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悪性中皮腫についての一般的な情報
悪性中皮腫は、胸部または腹部の内側を覆う組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。
悪性中皮腫は、胸膜(胸腔や肺の表面を覆っている薄い組織層)または腹膜(腹部の内側と大半の腹部臓器の外側を覆っている薄い組織層)から悪性(がん)細胞が発生してくる疾患です。本要約では、胸膜の悪性中皮腫に関する情報が扱われています。
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呼吸器系の解剖図:気管、左右の肺とそれぞれの肺葉、気道を示す。リンパ節と横隔膜も示されています。肺に吸い込まれた酸素は、肺胞の薄い膜を介して血液中に取り込まれます(拡大図を参照)。
悪性中皮腫の発生リスクを高めるものにアスベストへの暴露があります。
悪性中皮腫を発症する人の多くは、アスベストを吸入したり飲み込んだりすることの多い環境で勤務または生活していた経験をもっています。しかしアスベストに曝されていても、実際に悪性中皮腫を発症するまでには長い潜伏期間があります。悪性中皮腫の危険因子としては、この他にも以下のようなものがあります:
- アスベストの存在する環境で勤務している人と生活を共にしていること。
- 特定のウイルスに感染していること。
悪性中皮腫の徴候として考えられるものに、息切れと胸部の痛みがあります。
このがんの患者さんでは、肺の周囲や腹腔内部に液体が溜まってくることがあります。上記の症状は、この液体の貯留か悪性中皮腫自体が原因となって起こります。ただし別の病態が原因で同様の症状が生じてくる場合もあります。以下のような症状がある場合は医師の診察を受けてください:
- 呼吸困難。
- 胸部の痛み。
- 腹部の痛みや腫れ。
- 腹部のしこり。
- 原因不明の体重減少。
悪性中皮腫の発見と診断には、胸腔と腹腔の内部を調べる検査法が用いられます。
悪性中皮腫はときとして肺がんとの鑑別が難しくなることがあります。以下のような検査法や手技が用いられます:
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身体診察と病歴聴取:しこりなどの通常みられない病的な徴候を含めて、総体的に身体を調べる。患者さんの健康習慣や過去の病歴、治療歴も調べます。
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胸部X線検査:胸部の臓器と骨のX線検査。X線は放射線の一種で、これを人の体を通してフィルム上に照射すると、そのフィルム上に体内領域の画像が映し出されます。
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胸部X線検査。X線を利用して胸部の臓器と骨の画像を撮影します。X線は患者さんの体内を通過してフィルム上に到達します。
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全血球算定(CBC):血液を採取して以下の項目について調べる検査法:
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血沈検査:血液のサンプルをかき混ぜて、赤血球が試験管の底に沈んでいく速さを計測する検査法。
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生検:病理医によるがんの徴候の有無を調べる顕微鏡検査のために、胸膜または腹膜から細胞や組織を採取すること。細胞や組織の採取方法としては以下のようなものがあります:
- 穿刺吸引生検:細い針を用いて、しこりや疑わしい組織の一部、あるいは体液を採取する方法。これは針生検とも呼ばれます。
- 胸腔鏡検査:隣り合う2本の肋骨の間を切開し、胸腔鏡(ライトの付いた細い管)をその切開口から胸腔内まで挿入して行う方法。
- 腹腔鏡検査:腹壁を小さく切開し、腹腔鏡(ライトの付いた細い管)をその切開口から腹腔内まで挿入して行う方法。
- 開腹術:腹腔内での疾患の徴候の有無を確かめるために腹壁を切開する方法。
- 開胸術:胸腔内での疾患の徴候の有無を確かめるために隣り合う2本の肋骨の間を切開する方法。
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気管支鏡検査:気管と気管支の内部を観察して、異常な部分がないかを調べる検査法。気管支鏡(ライトの付いた細い管)を鼻か口から気管や肺の内部まで挿入します。場合により生検用に組織のサンプルを採取することもあります。
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気管支鏡検査。気管支鏡を口から気管、気管支を通して肺の内部まで挿入し、異常な部分がないかを調べます。気管支鏡とは観察用のライトとレンズが付いた細いチューブ状の器具のことです。組織を切除するための器具を備えているものもあります。組織のサンプルが採取されることもあり、疾患の徴候を調べるための顕微鏡での検査が行われます。
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細胞診:細胞を顕微鏡で観察して異常の有無を調べる検査(観察は病理医が行う)。中皮腫の場合は、肺の周囲または腹腔内部に溜まった液体が採取されます。そしてこの液体の中に含まれる細胞を病理医が観察します。
特定の因子によって予後(回復の見込み)や治療法の選択肢が変わってきます。
予後(回復の見込み)と治療法の選択を左右する因子には以下のものがあります:
- がんの病期。
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腫瘍の大きさ。
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手術によって腫瘍を完全に摘出できるかどうか。
- 胸腔内または腹腔内に溜まった液体の量。
- 患者さんの年齢と健康状態(特に肺と心臓の状態)。
- 中皮腫細胞の種類と顕微鏡で観察したときの外観。
- 新たに診断されたがんか、再発したがんか。
悪性中皮腫の病期
悪性中皮腫の診断がついた後には、がん細胞が体の他の部位に転移していないかを明らかにするために、さらに検査が行われます。
胸膜外または腹膜外へのがんの転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この病期分類の過程で集められた情報を基に病期が判定されます。治療計画を立てるためにはがんの病期を把握しておくことが重要になります。病期分類の過程では以下のような検査法や手技が用いられます:
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胸部X線検査:胸部の臓器と骨のX線検査。X線は放射線の一種で、これを人の体を通してフィルム上に照射すると、そのフィルム上に体内領域の画像が映し出されます。
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CTスキャン(CATスキャン):胸部や腹部を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法。画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。場合によっては臓器や組織をより鮮明に映し出すために、静脈内に造影剤を注射したり、患者さんに造影剤を飲んでもらったりすることもあります。この検査法は、コンピュータ断層撮影やコンピュータ体軸断層撮影とも呼ばれます。
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MRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて胸部や腹部の精細な連続画像を作成する検査法。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。
悪性中皮腫の病期は2つのグループに分けられます。
悪性中皮腫の病期は限局期と進行期に分類されます。
限局期の悪性中皮腫(I期)
限局期の悪性中皮腫の場合、胸壁の内側を覆う組織にがんが認められ、さらに肺の表面や横隔膜の表面、または心嚢(心臓を包む袋状の組織)の表面(左右で分けてがんのある方のみ)にがんが拡がっていることもあります。
進行期の悪性中皮腫(II期、III期、IV期)
進行期の悪性中皮腫には、II期、III期、IV期の悪性中皮腫が含まれます。
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II期では、胸壁の内側を覆う組織と、胸部の同側のリンパ節にがんが認められます。さらに肺の表面、横隔膜の表面、または心嚢(心臓を包む袋状の組織)の表面(左右で分けてがんのある方のみ)にがんが拡がっていることもあります。
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III期では、がんが以下の部位のいずれかに拡がっています:
さらに、がんの位置と同側にある胸部外のリンパ節にがんが拡がっていることもあります。
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IV期では、遠く離れた臓器または組織にがんが拡がっています。
再発悪性中皮腫
再発悪性中皮腫とは、治療後に再び悪化(再発)したがんのことをいいます。再発は、胸部や腹部に起こることもあれば、体の別の部位に起こることもあります。
治療選択肢の概要
悪性中皮腫の患者さんには様々な治療法が存在します。
悪性中皮腫の患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験で検証中のものもあります。治療を開始する前に、まず臨床試験への参加を検討してみるのもよいでしょう。治療法の臨床試験とは、現在用いられている治療法の改善や、がんの新しい治療法に関する情報収集を目的とした調査研究のことです。新しい治療法が標準治療よりも優れているということが複数の臨床試験から示されると、その新しい治療法が標準治療となります。
臨床試験は米国各地で行われています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形となります。
標準治療として以下の3種類が用いられています:
手術
悪性中皮腫の治療には以下のような手術法が用いられます:
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広範囲局所切除術:がん全体と周囲の正常組織の一部を切除する手術法。
- 胸膜切除と肺剥皮術:肺の表面を覆う組織と胸壁の表面を覆う組織を切除し、さらに肺の外側の部分も切除する手術法。
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胸膜肺全摘出術:片方の肺全体、胸壁の表面を覆う組織、横隔膜、および心嚢膜(心臓を包む袋状の組織の表面の層)を切除する手術法。
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胸膜癒着術:化学薬品や薬を用いて2枚の胸膜(肺を覆う胸膜と胸壁を覆う胸膜)を互いに癒着させることによってその間の空間を埋める外科的手技。まず、この空間に溜まっている体液をカテーテルを用いて体外に排出させ、次にこの空間内に化学薬品か薬物を注入していきます。そのようにして胸膜間を癒着させることによって、胸腔内での体液の貯留を予防できます。
たとえ医師が手術の際に確認できる全てのがんを切除したとしても、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させるために、術後に化学療法や放射線療法を実施する場合があります。このように治癒の可能性を高めるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞を死滅させる、がんの治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの器具の中に放射性物質を封入し、腫瘍の内部かその付近に直接留置する方法です。放射線療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによりがんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱内や臓器内、もしくは腹腔などの体腔内に薬を直接注入する化学療法では、薬はその領域のがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。また2種類以上の抗がん剤を用いた化学療法は、併用化学療法と呼ばれます。化学療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されており、具体的には以下のようなものが挙げられます:
生物学的療法
生物学的療法は、がんを撃退するために患者さんの免疫系を利用する治療法です。体内で生産された物質や製造ラボで合成された物質を用いることによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。このようながんの治療法は生物療法や免疫療法などとも呼ばれます。
本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
悪性中皮腫の治療選択肢
限局期の悪性中皮腫(I期)
存在範囲が壁側胸膜(胸壁の内側を覆う組織層)の一部のみで1カ所のみの悪性中皮腫の治療では、壁側胸膜のがんに侵されている部分とその周辺組織を切除する手術が行われるでしょう。
胸腔内の複数箇所に発生した限局期の悪性中皮腫の治療法には、以下のようなものがあります:
本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
進行期の悪性中皮腫(II期、III期、IV期)
進行期の悪性中皮腫の治療法には以下のようなものがあります:
- 胸腔内に溜まっている液体を体外に排出させる手術(不快感を軽減するため)。胸膜癒着術を実施すれば、胸腔内への液体の貯留を防げる場合があります。
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症状を和らげ生活の質を高める緩和療法としての胸膜切除と肺剥皮術。
- 痛みを和らげる緩和療法としての放射線療法。
- 1種類の薬による化学療法。
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併用化学療法の臨床試験への参加。
- 手術、放射線療法、化学療法の三者併用治療の臨床試験への参加。
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腫瘍の縮小と液体貯留の予防を目的とした体腔内化学療法(胸腔内または腹腔内に抗がん剤を直接流し込む治療法)の臨床試験への参加。
本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
再発悪性中皮腫
再発悪性中皮腫の治療法には以下のようなものがあります:
本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
2007-06-27