なぜがんになる人とならない人がいるのかは、医師にとっても必ずしも説明できることではありません。しかし科学者たちは、がん発生の可能性を高める環境や生活習慣にはどのようなものがあるのかを明らかにしようと、人口集団におけるがんの全般的な発生パターンを研究してきました。
疾患が発生する可能性を増大させるものは全て危険因子と呼ばれ、疾患が発生する可能性を減少させるものは全て防御因子と呼ばれます。がんの危険因子には回避できるものもありますが、回避できないものも数多くあります。例えば、喫煙をやめることはできても、親から子へと遺伝により受け継がれる遺伝子を自由に選ぶというわけにはいきません。喫煙習慣であれ特定の遺伝子の継承であれ、ある種のがんの危険因子として考えられる点に変わりはない一方で、喫煙習慣のみが回避可能となるのです。予防とは、こうした危険因子を回避するとともに制御可能な防御因子の影響を強めることによって、がんの発生する可能性を減らしていくことを意味します。
危険因子の多くは回避することができますが、たとえ危険因子を回避できても、それががんにならないことの保証になるわけではないということは覚えておかなければなりません。また、がんに対し特定の危険因子をもつ人でも、そのほとんどが実際にはがんを発症しません。他の人と比べて、がんの危険因子からの影響を受けやすい人もいます。ご自身に合ったがんの予防方法については担当の医師にご相談ください。
子宮頸がんの予防に関するこの要約は、以下のような目的で作成されています:
がんの予防法に関する事柄や、その予防法がご自身にとって有用となるかどうかについては、担当の医師または医療専門家に相談してみるとよいでしょう。
子宮頸部とは、子宮と膣の間をつないでいる、子宮の下の方の狭くなった部分のことです。子宮頸部は女性の生殖系の一部です。
子宮頸がんは通常ゆっくりと進行します。がんが現れる前の子宮頸部には、異常な細胞が組織の中に現れ始める、異形成と呼ばれる変化が起きています。その後、がん細胞が増殖を開始し、子宮頸部のより深い部分や周辺部へと拡がっていきます。
パパニコロウ試験(パパニコロウ塗抹)によるスクリーニングの普及によって、子宮頸がんによる死亡者数は減少してきています。しかしながら、スクリーニング検査にはリスクが伴い(PDQの子宮頸がんのスクリーニングに関する要約をご覧ください)、子宮頸がんの予防を行ったほうが、より少ないリスクでより多くの利益がもたらされます。
子宮頸がんでは、この疾患の危険因子として知られている因子の関与が症例の多くで認められます。危険因子には回避できないものもありますが、回避できるものも多くあります。
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染:子宮頸部のHPV感染は子宮頸がんの第一の危険因子です。ヒトパピローマウイルス(HPV)には80種以上のものが存在します。そのうちの約30種が性的伝播(性的接触によって人から人へ伝染すること)を起こし、子宮頸部に感染する可能性があります。さらにこのうちの約半数で子宮頸がんとの関連性が明らかとなっています。しかし、HPVの感染は頻繁に起きている出来事であり、HPVに感染した無治療の女性の中でも子宮頸がんを発症する人はごく少数に限られます。よくみられる種類のHPVの感染を予防するワクチンが現在研究段階にあります。
性交歴:子宮頸がんの原因となるHPV感染は主として性的接触によって拡がります。若年時から性交をもち始めた女性や多くのセックスパートナーをもっていた女性では、HPVの感染リスクと子宮頸がんの発生リスクが高くなります。性感染症(STD)の予防に用いられる方法の中には子宮頸がんのリスク低減に役立つものがあります。バリア法による避妊や精子を殺傷するゼリーの使用は、STDに対してある程度の予防効果がありますが、完璧な予防法ではありません。
妊娠歴:満期妊娠の経験が多い(7回以上)女性では子宮頸がんのリスクが高くなります。
経口避妊薬の使用:経口避妊薬を長期間(5年以上)使用している女性では子宮頸がんのリスクが高くなります。
スクリーニング歴:婦人科診察やパパニコロウ試験を定期的に受けることは子宮頸がんの予防に役立ちます。パパニコロウ試験によって子宮頸部の異常な変化が検出(発見)されれば、子宮頸がんの発生前に治療を行うことが可能になります。定期的にパパニコロウ試験を受けていない女性では子宮頸がんのリスクが高くなります。
喫煙:喫煙は子宮頸がんのリスクを高めることが分かっています。
食事:特定の微量栄養素(ビタミンやミネラル)の摂取によって子宮頸がんのリスクが低下するという報告が、いくつかの研究からなされていますが、まだ証明はされていません。
子宮頸がんの危険因子を知っておけば、そうした因子の影響を回避するのに役立ちます。