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膣がんについての一般的な情報
膣がんは、膣内に悪性(がん)細胞ができる疾患です。
膣は、子宮頸部(子宮の開口部)から体外へと続く管状の臓器です。出産時には、この膣を通って新生児が体外へ出て行きます(そのため産道とも呼ばれます)。
膣がんはあまり多くはみられない病気です。早期のうちに発見できれば、多くの場合治癒も望めます。膣がんでは次の2種類が代表的です:
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扁平上皮がん:扁平上皮細胞(膣の表面を覆う薄く平らな細胞)から発生するがん。膣の扁平上皮がんは、拡がるのが遅く膣の近辺にとどまっているのが通常ですが、肺や肝臓に転移することもあります。これは膣がんの中でも最も多くみられる種類のものです。ほとんどが60歳以上の女性で発見されます。
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腺がん:腺(分泌腺)細胞から発生するがん。膣の表面にある腺細胞は、粘液などの、体液の生産と放出を行っています。腺がんでは、扁平上皮がんの場合よりも肺やリンパ節への転移の可能性が高くなります。ほとんどが30歳以下の女性で発見されます。
女性の膣がんの発生リスクに影響を及ぼしうる因子に、年齢と胎児期のDES(ジエチルスチルベストロール)という薬物への暴露があります。
膣がんの危険因子には以下のようなものがあります:
- 30歳以下または60歳以上であること。
- 母親の子宮の中でDESに曝されていたこと。1950年代には、このDESという薬が流産(胎児がまだ生存できない早い時期に起こる分娩のこと)の予防薬として一部の妊婦さんに処方されていました。胎児期にこのDESに曝されていた女性では、膣がんの発生リスクが高くなります。さらにそのような女性の一部では、明細胞腺がんと呼ばれるまれな種類のがんが発生することもあります。
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ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染していること。
- 子宮の膣内への落ち込みを防ぐために膣内ペッサリーを使用していること。
膣がんの徴候として考えられるものに、異常膣出血があります。
膣がんでは初期症状がみられないことが多く、定期的に行われるパパニコロウ試験で発見されることがあります。また症状が現れても、膣がんによるものの場合もあれば、別の病態が原因となっている場合もあります。以下のような症状がある場合は医師の診察を受けてください:
膣がんの発見と診断には、膣を含む骨盤内の臓器を調べる検査法が用いられます。
以下のような検査法や手技が用いられます:
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身体診察と病歴聴取:しこりなどの通常みられない病的な徴候を含めて、総体的に身体を調べる。患者さんの健康習慣や過去の病歴、治療歴も調べます。
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内診:膣、子宮頸部、子宮、卵管、卵巣、直腸の検査。医師または看護師が、手袋をはめて潤滑剤を塗った片方の手の指を1〜2本膣内に挿入し、もう片方の手を下腹部に置いて子宮と卵巣の大きさ、形、位置を触知します。さらに、膣鏡を膣内に挿入して、医師または看護師が膣や子宮頸部にがんの徴候がないかを調べます。通常、子宮頸部のパパニコロウ試験またはパパニコロウ塗抹が行われます。さらに医師または看護師は、手袋をはめて潤滑剤を塗った指を直腸内に挿入し、しこりの有無や異常な部位がないかを指の感触で調べていきます。
- パパニコロウ塗抹:子宮頸部の表面と膣の表面から細胞を採取する検査。まず脱脂綿、ブラシ、または木べらで子宮頸部と膣の細胞を優しくこすり取ります。採取した細胞を顕微鏡で観察し、異常の有無を確かめます。この検査法はパパニコロウ試験とも呼ばれます。
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生検:細胞や組織を採取し、それを病理医が顕微鏡で観察して、がんの徴候がないかを調べる検査。パパニコロウ塗抹によって膣内の異常細胞の存在が判明した場合は、膣鏡検査の実施中に生検を行うことがあります。
- 膣鏡検査:膣と子宮頸部の内部を観察して、異常な部分がないかを調べる検査法。膣鏡(ライトの付いた細い管)を膣から子宮頸部へと挿入します。場合により生検用に組織のサンプルを採取することもあります。
特定の因子によって予後(回復の見込み)や治療法の選択肢が変わってきます。
予後(回復の見込み)を左右する因子には以下のものがあります:
- がんの病期(膣内にとどまっているか、他の領域まで拡がっているか)。
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腫瘍の大きさ。
- 腫瘍細胞の悪性度(正常な細胞とどの程度外見が異なっているか)。
- 膣内でのがんの位置。
- 症状が現れているかどうか。
- 患者さんの年齢と健康状態。
- 新たに診断されたがんか、再発したがんか。
治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:
- がんの病期、大きさ、位置。
- 扁平上皮がんと腺がんのどちらか。
- 子宮が残っているか、あるいは子宮摘出術を受けた後か。
- 過去に骨盤への放射線療法を受けたことがあるかどうか。
膣がんの病期
膣がんの診断がついた後には、がん細胞の膣内での拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。
がんの膣内での拡がりや他の部分への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この病期分類の過程で集められた情報を基に病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要になります。病期分類の過程では以下のような検査法が用いられます:
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生検:がんの子宮頸部への拡がりを確認するために生検が行われることがある。組織のサンプルを子宮頸部から切り取って、それを顕微鏡を用いて観察します。採取する組織が少量で済む生検であれば、診療所でも実施できるのが通常です。一方、円錐生検(子宮頸部と子宮頸管 から円錐形の大きな組織の塊を採取する検査)の場合は、大きな病院での実施となります。外陰部にがんが拡がっている場合には、外陰部の生検も実施されます。
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胸部X線検査:胸部の臓器と骨のX線検査。X線は放射線の一種で、これを人の体を通してフィルム上に照射すると、そのフィルム上に体内領域の画像が映し出されます。
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膀胱鏡検査:膀胱と尿道の内部を観察して、異常な部分がないかを調べる検査法。膀胱鏡(ライトの付いた細い管)を尿道から膀胱へと挿入します。場合により生検用に組織のサンプルを採取することもあります。
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尿管鏡検査:尿管の内部を観察して、異常な部分がないかを調べる検査法。尿管鏡(ライトの付いた細い管)を膀胱から尿管へと挿入します。場合により生検用に組織のサンプルを採取することもあります。尿管鏡検査と膀胱鏡検査は一度に実施することがあります。
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直腸鏡検査:直腸の内部を観察して、異常な部分がないかを調べる検査法。直腸鏡(ライトの付いた細い管)を直腸内へと挿入します。場合により生検用に組織のサンプルを採取することもあります。
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CTスキャン(CATスキャン):体内の各領域を様々な角度から撮影し、精細な連続画像を作成する検査法。画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈に注射するか、もしくは患者さんに飲んでもらうこともあります。この検査法は、コンピュータ断層撮影、コンピュータ体軸断層撮影とも呼ばれます。
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MRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて、体内領域の精細な連続画像を作成する検査法。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。
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リンパ管造影:リンパ系のX線撮影で用いられる手法。まず造影剤を足のリンパ管に注入します。その後、造影剤がリンパ節とリンパ管を通って体の上方まで移動した頃にX線撮影を行い、リンパの流れが遮られている部分がないかを調べます。この検査はリンパ節へのがんの拡がりの有無を確かめる際に用いられます。
膣がんでは、以下の病期分類が用いられます:
0期(上皮内がん)
0期では、扁平上皮がんが膣内部の表面組織のみに認められます。0期のがんは上皮内がんとも呼ばれます。
I期
I期では、がんが膣内のみに認められます。
II期
II期では、がんが膣壁を越えて膣の周辺組織まで拡がっています。
III期
III期では、がんが膣壁を越えて拡がり、骨盤内または鼠径部のリンパ節、もしくは骨盤、あるいはその両方に達しています。
IV期
IV期はIVA期とIVB期に分けられます。
- IVA期:がんが骨盤内のリンパ節または鼠径部のリンパ節まで拡がっていることがあり、次の領域のどちらかまたは両方に拡がっている:
- 膀胱の内側の表面または直腸の内側の表面。
- 骨盤外の領域。
- IVB期:がんが肺などの膣から遠く離れた部位まで拡がっている。がんがリンパ節に拡がっている場合もあります。
再発膣がん
再発膣がんとは、治療後に再び悪化(再発)したがんのことをいいます。再発は、膣内に起こることもあれば、体の別の部位に起こることもあります。
治療選択肢の概要
膣がんの患者さんには様々な治療法があります。
膣がんの患者さんは、様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中の治療法もあります。治療を開始する前に、まず臨床試験への参加を検討してみるのもよいでしょう。治療法の臨床試験とは、現在用いられている治療法の改善や、がんの新しい治療法に関する情報収集を目的とした調査研究のことです。新しい治療法が標準治療よりも優れているということが複数の臨床試験から示されると、その新しい治療法が標準治療となります。
臨床試験は米国各地で行われています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形となります。
標準治療として以下の3種類が用いられています:
手術
手術は膣がんで最も多く用いられている治療法です。以下のような手術法が用いられます:
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レーザー手術:レーザー光線(細く強い光線)をメスのように用いて、出血を起こさずに組織を切ったり、表面にできた病巣(腫瘍など)を切除したりする手術法。
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広範囲部分切除術:がんと周囲の正常組織の一部を切除する手術法。
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膣切除術:膣の全体または一部を切除する手術法。
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子宮全摘出術:子宮を子宮頸部を含めて摘出する手術法。なかでも、膣を介して子宮と子宮頸部を摘出する場合は膣式子宮摘出術と呼ばれます。また腹部を大きく切開して子宮と子宮頸部を摘出する場合は、腹式子宮全摘出術と呼ばれます。さらに、腹部を小さく切開してそこから腹腔鏡を用いて子宮と子宮頸部を摘出する場合は、腹腔鏡下子宮全摘術と呼ばれます。
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リンパ節郭清術:リンパ節を切除する手術法で、その中までがんが拡がっていないかを確かめるために実施される。この手術はリンパ節切除術とも呼ばれます。膣の上部にがんが存在している場合は、骨盤リンパ節の切除を行う場合があります。膣の下部にがんが存在している場合は、鼠径部のリンパ節の切除を行う場合があります。
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骨盤内臓器摘出術:下部結腸と直腸と膀胱を摘出する手術法。女性の場合は、子宮頸部、膣、卵巣、付近のリンパ節も併せて摘出されます。これと同時に、体外に取り付けたバッグまで尿と便を送り出すための開口部(ストーマ)が人工的に造られます。
手術後には、膣を修復または再建するために皮膚移植を行うことがあります。皮膚移植とは、体のある部位から他の部位へ皮膚を移し変える手術法のことです。体の普段隠れている部分(お尻や太ももなど)の皮膚が切り取られ、手術が行われた部分の修復または再建に用いられます。
たとえ医師が手術の際に確認できる全てのがんを切除したとしても、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させるために、術後に放射線療法を実施する場合があります。治癒の可能性を高めるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞を死滅させる、がんの治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に置いた機械を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの中に放射性物質を封入し、がんの内部または近くに直接留置する方法です。放射線療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによりがんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱内や臓器内、もしくは腹腔などの体腔内に薬を直接注入する化学療法では、薬はその領域のがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
膣の扁平上皮がんに対する外用の化学療法は、クリームやローションを膣に塗る形式で行われます。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。具体的には以下のようなものがあります:
放射線増感剤
放射線増感剤とは、放射線療法に対する腫瘍細胞の反応性を高める薬のことです。放射線療法に放射線増感剤を併用すれば、より多くの腫瘍細胞を殺傷することが可能になります。
本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
2007-06-27