副甲状腺とは、頸部の甲状腺に隣接する4つの豆粒大の臓器のことです。この副甲状腺の機能は副甲状腺ホルモン(PTHまたはパラソルモンとも呼ばれる)を分泌することです。このPTHには、体内でのカルシウムの消費量と貯蔵量を調節することによって、血液中のカルシウム濃度を正常レベルに維持する働きがあります。
ときに副甲状腺の働きが活発になり過ぎるあまりに過剰な量のPTHが分泌される場合があり、このような状態のことを副甲状腺機能亢進症と呼びます。この副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺のいずれかに腺腫と呼ばれる良性腫瘍(がんではない腫瘍)が発生し、その腫瘍によって副甲状腺が増大しその機能が活性化されることによっても発生することがあります。一部には副甲状腺がんが原因となって副甲状腺機能亢進症が発生する場合もありますが、これは非常にまれな場合です。
体内のPTHが過剰になると以下のような現象が生じてきます:
高カルシウム血症という病気(血液中のカルシウムの量が増えすぎた状態)が引き起こされる。
副甲状腺機能亢進症によって引き起こされる高カルシウム血症は、副甲状腺がん自体よりも深刻で生死に関わる病気であることから、この高カルシウム血症に対する治療はがんに対する治療と同じくらいに重要となります。
特定の遺伝性疾患をもつ人では、副甲状腺がんの発生リスクが高くなります。疾患が発生する可能性を増大させるものは全て危険因子と呼ばれます。副甲状腺がんの危険因子としては、以下のような遺伝性疾患(親から子供へと遺伝する病気のこと)が挙げられます:
放射線療法の実施によって副甲状腺腺腫の発生リスクが高まることもあります。
副甲状腺がんの徴候として考えられるものに、筋力低下、疲労感、頸部のしこりなどがあります。副甲状腺がんの症状のほとんどは、二次的に発生した高カルシウム血症によるものです。高カルシウム血症の症状には以下のようなものがあります:
副甲状腺がんのその他の症状には、以下のようなものがあります:
ただし、別の病態が原因で副甲状腺がんと同様の症状が生じてくる場合もあります。以上のような症状がある場合は医師の診察を受けてください。
副甲状腺がんの発見と診断には、頸部と血液を調べる検査法が用いられます。血液検査によって副甲状腺機能亢進症が診断されると、機能が活性化している副甲状腺を特定するために画像検査が実施されることがあります。副甲状腺は患者さんによってはなかなか見つからないことがあるため、その正確な位置を特定するために画像検査が実施される場合もあります。
副甲状腺の腫瘍では、良性の副甲状腺腺腫と悪性の副甲状腺がんでそれぞれの細胞の外観がよく似ているため、副甲状腺がんの診断は難しくなる場合があります。その診断では、患者さんの症状、血液中のカルシウムと副甲状腺ホルモンの濃度、腫瘍の特徴などが参考にされます。
以下のような検査法や手技が用いられます:
予後(回復の見込み)と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:
がんの拡がりの程度を明らかにしていくプロセスのことを、病期分類と呼びます。肺や肝臓、骨、心臓、膵臓、リンパ節などの体の別の部位にがんが転移していないかを明らかにするために、以下のような画像検査法が用いられます:
副甲状腺がんでは、病期分類の方法として標準的に用いられているものはありません。この疾患については、限局性と転移性に分けて考えることになっています。
再発副甲状腺がんとは、治療後に再び悪化(再発)したがんのことをいいます。再発は患者さんの半数以上に起こります。副甲状腺がんの再発は、最初の手術の2〜5年後に起こるのが通常ですが、20年も経ってから起こってくる場合もあります。再発部位は頸部の組織か頸部のリンパ節となるのが通常です。治療後の血中カルシウム濃度の再上昇は、再発の最初の徴候となります。
副甲状腺がんの患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験で検証中のものもあります。治療を開始する前に、まず臨床試験への参加を検討してみるのもよいでしょう。治療法の臨床試験とは、現在用いられている治療法の改善や、がんの新しい治療法に関する情報収集を目的とした調査研究のことです。新しい治療法が標準治療よりも優れているということが複数の臨床試験から示されると、その新しい治療法が標準治療となります。
臨床試験は米国各地で行われています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形となります。
副甲状腺の機能亢進がみられる患者さんの治療には、高カルシウム血症(血液中のカルシウムの量が増えすぎた状態)の管理も含まれます。副甲状腺ホルモンの分泌量を低下させて血液中のカルシウム濃度をコントロールするために、腫瘍を可能な限り多く切除する手術が行われます。手術を受けられない患者さんには、医薬品が使用されることもあります。(さらに詳しい情報については、PDQの高カルシウム血症に関する要約をご覧ください。)
標準治療として以下の4種類が用いられています:手術(がんを外科的な方法で取り除く治療法)は、がんが副甲状腺内にとどまっているか体の別の部位に転移しているかに関係なく、副甲状腺がんに対して最も多く用いられている治療法です。副甲状腺がんは増殖のペースが非常に遅いため、既に体の別の部位に転移している場合でも、疾患の治癒や症状の長期的な沈静化を目標として、手術による腫瘍の摘出が行われることがあります。手術の実施までは、高カルシウム血症をコントロールするための治療が施されます。
以下のような手術法が用いられます:
副甲状腺がんの手術では、ときに声帯の神経を傷つける場合があります。この神経の損傷によって起こる発声の問題については有用な治療法が存在します。
放射線療法放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用することによって、がん細胞を死滅させたりその増殖を阻止したりする、がんの治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの器具の中に放射性物質を封入し、がんの内部かその付近に直接留置する方法です。放射線療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
化学療法化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによりがんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱内や臓器内、もしくは腹腔などの体腔内に薬を直接注入する化学療法では、薬はその領域のがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
支持療法がんやその治療が原因で生じた問題については、その影響を和らげるために支持療法が行われます。副甲状腺がんによる高カルシウム血症に対する支持療法には、以下のようなものがあります:
現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
生涯にわたる経過観察が重要となります。副甲状腺がんは再発することの多い腫瘍です。そのため再発を早期に発見し治療するために、治療終了後も生涯にわたって定期的な検査を受けていくことが必要になります。