原文更新日 : 2006-06-19
翻訳更新日 : 2007-06-27
移行期のケア計画に関する患者さん向けのこの要約は、がんの専門家が医療従事者向けに作成した要約を編集したものです。本稿を含め、がんの治療、検診、予防、支持療法および現在米国で行われている臨床試験についての信頼できる情報は、米国国立がん研究所(NCI)から得られます。この要約では、移行期におけるケア、評価、およびケアの選択肢について記載されています。
移行期のケア計画を立てておくことは、がんという体験の様々な段階を通じてがんのケアを中断することなく継続していくことの助けとなります。
移行とは、ある段階から別の段階へ経過することをいいます。移行期のケア計画は、ケアの各段階の間の移行を円滑するための作業といえます。がん治療の目標やケア施設が変わるとき、患者さんは移行期特有の問題に直面することがあります。患者さんは、自身の病状や治療法と、家族の要求や経済状態、雇用、霊性面の信条または宗教的信条、生活の質などとの間でバランスを取りながらの判断をしていかなければなりません。適切なリハビリテーション施設の決定、特殊な機器の調達、必要なケアにかかる費用など現実的な問題が生じてきます。うつ病や不安などの精神衛生の問題も考えらます。移行期のケア計画を立てておけば、こうした問題を明らかにして対応しておくことによって、ケアを中断することのない円滑な移行を進めることができます。その結果、患者さんとその家族にかかるストレスが軽減され、患者さんの健康状態が改善されます。
さらに詳しい情報については、下記のPDQの要約をご覧ください:
移行期のケア計画には、患者さんや家族の方々への支援や教育と、支援プログラムや支援団体への紹介が含まれます。ここでは、その患者さんを担当する医療提供者がチームを組んで取り組むのが理想的とされています。チームのメンバー間の情報交換を緊密にすることや、その情報交換の場に患者さんや家族の方に参加してもらうことが重要となります。
病状の変化によって、がんケアの目標が変わってくる場合があります。
がんケアはがんの種類ごとに異なり、また患者さんの病状の好転や悪化に伴ってその治療目標も変化してきます。がんケアには以下のようなものが含まれます:
水準も目標も異なるこれらのケアの間の移行に適応していく際には、医学面、現実面、感情面でそれぞれ問題が生じてきますが、そうした問題を抱える患者さんに対して、移行期のケア計画が有用になってくるのです。
患者さんは、疾患の経過の中で異なる複数の状況でケアを受けることがあります。
がんの患者さんが受けるケアは、病院以外の場所で行われる場合がほとんどです。また、がんの患者さんが治療を受ける場所は病気の経過の中で何度か変わってくることがあります。入院または外来でのケアから始まって、在宅ケア、療養施設でのケア、リハビリテーション施設(筋力や運動能力を取り戻すといった特別な訓練を行うための施設)でのケア、ホスピスチームによる終末期ケアなどへの移行があります。患者さんがある所から他の所へケアを受ける場所を移るとき、このときの移動に関する計画のプロセスはしばしば退院計画と呼ばれます。このプロセスでは、患者さんに代わって、ケースマネージャーが病院や訪問看護、ヘルスケア会社、リハビリテーション施設、療養施設、その他必要なケアを提供する団体との交渉を代行する場合があります。ケースマネージャーは地域の支援団体や支援プログラムなどと連携して、患者さんとその家族への情報提供や専門機関や専門家への紹介などの、各種のサービスが提供されるように手配を行います。
評価にあたっては、ケアの変化に適応していく際にその患者さんに生じてきそうな問題点を医療チームが把握し対応していくのに有用な情報が収集されます。
がんが患者さんに及ぼす影響は健康状態だけにとどまりません。その影響は精神衛生、家族の生活、職業面の能力、金銭的な計画、社会的関係、信用にも及びます。患者さんの多くは、あるケア水準から異なるケア水準に移行するときに、こうした問題に少なくとも1つは直面します。例えば、患者さんの家族が特殊な在宅用機器の調達あるいはその使用法の修得に苦労する場合があります。この他にも、積極的ながんケアから、特定の緩和ケアやホスピスケアなどの症状の緩和のみを目的としたケアへの変更を、患者さんがなかなか受け入れられない場合などもあります。移行期のケア計画は、患者さんとその家族を一体として個別に作成されます。ここで評価を行っておくことは、移行時に問題を抱える可能性のある患者さんを把握し、移行を円滑に進めるためにその患者さんに必要となる支援を特定することの助けとなります。この評価には、完全な病歴の聴取;身体診察;学習に関する技術の検査;日常生活動作の能力を測る検査;精神衛生面の評価;患者さんが利用できる社会的支援の検討;交通手段や在宅ケア、健康的な食事、投薬管理などの問題で必要となる地域の支援団体や支援プログラムの紹介などが含まれます。
評価は日常的なケアの一環として、患者さんのがん体験が続く限り何度でも行います。
患者さんがある施設から別の施設(例えば、病院から自宅)へ移る際にも評価が行われます。また、疾患の経過の中の節目となる時期にも評価が行われ、そのような時期としては通常、診断時、各治療コースの終了時、再発時、治癒を目的とした治療を中止するとき、治療を中断する(終末期ケアに移行する)ときなどです。これは、こうした時期に情緒的なストレスが新たに生じてきやすくなるためです。定期的な評価を行っていけば、こうしたストレスを始めとする、患者さんの苦痛の原因(例えば、失業、愛する人や介護者の死や病気)を特定することが可能になってきます。 (さらに詳しい情報については、PDQの喪失、悲嘆、死別に関する要約をご覧ください。)
将来的に何が患者さんにとって必要となるかは決してわからないため、評価は、患者さんのがん体験が続く限り日常的なケアの一環として何度でも行われます。そうすることで、患者さんは必要とする時期に必要なサービスを確実に受けることができます。
評価プロセスには、患者さんを担当する医療チームのメンバー全員が参加します。
がんケアの変更を計画する場合には、医療チームの医師、看護師、および他のメンバーが、影響が及ぶであろう患者さんの生活のあらゆる場面を想定します。移行期のケア計画の評価では、以下のような専門家が各々異なる部分を担当していきます:
移行期のケア計画では、以下のような評価が行われます:
身体的評価
身体的評価では患者さんの健康状態、治療計画、病状の変化などが調べられ、具体的には以下のような因子が注目されます:
さらに詳しい情報については、下記のPDQの要約をご覧ください:
家族と住居の評価
患者さんの年齢や生活環境などの要因によって、ケア水準の変更が困難になったり容易になったりします。この評価では以下のような因子が注目されます:
精神衛生面の評価
変化がもたらされるということは、患者さんだけでなくその家族にとっても、ストレスの原因となりえます。家族内外の人々と患者さんとの間にどのような関係が構築されているのかを把握しておくことは、家族が移行期の問題に対処していく際に必要となるであろうサービスの種類を特定するのに役立ってきます。ここでは以下のような質問が行われます:
さらに詳しい情報については、下記のPDQの要約をご覧ください:
社会的評価
患者さんは、利用できる支援サービスへの紹介を、医師や他の医療従事者に求めることができます。以下のような問題を整理することによって、患者さんがその時点で利用できるソーシャルサービスの種類についての再検討が行われます:
霊的評価
患者さんの人生における宗教や霊性の役割を把握しておくことは、医療チームにとって、患者さんの信条が新たなケアへの移行の際にどのように影響してくるのかを予測するのに役立ちます。霊性に関する評価では以下のようなことが質問されます:
米国の大半の病院(特に大病院)では、治療中の患者さんやその家族を手助けするための訓練を積んだ病院付き牧師が勤務しています。病院付き牧師は専門の訓練を受けているため、宗教や霊性に関する信条や関心事に幅広く対応することができます。
(さらに詳しい情報については、PDQのがん医療における霊性に関する要約をご覧ください。)
法的評価
患者さんが自身の希望を周囲に伝えられない状態に陥った場合、事前指示書などの法的文書があれば、医師や家族はそれに基づいて治療に関する判断を下すことができます。患者さんは、以下の文書のいずれかを作成したかどうかを尋ねられることがあります:
様々なニーズに対応するために、様々な種類のケアが用意されています。移行期のケアには、病状の管理やリハビリテーションに加え、快適性、安全性、衛生状態、栄養状態などといった基本的なニーズに対応していくための支持的なサービスについてもその範囲内に含まれてきます。また、教育的、社会的、霊的、経済的ニーズに対する支援サービスが組み込まれることもあります。以下は、移行期間中の患者さんにおける、評価されたニーズに対応するためのケアの選択肢の一部です:
ケアを提供する場所
介護者
医療専門家や他の介護者は1つのチームとして、自宅、医療施設、その他の状況における患者さんへのサービス提供を行います。このチームには以下のような専門家が参加します:
ケアを提供するためのプログラムには、以下のようなものがあります:
医薬品支援
栄養面の支援
通常の食事が不可能となった場合には、補助栄養の経口投与、経管栄養、あるいは補助栄養の静脈内投与などが必要になってきます。(さらに詳しい情報については、PDQのがん医療における栄養に関する要約をご覧ください。)
特殊機器
必要とされる機器の種類は、患者さんの状態に応じて異なります。一般的に必要とされる機器には以下のようなものがあります:
患者さんのケアを自宅で行うことは、身体面と精神面の両方において、介護者の負担増大につながる可能性があります。
在宅ケアからくるストレスや責任は家族関係に悪影響を及ぼすこともあるため、この問題は慎重に考慮する必要があります。在宅ケアを開始すると、家庭内の全員に日常生活の変化が生じてきます。そして多くの家庭が、生じた役割の変化に慣れていくまでに何らかの問題を抱えます。こうした問題に対しては、患者さんとその家族へのカウンセリングが有用となってきます。
痛みのコントロールは、在宅ケアを成功させる重要な要因です。鎮痛薬の投与は、患者さんの気持ちを和らげるために行われ、しばしばがんケアの一部となります。患者さんの症状、特に痛みをコントロールすることで、患者さんと介護者の双方にとってより対処しやすい状況が生まれます。そのため、家族や介護者が患者さんの快適さを維持するための鎮痛薬や他の治療法の使用について理解を示すことが重要となります。
さらに詳しい情報については、下記のPDQの要約をご覧ください:
在宅ケアを考慮する場合には、以下のものを始めとした様々な因子の評価が行われます:
こうした評価を行うことで、その患者さんにとって在宅ケアが実行可能な選択肢であるかどうかが分かります。
移行期のケア計画を行うことは、必要なサービスやケアにかかる費用の支払方法を探す場合にも有用です。
医療保険、メディケア、退役軍人恩給、低所得者医療扶助制度(Medicaid)などにより、患者さんの医療費の一部を負担できる場合があります。しかしながら、これらの保険や恩給には補償範囲に限度があり、患者さんは補償されない費用については他の支払い方法を検討せねばなりません。例えば、在宅ケアの費用の補償は一定の条件の下で一定期間のみに限られるのが通常です。
移行期のケア計画には、保険で補償されない分の治療費の支払い計画を支援してくれる地域の支援団体やプログラムなどを紹介することも含まれます。一部のケアニーズに対しては、ソーシャルサービス機関を利用することができます。組織によっては、医療機器のレンタル(例えば、車いすや病院用ベッド)や、看護補助やハウスキーパーによる短期支援の提供、病院への送り迎えなどを行ってくれるところもあります。
CISの各オフィスでは、米国各地で利用できるがん関連のサービスや支援プログラム、支援団体に関する情報を提供しています。
移行期のケアには、患者さんに対する職業相談が含まれる場合もあります。
がんの患者さんは、しばしば仕事に復帰することを望みます。がんの患者さんにとって、仕事には単に収入を得ることだけでなく日常感覚を取り戻すという意義もあります。一部の患者さんでは、治療中に職場に戻れるほどに体調が良くなることがあります。一方で、治療が終了するまで待たなければならない患者さんもいます。障害のある患者さんや治療後も他の特別なケアを必要とする患者さんでは、以前の仕事に復帰することが不可能な場合もあります。
職業関連の問題を抱える患者さんを支援するサービスを紹介してもらうことができます。こうしたサービスとしては、雇用相談、教育と技能訓練、補助技術と介護用具の調達と使用に関する支援など挙げられます。
患者さんが職場に復帰したとしても、患者さんと何を話せばいいのか、あるいはがんを話題にすることを患者さんが望んでいるのかなどで、同僚が戸惑ってしまうといった事態が生じてきます。そこで、がんに関する教育を患者さんの同僚に対して行えば、この移行を円滑なものにできます。
事前指示書は患者さんが携帯しておかなければなりません。
ケアの移行段階では、患者さんの事前指示書、医療委任状、および永続的委任状を適切な介護者に受け渡す必要があります。この手続きを踏むことで、がんの病期とケアを行う場所の全てを通じて、患者さんの希望が確実に周知されることになります。(これらの書類に関する情報については、法的評価のセクションをご覧ください。)
がんの患者さんに対するケアは、症状が現れて診断がついた時点から始まり、寛解期に入るか治癒に至るまで、もしくは患者さんが死亡するまで継続していきます。終末期に関する判断は、その必要性が出てくる前、できれば診断直後に行っておくべき事柄です。この問題について考えることは楽しいことでも簡単なことでもありませんが、動揺のなか重大な決断をしなければならない家族の精神的負担を考えれば、終末期のケア計画を前もって立てておくことは非常に重要といえます。
患者さんの考え方は人によって様々で、患者さんのもつ哲学や道徳観、信仰心、霊的背景などが反映されます。終末期の問題について何らかの考え方をもっている人は、その意図することが実際の終末期に実行されるようにするためにも、その感情を周囲の人に表明しておくべきです。しかし、ことが繊細な問題であるため、患者さんや家族や医師の間でこの問題について話し合われることは少ないようです。話し合う時間なら後からでも十分にあると認識している人も多いようです。しかし、終末期の判断が必要となる場面で患者さんの希望を知らない人物が判断しなければならないという事態は、実際に数多くみられます。患者さんはできるかぎり早いうち(例えば、入院時)に医師や介護者と蘇生処置について話し合っておくべきで、さもないと、後になってからでは自身で判断できなくなるという事態も生じてきます。ここで事前指示書を作成しておけば、自身の希望を前もって周囲に知らしめることが可能になります。(この書類に関する情報については、法的評価のセクションをご覧ください。)
この問題では、ケアを受ける場所を自宅とするか;病院、療養施設、ホスピスとするか;あるいはその他の施設とするかを議論することが重要になります。