安定しているようである;2016年には、26,370人の米国人が胃がんと診断され、10,730人が胃がんで死亡すると推定されている。 [5] 世界的には胃がんは、4番目に起こりやすいがんである。 [6] [7] 2008年における全世界の推定年間症例数は988,000例であり、推定死亡数は736,000例であった。年間の年齢標準化発生率は世界の地域間で大きく異なる:男性で10万人当たり3.9例~42.4例、女性で10万人当たり2.2例~18.3例である。症例の70%以上が開発途上国で発生しており、症例の50%が東アジアで発生する。 [7]

米国におけるほとんどのがんは診断時に既に進行しており、これを反映して2005年から2011年にかけての5年全生存率は29.9%であった。 [8] 粘膜または粘膜下組織に限局するがん(「早期」がん)の予後ははるかに良好である:5年生存率は日本では95%以上、また米国では65%以上である。高リスク集団においては、スクリーニング計画と連携した二次予防策が講じられている。 [9] 日本においては、内視鏡的切除術が改良されており、そのことが安定した発生率の中で死亡率が劇的に低下した原因であろう。ただし、この仮説は臨床試験では検討されていない。(詳しい情報については、胃がんのスクリーニングに関するPDQ要約を参照のこと。)

病理発生

近年、胃がんの病理発生に対する理解は進歩している。胃粘膜が、正常から慢性胃炎へ、そして多発巣状萎縮、程度を異にする腸上皮化生、異形成上皮、その後、浸潤がんへと緩徐に変化する長期間の前がん過程が確認されている。 [10] この前がん過程は、食事に含まれる過剰塩分、および最も顕著なのはヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)感染など胃上皮に長年作用する刺激によって明らかに推進される。

胃がんリスクを低下させるための介入

禁煙

1件の系統的レビューおよびメタアナリシスにより、非喫煙者と比較して男性喫煙者では60%、女性喫煙者では20%胃がんが増加することが示された。 [11] さまざまなレベルの喫煙曝露とがんとの関連の大きさを推定するために、喫煙と胃がんの関係に取り組んでいる研究の系統的レビューにより、胃がんに対する最も重要な行動的危険因子に喫煙を分類する固い証拠が提供されている。 [11] [12] [13] 喫煙継続者と比較して前喫煙者の胃がんリスクは、禁煙以降は時間とともに低下する。こうした観察から得られたパターンから、喫煙予防または禁煙が胃がんリスクの低下をもたらすと推論することは理にかなっている。

ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)感染の除菌

ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)感染は、胃腺がんの原因として認識されている。 [14] [15] ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)感染の自然史に関しては、依然として疑問が残っている;菌感染の機序および集団別の再感染率または再燃率は不明である。 [16] [17] ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)に感染した140人における抗生物質による除菌について検討した小規模なランダム化試験により、親密な家族間での感染の可能性が示唆されている。 [18] 70人の参加者では、参加者だけが除菌療法を受けた;残りの70人では、参加者だけでなく同居のヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)に感染した家族全員が除菌療法を受けた。治療の9ヵ月後、各群の指標となる参加者における陽性率は、それぞれ38.6%および7.1%(オッズ比 = 8.61;95%信頼区間[CI]、2.91-22.84)であったことから、未治療の感染している家族からの感染の可能性が示唆されている。

世界人口の約半数がヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)に感染しているため、慢性的に感染しているすべての人に抗菌治療を実施することは実用的ではなく、抗菌薬耐性を引き起こしうる。ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)に対するワクチンは実験動物モデルで有効であることが示されているが、現在までのところ、ヒトにおいてこのような効果は研究されていない。

ランダム化比較試験(RCT)で、アモキシリンとオメプラゾールによる短期治療により、ランダム化から15年間で胃がんの発生率が39%低下し、統計的に有意ではないが胃がんによる死亡率も同様に低下したことが示された。 [19]

胃がんリスクがさまざまなレベルの集団におけるヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)治療の有益性の大きさは明らかにされていない。RCTおよび観察研究の系統的レビューおよびメタアナリシスが実施され、以下の3つの異なる臨床シナリオに対して治癒レジメンによるヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)の治療が評価された: [20]


  • 無症状の患者。

  • 萎縮性胃炎および腸上皮化生の患者。

  • がんに対して内視鏡的治療を受けたことのある患者(通常、患者は依然として高度萎縮性胃炎を有し、したがって将来のリスクが高い)。

著者らは、340,000人年の追跡で48,000人中715例の胃がん発生が認められた24件の適格な研究(アジアの研究が22件)を確認した。ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)の除菌療法を受けた個人では胃がんの発生が低かった(併合発生率比、0.53;95%CI、0.44-0.64)。無症状の感染者(併合発生率比、0.62;95%CI、0.49-0.79)および胃がんの内視鏡的切除術後の個人(併合発生率比、0.46;95%CI、0.35-0.60)では、除菌療法により、実質的にリスクが低下した。胃がん発生が最も低い3分位点の個人では、リスクは低下しなかった。この研究の制限としては、この研究ではヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)や他の微生物に抗生物質耐性を獲得させうるなど、除菌療法のマイナスの影響が考慮されなかったこと;およびヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)の除菌は食道腺がんに対して仮定されているヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)の予防効果を低下させうることが挙げられる。これらの結果は、米国におけるアジア系移民集団など、特に高リスクの個人および基礎にある胃粘膜疾患(萎縮性胃炎など)を有する個人のサブグループの治療;あるいは再発胃がんの予防に役立てるためには意味があるであろう。 [20]

胃がんリスクを低下させるかどうかに関する証拠が不十分であるか、または効果のない介入

食事

複数の相関研究およびケースコントロール研究において、塩分の過剰摂取が胃がんの考えられる危険因子として同定されている。 [21] [22] 塩分の一日当たりの摂取量は、一部には高血圧疾患を減少させるための公衆衛生運動により、ほとんどの西側諸国および日本では劇的に低下している。これが、少なくとも胃がん発生率低下の一部の原因となっているのであろう。塩分の高摂取量と胃がんリスクとの間には一貫した相関がある。

ケースコントロールおよびコホート研究からの疫学的証拠により、新鮮な野菜や果物の摂取量の増加と胃がん発生率の低下との間には関連があると示唆されている。 [22] [23] しかしながら、因果関係を確定するためのRCTは実施されていない。

栄養補助食品

胃がんと野菜や果物(特に抗酸化物質の豊富なもの)の食事での摂取との間に逆相関の証拠が認められることから、抗酸化物の食事での補給が関心を集めている。

微量栄養素摂取量の食事指数が算出されることによって、ベータカロチン、ビタミンA、ビタミンE、セレン、ビタミンCまたはこれらの化合物を含有する食品がもつ予防効果が示されている。中国における化学予防試験の結果、ベータカロチン、ビタミンE、およびセレンの補充後に胃がん死亡率の統計的に有意な低下が報告された。 [24] しかしながら、試験集団が栄養欠乏状態であった可能性があり、米国など他の集団に一般化することは疑問が提起されている。さらに、この実験デザインでは、ベータカロチン、ビタミンE、およびセレンの相対的効果の評価ができなかった。

同様に、中国の他の地域と比較してニンニクの摂取量が少なく、その地域のニンニク中のセレン含有量が少ない地域である棲霞市(中国山東省)において、3年間にわたって200mgのアリトリジウム(ニンニクの一成分)を毎日経口投与するとともに、100μgのセレンを各年の1ヵ月間、1日おきに経口投与するランダム化プラセボ対照試験が実施された。 [25] 二重盲検試験としてデザインされたが、アリトリジウムはニンニク特有のにおいを発する。計5,033人がランダムに割り付けられたが、参加者は以下の基準の少なくとも1つを満たしていた:(1)胃障害の医学的病歴、(2)腫瘍の家族歴、(3)喫煙歴、または(4)飲酒歴。Chinese Medical Journalに発表されたこの研究は、十分に記述されていなかった。11年に及ぶ追跡後、アリトリジウム/セレン投与群では計23例の胃がんが発生し、プラセボ群では30例が発生した(ベースライン時のいくつかの特徴で調整した後のRR = 0.48;95%CI、0.21-1.06)。病理組織によって診断された胃がんはわずか60%であった。性別によってアウトカムに質的な差が認められた:RRmen = 0.36(95%CI、0.14-0.92);RRwomen = 1.14(95%CI、0.22-5.76)。研究デザインと報告方法に問題があるため、(男性を含めた)有益性の証拠は弱く、西側諸国への一般化はできない可能性がある。

ベネズエラにおける胃がんリスクの高い集団を対象としたランダム化二重盲検化学予防試験では、抗酸化ビタミン(ビタミンC、ビタミンE、およびベータカロチン)の併用によって、胃の前がん性病変の進行または退縮に変化はみられなかった。 [26] この試験でビタミンを補充しても有益性が認められなかった別の考えられる説明は、進行した前がん病変の有病率およびヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)感染率が高かったことである。 [27]

フィンランドの男性喫煙者に対して実施されたAlpha-Tocopherol Beta-Carotene試験の2番目の解析では、補充が胃がんの発生に与える効果が評価された。 [28] これらのサプリメントの胃がんに対する予防効果は観察されなかった。コロンビア人患者976人を対象にした研究を6年間追跡した結果が報告されている。患者は、ビタミンサプリメントおよび抗ヘリコバクター療法の単独または併用 vs プラセボ投与を含む8つの異なる治療を受けるようにランダムに割り付けられた。抗ヘリコバクター療法を受けた患者79人では、プラセボ投与群と比較して、境界域ではあるが統計的に有意な腸上皮化生の退縮が示された(15% vs 6%;RR、3.1;95%CI、1.0-9.3)。しかしながら、抗生物質とビタミンを併用しても追加的な有益性は得られなかった。さらに重要なことに、腸上皮化生の進行率は受けた治療に関係なくほぼ同じであった。プラセボ投与群における進行率は23%であり、抗生物質投与患者では17%であった。 [29]

1件の系統的レビューで、胃がんを含む消化管がんを予防するための抗酸化物質の栄養補助食品に関するランダム化試験が調査された。 [30] 抗酸化サプリメントまたはビタミンCの消化管がんに対する予防効果を評価した20件の試験が確認された。胃がんについては、12件の試験でプラセボと1つ以上の微量栄養素が比較された:ベータカロチン単独(4試験);ビタミンC単独(1試験);ビタミンE単独(1試験);ビタミンA + ベータカロチン(1試験);ベータカロチン + ビタミンC(1試験);ベータカロチン + ビタミンE(1試験);ベータカロチン + ビタミンCおよびE(1試験);セレン + ビタミンCおよびE(1試験);ベータカロチン、ビタミンCおよびE、およびセレン(1試験)。いずれの比較も、胃がんの発生率に対して統計的に有意な効果を示さなかった。抗酸化物質に関するすべての試験を概括した全般的な推定で、統計的に有意な効果は示されなかった(胃がんのRR、1.14;95%CI、0.97-1.33)。2.1~12年間の治療および14.1年に及ぶ追跡後、抗酸化物併用群参加者のうち約0.51%が胃がんを発症したのに対し、プラセボ群では0.38%であった。消化管がん予防を目的とした抗酸化物質に関する全20件の試験を対象とした併合解析では、固定効果モデルにおいて、抗酸化物による全死亡率がプラセボと比較して高かった(死亡のRR、1.04;95%CI、1.02-1.07)が、変量効果モデルにおいては変わらなかった(死亡のRR、1.02;95%CI、0.97-1.07)ことが示された。


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  29. Correa P, Fontham ET, Bravo JC, et al.: Chemoprevention of gastric dysplasia: randomized trial of antioxidant supplements and anti-helicobacter pylori therapy. J Natl Cancer Inst 92 (23): 1881-8, 2000.[PUBMED Abstract]

  30. Bjelakovic G, Nikolova D, Simonetti RG, et al.: Antioxidant supplements for preventing gastrointestinal cancers. Cochrane Database Syst Rev (3): CD004183, 2008.[PUBMED Abstract]

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本要約の変更点(06/17/2016)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

本要約には編集上の変更がなされた。

本要約はPDQ Screening and Prevention Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

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本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、胃がんの予防について包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Screening and Prevention Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:


  • 会議での議論、

  • 本文の引用、または

  • 既に引用されている既存の記事との入れ替え、または既存の記事の更新。

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

証拠レベル

本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Screening and Prevention Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

本要約の使用許可

PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

PDQ® Screening and Prevention Editorial Board.PDQ Stomach (Gastric) Cancer Prevention.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: http://www.cancer.gov/types/stomach/hp/stomach-prevention-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389263]

本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。

免責条項

これらの要約内の情報は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。

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