原文更新日 : 2004-05-14
翻訳更新日 : 2007-06-27
消化管には胃、小腸、大腸などがあります。これらの臓器は消化器系の一部で、摂取された食物からの栄養素(ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂質、タンパク質、水分)の消化吸収と、老廃物を体外に排出する役割を担っています。消化管カルチノイドは消化管内面のある種のホルモン生成細胞から発生します。これらの細胞は食物が胃から腸に送られる時に使われる消化液や筋肉を調整するホルモンを生成します。消化管カルチノイドも、ホルモンを生成することがあります。直腸(大腸の最後の数インチの部分)から発生するカルチノイドは通常、ホルモンを生成しません。
消化管カルチノイドはゆっくり成長します。ほとんどは虫垂(大腸に付着した臓器)、小腸、直腸から起こります。一般的には小腸の中に複数の腫瘍が発生します。カルチノイドがあると、同時期にあるいは後から、消化器系に他のがんができる可能性が高くなります。
消化管カルチノイドが発生するリスクに、既往歴が影響を及ぼすことがあります。危険因子を次に挙げます:
消化管カルチノイドで作られたホルモンは通常、血液や肝臓の酵素によって破壊されます。しかしながら、もし腫瘍が肝臓に拡がれば、このホルモンが大量に体内に残り、カルチノイド症候群と呼ばれる一連の症状が起こります:
これらの症状などが消化管カルチノイドによってまたは他の状態によって引き起こされる可能性があります。これらの症状のいずれかが起こったときには医者に相談すべきです。
血液検査と尿検査が消化管カルチノイドを検出(発見)、診断するのに用いられます。次のような検査と方法が行われます:
予後(回復の見込み)や治療法は次の項目によって変わります:
治療法の選択はがんの症状の有無によっても変わります。消化管カルチノイドは大抵はゆっくりと成長する腫瘍で、治療法もあり、治癒もよくみられます。たとえ治癒しなくても、患者さんの多くが長い間生存できます。
病期分類はがんがどのくらいまで拡がっているかを判断するのに使われる方法です。病期分類の過程で集められた情報から疾患の病期を決定します。消化管カルチノイドには規準となる病期はありません。治療計画には、病巣がどのくらい拡がっているか、手術で腫瘍を取り除くことができるかどうかを知ることが大切です。次のような検査と方法が行われます:
がんが虫垂や結腸、直腸、小腸、胃にのみ見られます。
局所性がんが虫垂や結腸、直腸、胃、小腸から近くの組織やリンパ節に拡がっています。
転移性がんが体の他の部位に拡がっています。
消化管カルチノイドの患者さんは、様々な種類の治療を受けられます。治療には、標準治療(現在用いられている治療法)と臨床試験中のものがあります。治療を開始する前に、患者さんは臨床試験への参加を検討することができます。治療法の臨床試験とは、現在の治療法を改良したり、がんんの患者さんのための新しい治療法についての情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合、その新しい治療法が標準治療となります。
臨床試験は米国各地で行われています。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。最適ながん治療の選択は、患者さん、ご家族そして医療チームが関わって行うことが理想です。
以下の7種類の標準治療が用いられます:消化管カルチノイドの治療には、手術があります。次の手術法のひとつが用いられます:
放射線療法はがん細胞を殺すために高エネルギーのX線、もしくは別の種類の放射線を使うがんの治療法です。放射線療法には、2種類あります。外照射療法は、体外にある機械を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は放射性物質を針、シード、ワイヤー、またはカテーテルに封じ込めてがんの中や近くに直接留置します。放射線療法を行う方法は、治療するがんの種類や病期によって異なります。
化学療法化学療法は、薬物を用いてがん細胞を殺すかまたは細胞の分裂を停止させることにより、がん細胞の増殖を止めるがん治療法です。化学療法が経口、静脈または筋肉への注入によって行われる場合、薬は血流に入り、全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱や臓器、そして腹部など体腔に薬を直接注入する化学療法では、薬は主にその領域にあるがん細胞に作用します(局所化学療法)。
肝動脈の化学塞栓術は肝臓に転移した消化管カルチノイドを治療するのに使われる一種の局所化学療法です。抗がん剤はカテーテル(細い管)を通して肝動脈に注入されます。その薬物に動脈を塞栓(ブロック)する物質を入れて、腫瘍への血流を絶ちます。抗がん剤のほとんどは腫瘍の近くに留まり、体の他の部位に到達するのはほんの少しだけです。閉塞が一時的なものか、永続的なものになるかは、動脈を塞ぐために用いる物質によって決まります。腫瘍は成長するのに必要な酸素や栄養素を絶たれます。胃と腸から血液を運ぶ肝門脈を通して肝臓には血液が供給され続けます。
化学療法の処方は、治療中のがんの種類や病期によって決まります。
経皮的エタノール注入経皮的エタノール注入はがん細胞を殺すために小さな針を使って直接、腫瘍の中にエタノール(アルコール)を注入するがん治療です。この方法はまた腫瘍内エタノール注入とも呼ばれます。
生物学的治療生物学的治療は、患者さん自身の免疫系を利用してがんと闘う治療法です。体内あるいは製造ラボで作られる物質を用いて、がんに対する体本来の防御力を増強、方向付け、あるいは修復します。この種のがん治療は、生物療法あるいは免疫療法とも呼ばれます。
ホルモン療法ホルモン療法はホルモンを取り除くかあるいはその活動を阻止して、がん細胞が増殖するのを止めるがん治療です。ホルモンは体内の腺で作られ血流で循環する物質です。ある種のホルモンの存在は、特定のがんの成長を促す可能性があります。がん細胞にホルモンが結合する場所(受容体)があることが検査で分かった場合、薬、手術あるいは放射線療法によりホルモンの生産を減少させるか、あるいはその作用を阻止します。
その他の薬物療法時に、MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)は、消化管カルチノイドの症状を軽くするために放射性ヨウ素(I131)といっしょにあるいは単独で使われます。
その他にも、いくつかの治療法が臨床試験で検証中です。消化管カルチノイドの臨床試験で研究されている治療には、化学療法の新しい組み合わせも含まれています。これらの臨床試験および他の進行中の臨床試験についての情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手できます。
虫垂にできたカルチノイド
虫垂にできた限局性消化管カルチノイドの治療には下記のものがあります:
直腸カルチノイド
直腸内の限局性消化管カルチノイドの治療には下記のものがあります:
小腸カルチノイド
小腸内の限局性消化管カルチノイドの治療には下記のものがあります:
胃、結腸、膵臓のカルチノイド
胃、結腸、膵臓内の限局性消化管カルチノイドは、通常切除して治療します。
通常治療として、最初にできた腫瘍の場所に見られるがんのすべてと、近くの組織やリンパ節を取り除く手術をします。
腫瘍を手術によって完全に取り除くことができなければ、通常、症状を緩和し、患者さんの生活の質(QOL)を高めるために緩和療法が行われます。このために次のような治療を行います:
遠隔転移
転移性消化管カルチノイドによる症状がでなければ、治療をする前に注意深い経過観察を行います。消化管カルチノイドの遠隔転移の治療は通常、緩和療法で、以下のものがあります:
カルチノイド症候群
カルチノイド症候群を起こす転移性の消化管カルチノイドの治療には次のようなものがあります:
一部のカルチノイド症候群の患者さんにおいては、心臓弁の置換が行われることがあります。
本稿では、臨床試験で研究している個々の治療法について述べていますが、現在研究されている新しい治療法全てを掲載しているわけではありません。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
再発性消化管カルチノイドの治療には下記のものがあります:
現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。