原文更新日 : 2005-06-30
翻訳更新日 : 2007-06-27
妊娠性絨毛腫瘍は、女性に発生するまれながんで、受精(精子と卵子が結合すること)の後に形成される組織の中でがん(悪性)細胞が増殖する疾患です。妊娠性絨毛腫瘍は子宮(洋ナシの形をした筋肉でできた中空の臓器で、胎児の成長の場となる)の内部から発生します。このがんは妊娠可能な年齢の女性に発生します。妊娠性絨毛腫瘍には次の2種類のものがあります:胞状奇胎と絨毛がん。
胞状奇胎(奇胎妊娠とも呼ばれる)が発生した患者さんでは、受精が起こったのにもかかわらず、子宮内での胎児の発育がみられません。そのかわりに、多くの嚢胞から成るブドウの房に似た組織が形成されていきます。この胞状奇胎は、子宮を越えて体の他の部位に拡がることはありません。
絨毛がんの患者さんの場合は、胞状奇胎の組織から、あるいは流産や出産の後に子宮内に取り残された組織から、腫瘍が発生したものと考えられます。絨毛がんは子宮から体の他の部位に拡がることがあります。またごくまれではありますが、子宮内の胎盤が付着していた部分から、これらとは別の種類の妊娠性絨毛腫瘍が発生してくる場合もあります。この種のがんは胎盤部絨毛性疾患と呼ばれています。
妊娠性絨毛腫瘍は常に容易に発見できるものではありません。早期のものでは正常な妊娠のようにみえることがあります。膣からの出血(月経時以外での出血)がある場合や、妊娠中の予定時期になっても胎動が始まらない場合には、医師の診察を受ける必要があります。
症状がある場合には、妊娠性絨毛腫瘍かどうかを明らかにするために、いくつかの検査が行われます。通常は初めに内診が行われます。医師は、触診によってしこりがないか、子宮の形や大きさに異常がないかを調べます。その次には場合により超音波検査(音波を用いて腫瘍を探し出す検査)が行われます。さらに血液検査も行われ、正常妊娠で認められるβ-HCG(β‐ヒト絨毛性ゴナドトロピン)と呼ばれるホルモンの濃度が高くなっていないかが調べられます。妊娠ではないのに血液中にHCGが検出される場合は、妊娠性絨毛腫瘍の徴候である可能性があります。
治癒の見込み(予後)と治療法の選択は、妊娠性絨毛腫瘍の種類、他の部位への拡がりの有無、患者さんの全般的な健康状態に左右されます。
妊娠性絨毛腫瘍が発見されると、がんが子宮内から体の他の部位へと拡がっていないかを明らかにするために、さらに検査が行われます(病期分類)。医師は治療計画を立てるためにがんの病期を把握しておかなければなりません。妊娠性絨毛腫瘍では、以下の病期分類が用いられます:
がんが子宮内部の空間のみに認められます。子宮の筋肉層の内部にがんが認められる場合は、侵入奇胎(破壊性絨毛がん)と呼ばれます。
胎盤が付着していた部分と子宮の筋肉層内部にがんが認められます。
胞状奇胎の治療後もしくは流産または出産の後に子宮内に残された組織からがん細胞が発生し、子宮内で増殖しています。がんは子宮外には拡がっていません。
胞状奇胎の治療後もしくは流産または出産の後に子宮内に残された組織からがん細胞が発生し、子宮内で増殖しています。がんはさらに子宮から体の他の部位にも拡がっています。転移性妊娠性絨毛腫瘍には、予後が良好なものと不良なものがあります。
以下の全てに当てはまる転移性妊娠性絨毛腫瘍は、予後良好と考えられます:
胞状奇胎の治療後もしくは流産または出産の後に子宮内に残された組織からがん細胞が発生し、子宮内で増殖しています。がんはさらに子宮から体の他の部位にまで拡がっています。転移性妊娠性絨毛腫瘍には、予後が良好なものと不良なものがあります。
以下のいずれかに当てはまる転移性妊娠性絨毛腫瘍は、予後不良と考えられます:
再発疾患とは、治療後に再び悪化(再発)したがんのことをいいます。再発は、子宮に起こることもあれば、体の別の部位に起こることもあります。
妊娠性絨毛腫瘍の患者さん全てに、治療法が存在します。次の2種類の治療法が用いられます:手術(がんを取り去る治療法)と化学療法(薬を使用してがん細胞を殺傷する治療法)。場合により、体の他の部位に転移したがんを治療するために、放射線療法(高エネルギーのX線を用いてがん細胞を殺傷する治療法)が用いられることもあります。
がんを取り除くために用いられる手術法には、以下のようなものがあります:
化学療法では、がん細胞を死滅させることを目的として薬が使用されます。薬は錠剤として経口投与されるか、あるいは静注または筋注で投与されます。化学療法は、薬が血流に乗って体中をめぐることにより子宮外のがん細胞をも殺傷できることから、全身療法とも呼ばれます。化学療法は手術の前後に行われることもあれば、手術をしないで単独で行われることもあります。
放射線療法では、高エネルギーのX線を利用してがん細胞を殺傷し、腫瘍を縮小させます。体外の装置から放射線を照射する方法(体外照射療法)と、放射線を発生させる物質(放射性同位元素)を、プラスチック製の細い管を通してがん細胞が存在する部位まで送り込む方法(内照射療法)があります。
妊娠性絨毛腫瘍の治療法は、病期、年齢、全身状態によって異なってきます。
過去の研究で有効性が実証されている標準治療の実施を検討してもよいですし、臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。全ての患者さんが標準治療で治癒するとは限りませんし、一部の標準治療では副作用が予想以上に強く現れる場合もあります。このような理由から、より良いがんの治療法を見い出すために、最新の情報に基づいた臨床試験が計画されています。妊娠性絨毛腫瘍については、ほぼ全ての病期に関して、米国のほとんどの地域で臨床試験が実施されています。
治療法は以下のいずれかになります:
手術後には、血液検査による入念な経過観察を定期的に行い、β-HCGの血中濃度が正常値まで低下することを確認します。β-HCGの血中濃度が上昇する場合や正常値まで低下しない場合には、腫瘍が転移していないかを確かめるために、さらに検査が行われます。その後の治療法は、患者さんの腫瘍が非転移性か転移性かによって異なってきます(転移性または非転移性の治療のセクションをご覧ください)。