ページの先頭へ

最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

消化管の合併症(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2016-09-09
    翻訳更新日 : 2016-11-28

消化管の合併症(PDQ®) PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Board

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、消化管の合併症(便秘、宿便、腸閉塞、下痢、および放射線腸炎)の病態生理および治療について包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。


本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

下痢 消化管の合併症 便秘、宿便、および腸閉塞 放射線腸炎

概要

腫瘍患者には消化管の合併症(便秘、宿便、腸閉塞、下痢、および放射線腸炎)がよくみられる問題である。がんの成長および拡がりのほか、がん治療もこうした病態の原因となる。

便秘とは、大腸内の便の動きが遅く、その結果乾燥した硬い便が排出されることをいう。このため不快感または疼痛を来すこともある。 [1] 便の大腸通過時間が長くなるほど、水分の吸収が高まり、便の乾燥および硬化が進む。

活動不良、長期臥床または身体的、社会的障害(特にトイレが利用しにくいこと)などが便秘の原因となる。がん治療ないしがん性疼痛によるうつ病または不安も便秘の原因となる。おそらく、便秘の最も一般的な原因は、摂取水分の不足および鎮痛薬投与である;しかしながら、これらの原因は管理可能である。

便秘は苦痛および不快感を伴うが、宿便は生命を脅かしかねない。宿便とは、直腸ないし結腸に乾燥した硬便が蓄積することをいう。宿便を有する患者は、胃腸症状ではなくむしろ循環器、心臓ないし呼吸器の諸症状が認められる。 [2] 宿便を見過ごすと、徴候および症状が進行して死に至ることもある。

腸閉塞は、便秘および宿便と異なり、腸管が宿便以外の機序により部分的ないし完全に閉塞することをいう。腸閉塞の分類方法には、以下の3通りがある:


  • 閉塞の種類。

  • 閉塞の機序。

  • 閉塞部位。

原発腫瘍ないし転移性腫瘍などの腸管内外の病変、術後癒着、腸捻転、嵌頓ヘルニアなどの器質的障害があると、蠕動運動および正常な腸機能の維持に支障を来す。器質的障害から腸の完全閉塞ないし部分閉塞に至ることもある。人工肛門造設患者の場合は、便秘を来す危険性が特に大きい。規則的な便通(1日1回~数回)がない場合には、さらに詳しい検査が必要となる。放屁がない場合は特に部分閉塞ないし完全閉塞を来している可能性がある。 [3]

下痢はがん治療が行われる間起こり、その影響は身体的にも精神的にも苦痛をもたらす。下痢は便秘の有病率より低いものの、がん患者にとって非常に苦痛な症状であることに変わりはない。下痢は以下のような影響を及ぼす:


  • 食事のパターンを変化させる。

  • 脱水症状を起こす。

  • 電解質平衡異常の誘因となる。

  • 機能を低下させる。

  • 疲労の原因となる。

  • 皮膚状態を悪化させる。

  • 活動を制限する。

場合によっては下痢は、生命を脅かしうる。その上、下痢は介護者の負担を増加させる。

下痢の定義は広範囲にわたる。急性下痢は一般的に、糞便中の水分量が異常に増大する状態が4日間以上続くが、2週間未満でおさまる、とされる。他の定義では、下痢は、糞便中の水分量(300mL超)および24時間中の排便頻度(4回以上の形を成さない便を排便)の増大とされる。 [4] 下痢が2ヵ月以上持続する場合は、慢性化したとみなされる。

放射線腸炎とは、腹部、骨盤、または直腸への放射線療法中または終了後に起こる大腸および小腸の機能障害である。また、1件の報告により、化学療法を併用するまたは併用しない放射線を受けていた個人について、肺がんおよび頭頸部がんに対する放射線の結果としての放射線誘発性の下痢も実証された。 [5]

大腸および小腸は電離放射線に対する感受性がきわめて高い。線量を大きくすれば腫瘍制御の可能性は増加するが、正常組織を損傷する可能性も高くなる。約10Gyで腸への急性副作用が起こる。多くの腹部、骨盤腫瘍に対する治癒線量は、50~75Gyであるため、腸炎は起こりやすい。 [6]

特に明記していない場合、本要約には成人に関する証拠と治療について記載している。小児に関する証拠と治療は、成人の場合とかなり異なる可能性がある。小児の治療に関する情報が入手できる場合は、小児に関する情報であることを明記した上でその内容を要約する。


参考文献
  1. Culhane B: Constipation. In: Yasko J, ed.: Guidelines for Cancer Care: Symptom Management. Reston, Va: Reston Publishing Company, Inc., 1983, pp 184-7.[PUBMED Abstract]

  2. Wright BA, Staats DO: The geriatric implications of fecal impaction. Nurse Pract 11 (10): 53-8, 60, 64-6, 1986.[PUBMED Abstract]

  3. Hampton BG, Bryant RA, eds.: Ostomies and Continent Diversions: Nursing Management. St. Louis, Mo: Mosby Year Book, Inc., 1992.[PUBMED Abstract]

  4. Tuchmann L, Engelking C: Cancer-related diarrhea. In: Gates RA, Fink RM, eds.: Oncology Nursing Secrets. 2nd ed. Philadelphia, Pa: Hanley and Belfus, 2001, pp 310-22.[PUBMED Abstract]

  5. Sonis S, Elting L, Keefe D, et al.: Unanticipated frequency and consequences of regimen-related diarrhea in patients being treated with radiation or chemoradiation regimens for cancers of the head and neck or lung. Support Care Cancer 23 (2): 433-9, 2015.[PUBMED Abstract]

  6. Perez CA, Brady LW, eds.: Principles and Practice of Radiation Oncology. 3rd ed. Philadelphia, Pa: Lippincott-Raven Publishers, 1998.[PUBMED Abstract]

 | 

便秘

便秘の病因

一般集団でよくみられる便秘発症に寄与する因子としては、以下のものがある:


  • 食事。

  • 排便習慣の変化。

  • 水分の摂取不足。

  • 運動不足。

便秘は、がんの主症状となることもあり、後の段階では腫瘍の増大ないし腫瘍治療の副作用により起こることもある。がん患者における追加の原因としては、以下のものがある: [1]


  • 腫瘍自体。

  • がんに伴う障害。

  • がんまたはがんの疼痛に対する薬物療法の作用。

  • 臓器不全、可動性の低下、うつ病などの併存病態。

生理的因子として、以下のものがある:


  • 経口摂食量の不足。

  • 脱水。

  • 食物繊維の摂取不足。

  • 臓器不全。

以上の因子はその一部またはすべてが、疾患の経過、加齢、衰弱または治療によって生じる可能性がある。

便秘の原因

投薬
  • 化学療法(例えば、ビンカアルカロイド、オキサリプラチン、タキサン、サリドマイドなど、自律神経系の変化を引き起こしうるすべての薬物)。*

  • オピオイドまたは鎮静薬。

  • 抗コリン薬(例えば、胃腸鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗うつ薬)。

  • フェノチアジン系。

  • カルシウム系およびアルミニウム系制酸薬。

  • 利尿薬。

  • ビタミン剤(例えば、鉄、カルシウム)。

  • 精神安定薬と睡眠薬。

  • 全身麻酔と陰部神経ブロック。

食事
  • 水分の摂取不足。*

排便習慣の変化
  • 排便反射の反復的抑制。

  • 緩下薬および/または浣腸の過剰使用。

長期臥床*および/または運動不足
  • 脊髄の損傷または圧迫、骨折、疲労、衰弱、活動不良(床上安静を含む)。

  • 呼吸器障害または心臓障害による運動不耐性。

腸の障害
  • 過敏性結腸、憩室炎または腫瘍。*

神経筋障害(神経支配失調により腸アトニーを来す)
  • 神経学的病変(脳腫瘍)。

  • 脊髄の損傷または圧迫。*

  • 対麻痺。

  • 不全麻痺を伴う脳血管障害。

  • 腹筋減弱。

代謝性疾患
  • 甲状腺機能低下および鉛中毒。

  • 尿毒症。*

  • 脱水症。*

  • 高カルシウム血症。*

  • 低カリウム血症。

  • 低ナトリウム血症。

うつ病
  • 慢性疾患。

  • 食欲不振。

  • 長期臥床。

  • 抗うつ薬。

腹圧減退
  • 気腫。

  • 横隔膜または腹筋の神経筋障害。

  • 腹部ヘルニア。

筋の緊張減退
  • 栄養不良。

  • 悪液質、貧血またはがん腫。*

  • 老化。

環境因子
  • 介助なしにトイレに行けない。

  • 不慣れな環境または多忙な環境。

  • 脱水症の原因となる異常高温。

  • 排便習慣の変化(例えば、さしこみ便器の使用)。

  • プライバシーの欠如。

腸管狭窄
  • 放射線療法による瘢痕、外科的吻合術、壁外腫瘍の増大による圧迫が関連している。

[注: *はがん患者に多く認められる。]

ビンカアルカロイド、タキサンおよびサリドマイドによる自律神経障害の結果として便秘を来すことも多い。これ以外にオピオイド鎮痛薬、抗コリン薬(抗うつ薬および抗ヒスタミン薬)などの薬物も、排便反射に対する鈍麻および腸の運動性低下を招き、便秘を起こす。オピオイド投与には便秘を伴うことが多いので、オピオイド処方時に便秘治療のレジメンを開始し、オピオイド投与期間中継続する。オピオイドによる便秘の程度はさまざまで、用量との関係が示唆される。1件の研究では、臨床家は下剤をオピオイドの用量に基づいて処方するのではなく、むしろ腸の機能に合わせて下剤を漸増すべきであると示唆されている。低用量のオピオイドまたは、コデインのような弱いオピオイドも、便秘を引き起こしやすい。 [2] (詳しい情報については、がん性疼痛に関するPDQ要約の有害作用セクション内の便秘のセクションを参照のこと。)

糖尿病(自律神経障害を伴う)および甲状腺機能低下など、他の疾患も便秘を引き起こしうる。低カリウム血症、高カルシウム血症などの代謝性疾患も、がん患者を便秘にさせやすい。このような障害を取り除けば、便秘は解消する。 [1]

便秘の評価

便通が少なくとも週3回で1日3回以下の場合を正常な排便とみなす;しかしながら、この基準はがん患者に適したものではない。 [1] [3] 便通頻度が減少し、便が乾燥硬化して十分排出されないという愁訴があれば便秘とみなされる。身体診察とともに、患者の排便習慣、食事の変化および薬物投与について徹底的な病歴聴取を行うことにより、可能性のある便秘の原因を同定できる。便秘に伴う腹部膨隆、放屁、痙攣、直腸膨満などの症状も評価の対象とする。直腸レベルでの宿便を除外するため、直腸指診が実施される。腸管内病変の有無を確認するには、潜血検査が有用となる。がんが疑われる場合には、消化管全体の検査が必要となる。 [4]

評価では、以下の質問が有用な手がかりになる:


  1. 患者の通常の排便はどのようなもの(頻度、量、タイミング)か。
  2. 最後に便通があったのはいつか。その際の便の量、硬さ、色は。便に血は混じっていたか。
  3. 腹部不快感、痙攣、吐き気または嘔吐、疼痛、ガス過剰、直腸膨満がみられるか。
  4. 患者は下剤または浣腸を常用しているか。患者は、通常どのような方法で便秘を解消しようとするか。その方法は通常有効か。
  5. 患者の日頃の食事はどのようなものか。通常摂取している水分の量および種類はどうか。
  6. 患者はどのような薬物を使用しているか(用量および頻度)。
  7. 当該症状は最近みられるようになったものか。
  8. 1日の放屁回数はどの程度か。

身体的評価により、腸音、放屁、または腹部膨隆の有無が確認できる。人工肛門造設患者も便秘の有無が確かめられる。このような患者では、食習慣、水分摂取量、活動水準、およびオピオイド投与を調査する。

便秘の管理

便秘の総合管理には、予防(可能な場合)、原因の除去、下剤の慎重投与などが含まれる。患者によっては、食物繊維(果物;青菜;100%全粒シリアル、パン;ふすま)の摂取量を高めるとともに、1日の水分摂取量を体重(ポンド)当たり1/2オンス(約30mL/kg)まで高めるよう(腎疾患または心疾患により禁忌とされない場合)指導してもよい。(詳しい情報については、がん医療における栄養に関するPDQ要約を参照のこと。)老人患者を対象にしたある研究で、効力、費用、投与の簡便性について、天然混合緩下剤(レーズン、カレント、プルーン、イチジク、ナツメヤシ、プルーンエキス)と便軟化剤、ラクツロースなどの下剤を用いたプロトコルとの比較が実施された。その結果は、天然緩下剤の方が費用も低く、より自然で規則的な便通が得られ、投与の簡便性にも優れることを示している。サンプルサイズが小さいため、この知見の一般化には限界があったが、がん患者集団を対象にした天然緩下剤の追加検討が有用になるであろう。 [5] 以下に、がん患者の便秘予防プログラムを示す。

評価:
  • 患者の通常の排便および排便習慣を確立する(通常の排便時間、便の硬さ、色、および量)。

  • 運動水準、可動性および食事(水分、果物および繊維の摂取)に関して、患者の理解度およびコンプライアンスの程度を調べる。

  • 下剤、刺激剤または浣腸の通常の使用度を計測する。

  • 臨床検査値、特に血小板数を確認する。

  • 直腸(または人工肛門)の身体的評価を実施して、宿便がないことを確認する。

よく用いられる介入療法:
  • 1日の排便を記録する。

  • 禁忌とされない場合には、1日に8オンス(240mL)入りコップ8杯の水分を摂ることを目標に、水分摂取量を高めるよう指導する。

  • 規則的な運動を指導するが、これには、ベッドでの腹部運動のほか、入院患者の場合にはベッドから椅子への移動も含まれる。

  • 十分な繊維の摂取を指導する。専門家は、以下のように推奨している:
      成人健常者では1日20g~35gの繊維を摂取すべきである(平均摂取量は11g)。
      小児および青年では、年齢に5を足したグラム数の繊維摂取量-例えば、10歳児は1日15g(10 + 5)の繊維を摂取すべきである。このガイドラインは18歳まで適用する;18歳になった時点で成人向けの推奨量に従うべきである。

      がん患者に特定した繊維摂取量の推奨はないが、がん患者は、果物(例、レーズン、プルーン、桃、リンゴ)、野菜(例、カボチャ、ブロッコリー、人参、セロリ)、100%全粒シリアル、パン、ふすまなどの高繊維食物の摂取量を高めるよう指導される。繊維摂取量とともに水分摂取量も高める必要があり、それを怠ると便秘を来す。腸閉塞の既往がある患者または人工肛門形成術後期の患者など、腸閉塞を来すリスクが大きい患者では、繊維の大量摂取は禁忌とされる。



  • 通常の排便時の約30分前に、温かい飲み物または熱い飲み物を飲むようにさせる。

  • 通常の排便時または排便予定時には、プライバシーが守られ落ち着いて過ごせるようにする。

  • トイレまたはポータブル便器とともに、適切な補助用具を準備する;さしこみ便器の使用はできるだけ避ける。

以下に二部で示す別のアプローチは、オピオイド誘発性便秘の予防と管理のためにMD Anderson Cancer Centerの実践コンセンサスアルゴリズムを基に作成されている。[注: Copyright 2008 The University of Texas MD Anderson Cancer Center]

オピオイド誘発性便秘を予防するためのMD Anderson Cancer Centerアルゴリズム
    排便習慣に現在の変化(例、腸閉塞または下痢)がみられない場合は、オピオイドの投与を受けている患者は、緩下薬による腸のレジメンを開始し、腸管理のための教育を受ける。
    1. 刺激性下剤 + 便軟化剤(例、Senokot-S[センナ 8.6mg + ドキュセート 50mg])、1日2錠から漸増する(最大1日9錠)。
    2. 十分な水分と食物繊維を摂取し、可能であれば運動する。
    3. プルーンジュースとその後に温かい飲料を飲んでも良い。

オピオイド誘発性便秘を管理するためのMD Anderson Cancer Centerアルゴリズム
  1. 便秘の潜在的原因(例、最近のオピオイド投与量増加、他の便秘を引き起こす薬物の使用、または新たな腸閉塞)を評価する。
  2. Senokot-S(または分けて服用している場合は、センナ錠およびドキュセート錠)を増加し、以下の1つまたは両方を追加する:
    1. マグネシア乳剤の経口濃縮液(1170/5mL)、10mL 1日2~4回経口投与。
    2. ポリエチレングリコール(MiraLAX)、8oz(240mL)中に17gの飲料を毎日。
  3. 上記に反応がみられなければ、低位部の宿便を除外するために直腸指診を実施する。上述の手順を継続し、加えて:
    1. 宿便が認められる場合は、便が柔らかければ手で摘便する。そうでなければ、摘便前に鉱油浣腸で便を軟化させる。その後は固形便がなくなるまで糖蜜ミルク浣腸を実施する。
    2. 摘便前にレスキュー鎮痛薬の使用を検討する。
    3. 直腸指診で宿便が認められない場合でも、患者は依然としてより高い位置に宿便を有する可能性がある;病歴が妥当であれば、腹部画像検査を検討し、および/またはクエン酸マグネシウムを8oz(240mL)経口投与とともに糖蜜ミルク浣腸を実施する。腸管理相談を検討する。
  4. 好中球減少または血小板減少がみられる患者には、腸管理相談を手配する。

  • 3日間便通がみられない場合または便秘を来す薬物の投与を開始する日には、以下に挙げるレジメンのいずれかを開始する:
      便軟化剤(例えば、ドキュセートナトリウムを1日1~2カプセル)。オピオイドに伴う便秘では、便軟化剤に刺激性下剤を併用してもよい。オピオイドの腸作用を抑えるためのレジメンでは、膨張性下剤の投与は推奨されない。
      センナ製剤2錠を1日2回服用。
      ビサコジル1錠を就寝前に服用。
      療法開始後24時間しても排便のない場合には、マグネシア乳剤30~45mLを服用。

  • 依然として便量が不十分な場合には、便軟化剤を最高1日6カプセルまで増量するか、センナ製剤(例えば、Senokot)を最高8錠(1回4錠を1日2回)まで漸増する;ビサコジルが3錠まで漸増されることもある。

  • 依然として便量が不十分な場合には、グリセリン座剤、ビサコジル座剤または浣腸(リン酸/重リン酸塩、油性停留、水道水)を慎重に用いるが、好中球減少症患者、血小板減少症患者では特に慎重を期すること。

便秘の医学的管理には、生理食塩水ないし化学的下剤、座剤、浣腸、膨張性製剤の投与が含まれる。

禁忌

がん患者で血小板減少症、白血球減少症、および/またはがんとその治療による粘膜炎発症のリスクがある場合には、直腸作用性薬剤の使用を避けるべきである。免疫不全患者では、直腸と肛門の処置(すなわち、直腸検査、座剤投与、および浣腸)を避けるべきである。このような処置で裂肛または膿瘍を来すこともあり、それが感染の進入路となる。また、好中球減少症患者では人工肛門も不必要に処置すべきではない。

経肛門的洗浄(TAI)は最近記述されている治療法で、慢性便秘および大便失禁を引き起こす慢性神経因性および解剖学的な結腸運動障害を管理するように意図されている。 [6] 数件の研究で、神経因性腸機能障害に対して従来の管理戦略よりもTAIの方が効力が高いことが明らかにされている [7] [8] [9] ;しかしながら、腫瘍に直接関係する便秘、あるいはがんに対する治療または副作用の管理(例、オピオイド誘発性便秘)によって引き起こされた便秘の患者における安全性または効力を示した研究は存在しない。現在適応となる集団ではまれであるが、合併症として腸穿孔が挙げられる。 [10] [11] 結腸がん、何らかの大腸手術の経験、および骨盤への放射線は、TAI使用に対する相対または絶対禁忌と考えられる。 [6]

現在のところ、がんを有するかがんの既往のある患者について、神経因性腸機能障害以外の状況による慢性便秘または大便失禁を管理するためのTAIの使用を支持する証拠は得られていない。

便秘のための薬物

膨張性下剤
  • 膨張性下剤は、天然ないし半合成の多糖類またはセルロースである。同剤は体の自然な働きに作用し、腸管内に水分を保持し、便を軟化し、便通頻度を高める。オピオイドの腸作用を抑えるためのレジメンでは、膨張性下剤の使用は推奨されない。

  • 効果発現時間:12~24時間(最長で72時間)。

  • 注意:腸閉塞の発症を防ぐため、患者は8オンス(240mL)入りコップ2杯の水とともに膨張性下剤を服用し、十分な水分補給を維持する。プシリウムは、サリチル酸塩、ニトロフラントイン、ジギタリスの作用を低下させるので、こうした薬物との併用は避ける。腸閉塞が疑われる場合には使用を避けること。

  • 用途:過敏性腸症候群の管理に効果がある。

  • 薬物と用量:
      メチルセルロース(Cologel):5~20ccを1日3回、水とともに服用。
      麦芽エキス(Maltsupex):4錠を毎食時および就寝前に服用するか、散剤または液剤大匙2杯を1日2回3~4日間服用し、その後は就寝前に大匙1~2杯を服用。
      プシリウム:商品により1回大匙1杯~1包を1日1~3回服用。

塩類下剤
  • 塩類下剤は浸透圧の高い化合物を含有し、腸管内に水分を誘導する。水分貯留によって便の硬さが変化し、腸管が拡張して蠕動運動が誘発される。痙攣を来しうる。

  • 効果発現時間:0.5~3時間。

  • 注意:反復使用すると体液および電解質の平衡が崩れることがある。腎機能障害のある患者では、マグネシウムを含む下剤の使用を避けること。浮腫、うっ血性心不全、巨大結腸または高血圧が認められる患者では、ナトリウムを含む下剤の使用を避けること。

  • 用途:ほとんどの場合、直腸検査ないし腸検査の前処置で腸内容物を排出するために用いられる。

  • 薬物と用量:
      硫酸マグネシウム:15gをコップ1杯の水に入れて服用。
      マグネシア乳剤:濃縮の場合は10~20cc、通常は15~30ccを服用。
      クエン酸マグネシウム:240cc。
      リン酸ナトリウム:4~8gを水に溶解して服用。
      リン酸一水素ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム(Fleet Phospho-soda):20~40mLを冷水4オンス(120mL)と混合して服用。

刺激性下剤
  • 刺激性下剤は、腸に直接作用して腸の運動活性を亢進させる。

  • 効果発現時間:6~10時間。

  • 注意:刺激性下剤を長期間使用すると、依存性が生じ正常な腸機能が失われる。ダントロン(danthron)の長期間の使用は直腸粘膜に褐色色素沈着を来し、アルカリ尿が赤色となる。ビサコジルの活性化には胆汁内への排泄が必要であり、胆道閉塞ないし胆汁分流のある場合には有効ではない。結腸に潰瘍性病変があることが分かっているか、それが疑われる場合には、ビサコジルの使用を避けること。刺激性下剤は痙攣を来しうる。

  • 薬物相互作用:制酸剤、牛乳またはシメチジンの服用後1時間以内は、ビサコジルの服用を避けること、さもないと、ビサコジルの腸溶性コーティングの溶解が早められ、胃または十二指腸を刺激することになる。ダントロン(danthron)は、ドキュセートとの併用により吸収が増大する。

  • 用途:直腸検査ないし腸検査の前処置で腸内容物を排出するために用いる。刺激性下剤のほとんどは結腸に作用する。

  • 薬物と用量:
      ダントロン:37.5~150mgを夕食時ないし夕食の1時間後に服用。
      センノシドのカルシウム塩類:12~24mgを就寝前に服用;センナ:Sonolax、Seneson、またはBlack-Draught(いずれも2錠);Senokot(就寝前に2錠または10~15cc)。
      ビサコジル:10~15mgを噛まずに丸ごと飲むか、10mgを座剤として使用。

潤滑性下剤
  • 潤滑性下剤は、腸粘膜を潤滑化し便を軟化する。

  • 注意:就寝前に胃を空にした状態で投与すること。鉱油は油溶性ビタミンおよび油溶性薬物の吸収を妨げる。老齢の患者では、誤嚥の可能性があり、鉱油による脂肪性肺臓炎を来しかねないため投与は避けられる。鉱油は肛門直腸手術後の回復を妨げる可能性もある。ドキュセートナトリウムとの併用は避けること。ドキュセートナトリウムは鉱油の体内吸収を高める。

  • 用途:いきむことが危険となる患者で、いきみを防ぐため予防的に用いる。

  • 薬物と用量:
      鉱油:5~30ccを就寝前に服用。

便軟化剤
  • 便軟化剤は、糞塊への水分浸透を促進して便を軟化する。効果発現までに最長3日を要しうる。便形成時に結腸で水分が再吸収されることから、便軟化剤および浸軟性下剤の使用は限定される。

  • 便軟化剤は、単剤レジメンとしては投与されず、刺激性下剤との併用が有用な場合がある。

  • 注意:鉱油と一緒に投与すると、鉱油の体内吸収が高まる。

  • 用途:いきみを防ぐため予防的に用いる。便が硬い場合に最も適する。

  • 薬物と用量:
      ドキュセートナトリウム:50~240mgをコップ1杯の水とともに服用。
      ドキュセートカルシウム:便通が正常になるまで1日240mgを連日服用。
      ドキュセートカリウム:便通が正常になるまで1日100~300mgを連日服用し;1日の水分摂取量を高める。
      ポロクサマー188:188mg(就寝時に480mg)。

ラクツロース(コーラック、Cephulac)
  • ラクツロースは合成二糖類で、消化されずに結腸に達する。結腸で分解され、乳酸、ギ酸、酢酸および二酸化炭素を生成する。こうした物質により浸透圧が上昇するため、便中の水分量が増大し、その結果便が軟化し、便通頻度も高まる。

  • 効果発現時間:24~48時間。

  • 注意:過剰量の投与で電解質喪失を伴う下痢を来す可能性がある。急性腹症、宿便または腸閉塞の患者では投与を避けること。

  • 用量:毎日15~30cc(ラクツロース含量10~20g)を服用。

ポリエチレングリコール電解質(Golytely、Colyte)
  • 5包を水道水1ガロン(3.785L)と混合するが、この中に含まれる成分は以下の通りである:ポリエチレングリコール(227.1g)、塩化ナトリウム(5.53g)、塩化カリウム(2.82g)、炭酸水素ナトリウム(6.36g)および硫酸ナトリウム(無水;21.5g)である。着香料は添加しないこと。口当たりをよくするために冷やして服用する。冷蔵庫で最長48時間の貯蔵が可能。

  • 用途:水分およびナトリウムの低下ないし上昇を最小限に抑えて腸内容を排出するために用いる。

オピオイド拮抗薬(ナロキソン、メチルナルトレキソン)
  • 注意:他の薬物で失敗した場合にのみ投与する。


  • オピオイド誘発性便秘を治療するために、メチルナルトレキソン(体重1kg当たり0.15mg)を、連日または隔日、皮下投与できる。緩和ケアが必要ながんまたはがん以外の患者の研究において、およそ半数の患者に注射による投与後4時間以内に排便があり、30%が投与後30分以内の排便であった。

  • 2件の緩和ケアの患者の研究(1件は単回投与の試験で、もう一方が2週間の隔日投与の試験)において、オピオイドの離脱症状や他の中枢神経系の影響の証拠は認められなかった。 [12] [13]

  • 注意:この薬は、腸閉塞の患者に禁忌である。

  • 最もよくみられる副作用は、めまい、吐き気、腹痛、鼓腸および下痢がある。

  • 徐放性ナロキソンの研究では、オキシコドン:ナロキソンの比を2:1(プラセボとの比較における、40:20mg、60:30mg、および80:40mgのオキシコドン:ナロキソンの組み合わせの平均結果)とした場合に、鎮痛作用に拮抗しない排便機能の改善が示された。 [14]

最新の臨床試験

現在、参加者を受け入れている便秘、宿便および腸閉塞についての支持療法と緩和ケアの試験は、NCI支援のがん臨床試験のリストを参照のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験のリストは、場所、薬物、介入、他の基準によりさらに絞り込むことができる。

臨床試験に関する一般情報は、NCIウェブサイトからも入手することができる。


参考文献
  1. Portenoy RK: Constipation in the cancer patient: causes and management. Med Clin North Am 71 (2): 303-11, 1987.[PUBMED Abstract]

  2. Bennett M, Cresswell H: Factors influencing constipation in advanced cancer patients: a prospective study of opioid dose, dantron dose and physical functioning. Palliat Med 17 (5): 418-22, 2003.[PUBMED Abstract]

  3. McShane RE, McLane AM: Constipation. Consensual and empirical validation. Nurs Clin North Am 20 (4): 801-8, 1985.[PUBMED Abstract]

  4. Bruera E, Suarez-Almazor M, Velasco A, et al.: The assessment of constipation in terminal cancer patients admitted to a palliative care unit: a retrospective review. J Pain Symptom Manage 9 (8): 515-9, 1994.[PUBMED Abstract]

  5. Beverley L, Travis I: Constipation: proposed natural laxative mixtures. J Gerontol Nurs 18 (10): 5-12, 1992.[PUBMED Abstract]

  6. Emmanuel AV, Krogh K, Bazzocchi G, et al.: Consensus review of best practice of transanal irrigation in adults. Spinal Cord 51 (10): 732-8, 2013.[PUBMED Abstract]

  7. Christensen P, Bazzocchi G, Coggrave M, et al.: A randomized, controlled trial of transanal irrigation versus conservative bowel management in spinal cord-injured patients. Gastroenterology 131 (3): 738-47, 2006.[PUBMED Abstract]

  8. Krogh K, Ostergaard K, Sabroe S, et al.: Clinical aspects of bowel symptoms in Parkinson's disease. Acta Neurol Scand 117 (1): 60-4, 2008.[PUBMED Abstract]

  9. Coggrave M, Norton C, Cody JD: Management of faecal incontinence and constipation in adults with central neurological diseases. Cochrane Database Syst Rev 1: CD002115, 2014.[PUBMED Abstract]

  10. Christensen P, Krogh K, Buntzen S, et al.: Long-term outcome and safety of transanal irrigation for constipation and fecal incontinence. Dis Colon Rectum 52 (2): 286-92, 2009.[PUBMED Abstract]

  11. Memon S, Bissett IP: Rectal perforation following transanal irrigation. ANZ J Surg : , 2014.[PUBMED Abstract]

  12. Thomas J, Karver S, Cooney GA, et al.: Methylnaltrexone for opioid-induced constipation in advanced illness. N Engl J Med 358 (22): 2332-43, 2008.[PUBMED Abstract]

  13. Portenoy RK, Thomas J, Moehl Boatwright ML, et al.: Subcutaneous methylnaltrexone for the treatment of opioid-induced constipation in patients with advanced illness: a double-blind, randomized, parallel group, dose-ranging study. J Pain Symptom Manage 35 (5): 458-68, 2008.[PUBMED Abstract]

  14. Meissner W, Leyendecker P, Mueller-Lissner S, et al.: A randomised controlled trial with prolonged-release oral oxycodone and naloxone to prevent and reverse opioid-induced constipation. Eur J Pain 13 (1): 56-64, 2009.[PUBMED Abstract]

 | 

宿便

宿便の病因

宿便を誘発する5大要因は以下の通りである:


  • オピオイド鎮痛薬。

  • 長期の活動不良。

  • 食事の変化。

  • 精神疾患。

  • 便秘薬の常用。 [1]

薬物の中では、便秘の緩和に用いられる下剤が便秘および宿便の最大の原因となっている。下剤を増量しながら反復的に用いると、拡張刺激による内反射に対して結腸が鈍麻する。(宿便につながる便秘の原因については、本要約の便秘の病因便秘の病因のセクションを参照のこと。)

宿便の徴候と症状

患者は便秘に類似した症状を呈することもあり、また消化管系とは関係のない症状を呈すこともある。宿便が仙骨神経を圧迫する場合には、腰痛を来す。宿便が尿管、膀胱または尿道を圧迫すると、泌尿器症状が発現する。こうした症状には、頻尿、乏尿、尿意の異常または尿閉などがある。

腹部膨隆を来すと、横隔膜の動きが制限されて換気不良が起こり、続いて低酸素症および左心室機能不全を来す。低酸素症は、狭心症または頻脈の原因ともなる。宿便の圧力により血管迷走神経反応が刺激されると、めまいおよび低血圧を来す。

宿便の周囲を通過する便の動きで下痢を来しうるが、この際便の噴出をみる場合もある。咳嗽などの腹圧を高める動作で便が漏出することもある。便の漏出に伴い吐き気、嘔吐、腹痛および脱水がみられる場合もあるが、便の漏出があれば、ほぼ宿便の診断を下せる。したがって、宿便の患者は、頻脈、発汗、発熱、血圧上昇ないし低下、および/または腹部膨満感ないし硬直などの徴候を伴った、急性の意識障害および見当識障害の症状を呈することがある。

宿便の評価

評価法として、便秘患者に関する前述の質問を用いる。(質問の一覧表に関しては、本要約の便秘の評価便秘の評価のセクションを参照のこと。)これと併せて聴診で腸音の有無、亢進、減弱を確認する。腹部膨隆の有無を確認し、慎重な触診を実施して腫瘤、硬直、圧痛の有無を確認する。直腸指診では、直腸内またはS状結腸内の便の存在を確認する。宿便がある場合、腹部X線(臥位および立位)で結腸趨壁の消失、大量便を示すガス像、宿便より口側の結腸拡張が示される。 [2]

宿便の診断が確定できない場合には、臨床検査を実施して、これ以外の病態ではないことを確認する。実施する検査には、全血算、血液生化学、胸部X線および心電図がある。患者が脱水を来していれば、血中尿素窒素、クレアチニンおよび血清浸透圧が上昇する。血液濃縮を示すヘモグロビンおよびヘマトクリットも上昇しうる。発熱がある場合には白血球(WBC)数がわずかに上昇する。WBC数が極端に高く、患者に高熱および腹痛がみられる場合には、腸閉塞、穿孔、感染症または炎症ではないことを確認する必要がある。盲腸に著明な拡張(直径12cm以上)がみられる場合には、腸穿孔の恐れがある。

宿便の治療

便に水分を補給して軟化し、摘便または便通を可能にすることが宿便の一次治療となる。浣腸(油性停留浣腸、水道水浣腸、または高張リン酸浣腸)は、腸管を潤滑化し、便を軟化する。ただし、宿便が腸壁を刺激し、浣腸を過剰使用することで腸穿孔を来しうることに注意しなければならない。指の届く範囲に便がある場合には、指を用いた摘便の必要性もある。浣腸で腸を潤滑化したのちに摘便するのが最善の方法である。

それより上の結腸にある便では、ドキュセートなどの非刺激性軟化剤が軟化に有用である。鉱油またはオリーブ油の投与でも、便を緩めることができる。鉱油とドキュセートナトリウムとを併用する場合には、鉱油の体内吸収が高まり、全身性類脂性肉芽腫を来す可能性があるので慎重に実施する。 [3] グリセリン座剤も使用できる。腸を刺激するか、痙攣を来す可能性がある下剤はいずれも、腸の障害を増悪させるので使用が避けられる。

最新の臨床試験

現在、参加者を受け入れている便秘、宿便および腸閉塞についての支持療法と緩和ケアの試験は、NCI支援のがん臨床試験のリストを参照のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験のリストは、場所、薬物、介入、他の基準によりさらに絞り込むことができる。

臨床試験に関する一般情報は、NCIウェブサイトからも入手することができる。


参考文献
  1. Cefalu CA, McKnight GT, Pike JI: Treating impaction: a practical approach to an unpleasant problem. Geriatrics 36 (5): 143-6, 1981.[PUBMED Abstract]

  2. Bruera E, Suarez-Almazor M, Velasco A, et al.: The assessment of constipation in terminal cancer patients admitted to a palliative care unit: a retrospective review. J Pain Symptom Manage 9 (8): 515-9, 1994.[PUBMED Abstract]

  3. Brandt LJ: Gastrointestinal Disorders of the Elderly. New York, NY: Raven Press, 1984.[PUBMED Abstract]

 | 

大腸あるいは小腸の閉塞

腸閉塞には、以下の4種類がある:


  1. 単純性閉塞。
  2. 腸係蹄閉塞。
  3. 絞扼性閉塞。
  4. 陥頓性閉塞。

単純性閉塞では1ヵ所に閉塞が起こり;腸係蹄閉塞では2ヵ所に起こる。腸係蹄閉塞は、腸が捻転して孤立した閉鎖区間が生じ、それより上の腸管が閉塞して起こる。絞扼性閉塞では腸の血流量が低下し、整復されない場合には陥頓性閉塞を来し腸壊死に至る。

腸閉塞の機序には、機械的機序と非機械的機序とがある。

機械的因子

は腸管狭窄の原因となるもので、以下がある: [1]


  • 腸の炎症または外傷。

  • 新生物。

  • 癒着。

  • ヘルニア。

  • 捻転。

  • 腸管外からの圧力。

非機械的因子

には、以下のような腸の筋肉活動または神経支配に干渉する因子がある:


  • 麻痺性イレウス。

  • 腸間膜塞栓または腸間膜血栓症。

  • 低カリウム血症。

腸閉塞の80%は小腸に起こり、残る20%が結腸に起こる。 [2] 腸閉塞の好発部位は回腸である。小腸閉塞ではしばしば癒着またはヘルニアが原因となり、大腸閉塞ではがん腫、捻転または憩室炎が原因となる。閉塞部位が小腸であるか、大腸であるかにより異なる症状が認められる。

腸閉塞の病因

悪性腫瘍では結腸がん、胃がんおよび卵巣がんが最も腸閉塞の原因となる。腹腔外のがん(肺がん、乳がん、黒色腫など)が腹部に転移し、腸閉塞を来すこともある。 [3] 腹部手術または腹部放射線投与を受けた患者も、腸閉塞を来すリスクが大きくなる。 [2] 腸閉塞は進行がんに最も多くみられる。

腸閉塞の評価と診断

患者を診察して、腹痛、嘔吐の有無のほか、放屁または便通を示す証拠の有無を判定する。全血算、電解質検査値および尿分析結果により、体液および電解質の平衡異常および/または敗血症の評価を行う。白血球数の増加(15,000~20,000/mm3)は腸壊死を示唆している。閉塞部位の判定には、臥位および立位腹部X線のほか、下部消化管造影による検査が必要なことがある。未だ異論もあるが、急性の腸閉塞症状を認める場合は、上部消化管透視が禁忌とされるが、これは、部分閉塞が完全閉塞となる可能性、完全閉塞がさらに複雑化する可能性があることによる。脱水、乏尿またはショックがみられる患者では、腸穿孔を来している可能性があり、迅速な内科的または外科的介入が適応となる。

急性腸閉塞の治療

急性腸閉塞が疑われる腹部症状の進行がみられる患者では、管理に際して慎重な連続的検査を実施する必要がある。この状況では、大量輸液、電解質平衡異常の補正および(必要に応じた)輸血などが支持療法の原則となる。こうした処置は、腹部減圧処置の前に施行するか、並行して施行する。

腸閉塞が部分的なものであれば、経鼻胃管ないしイレウス管を用いて拡張した腸管の減圧を試みてもよい。これらのチューブの使用により、浮腫を低下させ、貯留した体液およびガスを除去し、多段階にわたる処置の必要性を抑えることに成功しても [4] 、急性完全腸閉塞を来している場合には24時間以内の外科手術が必要であろう。悪性の完全急性腸閉塞を減圧するために自己拡張式ステントを使用すると、疾患の病期決定を可能にし、人工肛門形成に比し一次吻合の割合が増加し、左結腸および直腸の悪性腫瘍の患者の病的状態を軽減することで、不必要な手術の頻度を減らすとされている。費用分析を含め、さらなる検討が必要である。 [5]

慢性、悪性腸閉塞の管理

進行がん患者では、手術不能の慢性進行性腸閉塞が認められうる。 [6] [7] 手術不能の理由で最も多いのは、腫瘍の進行および複数部分の閉塞である。 [8] [9] [評価レベル:II] [10] 非婦人科関連のがん患者63人における、腹膜がん症に続発する悪性腸閉塞の外科的な症状緩和を評価するレトロスペクティブレビューでは、退院時に固形食が摂取可能かを、症状緩和達成の基準に用いた。多重ロジスティック回帰分析によって、腹水が貯留しておらず、小腸に閉塞が生じていないことが、この母集団において外科的な症状緩和を達成しえたか否かの予測因子として同定された。症状緩和が得られたのは患者の45%で、そのうち76%は追跡調査期間の中央値にして78日の時点において緩和状態が持続し、総症状緩和達成率は35%であった。術後の死亡率は15%であり、術後合併症は44%に起こった。 [11]

悪性消化管閉塞の患者の一部には、拡張式合金ステント術により閉塞症状の緩和が得られる。食道、胆道、胃十二指腸および大腸はステントが利用可能である。 [5] [12] [13] [14] [15] [16] [17] ステントは、X線透視の併用、または単独の内視鏡ガイド下で設置され、またはX線透視下にインターベンション放射線科医により留置される。ステント留置時の罹病率は外科的手術のそれよりも低い。狭窄および狭窄から遠位の消化管の適切な画像診断は、狭窄範囲の評価および多発性病変の発見、ならびにステント術の妥当性を検討するために推奨される。 [18] [19] [評価レベル:II] [20] 。

外科手術もステント術も不可能な場合、腸管の部分閉塞ないし完全閉塞により吸収されない分泌物が貯留し、吐き気、嘔吐、疼痛および仙痛を来す。この場合、胃瘻管を用いて、内臓拡張および疼痛の原因である貯留した空気および水分の減圧をはかることが多い。胃まで通した胃瘻管には着衣の下に容易に隠すことができる排液袋が取り付けられる。胃瘻管と排液袋との間の弁が開いている場合、食物は口から直接排液袋に送られるので、患者は不快感を覚えずに経口による飲食ができる。固形食物は胃瘻管を詰まらせるリスクがあるため、これをできるだけ防ぐよう慎重な摂食を心がける。閉塞が改善すれば、弁を閉じて経腸栄養に戻しうる。

ときに、胃瘻管を留置しても腹部減圧が困難なことがある。この問題は、消化管分泌物の量が1日数リットルに及び、水分が貯留するためである。持続的な腹痛を緩和するためには、オピオイド鎮痛薬の皮下ないし静脈内持続点滴が必要となる。このような場合に有効な鎮痙薬に抗コリン薬(ヒヨスチンブチルブロミドなど)があるが [21] 、他にコルチコステロイド、中枢作用性薬物も考えられる。腸閉塞が(機械的原因でなく)機能的原因によると考えられる場合には、腸運動を亢進させるメトクロプラミドが選択すべき薬となる。不可逆的と思われる完全腸閉塞の場合には、ヒヨスチアミンなどの鎮痙剤を試みて腸の収縮を抑えることで、疼痛が緩和されうる。これ以外に合成ソマトスタチンアナログオクトレオチドも、治療抵抗性の疼痛および/または吐き気の管理に使用できる。同剤は、消化管ホルモン数種類の分泌を阻害し、消化管分泌物を減少させる。 [22] [23] [証拠レベル:I] [24]

オクトレオチドは、通常1回50~200μgを1日3回皮下投与し、吐き気、嘔吐、および悪性腸閉塞による腹痛を軽減させる。特定の患者には、スコポラミンといった抗コリン剤を追加することで、オクトレオチド単独では効果が得られない悪性腸閉塞に関連する仙痛の軽減に役立つ。スコポラミンまたはオクトレオチドのいずれも単独で使用すると、有効ではない。 [12] [25] [26] [27] コルチコステロイドは、腸閉塞の治療に広く使用されているが、経験的な裏付けは乏しい。 [28] 同剤はこの状況では補助的鎮吐薬および鎮痛薬として有用であり、デキサメタゾンを1回6~10mgを1日3~4回皮下ないし静脈内投与する方法で開始する。 [12] [25]

最新の臨床試験

現在、参加者を受け入れている便秘、宿便および腸閉塞についての支持療法と緩和ケアの試験は、NCI支援のがん臨床試験のリストを参照のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験のリストは、場所、薬物、介入、他の基準によりさらに絞り込むことができる。

臨床試験に関する一般情報は、NCIウェブサイトからも入手することができる。


参考文献
  1. Givens BA, Simmons SJ: Gastroenterology in Clinical Nursing. 4th ed. St. Louis, Mo: C.V. Mosby Co, 1984.[PUBMED Abstract]

  2. Bouchier IA: Gastroenterology. 3rd ed. London: Balliere Tindall, 1982.[PUBMED Abstract]

  3. Ripamonti C, De Conno F, Ventafridda V, et al.: Management of bowel obstruction in advanced and terminal cancer patients. Ann Oncol 4 (1): 15-21, 1993.[PUBMED Abstract]

  4. Horiuchi A, Maeyama H, Ochi Y, et al.: Usefulness of Dennis Colorectal Tube in endoscopic decompression of acute, malignant colonic obstruction. Gastrointest Endosc 54 (2): 229-32, 2001.[PUBMED Abstract]

  5. Martinez-Santos C, Lobato RF, Fradejas JM, et al.: Self-expandable stent before elective surgery vs. emergency surgery for the treatment of malignant colorectal obstructions: comparison of primary anastomosis and morbidity rates. Dis Colon Rectum 45 (3): 401-6, 2002.[PUBMED Abstract]

  6. Ripamonti C, Bruera E: Palliative management of malignant bowel obstruction. Int J Gynecol Cancer 12 (2): 135-43, 2002 Mar-Apr.[PUBMED Abstract]

  7. Potluri V, Zhukovsky DS: Recent advances in malignant bowel obstruction: an interface of old and new. Curr Pain Headache Rep 7 (4): 270-8, 2003.[PUBMED Abstract]

  8. Jung GS, Song HY, Kang SG, et al.: Malignant gastroduodenal obstructions: treatment by means of a covered expandable metallic stent-initial experience. Radiology 216 (3): 758-63, 2000.[PUBMED Abstract]

  9. Camúñez F, Echenagusia A, Simó G, et al.: Malignant colorectal obstruction treated by means of self-expanding metallic stents: effectiveness before surgery and in palliation. Radiology 216 (2): 492-7, 2000.[PUBMED Abstract]

  10. Coco C, Cogliandolo S, Riccioni ME, et al.: Use of a self-expanding stent in the palliation of rectal cancer recurrences. A report of three cases. Surg Endosc 14 (8): 708-11, 2000.[PUBMED Abstract]

  11. Blair SL, Chu DZ, Schwarz RE: Outcome of palliative operations for malignant bowel obstruction in patients with peritoneal carcinomatosis from nongynecological cancer. Ann Surg Oncol 8 (8): 632-7, 2001.[PUBMED Abstract]

  12. Baron TH: Expandable metal stents for the treatment of cancerous obstruction of the gastrointestinal tract. N Engl J Med 344 (22): 1681-7, 2001.[PUBMED Abstract]

  13. Law WL, Chu KW, Ho JW, et al.: Self-expanding metallic stent in the treatment of colonic obstruction caused by advanced malignancies. Dis Colon Rectum 43 (11): 1522-7, 2000.[PUBMED Abstract]

  14. Repici A, Reggio D, De Angelis C, et al.: Covered metal stents for management of inoperable malignant colorectal strictures. Gastrointest Endosc 52 (6): 735-40, 2000.[PUBMED Abstract]

  15. Harris GJ, Senagore AJ, Lavery IC, et al.: The management of neoplastic colorectal obstruction with colonic endolumenal stenting devices. Am J Surg 181 (6): 499-506, 2001.[PUBMED Abstract]

  16. Aviv RI, Shyamalan G, Watkinson A, et al.: Radiological palliation of malignant colonic obstruction. Clin Radiol 57 (5): 347-51, 2002.[PUBMED Abstract]

  17. Dauphine CE, Tan P, Beart RW Jr, et al.: Placement of self-expanding metal stents for acute malignant large-bowel obstruction: a collective review. Ann Surg Oncol 9 (6): 574-9, 2002.[PUBMED Abstract]

  18. Lopera JE, Alvarez O, Castaño R, et al.: Initial experience with Song's covered duodenal stent in the treatment of malignant gastroduodenal obstruction. J Vasc Interv Radiol 12 (11): 1297-303, 2001.[PUBMED Abstract]

  19. Razzaq R, Laasch HU, England R, et al.: Expandable metal stents for the palliation of malignant gastroduodenal obstruction. Cardiovasc Intervent Radiol 24 (5): 313-8, 2001 Sep-Oct.[PUBMED Abstract]

  20. Baron TH, Rey JF, Spinelli P: Expandable metal stent placement for malignant colorectal obstruction. Endoscopy 34 (10): 823-30, 2002.[PUBMED Abstract]

  21. De Conno F, Caraceni A, Zecca E, et al.: Continuous subcutaneous infusion of hyoscine butylbromide reduces secretions in patients with gastrointestinal obstruction. J Pain Symptom Manage 6 (8): 484-6, 1991.[PUBMED Abstract]

  22. Ripamonti C, Mercadante S, Groff L, et al.: Role of octreotide, scopolamine butylbromide, and hydration in symptom control of patients with inoperable bowel obstruction and nasogastric tubes: a prospective randomized trial. J Pain Symptom Manage 19 (1): 23-34, 2000.[PUBMED Abstract]

  23. Mystakidou K, Tsilika E, Kalaidopoulou O, et al.: Comparison of octreotide administration vs conservative treatment in the management of inoperable bowel obstruction in patients with far advanced cancer: a randomized, double- blind, controlled clinical trial. Anticancer Res 22 (2B): 1187-92, 2002 Mar-Apr.[PUBMED Abstract]

  24. Fallon MT: The physiology of somatostatin and its synthetic analogue, octreotide. European Journal of Palliative Care 1 (1): 20-2, 1994.[PUBMED Abstract]

  25. Mercadante S: Assessment and management of mechanical bowel obstruction. In: Portenoy RK, Bruera E, eds.: Topics in Palliative Care. Volume 1. New York, NY: Oxford University Press, 1997, pp. 113-30.[PUBMED Abstract]

  26. Fainsinger RL: Integrating medical and surgical treatments in gastrointestinal, genitourinary, and biliary obstruction in patients with cancer. Hematol Oncol Clin North Am 10 (1): 173-88, 1996.[PUBMED Abstract]

  27. Ripamonti C, Panzeri C, Groff L, et al.: The role of somatostatin and octreotide in bowel obstruction: pre-clinical and clinical results. Tumori 87 (1): 1-9, 2001 Jan-Feb.[PUBMED Abstract]

  28. Feuer DJ, Broadley KE: Systematic review and meta-analysis of corticosteroids for the resolution of malignant bowel obstruction in advanced gynaecological and gastrointestinal cancers. Systematic Review Steering Committee. Ann Oncol 10 (9): 1035-41, 1999.[PUBMED Abstract]

 | 

下痢

下痢の有病率および重症度は、報告により大きく異なる。ある種の化学療法レジメンは、50~80%に上る下痢の発症を伴い、特にフロロピリミジンやイリノテカンを含むレジメンでは発生率が高くなる。 [1] [2] 下痢は一般的に、カルチノイド腫瘍と診断された患者、腹部/骨盤への放射線療法を受ける患者、骨髄移植もしくは消化管への外科的介入を施行される患者に認められる。 [3] さまざまな治療段階にある多種多様のがん患者の大規模集団では、中度から重度の下痢の有病率は14%であった。 [4] ホスピスに入院する時点で、およそ7~10%のがん患者に下痢が発生している。 [5] 小児のがん患者では、終末を迎えるその月に19%の患者が下痢を起こしていた。 [6]

下痢がもたらす結果は重大であり、生命を脅かす。大腸がんに対して化学療法を受ける患者の半数以上が、米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語基準(CTCAE)に基づき、治療の変更や軽減、遅延、あるいは中止(表1を参照)と必要になるグレード3またはグレード4の下痢を経験している。 [7] [8] 大腸がんにおけるイリノテカン + 高用量のフルオロウラシルおよびロイコボリンの臨床試験を複数レビューした結果、主に胃腸毒性による早期死亡率は2.2~4.8%であったことが明らかにされた。 [9] より積極的な抗がん療法が到来すると、下痢による身体的および心理社会的影響およびそれががん治療の転帰に及ぼす間接的影響は拡大するであろう。 [10]

表1.米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語基準(CTCAE):下痢a、b

グレード 記述
ADL=日常生活活動。
a出典:National Cancer Institute。 [8]
b定義:水様の便が頻繁にみられる状態を特徴とする障害。
cセルフケアのための日常生活活動とは、入浴、着替え、食事、トイレの使用、医薬品の服用、ベッドの乗り降りを指す。
1 ベースラインと比較して1日の排便回数が4回未満の増加;ベースラインと比較してオストミー排出量が軽度に増加
2 ベースラインと比較して1日の排便回数が4~6回増加;ベースラインと比較してオストミー排出量が中等度に増加
3 ベースラインと比較して1日の排便回数が7回以上増加;失禁;入院の適応;ベースラインと比較してオストミー排出量が重度に増加;セルフケアのための日常生活動作が制限されるc
4 生命を脅かすほど重症;緊急介入が適応
5 死亡


下痢の病因

がん治療が施行される患者の下痢は、最も一般的に治療によって誘発される。 [11] 下痢を誘発する従来型のがん治療法には以下のものがある:


  • 手術。

  • 化学療法。

  • 放射線療法。

  • 骨髄移植。

その他の急性下痢の原因には以下のものがある: [12]


  • 抗生物質療法。

  • がんの診断と治療に関連するストレスと不安。

  • 感染症。

典型的な感染症の病因は、ウイルス性、細菌性、原虫、寄生虫、真菌性である;これらは、しばしば治療に反応しない下痢の原因である偽膜性大腸炎によって引き起こされることもある。 [3] クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)は、偽膜性大腸炎の一般的な原因菌である。

がん患者における下痢のその他の原因には、基礎となるがん、食事に対する反応、または合併症がある(表2参照)。緩和ケアを受ける患者の下痢の一般的な原因は、下剤レジメンの調節困難、および閉塞している周囲から糞便が漏出する誘因となる宿便の存在である。

下痢の原因を分類するその他の戦略は、下痢の根本的な発生機序を推定することである。下痢の分類には滲出性下痢(すなわち、余分な血液や粘液が消化管に流入する)、吸収不良性下痢、運動異常性下痢、浸透圧性下痢、分泌性下痢(電解質および水分の分泌増大による-おそらく化学療法に起因する下痢の発生機序)、またはこれらの組み合わせがある。 [13]

さまざまながんの一次治療法である外科手術は、機械的、機能的、そして生理的な変化を身体に及ぼす。消化管手術の術後合併症で、正常な腸機能に影響し下痢の要因となりうるものには以下のものがある: [14] [15]


  • 腸内容の通過時間の短縮。

  • 胃不全麻痺。

  • 脂肪の吸収障害。

  • 乳糖不耐症。

  • 水分と電解質の不均衡。

  • ダンピング症候群。

ある種の化学療法薬は、正常な吸収や小腸の分泌機能を変化させ、結果的に治療に起因する下痢の原因となる。 [7] 下痢の原因となりうる化学療法薬の例を表2に記載している。腹部または骨盤の放射線併用療法を受けている患者、あるいは最近、消化管手術を受け回復基調にある患者は、しばしばより重度の下痢を経験する。

腹部、骨盤、腰椎、あるいは傍大動脈への放射線照射は、正常な腸機能に変化を及ぼしうる。消化管の合併症の発現度および重症度の因子は、以下に依存している:


  • 総線量。

  • 分割照射。

  • 腸への照射範囲。

  • 同時併用化学療法。

腸管炎の一般的な副作用には以下のものがある:


  • 下痢。

  • 吸収不良。

  • ガス。

  • 鼓脹。

  • 筋痙攣。

急性腸管炎の副作用は、放射線量およそ10Gyで発現し、放射線療法後8週間から12週間まで続くであろう。慢性放射線腸炎は、治療終了後数ヵ月から数年続き、食事内容や薬理学的管理の変更および、ときには外科的介入が必要になる。(詳しい情報については、本要約の放射線腸炎放射線腸炎のセクションを参照のこと。)

移植片対宿主病(GVHD)は同種移植の主たる合併症で、一般的に腸管、皮膚、肝に影響する。消化管GVHDの症状には、吐き気および嘔吐、重度の腹痛および筋痙攣、そして水様性の緑がかった下痢がある。 [16] GVHDに伴う下痢の糞便量は、1日10リットルにまで及び、粘膜障害の程度および範囲の指標となる。 [17] 急性GVHDの発現は通常、移植後100日以内に明らかになるが、移植後7日から10日という早期に発現することもある。それは消失することもあるが、長期の治療や食事の管理が必要とされる慢性疾患に進展することもある。

表2.がん患者における下痢の一因となりうる要因

がん関連 [5] [18] カルチノイド症候群
結腸がん
リンパ腫
甲状腺髄様がん
膵がん、特に島細胞腫(ゾリンジャー・エリソン症候群)
褐色細胞腫
外科手術または外科的処置関連 [14] 腹腔神経叢ブロック
胆嚢摘出術、食道胃切除術
胃切除術、膵頭十二指腸切除術(ウィップル法)
腸管切除術(短腸症候群による吸収不良)
迷走神経切離術
化学療法関連 [19] [20] [21] カペシタビン、シスプラチン、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、フルオロウラシル(5-FU)、インターフェロン、イリノテカン、ロイコボリン、メトトレキサート、オキサリプラチン、パクリタキセル、トポテカン、ラパチニブ
放射線療法関連(詳しい情報については、本要約の放射線腸炎放射線腸炎のセクションを参照のこと。) [22] [23] [24] 腹部、傍大動脈、腰椎、骨盤への放射線照射または肺がんおよび頭頸部がんへの放射線
骨髄移植関連 [25] 化学療法によるコンディショニング、放射線全身照射、同種骨髄移植または末梢血幹細胞移植後の移植片対宿主病
薬の有害作用 [5] [18] 抗生物質、酸化マグネシウム配合の制酸剤、降圧剤、コルヒチン、ジゴキシン、鉄剤、ラクツロース、下剤、メチルドパ、メトクロプラミド、ミソプロストール、カリウム補給剤、プロプラノール、テオフィリン
併存疾患 [5] [18] 糖尿病、甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患(クローン病、憩室炎、胃腸炎、HIV/AIDS、潰瘍性大腸炎)、閉塞症(腫瘍関連)
感染症 [26] クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、セレウス菌(Bacillus cereus)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、サルモネラ菌(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、カンピロバクター(Campylobacter)、ロタウイルス(Rotavirus)
宿便 [5] [18] 閉塞の原因となる便秘
食事 [5] [18] アルコール、牛乳および乳製品(特に乳糖不耐性の患者)
カフェイン含有食品(コーヒー、茶、チョコレート);特定の果汁(プルーンジュース、ろ過されていないリンゴ果汁、ザウアークラウトの汁)
高繊維食物(生果および野菜、ナッツ類、種子類、全粒粉食品、乾燥豆);高脂肪食品(フライ類、高脂肪含有食品)
ラクツロース不耐性または食物アレルギー
ソルビトール配合食品(飴およびチューインガム);香辛料の効いた食品;ガスを産生させる食品および飲料(アブラナ科の野菜、乾燥豆、ウリ科の青果、炭酸飲料)
心理学的因子 [18] ストレス


評価

下痢はその性質上、生命を脅かす恐れがあるので、早急かつ徹底した評価が欠かせない。標準化された評価方法はほとんど利用できず、複数の研究が、その結果として、臨床環境において標準化された評価がまれであることを示唆している。 [3] ある著者は、完全な評価方法には下痢の詳細な説明のほかに、がんの種類とその範囲、抗がん治療、共存する因子、随伴する症状、患者と医療提供者の認識を含む、患者から得られる背景情報が必要であるとしている。下痢を引き起こすことが知られている化学療法薬を使用する治療期間中は、少なくとも週1回以上実施する厳密なモニタリングが適応とされる。 [9] NCIの有害事象共通用語基準(表1)では、以下により下痢を評価する: [8]


  • 1日の排便回数。

  • 失禁。

  • ベースラインと比較したオストミー排出量の増加。

病歴聴取には、最近24時間の便通の頻度、糞便の特徴、経時的な下痢の進展状況に関する質問も含まれる。 [27] ある著者は患者およびその家族が、糞便の状態の判別に役立つように、目視ツールを開発した。 [28] それには、6つの図に糞便の硬さが描かれており、その範囲は、しっかりと形がある、形がある、少し形があるか緩い、非常に緩い、そして液状まである。

患者は、血行動態の悪化または基礎にある病因を示しうる症状に関して質問される。特に、その質問には、以下に関する情報を織り込むべきである:


  • めまい。

  • 起立性症状。

  • 嗜眠。

  • 筋痙攣。

  • 腹痛。

  • 吐き気。

  • 嘔吐。

  • 発熱。

  • 直腸出血。

これらの症状を、複雑性または非複雑性と分類し、この分類に基づいて治療が行われる。 [29]

非複雑性の症状

には、他に徴候や症状がないグレード1または2の下痢がある。管理は保存的である。

複雑性の症状

には、以下の危険因子のいずれか1つを伴うグレード1または2の下痢が含まれる:


  • 中等度から重度の痙攣。

  • グレード2以上の吐き気/嘔吐(表3を参照のこと)。

  • パフォーマンスステータスの低下。

  • 発熱。

  • 敗血症。

  • 好中球減少。

  • 明らかな出血。

  • 脱水。

グレード3または4の下痢も、複雑性に分類される。徹底的な評価と綿密なモニタリングが必要である。 [29]

下痢の経時的変化および、随伴する症状の進展は、基礎にある病因を判断する鍵となる。 [27] 最近の旅行歴の他、薬物および食事摂取も、病因を判断するヒントとなりうる。体重減少および、尿量の減少は、下痢の重症度を判断する上で補足的データとなる。

表3.米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語基準(CTCAE):吐き気と嘔吐a

有害事象 グレード 記述
TPN = 完全非経口栄養法。
a出典:National Cancer Institute。 [8]
b定義:胃のむかつきおよび/または嘔吐を特徴とする障害。
c定義:胃の内容物を口から拍出する反射的行為を特徴とする障害。
吐き気b 1 食習慣の変化を伴わない食欲の喪失
2 著しい体重減少、脱水、および栄養不良を伴わない経口摂取量の減少
3 経口でのカロリーまたは水分の摂取不足;経管栄養、TPN、または入院が適応
4 本グレードは使用されていない
5 本グレードは使用されていない
嘔吐c 1 24時間に1~2エピソード(5分の間隔をおいて)
2 24時間に3~5エピソード(5分の間隔をおいて)
3 24時間に6エピソード以上(5分の間隔をおいて);経管栄養、TPN、または入院が適応
4 生命を脅かすほど重症;緊急介入が適応
5 死亡


身体診察の目的は、下痢を起こす可能性のある原因およびその合併症をいち早く同定し、罹病率を減少させることにある。身体診察には、血行動態のレベルと脱水症を査定するため、バイタルサインおよび、皮膚ツルゴールと口腔粘膜の評価が含められる。腹部診察には、反跳痛、筋性防御、腸音の減弱または亢進、および便の採取に対する評価を含める。直腸内触診で宿便を除外できるが、好中球減少症または血小板減少症の患者では、慎重に行われる。 [5]

臨床検査には、細菌性、真菌性、ウイルス性の病原菌を特定するため、便培養を含める。すべての血液生化学検査および血液学的検査は、感染に反応する白血球数の変化を同定するだけでなく、下痢が腎機能に及ぼす影響および電解質に関する情報を与える。尿検査で特定の比重が認められれば、脱水状態に関する情報となる。また、糞便の浸透圧も測定される。 [5]

症例によっては、イレウス、閉塞あるいはその他の異常所見を同定するために、放射線診断が行われる。まれな例では、内視鏡検査が適応となりうる。

管理

進行大腸がんに対するイリノテカン + 高用量のフルオロウラシルおよびロイコボリンを研究した2件のNCI主催の共同試験における早期の毒性死亡が見直され、がん治療によって誘発された下痢の治療に対して以前に発表された臨床診療ガイドラインが修正され、評価および早期の積極的介入が特に強調されている。ガイドラインでは、複雑性の下痢と、非複雑性の下痢を区別している。 [29]

非複雑性の症状

がんに関連する下痢に対する現在の治療は、しばしば経験に頼っており特定のものではない。可能な限り、宿便のような根本的原因を治療し、必要に応じて刺激性下剤処方を調節する。膨張性下剤などの薬物や機能調整薬(例、メトクロプラミド)の使用は中止される。食事内容の変更は、一般的にがん治療が関与する下痢の重症度を抑制、または軽減するために実施される。 [7] [23] [25] [30] ある著者は、患者に対し、便を硬くし、繊維が少なくミネラルを含み、消化管を刺激しない食物を摂取するよう推奨している。 [20] ときには、下痢を管理するための食事内容の変更点として、少量で頻回に食事を摂るように助言し、乳糖を含む食物(牛乳および乳製品)、香辛料の効いた食品、アルコール、カフェインを含む食物や飲料、特定の果汁、ガスを形成する食物や飲料、繊維の多い食物、そして高脂肪食品を避けるよう患者に助言する。 [31] 軽度の下痢の場合、BRAT(バナナ、米、リンゴ、トースト)食が、排便回数を減少させる。下痢をしているのであれば、患者に澄んだ液体を少なくとも1日3リットル以上摂取するよう奨励する(例、水、スポーツドリンク、クリアスープ、弱いノンカフェインの茶、ノンカフェインの清涼飲料水、澄んだ果汁、ゼリー)。 [12] [32] (詳しい情報については、がん医療における栄養に関するPDQ要約の症状管理に関する栄養学的提言のセクション内の下痢のサブセクションを参照のこと。)

一部の症例報告が、がん治療と関連する下痢およびその他の胃腸症状の緩和におけるグルタミンの効力を示唆しているが、1件のランダム化比較試験は経口のグルタミンを用いて骨盤部照射によって誘発される下痢を予防する試みを行ったが、全く無効であった。 [33] [証拠レベル:I] [34] [35]

薬物療法の目的は、腸管運動の抑制、腸内分泌の減少、および吸収を促進することである。吸収剤には、糞便の密度を高め、ゼラチン状の塊を形成する薬物がある。メチルセルロースおよびペクチンは最も一般的に使用されるが、その効力を裏付けるデータはほとんどない。これら膨張性剤は、治療の効果を上げるには大量を要し、腹部不快感や腹部膨満を伴うため、一部の患者には適さない。カオリンや、粘土および活性炭などの吸着剤は、広範囲にわたって使用されているが、その使用を裏付けるデータはない。また、これら吸着剤は、併用されることがある他の経口止瀉薬の吸収を阻害する。

オピオイドは消化管内の受容体に結合し、通過時間の延長により、下痢を軽減する。ロペラミドは、入手しやすいことと、認知機能への影響が少ないことから、最も一般的に使用されるオピオイド製剤であるが、コデインおよびその他のオピオイド製剤も有効である。 [18] ロペラミドの一般的な投与量は4mgから開始し、形を成さない便がみられるごとに2mg投与し、最大量はおよそ12mg/日とする。 [5] [27] しかしながら、グレード3または4の下痢を認める患者では、投与量にかかわらず、ロペラミドはあまり有効ではない。 [36] [証拠レベル:I]

抗分泌薬ともいわれる粘膜プロスタグランジン阻害薬(Mucosal prostaglandin inhibitors)には、アスピリン、次サリチル酸ビスマス、コルチコステロイド、およびオクトレオチドがある。アスピリンは、放射線療法による下痢に有用である。次サリチル酸ビスマスは、大腸菌(Escherichia coli)に対して直接抗菌作用を示すとされており、したがって、旅行者の下痢の予防に使用される。次サリチル酸ビスマスは、アスピリン服用不可の患者には禁忌であり、大量では、サリチル酸が毒性水準に達する。コルチコステロイドは、閉塞および放射線性大腸炎に関連する浮腫を軽減し、ある種の内分泌腫瘍によるホルモンの影響を減少させる。

下痢を軽減させるその他の薬物療法は、発症機序により特定される。イリノテカンでは遅発性の下痢が発生し(24時間以降)、患者の25%が重度とみられる。 [37] 患者7人を対象にした小規模研究では、ネオマイシン1,000mgを1日3回経口投与し、6人に下痢の改善が得られた。イリノテカンの活性代謝物SN-38を減少させることなく、下痢の改善が得られたということは、代謝されにくい抗生物質が、化学療法薬の効力を変化させなかったことを示唆している。 [38] [証拠レベル:II] イリノテカンを投与されている非小細胞性肺がんの患者37人における別の小規模研究では、研究者たちは、酸化マグネシウムの使用により薬物代謝物(薬物の体内停滞の軽減によって腸管内腔の障害を少なくするとされる)の輸送時間を早める一方、炭酸水素ナトリウム、水、ウルソデオキシコール酸を経口投与し、糞便をアルカリ化させた。経口投与でのアルカリ化や排便の制御なしに同じ化学療法レジメンを受けた患者32人と上記の群を比較した場合、遅発性下痢の発生率は上記の群で有意に減少した。 [39] [証拠レベル:III]

GVHDと関連した下痢を効果的に管理するためには、止瀉薬および免疫抑制薬に加えて、特殊な5相の食事レジメンが開始されることがある。 [25] 第1相レジメンは、下痢が軽減するまで完全に腸を安定化させることからなる。下痢に伴う窒素の損失は重度の場合あり、GVHD治療に高用量のコルチコステロイドを使用することで増悪する。第2相レジメンでは、等浸透圧、低残渣、乳糖除去の飲料からなる経口的栄養補給を再導入し、腸絨毛および粘膜の変化に続発した腸内酵素の損失を補う。こういった飲料の摂取に耐えられたならば、第3相レジメンでは、最小限の乳糖、低繊維、低脂肪、低総酸度で、胃を刺激しない固形食を再導入する。第4相レジメンでは、普通食を少しずつ再導入し耐性が獲得されるのに従い、食事制限を漸次軽減させる。第5相レジメンでは、患者に通常の食事を再開させる;しかしながら、ほとんどの患者は通常、乳糖不耐が継続する。

プロバイオティクス

プロバイオティクスは、決まった量の生存可能な微生物を含む栄養補助食品で、投与後間もなく患者に利益が得られる。 [40] 下痢や腸関門障害、そして炎症反応といった臨床症状において、腸内細菌叢の状態を改善するため活性菌食品(probiotic functional foods:有益な生きた微生物)の使用が提案されている。 [41] プロバイオティクスには非常に多くのさまざまな菌株がある;しかしながら、臨床研究の多くはラクトバチルス菌(Lactobacillus)およびビフィズス菌(Bifidobacterium)科に属する種を調査している。プロバイオティクスは、以下について奨励されている: [42] [43] [44] [45] [46] [47]


  • 抗生物質投与による下痢およびロタウイルスの予防。

  • 炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、および胃腸炎の治療または予防。

  • 未熟児における壊死性腸炎の治療。

がんを有する成人における1件の研究の結果が発表されている。二重盲検ランダム化比較試験において、骨盤領域に放射線を受けていたがんを有する成人450人が放射線療法中に混合プロバイオティクス製品VSL #3またはプラセボを投与される群にランダムに割り付けられた。著者らは、下痢の発生率および重症度の低下を報告した。有害事象は報告されなかった。 [48]

以下の患者に対する臨床試験が進行中である:


  • 家族性大腸腺腫症の患者(NCT00319007)。

  • 血液のがんまたは骨髄異形成症候群によりドナー幹細胞移植を受けた患者(NCT00946283)。この試験は、既に募集は締め切られている。

複雑性の症状

オクトレオチドの至適投与量が決定されていない一方で、ある専門家委員会は、合併症を伴う下痢の症例は、静注輸液、オクトレオチド100~150μgを1日3回皮下(SC)投与または25~50μg/時の静注投与で開始し、1日3回500μgまで用量増加、および抗生物質の投与で管理されるべきであると推奨している。このレジメンは、患者に24時間下痢が見られなくなるまで継続される。 [29] 特に患者が化学療法を受けている場合、追加の評価には、便の精密検査(潜血、糞便白血球、C.ディフィシル[C. difficile]、サルモネラ属[Salmonella]、大腸菌[E. coli]、カンピロバクター[Campylobacter]、および感染性大腸炎など)、全血球数、および電解質プロフィールが含められる。 [29] この精密検査および治療は、ロペラミドを受けているが、下痢がグレード3または4に進行する患者に対しても検討される。この委員会は、放射線療法により誘発された重症の下痢については入院の必要性はないが(代替の外来部門または集中的な在宅ケア看護によって、同レベルのケアおよびモニタリングが可能となりうる)、適切な精密検査や、静注輸液またはオクトレオチドが適応かどうかを決定するために、患者の一連の症状を検討すべきであると提案している。

ソマトスタチンアナログ製剤であるオクトレオチドは、さまざまな疾患や治療によって引き起こされる重度の下痢の管理において現在最も有望な薬物である。臨床試験で用いられている投与量は、それぞれ大きく異なる。至適投与量に関するコンセンサスの欠如にもかかわらず、オクトレオチドは、AIDS、カルチノイド症候群、および血管活性腸管ポリペプチド腫瘍に関連する下痢の軽減に有効であることが示されている。 [49] [証拠レベル:II] [18] 化学療法による下痢の軽減に関するオクトレオチドの数件のオープンラベル研究、およびランダム化対照研究は、この療法の効力を明らかにしている。 [50] [51] [52] [証拠レベル:I]; [53] [54] [55] [証拠レベル:II] ロペラミドに抵抗を示す、化学療法による下痢を有する患者32人におけるプロスペクティブ試験では、オクトレオチド100μgを1日3回皮下(SC)投与することで、30人に完全解消をもたらした。解消は迅速にもたらされ、治療開始後24時間以内に5人の患者、48時間以内に14人の患者、72時間以内に11人の患者が反応した。オクトレオチドの有害作用は認められなかった。 [56] オクトレオチドは、移植片対宿主病(GVHD)に伴う下痢に対しても有効性を示している。 [57] [58] 専門家会議で、化学療法に伴う低グレード(1および2)の下痢が発現した第1日目に、高用量のロペラミドを投与し(2時間ごとに2mg)、続いてオクトレオチド100~150μgを、8時間ごとに投与することが推奨された。 [27] 患者が重度の下痢(グレード3または4)を呈する場合は、オクトレオチド500~1,500μgを8時間ごとにSCまたはIV投与が、第一選択治療として行われる。骨盤への放射線療法期間中の下痢予防に対する持続性オクトレオチドの第3相二重盲検試験では、いずれの有益性も実証されなかった。 [59] 事実、腹部痙攣などの消化管症状は、悪化することもあった。非経腸な水分補給および電解質補充が適応とされ、重度の場合には、完全非経口栄養法が開始される。(詳しい情報については、がん医療における栄養に関するPDQ要約を参照のこと。)

最新の臨床試験

現在、参加者を受け入れている下痢についての支持療法と緩和ケアの試験は、NCI支援のがん臨床試験のリストを参照のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験のリストは、場所、薬物、介入、他の基準によりさらに絞り込むことができる。

臨床試験に関する一般情報は、NCIウェブサイトからも入手することができる。


参考文献
  1. Leichman CG, Fleming TR, Muggia FM, et al.: Phase II study of fluorouracil and its modulation in advanced colorectal cancer: a Southwest Oncology Group study. J Clin Oncol 13 (6): 1303-11, 1995.[PUBMED Abstract]

  2. Rothenberg ML, Eckardt JR, Kuhn JG, et al.: Phase II trial of irinotecan in patients with progressive or rapidly recurrent colorectal cancer. J Clin Oncol 14 (4): 1128-35, 1996.[PUBMED Abstract]

  3. Rutledge DN, Engelking C: Cancer-related diarrhea: selected findings of a national survey of oncology nurse experiences. Oncol Nurs Forum 25 (5): 861-73, 1998.[PUBMED Abstract]

  4. Cleeland CS, Mendoza TR, Wang XS, et al.: Assessing symptom distress in cancer patients: the M.D. Anderson Symptom Inventory. Cancer 89 (7): 1634-46, 2000.[PUBMED Abstract]

  5. Sykes NP: Constipation and diarrhoea. In: Doyle D, Hanks GW, MacDonald N, eds.: Oxford Textbook of Palliative Medicine. 2nd ed. New York, NY: Oxford University Press, 1998, pp 513-26.[PUBMED Abstract]

  6. Wolfe J, Grier HE, Klar N, et al.: Symptoms and suffering at the end of life in children with cancer. N Engl J Med 342 (5): 326-33, 2000.[PUBMED Abstract]

  7. Arbuckle RB, Huber SL, Zacker C: The consequences of diarrhea occurring during chemotherapy for colorectal cancer: a retrospective study. Oncologist 5 (3): 250-9, 2000.[PUBMED Abstract]

  8. National Cancer Institute: Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE), Version 4.0. Bethesda, Md: U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health, 2010. Available online. Last accessed September 9, 2016.[PUBMED Abstract]

  9. Rothenberg ML, Meropol NJ, Poplin EA, et al.: Mortality associated with irinotecan plus bolus fluorouracil/leucovorin: summary findings of an independent panel. J Clin Oncol 19 (18): 3801-7, 2001.[PUBMED Abstract]

  10. Arnold RJ, Gabrail N, Raut M, et al.: Clinical implications of chemotherapy-induced diarrhea in patients with cancer. J Support Oncol 3 (3): 227-32, 2005 May-Jun.[PUBMED Abstract]

  11. Cartoni C, Dragoni F, Micozzi A, et al.: Neutropenic enterocolitis in patients with acute leukemia: prognostic significance of bowel wall thickening detected by ultrasonography. J Clin Oncol 19 (3): 756-61, 2001.[PUBMED Abstract]

  12. Tuchmann L, Engelking C: Cancer-related diarrhea. In: Gates RA, Fink RM, eds.: Oncology Nursing Secrets. 2nd ed. Philadelphia, Pa: Hanley and Belfus, 2001, pp 310-22.[PUBMED Abstract]

  13. Bruckstein AH: Acute diarrhea. Am Fam Physician 38 (4): 217-28, 1988.[PUBMED Abstract]

  14. Yahanda AM: Hepatobiliary cancers. In: Berger DH, Feig BW, Fuhrman GM, eds.: The M.D. Anderson Surgical Oncology Handbook. Boston, Mass: Little, Brown, 1995, pp 194-224.[PUBMED Abstract]

  15. Grant JP, Chapman G, Russell MK: Malabsorption associated with surgical procedures and its treatment. Nutr Clin Pract 11 (2): 43-52, 1996.[PUBMED Abstract]

  16. McDonald GB, Shulman HM, Sullivan KM, et al.: Intestinal and hepatic complications of human bone marrow transplantation. Part I. Gastroenterology 90 (2): 460-77, 1986.[PUBMED Abstract]

  17. Herrmann VM, Petruska PJ: Nutrition support in bone marrow transplant recipients. Nutr Clin Pract 8 (1): 19-27, 1993.[PUBMED Abstract]

  18. Mercadante S: Diarrhea in terminally ill patients: pathophysiology and treatment. J Pain Symptom Manage 10 (4): 298-309, 1995.[PUBMED Abstract]

  19. Gupta E, Lestingi TM, Mick R, et al.: Metabolic fate of irinotecan in humans: correlation of glucuronidation with diarrhea. Cancer Res 54 (14): 3723-5, 1994.[PUBMED Abstract]

  20. Wadler S, Benson AB 3rd, Engelking C, et al.: Recommended guidelines for the treatment of chemotherapy-induced diarrhea. J Clin Oncol 16 (9): 3169-78, 1998.[PUBMED Abstract]

  21. Crown JP, Burris HA 3rd, Boyle F, et al.: Pooled analysis of diarrhea events in patients with cancer treated with lapatinib. Breast Cancer Res Treat 112 (2): 317-25, 2008.[PUBMED Abstract]

  22. Makrauer FL, Oates E, Becker J, et al.: Does local irradiation affect gastric emptying in humans? Am J Med Sci 317 (1): 33-7, 1999.[PUBMED Abstract]

  23. Donaldson SS: Nutritional consequences of radiotherapy. Cancer Res 37 (7 Pt 2): 2407-13, 1977.[PUBMED Abstract]

  24. Sonis S, Elting L, Keefe D, et al.: Unanticipated frequency and consequences of regimen-related diarrhea in patients being treated with radiation or chemoradiation regimens for cancers of the head and neck or lung. Support Care Cancer 23 (2): 433-9, 2015.[PUBMED Abstract]

  25. Charuhas PM: Medical nutrition therapy in bone marrow transplantation. In: McCallum PD, Polisena CG, eds.: The Clinical Guide to Oncology Nutrition. Chicago, Ill: The American Dietetic Association, 2000, pp 90-8.[PUBMED Abstract]

  26. DuPont HL: Guidelines on acute infectious diarrhea in adults. The Practice Parameters Committee of the American College of Gastroenterology. Am J Gastroenterol 92 (11): 1962-75, 1997.[PUBMED Abstract]

  27. Kornblau S, Benson AB, Catalano R, et al.: Management of cancer treatment-related diarrhea. Issues and therapeutic strategies. J Pain Symptom Manage 19 (2): 118-29, 2000.[PUBMED Abstract]

  28. Mertz HR, Beck CK, Dixon W, et al.: Validation of a new measure of diarrhea. Dig Dis Sci 40 (9): 1873-82, 1995.[PUBMED Abstract]

  29. Benson AB 3rd, Ajani JA, Catalano RB, et al.: Recommended guidelines for the treatment of cancer treatment-induced diarrhea. J Clin Oncol 22 (14): 2918-26, 2004.[PUBMED Abstract]

  30. Polisena CG: Nutrition concerns with the radiation therapy patient. In: McCallum PD, Polisena CG, eds.: The Clinical Guide to Oncology Nutrition. Chicago, Ill: The American Dietetic Association, 2000, pp 70-8.[PUBMED Abstract]

  31. McCallum PD, Polisena CG, eds.: The Clinical Guide to Oncology Nutrition. Chicago, Ill: The American Dietetic Association, 2000.[PUBMED Abstract]

  32. Hogan CM: The nurse's role in diarrhea management. Oncol Nurs Forum 25 (5): 879-86, 1998.[PUBMED Abstract]

  33. Kozelsky TF, Meyers GE, Sloan JA, et al.: Phase III double-blind study of glutamine versus placebo for the prevention of acute diarrhea in patients receiving pelvic radiation therapy. J Clin Oncol 21 (9): 1669-74, 2003.[PUBMED Abstract]

  34. Savy GK: Glutamine supplementation. Heal the gut, help the patient. J Infus Nurs 25 (1): 65-9, 2002 Jan-Feb.[PUBMED Abstract]

  35. Ziegler TR, Bye RL, Persinger RL, et al.: Effects of glutamine supplementation on circulating lymphocytes after bone marrow transplantation: a pilot study. Am J Med Sci 315 (1): 4-10, 1998.[PUBMED Abstract]

  36. Cascinu S, Bichisao E, Amadori D, et al.: High-dose loperamide in the treatment of 5-fluorouracil-induced diarrhea in colorectal cancer patients. Support Care Cancer 8 (1): 65-7, 2000.[PUBMED Abstract]

  37. Creemers GJ, Lund B, Verweij J: Topoisomerase I inhibitors: topotecan and irenotecan. Cancer Treat Rev 20 (1): 73-96, 1994.[PUBMED Abstract]

  38. Kehrer DF, Sparreboom A, Verweij J, et al.: Modulation of irinotecan-induced diarrhea by cotreatment with neomycin in cancer patients. Clin Cancer Res 7 (5): 1136-41, 2001.[PUBMED Abstract]

  39. Takeda Y, Kobayashi K, Akiyama Y, et al.: Prevention of irinotecan (CPT-11)-induced diarrhea by oral alkalization combined with control of defecation in cancer patients. Int J Cancer 92 (2): 269-75, 2001.[PUBMED Abstract]

  40. de Vrese M, Schrezenmeir J: Probiotics, prebiotics, and synbiotics. Adv Biochem Eng Biotechnol 111: 1-66, 2008.[PUBMED Abstract]

  41. Isolauri E: Probiotics in human disease. Am J Clin Nutr 73 (6): 1142S-1146S, 2001.[PUBMED Abstract]

  42. Johnston BC, Supina AL, Ospina M, et al.: Probiotics for the prevention of pediatric antibiotic-associated diarrhea. Cochrane Database Syst Rev (2): CD004827, 2007.[PUBMED Abstract]

  43. Pillai A, Nelson R: Probiotics for treatment of Clostridium difficile-associated colitis in adults. Cochrane Database Syst Rev (1): CD004611, 2008.[PUBMED Abstract]

  44. Huertas-Ceballos A, Logan S, Bennett C, et al.: Dietary interventions for recurrent abdominal pain (RAP) and irritable bowel syndrome (IBS) in childhood. Cochrane Database Syst Rev (1): CD003019, 2008.[PUBMED Abstract]

  45. Alfaleh K, Bassler D: Probiotics for prevention of necrotizing enterocolitis in preterm infants. Cochrane Database Syst Rev (1): CD005496, 2008.[PUBMED Abstract]

  46. Karimi O, Peña AS: Indications and challenges of probiotics, prebiotics, and synbiotics in the management of arthralgias and spondyloarthropathies in inflammatory bowel disease. J Clin Gastroenterol 42 (Suppl 3 Pt 1): S136-41, 2008.[PUBMED Abstract]

  47. Butterworth AD, Thomas AG, Akobeng AK: Probiotics for induction of remission in Crohn's disease. Cochrane Database Syst Rev (3): CD006634, 2008.[PUBMED Abstract]

  48. Delia P, Sansotta G, Donato V, et al.: Use of probiotics for prevention of radiation-induced diarrhea. World J Gastroenterol 13 (6): 912-5, 2007.[PUBMED Abstract]

  49. Cello JP, Grendell JH, Basuk P, et al.: Effect of octreotide on refractory AIDS-associated diarrhea. A prospective, multicenter clinical trial. Ann Intern Med 115 (9): 705-10, 1991.[PUBMED Abstract]

  50. Cascinu S, Fedeli A, Fedeli SL, et al.: Octreotide versus loperamide in the treatment of fluorouracil-induced diarrhea: a randomized trial. J Clin Oncol 11 (1): 148-51, 1993.[PUBMED Abstract]

  51. Cascinu S, Fedeli A, Fedeli SL, et al.: Control of chemotherapy-induced diarrhea with octreotide. A randomized trial with placebo in patients receiving cisplatin. Oncology 51 (1): 70-3, 1994 Jan-Feb.[PUBMED Abstract]

  52. Gebbia V, Carreca I, Testa A, et al.: Subcutaneous octreotide versus oral loperamide in the treatment of diarrhea following chemotherapy. Anticancer Drugs 4 (4): 443-5, 1993.[PUBMED Abstract]

  53. Petrelli NJ, Rodriguez-Bigas M, Rustum Y, et al.: Bowel rest, intravenous hydration, and continuous high-dose infusion of octreotide acetate for the treatment of chemotherapy-induced diarrhea in patients with colorectal carcinoma. Cancer 72 (5): 1543-6, 1993.[PUBMED Abstract]

  54. Wadler S, Haynes H, Wiernik PH: Phase I trial of the somatostatin analog octreotide acetate in the treatment of fluoropyrimidine-induced diarrhea. J Clin Oncol 13 (1): 222-6, 1995.[PUBMED Abstract]

  55. Cascinu S, Fedeli A, Fedeli SL, et al.: Control of chemotherapy-induced diarrhoea with octreotide in patients receiving 5-fluorouracil. Eur J Cancer 28 (2-3): 482-3, 1992.[PUBMED Abstract]

  56. Zidan J, Haim N, Beny A, et al.: Octreotide in the treatment of severe chemotherapy-induced diarrhea. Ann Oncol 12 (2): 227-9, 2001.[PUBMED Abstract]

  57. Ippoliti C, Champlin R, Bugazia N, et al.: Use of octreotide in the symptomatic management of diarrhea induced by graft-versus-host disease in patients with hematologic malignancies. J Clin Oncol 15 (11): 3350-4, 1997.[PUBMED Abstract]

  58. Morton AJ, Durrant ST: Efficacy of octreotide in controlling refractory diarrhea following bone marrow transplantation. Clin Transplant 9 (3 Pt 1): 205-8, 1995.[PUBMED Abstract]

  59. Martenson JA, Halyard MY, Sloan JA, et al.: Phase III, double-blind study of depot octreotide versus placebo in the prevention of acute diarrhea in patients receiving pelvic radiation therapy: results of North Central Cancer Treatment Group N00CA. J Clin Oncol 26 (32): 5248-53, 2008.[PUBMED Abstract]

 | 

放射線腸炎

病因

腹部、骨盤または直腸に放射線を照射すると、ほとんどの患者が急性腸炎の徴候を示す。初回放射線療法から8週間までの間の臨床的に明らかな傷害は急性とみなされる。 [1] 慢性放射線腸炎は治療終了後数ヵ月から数年のうちに起こるか、または、急性腸炎として始まり治療終了後に慢性型に移行するものもある。腹部に放射線療法を受けたわずか5~15%の患者に放射線傷害が発生する。 [2]

放射線腸炎の発症および重症度に影響を与える因子には以下のものがある:


  1. 照射線量と分割。
  2. 腫瘍の大きさとその範囲。
  3. 照射を受けた正常な腸の体積。
  4. 同時併用化学療法。
  5. 小線源治療(腔内および組織内照射)。
  6. 各患者の変数(例えば、以前の腹部または骨盤内の外科手術、高血圧、糖尿病、骨盤内炎症性疾患、栄養不良)。 [3] [4]

一般に、正常な腸に照射される1日線量および総線量が大きいほど、またその体積が大きいほど、放射線性腸炎のリスクは高くなる。さらに、上に挙げた個々の患者の変数は、腸壁への血流量を低下させ、腸運動を障害し、放射線障害の率を増加させる。

急性放射線腸炎

診断

放射線療法は主に、大腸および小腸を裏打ちするかのように存在している、急速に増殖する上皮細胞に細胞毒性を及ぼす。1日線量1.5~3Gyでは12~24時間後に腺窩細胞壁の壊死が観察される。その後数日から数週間のうちに細胞の漸次消失、絨毛萎縮、嚢胞性腺窩拡張などが起こる。急性腸炎を発症した患者では、吐き気、嘔吐、腹部痙攣、しぶり腹、水様性下痢を訴える。下痢を来すと、消化管(GI)の消化や吸収作用が低下ないし停止し、脂肪、乳糖、胆汁酸塩、およびビタミンB12の吸収不良に陥る。直腸炎の症状-直腸粘液排出、直腸痛および直腸出血(粘膜に潰瘍形成があれば)を含む-は肛門または直腸への放射線傷害から起こりうる。

肺がんおよび頭頸部がんに対して化学療法を併用するまたは併用しない放射線に関する1件の研究で、大腸または小腸に直接放射線照射を行っていないにもかかわらず、有意な下痢の発生が示された。その割合は化学放射線(42%)の方が放射線単独(29%)よりも高かった。さらに、この放射線誘発性の下痢は、より不良な健康上のアウトカムおよび資源利用の増加に関連していた。中等度以上の下痢を来した個人は、胃瘻管留置、体重減少、予定外の来院、より多い入院日数、およびより長期の放射線中断の可能性が高かった。この初期報告には、この現象の有病率および影響を十分に評価するため、追加の妥当性研究が必要である。 [5]

急性腸炎の症状は通常、治療終了後2~3週間で消失し、腸粘膜はほぼ正常に戻る。 [6]

評価

患者の放射線腸炎検査および評価の項目は以下の通りである: [7]


  1. 通常の排泄パターン。
  2. 下痢のパターンを以下に示す:
    1. 発症。
    2. 持続期間。
    3. 回数、量、便の状態。
    4. 放屁、痙攣、吐き気、腹部膨満、しぶり腹、出血、直腸粘膜剥離など、他の症状の有無。
  3. 患者の栄養状態を以下に示す:
    1. 身長および体重。
    2. 通常の食習慣、その変化、食べ残しの量。
    3. 皮膚ツルゴール低下、血漿電解質の不均衡、衰弱または疲労感の増大など、脱水症状の徴候。
  4. 現在のストレスの大きさ、その対処法、腸炎の症状ないし徴候が普段の生活パターンに及ぼす影響。

内科的管理

内科的管理は、下痢、脱水症状、吸収不良、腹部または直腸の不快感の治療がある。症状は通常、薬物治療、食事内容の変更および休養によって改善される。しかし、このような方法にもかかわらず症状が悪化する場合には、治療を中止するのが妥当である。

処方は、以下のものがある:


  1. カオペクテイト、止瀉薬。用量:下痢のたびに経口にて30~60cc。
  2. ロモチル(塩酸ジフェノキシレート + 硫酸アトロピン)。常用量:必要に応じて4時間ごとに1~2錠経口投与。用量は下痢のパターンや個々の患者や下痢のパターンに合わせ調節できる。例えば、3日1錠3回で下痢の症状をコントロールできる患者もいれば、4時間ごとに2錠必要とする患者もいる。24時間以内にロモチル8錠を超えて服用しないようにする。
  3. パレゴリック、止瀉薬。常用量:必要に応じて小匙1杯を1日4回内服。パレゴリックは、ロモチルと交互に使用してもよい。
  4. コレスチラミン、胆汁酸塩捕捉薬。用量:食後および就寝前に経口にて一包服用。
  5. ドナタル、大腸の痙攣軽減に使用する抗コリン性鎮痙薬。用量:必要に応じて4時間ごとに1~2錠。
  6. イモヂウム(塩酸ロペラミド)、合成止瀉薬。推奨初回用量:4時間ごとに経口にて2カプセル(4mg)、その後、軟便が出るたびに経口にて1カプセル(2mg)。1日総用量は16mg(8カプセル)を超えてはならない。

これらの処方に加えて、オピオイドは腹痛を緩和する。直腸炎がある場合には、経直腸的なステロイド泡沫剤投与が症状を軽減することがある。最後に、膵がん患者が放射線療法中に下痢を来した場合には、膵酵素が不足しただけでも下痢の原因となることがあるため、経口膵酵素補充が評価される。

栄養摂取の役割

放射線療法による腸絨毛の損傷は酵素の減少ないし欠乏を来し、その中で最も重要な1つがラクターゼである。ラクターゼは牛乳および乳製品の消化に必須の酵素である。低ラクトース食が放射線腸炎を予防するというエビデンスはないが、無ラクトース・低脂肪・低残渣食は症状軽減に効果的なことがある。 [8] [証拠レベル:I]

避けるべき食品
  • 牛乳および乳製品。例外はバターミルクとヨーグルトで、ラクトバチルス菌(Lactobacillus)の存在により乳糖が発酵しているため、しばしば摂取できる。プロセスチーズも、チーズ凝乳から乳清を分離するときに、乳清とともに乳糖も除去されるため、摂取できる。エンシュアのようなミルクセーキサプリメントも乳糖が入ってないため、摂取できる。

  • 全粒粉のパンおよびシリアル。

  • ナッツ、植物の種子、およびココナツ。

  • 揚げ物、油っこい食べ物、または脂肪分が多い食品。

  • 生の果物、ドライフルーツ、プルーンジュースなどの果物ジュース。

  • 生野菜。

  • 脂肪分の多いパン菓子。

  • ポップコーン、ポテトチップおよびプリッツ。

  • 強い香辛料およびハーブ。

  • チョコレート、コーヒー、紅茶およびカフェイン入りソフトドリンク。

  • アルコールおよびタバコ。

摂取すべき食品
  • 加熱調理した魚、鶏肉、牛肉。

  • バナナ、リンゴソース、皮をむいたリンゴ、リンゴジュースおよびグレープジュース。

  • 精白パン、トースト。

  • マカロニや麺類。

  • 加熱調理したジャガイモ。

  • アスパラガスのチップ、緑豆、人参、ほうれん草、カボチャなど、柔らかい加熱した野菜。

  • マイルドなプロセスチーズ、卵、ピーナツバター、バターミルクおよびヨーグルト。

参考になるヒント
  • 食品は食べる前に室温に戻す。 [7]

  • 1日3,000ccの水分を摂る。炭酸が入った飲み物は、飲む前に炭酸を抜いておく。

  • ナツメグは消化管の運動を抑える働きがあるので、食品に添加する。

  • 放射線療法の初日より低残渣食を始める。[証拠レベル:IV]

慢性放射線腸炎

診断

腹部または骨盤に照射を受けたわずか5~15%の患者が慢性放射線腸炎を来す。徴候および症状には以下のものがある:


  • 仙痛性腹痛。

  • 血性下痢。

  • しぶり腹。

  • 脂肪便症。

  • 体重減少。

  • 吐き気および嘔吐。

これより頻度が低いものには、腸閉塞、瘻孔、腸穿孔、大量直腸出血がある。 [9]

放射線療法を受けて6~18ヵ月後に最初の徴候や症状が起こる。X線所見では、粘膜下肥厚、単発性または多発性狭窄、癒着、洞・瘻孔形成がみられる。 [10] 顕微鏡的所見としては絨毛の線維化がみられ、全く消失していることもある。潰瘍形成は頻度が高く、上皮層が消失しているだけのものから、種々の程度で腸壁に達し、漿膜まで到達することさえある。リンパ組織は萎縮ないし消失していることが多い。粘膜下組織は深刻な損傷を受けている。細動脈および小径動脈は大きく変化し、壁全体が硝子化している。筋線維は歪んでいることが多く、部分的に線維化が起こっている。

慢性放射線腸炎の診断をつけることは難しい。再発性腫瘍を臨床的、放射線診断的に除外しなければならない。潜伏期にあることも考えられるため、医師は患者の詳細な放射線療法歴を知ることが不可欠である。患者治療の継続的な管理において、放射線療法医を含めることはしばしば得策である。

治療

患者の症状(急性放射線腸炎の症状と類似している)には内科的管理が適応となり、外科的治療は重度の障害にのみ適応される。 [8] [証拠レベル:I] 外科的介入が必要になる場合は、腹部または骨盤に放射線を受け慢性放射線腸炎を発症した患者5~15%のうち2%未満である。 [11]

外科手技の選択と時期については見解の一致をみていない。切除術と比較して腸バイパス手術の方が手術による死亡率(21% vs 10%)、創部離開の発生率(36% vs 6%)ともに低いという報告がある。 [12] [証拠レベル:II] [13] 切除術を支持する諸家は、罹患した腸を除去することによって死亡率を低下させ、バイパス術に匹敵すると指摘している。 [12] 単に癒着部分を切り離すだけでは不十分で、瘻孔があればバイパスを必要とするという点では見解の一致をみている。

手術を施行すると、創傷治癒がしばしば遅れ、術後長期にわたって非経腸栄養が必要となるため、患者の臨床状態および放射線障害の程度を慎重に評価した上でのみ手術が施行される。一見手術が成功したように見えても、かなりの割合の患者において症状が持続する。 [14]

予防

重度の放射線腸炎のリスクを最小限に抑える治療手技は以下の通りである:


  1. 放射線療法手技を以下に示す:
    1. 照射される小腸の体積を最小限にするため、(2門照射法に対して)3ないし4門照射法を使用。
    2. 小腸ができるだけ照射野に入らないような体位で治療(例、骨盤照射の際、毎日膀胱を緊満させることにより小腸を押し上げて骨盤の外に出るようにして治療)する。
    3. 連日、全門を照射することにより、総線量を低く抑え線量分布を均一にすることができる。
    4. 治療計画を最適化するためにコンピュータ線量計算装置を用い、正常組織を傷つけず腫瘍に高線量を投与するために、直線加速器のような高エネルギー治療装置を用いる。 [15]
  2. 手術。現在または以前の腫瘍部位を明確にし、放射線療法計画を補助するため、リスクの高い領域にクリップを留置する。
  3. 治療順序の変更。探求の領域として、放射線照射、化学療法および手術や、それが腸炎の重症度に及ぼす影響が挙げられる。

参考文献
  1. O'Brien PH, Jenrette JM 3rd, Garvin AJ: Radiation enteritis. Am Surg 53 (9): 501-4, 1987.[PUBMED Abstract]

  2. Yeoh EK, Horowitz M: Radiation enteritis. Surg Gynecol Obstet 165 (4): 373-9, 1987.[PUBMED Abstract]

  3. Gallagher MJ, Brereton HD, Rostock RA, et al.: A prospective study of treatment techniques to minimize the volume of pelvic small bowel with reduction of acute and late effects associated with pelvic irradiation. Int J Radiat Oncol Biol Phys 12 (9): 1565-73, 1986.[PUBMED Abstract]

  4. Haddad GK, Grodsinsky C, Allen H: The spectrum of radiation enteritis. Surgical considerations. Dis Colon Rectum 26 (9): 590-4, 1983.[PUBMED Abstract]

  5. Sonis S, Elting L, Keefe D, et al.: Unanticipated frequency and consequences of regimen-related diarrhea in patients being treated with radiation or chemoradiation regimens for cancers of the head and neck or lung. Support Care Cancer 23 (2): 433-9, 2015.[PUBMED Abstract]

  6. Alimentary tract. In: Fajardo LF: Pathology of Radiation Injury. New York: Masson Publishers, 1982, pp 47-76.[PUBMED Abstract]

  7. Yasko JM: Care of the Client Receiving External Radiation Therapy. Reston, Va: Reston Publishing Company, Inc., 1982.[PUBMED Abstract]

  8. Stryker JA, Bartholomew M: Failure of lactose-restricted diets to prevent radiation-induced diarrhea in patients undergoing whole pelvis irradiation. Int J Radiat Oncol Biol Phys 12 (5): 789-92, 1986.[PUBMED Abstract]

  9. Kinsella TJ, Bloomer WD: Tolerance of the intestine to radiation therapy. Surg Gynecol Obstet 151 (2): 273-84, 1980.[PUBMED Abstract]

  10. Mendelson RM, Nolan DJ: The radiological features of chronic radiation enteritis. Clin Radiol 36 (2): 141-8, 1985.[PUBMED Abstract]

  11. Galland RB, Spencer J: Surgical management of radiation enteritis. Surgery 99 (2): 133-9, 1986.[PUBMED Abstract]

  12. Lillemoe KD, Brigham RA, Harmon JW, et al.: Surgical management of small-bowel radiation enteritis. Arch Surg 118 (8): 905-7, 1983.[PUBMED Abstract]

  13. Wobbes T, Verschueren RC, Lubbers EJ, et al.: Surgical aspects of radiation enteritis of the small bowel. Dis Colon Rectum 27 (2): 89-92, 1984.[PUBMED Abstract]

  14. Wellwood JM, Jackson BT: The intestinal complications of radiotherapy. Br J Surg 60 (10): 814-8, 1973.[PUBMED Abstract]

  15. Minsky BD, Cohen AM: Minimizing the toxicity of pelvic radiation therapy in rectal cancer. Oncology (Huntingt) 2 (8): 21-5, 28-9, 1988.[PUBMED Abstract]

 | 

本要約の変更点(09/09/2016)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

概要概要

本文本文に以下の記述が追加された;また、1件の報告により、化学療法を併用するまたは併用しない放射線を受けていた個人について、肺がんおよび頭頸部がんに対する放射線の結果としての放射線誘発性の下痢も実証された(引用、参考文献5としてSonis et al.)。

下痢下痢

本文本文が改訂され、がん患者において下痢の一因となりうる放射線療法関連要因として肺がんおよび頭頸部がんへの放射線が含められた(引用、参考文献24としてSonis et al.)。

放射線腸炎放射線腸炎

本文本文に、肺がんおよび頭頸部がんに対して放射線または化学放射線レジメンで治療されている患者におけるレジメン関連下痢の研究に関する記述が追加された(引用、参考文献5としてSonis et al.)。

本要約はPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約について本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

 | 

本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、消化管の合併症(便秘、宿便、腸閉塞、下痢、および放射線腸炎)の病態生理および治療について包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:


  • 会議での議論、

  • 本文の引用、または

  • 既に引用されている既存の記事との入れ替え、または既存の記事の更新。

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

消化管の合併症に対する主要な査読者は以下の通りである:


    本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

    証拠レベル

    本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Board は、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

    本要約の使用許可

    PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

    本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

    PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board.PDQ Gastrointestinal Complications.Bethesda, MD:National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at:http://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/side-effects/constipation/GI-complications-hp-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID:26389211]

    本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。

    免責条項

    これらの要約内の情報は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。

    お問い合わせ

    Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。

     |