原文更新日 : 2006-01-04
翻訳更新日 : 2007-06-27
スクリーニングとは、症状が現れてくる前にがんを発見しようとする試みのことです。その実施が、がんの早期発見に役立つ場合もあります。異常組織やがんも、早期に発見されれば治療が容易になる場合もあります。症状が現れる頃には、がんが拡がり始めている可能性があります。
ある種類のがんにかかりやすいのはどのような人々なのか、こうした疑問をより深く解明しようとする努力が科学者たちによって続けられています。さらに、がんの原因となりうる生活習慣や環境についても研究が重ねられています。こうして得られた情報は、がんのスクリーニング対象者の条件やスクリーニング検査の種類、それにその検査を受ける頻度について、医師が患者さんに助言をしていく際に役立てられています。
担当の医師からスクリーニング検査を勧められたとしても、必ずしもがんが疑われているわけではないということは、忘れてはなりません。スクリーニング検査はがんの症状が現れる前に実施されるものなのです。場合によってはスクリーニング検査を定期的に繰り返し行うこともあります。
スクリーニング検査の結果が異常であれば、がんの存在を確認するために、さらなる検査が必要になる場合もあります。こうした検査は診断検査と呼ばれます。
前立腺がんの予防、診断、治療に関する情報については、以下のPDQの要約をご覧ください:
前立腺は男性生殖系の腺のひとつで、膀胱(尿の貯留と排出を行う臓器)のすぐ下、直腸(腸の下部)の前方に位置しています。その大きさはクルミほどで、尿道(排尿時に膀胱から出た尿が通っていく管)を取り囲むように存在しています。前立腺は精液の一部を作り出すという役割を果たしています。
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男性の泌尿生殖器系の解剖図:前立腺、精巣、膀胱、その他の臓器を示す。
前立腺がんは主に高齢の男性に発生します。高齢の男性では、前立腺が大きくなって膀胱の出口や尿道が塞がれる場合があります。その結果、尿が出にくくなったり性機能に問題が生じたりすることもあります。このような病態は良性前立腺過形成(BPH)と呼ばれ、がんではないものの、その治療には手術が必要となる場合もあります。良性前立腺過形成などの前立腺に発生する病気は、その症状が前立腺がんの症状とよく似てくることがあります。
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正常な前立腺と良性前立腺過形成(BPH)。正常時には、膀胱から出た尿の流れが前立腺によって遮られることはありません。ところが前立腺が大きくなってくると、膀胱と尿道への圧迫によって尿の流れが遮られるようになります。
前立腺がんの男性の数は非常に多いのですが、前立腺がんと診断された男性がこのがんが原因で死亡することはあまり多くありません。しかし黒人男性においては、白人男性の場合と比べてより進行した状態で発見されるのが通常で、前立腺がんが原因で死亡する可能性もより高くなります。
前立腺がんの発生リスクに影響を及ぼす要因に、年齢、人種、前立腺がんの家族歴があります。疾患が発生する可能性を増大させるものは全て危険因子と呼ばれます。前立腺がんの危険因子には以下のようなものがあります:
スクリーニング検査の中には、がんの早期発見に役立ち、同時にがんによる死亡の可能性を低減できることが明らかとなっているために、実施されているものがあります。一方で、一部の人々の間でがんを発見できたことから実施されている検査もありますが、こうした検査にがんの死亡リスクを低下させる効果があるのかどうかについては臨床試験での証明は得られていません。
最小のリスクで最大の効果が得られる検査法を開発するために、現在もスクリーニング検査の研究が行われています。また、がんスクリーニングの臨床試験を行う目的には、早期発見(症状が現れる前にがんを発見すること)によってがんの死亡リスクが低減されるかどうかを明らかにすることも含まれています。一部の種類のがんでは、早期のうちに発見し治療すれば、回復の見込みが高まる場合があります。
前立腺がんのスクリーニング検査には、標準的なものや決まって用いられるものはありません。前立腺がんのスクリーニングは現在研究段階にあり、米国各地でスクリーニングの臨床試験が行われています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手できます。
前立腺がんを発見するための検査法としては、以下のようなものが現在研究されています:
直腸指診(DRE)は直腸を調べる検査です。医師か看護師が、手袋をはめてその上から潤滑剤を塗った指を直腸の下部に挿入し、前立腺を触ってしこりなどの異常がないかを調べます。
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直腸指診(DRE)。手袋をはめてその上から潤滑剤を塗った指を直腸の下部に挿入し、前立腺を触って異常がないかを調べます。
前立腺特異抗原(PSA)検査は、血液中のPSAの濃度を測定する検査です。PSAはその大部分が前立腺から分泌される物質で、通常、前立腺がんの男性で血中PSA濃度が高くなります。ただしこのPSAの値は、前立腺の感染症や炎症、良性前立腺過形成(BPH:前立腺が肥大する病気で、がんではない)などの病気をもつ男性でも高くなることがあります。
米国国立がん研究所(NCI)では、これらのスクリーニング検査からより正確な情報を得るための方法として、PSA検査と直腸指診を組み合わせて用いる手法が研究されています。
スクリーニング検査に関する判断は難しくなる場合があります。全てのスクリーニング検査が役に立つわけではなく、ほとんどはリスクを伴います。スクリーニング検査を受けようとする場合は、その前に検査について担当の医師とよく話し合っておくのがよいでしょう。検査に伴うリスクを把握し、さらにがん死亡のリスク低減という効果が実際に証明されているのかを知っておくことが重要になります。
前立腺がんのスクリーニングのリスクとしては、以下のものが挙げられます:前立腺がんが存在していても、既に進行している場合や別の部位に転移している場合には、その時点でスクリーニングを受けたとしても健康状態の改善や余命の延長はあまり望めないでしょう。
がんの中には何の症状ももたらさず命を脅かす心配がないものもありますが、スクリーニング検査で見つかれば、そのようながんにも治療が行われることがあります。このようながん治療に無治療の場合と比べて延命効果があるのかどうかは不明な上、その治療によって逆に重篤な副作用がもたらされる可能性もあります。前立腺がんに対する治療の副作用としては、大手術に伴う合併症、失禁(膀胱や腸を制御できなくなって排尿や排便に問題が生じた状態)、勃起不全(勃起の達成や維持ができなくなった状態)などが挙げられます。
偽陰性の検査結果が出る可能性もあります。スクリーニング検査の結果は、たとえ実際に前立腺がんが存在していても、正常となることがあります。 偽陰性の検査結果(実際にはがんが存在しているのに存在しないと判定された検査結果)を受けた男性では、たとえ症状が現れていても、医師の診察を受けるのが遅くなる場合があります。
偽陽性の検査結果が出る場合もあります。スクリーニング検査の結果は、がんが存在していなくても異常となることがあります。偽陽性の検査結果(実際にはがんは存在しないのに存在すると判定された検査結果)は不安の原因となることもあり、さらに、その後も検査(生検など)が引き続き実施されていくのが通常で、そうした検査によるリスクも生じてきます。前立腺がんの診断には生検の実施が必要になりますが、この検査が原因で出血や感染が起きる場合もあります。
ご自身の前立腺がんのリスクやスクリーニング検査の必要性については、担当の医師にご相談ください。