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中枢神経系原発リンパ腫 : 治療

中枢神経系原発リンパ腫についての一般的な情報

中枢神経系原発リンパ腫は、脳や脊髄のリンパ組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

リンパ腫とは、リンパ系の中に悪性(がん)細胞ができる疾患のことをいいます。リンパ系は免疫系の一部で、リンパ液リンパ管リンパ節脾臓胸腺扁桃腺骨髄から構成されています。リンパ球は(リンパ液の中を浮遊しながら)中枢神経系を出入りしています。このリンパ球の集団の一部の細胞が悪性細胞となり、それが中枢神経系の内部でリンパ腫を引き起こすものと考えられています。中枢神経系原発リンパ腫は、脳、脊髄髄膜(脳の外側を覆っている膜)のいずれかより発生します。またその位置が脳に非常に近いことから、眼球からも中枢神経系原発リンパ腫が発生することがあります(これは眼内リンパ腫と呼ばれます)。

免疫系の機能が弱まった状態では、中枢神経系原発リンパ腫の発生リスクが高くなることがあります。

後天性免疫不全症候群(エイズ)を始めとする免疫系の疾患をもつ患者さんや腎臓移植を受けた患者さんでは、中枢神経系原発リンパ腫を発症することがあります。エイズの患者さんに発症するリンパ腫に関するさらに詳しい情報については、PDQAIDS関連リンパ腫の治療に関する要約をご覧ください。

中枢神経系原発リンパ腫の発見と診断には、眼と脳と脊髄を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:


特定の因子によって予後(回復の見込み)や治療法の選択肢が変わってきます。

予後(回復の見込み)を左右する因子には以下のものがあります:


治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:


中枢神経系原発リンパ腫の治療は、腫瘍が大脳(脳の最も大きな部分)の外部に拡がっていない、患者さんが60歳未満である、日常行動の大半に支障をきたしていない、エイズなどの免疫系の機能を弱める疾患にかかっていない、これらの条件が全て揃っている場合に最大の効果をもたらします。


中枢神経系原発リンパ腫の病期分類

中枢神経系原発リンパ腫診断がついた後には、がん細胞の脳と脊髄の内部での拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。中枢神経系原発リンパ腫は、増殖を続けても通常は中枢神経系や眼球の外部に拡がることはありません。がんの拡がりの程度を調べていくプロセスは病期分類と呼ばれます。病期分類の過程では以下のような検査法や手技が用いられます:



再発中枢神経系原発リンパ腫

再発中枢神経系原発リンパ腫とは、治療後に再び悪化(再発)したがんのことをいいます。中枢神経系原発リンパ腫の再発は脳か眼球内に起こるのが一般的です。


治療選択肢の概要

中枢神経系原発リンパ腫の患者さんには様々な治療法が存在します。

中枢神経系原発リンパ腫の患者さんは、様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験で検証中のものもあります。治療を開始する前に、まず臨床試験への参加を検討してみるのもよいでしょう。治療法の臨床試験とは、現在用いられている治療法の改善や、がんの新しい治療法に関する情報収集を目的とした調査研究のことです。新しい治療法が標準治療よりも優れているということが複数の臨床試験から示されると、その新しい治療法が標準治療となります。

臨床試験は米国各地で行われています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形となります。

中枢神経系原発リンパ腫の治療では手術は用いられません。

標準治療として以下の3種類が用いられています:
放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞を死滅させる、がんの治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの器具の中に放射性物質を封入し、がんの内部または近くに直接留置する方法です。放射線療法の実施方法は、治療中のがんの種類によって異なってきます。

脳に対して高線量の放射線療法を実施すると、正常組織が損傷を受けることによって、思考や学習、問題解決、会話、読解、書字、記憶などの面に悪影響を及ぼす障害が引き起こされることがあります。そこで化学療法の単独での治療法や、放射線療法による正常脳組織への損傷を低減するためにその前に化学療法を実施する治療法が、現在臨床試験で検証されています。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによりがんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱内(髄腔内化学療法)や臓器内、もしくは腔などの体腔内に薬を直接注入する化学療法では、薬はその領域のがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療中のがんの種類によって異なってきます。中枢神経系原発リンパ腫の治療では、髄腔内化学療法か脳室内化学療法(抗がん剤を脳室[液体で満たされた空洞]に注入する方法)が用いられます。

脳は、血液脳関門と呼ばれる血管と組織から構成されるネットワークによって有害な物質から護られています。しかしこの血液脳関門は、抗がん剤の脳への到達をも阻むことがあります。そのため中枢神経系原発リンパ腫の治療では、血液脳関門を構成する細胞同士の隙間を広げるためにある特定の薬が使用されることがあります。これは血液脳関門の破壊と呼ばれます。これにより血流内に注入された抗がん剤が脳に到達できるようになります。

ステロイド治療

ステロイドとは、正常時から体内で生産されているホルモンの一種です。この物質は製造ラボでも合成することができ、薬として使用されることがあります。グルココルチコイドリンパ腫に対して抗がん作用を示すステロイド薬です。

この他にも臨床試験で検証中の治療法があります。具体的には以下のようなものがあります:
幹細胞移植を併用した大量化学療法

幹細胞移植を併用した大量化学療法とは、高用量の化学療法を実施するとともに、このがん治療によって破壊された造細胞を外から補充するという治療法です。まず患者さん自身またはドナーから採取した血液や骨髄から幹細胞(成熟前の血液細胞)を取り出し、凍結保存しておきます。そして化学療法の終了後に、保存していた幹細胞を解凍し、これを点滴によって患者さんの体内に戻します。こうして再注入された幹細胞が血液細胞に成長することにより、血液の機能が回復していきます。

本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。


中枢神経系原発リンパ腫の治療選択肢


エイズとは無関係の中枢神経系原発リンパ腫

エイズではない患者さんの中枢神経系原発リンパ腫に対する治療法には、以下のようなものがあります:


本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。


エイズが関連する中枢神経系原発リンパ腫

エイズの患者さんの中枢神経系原発リンパ腫の治療法には、以下のようなものがあります:


エイズの患者さんにおける中枢神経系原発リンパ腫では、治療の副作用が重大になることがあるため、その治療法は多岐にわたっています。(さらに詳しい情報については、PDQエイズ(AIDS)関連リンパ腫の治療に関する要約をご覧ください。)


再発中枢神経系原発リンパ腫

再発中枢神経系原発リンパ腫の治療法には、以下のようなものがあります:


本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。


2007-06-27