なぜがんになる人とならない人がいるのかは、医師にとっても必ずしも説明できることではありません。しかしそれでも、人口集団におけるがんの発生パターンの研究を通して、がんを発生しやすくする環境や生活習慣を明らかにしようとする努力が積み重ねられてきました。
疾患が発生する可能性を増大させるものは全て危険因子と呼ばれ、疾患が発生する可能性を減少させるものは全て防御因子と呼ばれます。がんの危険因子には回避できるものもありますが、回避できないものも数多くあります。例えば、喫煙をやめることはできても、親から子へと遺伝により受け継がれる遺伝子を自由に選ぶというわけにはいきません。喫煙習慣であれ特定の遺伝子の継承であれ、ある種のがんの危険因子として考えられる点に変わりはない一方で、喫煙習慣のみが回避可能となるのです。予防とは、こうした危険因子を回避するとともに制御可能な防御因子の影響を強めることによって、がんの発生する可能性を減らしていくことを意味します。
危険因子の多くは回避することができますが、たとえ危険因子を回避できても、それががんにならないことの保証になるわけではないということは覚えておかなければなりません。また、がんに対し特定の危険因子をもつ人でも、そのほとんどが実際にはがんを発症しません。他の人と比べて、がんの危険因子からの影響を受けやすい人もいます。ご自身に合ったがんの予防方法については担当の医師にご相談ください。
食道がんの予防に関するこの要約は、以下のような目的で作成されています:
がんの予防法に関する事柄や、その予防法がご自身にとって有用となるかどうかについては、担当の医師または医療専門家に相談してみるとよいでしょう。
食道がんとは、咽頭(喉)から胃までの食物が通る筋肉の管、すなわち食道にできるがんのことです。食道がんのほとんどは、腺がんあるいは扁平上皮がんのいずれかです。どちらの種類のがんも、食道の内側を覆う組織にみられます。扁平上皮がんは咽頭に近い食道上部で発生し、腺がんは胃に近い食道下部で発生します。
食道扁平上皮がんの新しい症例数は減少しつつあります。アフリカ系アメリカ人男性は、白人男性よりも食道扁平上皮がんにかかりやすい傾向にあります。全ての人種/民族グループにおいて、この種のがんのリスクは年齢とともに高くなります。
食道腺がんの新しい症例数は、ここ20年で増加しています。米国や西ヨーロッパにおいて、食道腺がんは食道扁平上皮がんよりも多くみられるようになりました。
以下に挙げる危険因子や予防因子は、食道がんの発生に影響を及ぼすと考えられています:
食道扁平上皮がんは、タバコの使用(喫煙)とアルコール摂取(飲酒)に強く関係しています。タバコとアルコールを控えることは食道がんの発生リスクを低下させると、諸研究で報告されています。
緑黄色野菜や果物、アブラナ科の野菜(キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなど)を十分に摂取する食事は、食道扁平上皮がんの発生リスクを低下させる可能性があります。
非ステロイド性抗炎症薬(アスピリンや発熱、腫れ、痛み、赤みを和らげるその他の薬)の使用は、食道扁平上皮がんと食道腺がんの両方の発生リスクを低下させるという報告があります。
ヘリコバクターピロリ菌による感染は、胃の内壁に炎症と潰瘍を起こし胃萎縮(胃の内壁細胞が破壊される)と呼ばれる状態へと進行する場合があります。この疾患は、食道扁平上皮がんの発生リスクを高めることがあります。
胃逆流(胃の内容物が食道下部に逆流すること)は食道を刺激し、長期にわたると、バレット食道を引き起こす可能性があります。バレット食道は、食道下部の内側を覆っている細胞が徐々に変化し、食道腺がんを引き起こす可能性がある異常細胞に置き換わる病態です。胃逆流を阻止する手術や他の治療によって食道腺がんの発生リスクが低下するかどうかは、分かっていません。