なぜがんになる人とならない人がいるのかは、医師にとっても必ずしも説明できることではありません。しかしそれでも、人口集団におけるがんの発生パターンの研究を通して、がんを発生しやすくする環境や生活習慣を明らかにしようとする努力が積み重ねられてきました。
疾患が発生する可能性を増大させるものは全て危険因子と呼ばれ、疾患が発生する可能性を減少させるものは全て防御因子と呼ばれます。がんの危険因子には回避できるものもありますが、回避できないものも数多くあります。例えば、喫煙をやめることはできても、親から子へと遺伝により受け継がれる遺伝子を自由に選ぶというわけにはいきません。喫煙習慣であれ特定の遺伝子の継承であれ、ある種のがんの危険因子として考えられる点に変わりはない一方で、喫煙習慣のみが回避可能となるのです。予防とは、こうした危険因子を回避するとともに制御可能な防御因子の影響を強めることによって、がんの発生する可能性を減らしていくことを意味します。
危険因子の多くは回避することができますが、たとえ危険因子を回避できても、それががんにならないことの保証になるわけではないということは覚えておかなければなりません。また、がんに対し特定の危険因子をもつ人でも、そのほとんどが実際にはがんを発症しません。他の人と比べて、がんの危険因子からの影響を受けやすい人もいます。ご自身に合ったがんの予防方法については担当の医師にご相談ください。
前立腺がんの予防に関するこの要約は、以下のような目的で作成されています:
がんの予防法に関することや、その予防法がご自身にとって有用かどうかについては、担当の医師か医療専門家にご相談ください。
前立腺とは、精液の一部を生産している男性特有の腺のことです。その位置は膀胱と直腸の間になります。前立腺は正常時にはクルミほどの大きさで、尿道(排尿時に膀胱から出た尿が通っていく管)を取り囲むように存在しています。
前立腺がんは、米国人男性の間では皮膚がんを除く全てのがんの中で最も多く発生しています。前立腺がんの患者さんの数は非常に多いのですが、前立腺がんと診断された男性の大半は別の原因で亡くなることから、このがんによる死亡者数はその症例数よりも大幅に少ないものと見積もられています。
前立腺がんでは、この疾患の危険因子の関与が実際にもしばしば認められます。全ての危険因子を回避することは不可能ですが、多くは軽減することができます。
年齢:前立腺がんの発生リスクは、年齢が上がるにつれて高くなっていきます。
化学予防:化学予防とは、がんの増殖を抑制したり予防したりすることを目的として薬やビタミン剤などの物質を使用することです。複数の研究成果から、ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)やイソフラボノイド、セレニウム、ビタミンD、ビタミンE、リコピンなどの数種類の物質がその候補に挙がっています。しかしその効果を証明するには、さらなる研究が必要とされています。
食習慣と生活様式:食習慣が前立腺がんのリスクに及ぼす影響について、現在多くの研究が行われています。脂質(特に動物性脂肪)を多く摂る食習慣と前立腺がんのリスクとの間には関連性があるのではないかと考えられています。逆に果物と野菜を多く採り入れた低脂肪の食習慣によって前立腺がんを予防できるかどうかについては、それを証明するまでにはさらなる研究が必要です。
乳製品やカルシウムを多く摂る食習慣と前立腺がんのリスクとの間にも弱い関連性が認められることが、複数の研究から示されています。
ホルモン予防:男性ホルモンの量を減らす薬(フィナステリドなど)を使用した前立腺がんの予防法についての研究が現在進行中です。
人種:人種ごとの前立腺がんのリスクとしては、黒人男性で圧倒的に高く、白人男性では比較的高く、日本人男性では最低レベルとなっています。しかしながら、これらの人種間でのリスクの差は、人種に関係する別の因子によるものかもしれません。研究からは、テストステロンというホルモンの量と前立腺がんのリスクとの関連性が報告されていて、実際にもテストステロンの値は黒人男性で最も高くなっています。